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昭和10年、出羽三山の主峰・月山の麓を、急ぎ歩く女性がいた――実在した山形県の僻地の女医(1910年- 1962年)の生涯を描いた映画シナリオ本。
いまでいえば、医師免許取り立ての24歳のドクターが臨床研修も受けずにそのまま東北の山奥の無医村に単独で乗り込むような話。その24歳の実在したドクター志田周子の生涯が描かれている。
「歌声は、周子の耳にも届いていた。
いつか、運命を呪ってしまったこともあったけど、周子は今、幸せだった。
足りないもの、失ったものをあげれば、それこそきりがない。けれど、目の前には大切な仕事があり、守るべき人たちがいる。
――これ以上の幸せがあるだろうか。
子供たちの無垢な歌声は、清らかな血となり、周子の体を駆け巡る。全身が温かく解けていくようだった。」
(映画「いしゃ先生」あらすじ より)
昭和初期、仙境のナイチンゲールと呼ばれた一人の新米女医の物語。
昭和10年、出羽三山の主峰・月山の麓を、急ぎ歩く女性がいた。志田周子(ちかこ)、26歳。故郷の父から『ハナシタイコトアリ スグカエレ』という電報を受け取った周子は、取るものもとらず帰郷したのだ。山形の農村出身の彼女は、努力して東京女子医専(現・東京女子医大)に入学し、医者になったばかりだった。
風が鳴く峠のてっぺんに立つ、周子。眼下に懐かしい景色が広がった。8年ぶりの美しい故郷だった。久しぶりの実家。幼い弟たちは周子に甘え、母・せいが手料理でもてなす。温かい出迎えを周子は喜ぶが、父・荘次郎の様子がおかしい。大井沢村の村長だった荘次郎は、周子の了承も得ぬまま周子名義で診療所建設の予算を通し、すでに建設が始まっていたのだ。「頼む、周子。3年だけお前の人生を俺にくれ。その間に必ず代わりの医者を見つけるから」父に頭を下げられた周子は、怒ることはできなかった。無医村のこの村に医者を置きたいという父の願いは、誰よりも理解していたから。
まだまだ未熟な自分が一人で診療所の医師などつとまるのか……不安を抱えつつ、周子は3年間だけ頑張ってみようと心に決める。東京にいる想い人の存在を胸に秘めながら。
自身に降りかかる数々の試練に耐え、過酷な運命にも負けず、昭和37年にこの世を去るまで、たったひとりで村人の命を守った「いしゃ先生」の愛と勇気の物語。
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国民皆保険制度が確立される以前、山形県は出羽三山を望む無医村に生涯をかけた女医・志田周子さんの実話が基になっている。戦前・戦中・戦後という昭和の時代、そんな古い話ではない。映画の原作本。映画も是非観てみたい。
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誰もが医療を受けられるって、本当にありがたいことだ。当たり前だと思っているけど、今この時だって病院もなく医師もいない地球のどこかで誰かが苦しんでいるわけだし。
幸せってなんだろうってすごく考えさせられる一冊。自分が幸せだと思う時っていつだろう?わたしにとって?他の誰かにとって?もう最後のほうは切なくて悲しくでもああ幸せってこういうことだよなーなんて思って涙がぽろぽろ。。。
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故郷の無医村に戻ってきた女医の人生を描いた小説。実話を元にしているということもあって、女医というものが戦前の田舎でどう見られるか、一生懸命やってもなかなか受け入れられない現実、自分で選んだといっても捨てなければならなかった夢など、美化されるだけの話でないのはよかった。
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山形の無医村で奮闘する女医、志田周子。東京で医学を学んだ周子が、村長である父のたっての願いで山形に帰るところから物語は始まります。
昭和初期、まだ医療観念のない村では女医を簡単には受け入れてくれませんでした。どんなに頑張っても心を開かない村民と、早く東京に戻りたい周子の距離はなかなか縮まりません。歯がゆさ、苛立ち、胸の中にモヤモヤを抱えながらももがく志田家の人びと。
物語の中に悪人はいません。皆必死なのです。
だからこそ、胸を打つ。
実在の人物であるだけに、あとがきの後日談には更に泣かされました。
知らないだけで、こういう物語はどこにでもあるのでしょう。
美談ではなく、記録なのだと思います。
こういう人がいたからこそ、今がある。
私たちはこの精神を引き継いでいかなければならないのかも知れません。
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女医・志田周子氏の生涯を書いた作品。自ら行動を起こし、辛苦や後悔を乗り越えて成長していく、強い女性の話でした。
戦前~戦中の、それも農村では、女性医師は異様な存在であり、村の人々はなかなか受け入れることができなかったのだなぁ、と。村の人々が周子さんを忌み嫌う様子がリアルに表現されていたように思います。
私の読解力の問題かもしれませんが、少し文章が読みにくかったときがあったので、そこが少し残念だったかも…。
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女性の権利が確立していない戦前、しかも口さがない田舎…。どんなに辛い状況だったことでしょう。それでも村民を愛して生涯をかけていしゃ先生を貫く決心をした周子先生。本当にほんとうに素晴らしいと思います。
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時代的なものと、閉鎖的な田舎ということもあって、若い女医を認めようとしない村の人たち。騙すような形で娘を連れ戻した父親。(のちに反省するが)
なかなか読んでいてイライラというか…嫌な話だった。無知で、自分たちの価値観以外を認めようとせず、悪口や嫌がらせをする人達。どんなに景色がきれいでも、とてもこんなところで暮らしたくない。
最終的には、この先生はこの村で過ごせて良かったと思うのだが、それが唯一の救い。
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東京で医者としてのキャリアを積んでいる時に、あの父親の騙し打ちは無いわぁ。それも想い人がいる時に。
私には美談とは感じれなかったな。まぁ、時代というのもあったのかもですが。
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僻地医療に医療を受ける側にも理解がなかった時代に、その重い扉を開けた仙境のナイチンゲール志田周子医師の感動物語でした。