電子書籍
ヴァリス三部作とはいえヴァリス登場せず
2016/02/23 22:51
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かんけつ - この投稿者のレビュー一覧を見る
「ヴァリス」「聖なる侵入」と新訳版を読んで、読みやすさに感心しつつも神学談義の煩わしさにうんざりしてきた読者には、この普通小説はホっとする一作。
語り手のエンジェル自体がそういう考えだし。とはいえ自分自身も引用しまくってるんだけれど。
SF小説化ディックのファンとしては遺作はSFであって欲しかったが、本人は普通小説志向なんだから良かったのか。
三部作といわれれば納得するんだが、違和感はあるな。
投稿元:
レビューを見る
三部作の最終巻。
第一部、第二部とは雰囲気がまるで異なっている。事実、この三部作の最終巻としては、当初、別の作品が想定されていたらしい。とはいえ全く無関係でもなく、共通するモチーフも数多い。この辺りの事情は巻末に詳しい解説が載っている。
三部作の中で、個人的には一番気に入っている。
投稿元:
レビューを見る
ヴァリス、聖なる侵入、ティモシー・アーチャーの転生というヴァリス三部作の最終巻。
巻末の山形浩生解説にもあるが、目の前の人を救うことは、単純であり、だからゆえに困難である。
ぼくは、ディックは、バッドエンドの繰り返しの果てに、トゥルーエンドを迎えられたのだと、思う。
投稿元:
レビューを見る
山形浩生さんの訳で読みました。とてもおもしろかった。ジョンレノンの亡くなったニュースはそろばん塾で聞いたなーとか。そんときそもそもビートルズってまだ生きてるんだくらいに思ってたこととか。シャタックアベニューの中華料理屋とか言われるともうなんか懐かしくて泣けるし。
投稿元:
レビューを見る
【由来】
・
【期待したもの】
・
※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。
【要約】
・
【ノート】
・ほぼ30年越しでやっとヴァリス三部作を読了した。けど、最終作(そしてどうやらディックの遺作らしい)である本書は、もっともポカーンとした。これ、SFではないよね?
前半は意味不明な神学談義がダラダラと続いたけど、VALISの存在が浮上してからは俄然、SF的な面白さがあった「ヴァリス」。最初から最後までちゃんとSFとしてストーリもマトモな「聖なる侵入」に対して、本作は最初から最後まで、そういう箇所がない。
・「エンジェル」という語り手はどうだ?そのシュールな終幕に驚かせれた「ビッグオー」でも世界の観察者であるエンジェルの存在が大きな鍵となっていたが、本作のエンジェルはどうだろう?
【目次】
投稿元:
レビューを見る
本作はSFの巨匠、フィリップ・K・ディックの遺作。SFでは映像化作品も多く、圧倒的な知名度を誇る著者であるが、本作はSF要素がない所謂「一般小説」となる。「ヴァリス」、「聖なる侵入」と合わせて「ヴァリス3部作」とも言われているが、SF的要素のある前2作とは形を異にしている。
そして前2作と本作とでは語られる視点に大きな違いがある。3作とも共通のテーマとして「神秘体験」があるが、前2作は体験した者の視点で描かれるのに対して、本作は体験した者を客観的に観察する立場から描かれる。
本作では、「神秘体験」をした者(ティム、キルスティン)は悉く悲惨な末路(死)を辿っており、そこから救うことができなかった主人公(エンジェル)は自身の行動・判断を嘆く。そして彼らの死後、新たに「神秘体験」の当事者となったキルスティンの息子であるビル(ティムが転生して自身に宿っていると言う)を、今度こそは救済すると決意して物語を終える。
前2作と違い、本作は神秘体験・宗教・信仰という名の迷宮に陥った者を、他者が救い出すという希望が描かれているのが特徴的である。
「ヴァリス3部作」はディック自身の神秘体験をきっかけに著されたというが、元々彼の作品には「現実と虚構の曖昧さ」や「自己疑念」をテーマにしたものが多く、著者自身の永遠のテーマでもあったのではないかと思う。「神秘体験(=超自然的なもの。現実と虚構を曖昧にするもの。)」で心惑わされた者へ救済の手を差し伸べるラストを描いた本作が遺作というのは、どこか考えさせられるものがある。
投稿元:
レビューを見る
自由書房で購入
遠い未来・放射能に汚染された2020年の異世界を描く作家なんだが、ホンダシビック・Jレノン殺害を体験し時代を共有していたと気付かされる
投稿元:
レビューを見る
ヴァリス3部作の最終作。
ディックの遺作となった作品。
内容は普通の小説。
なので面白くない。
ディックの面白さはSF作家だからこそ。
普通の小説を書いても、出来はあまりよくないようである。
投稿元:
レビューを見る
〈ヴァリス〉三部作の第三弾。
とはいえ、前二作とのストーリー上のつながりはなく、共通するのはそのテーマ性。これまでに引きずってきた神学談義や神秘体験などのオカルト妄想に決着をつけた作品である。
小賢しいが常識的な感覚を持ったインテリ女性の一人称による語りが、「そっち系の話を信じる人」の実態を暴き出す。
形而上学的な論議など役に立たない、地に足をつけて現実を直視せよ、即物的、具体的な行動に幸せはある、というような話になってしまうが、ある意味で過去作を否定することで前に進もうとしたディック最晩年の決意が汲み取れる。
読み方によってはどっちにも解釈できるのでは?と思える書き方がされているのがタイトル。アレが実際どうなのかは、読者にゆだねられているのかもしれないが、三部作の最後にして、確かな前向きさを感じる結末なのが救いだ。
投稿元:
レビューを見る
「ティモシー・アーチャーの転生」
ディックのヴァリス3部作の最後。そしてディックの遺作とされている作品。
個人的にはすばらしい作品だと思う。模造品について書いてきたディックが、その一番深いところにたどりついた。
生きるための軸となっていたもの、たとえば信仰が揺さぶられたとき、人はどうなるのだろう。という問い。ヴァリス同様、大量の情報におぼれる人々。今回は情報が大量だからではなく、大量の情報の中から、アイデンティティを崩壊させる「真実」を発見してしまう。自分の存在が否定された人間の物語。
ディックはここまで辿りついたか、という感動を覚えた。純文学の作家を目指していて、でも金のためにSFを書かざるをえなかったディックが、最後は純文学を書いていた。しかもみんなが知っている彼のSF小説を深化させた形で。これがすばらしい。
この偽物だらけの世界で、ディックは本物の作家だったなあ。