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紙の本
本人は山周って呼ばれるの嫌いだったそうな。
2016/05/27 20:05
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投稿者:朝に道を聞かば夕に死すとも。かなり。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
漱石や太宰は学生向きの小説家、そして山本周五郎は中年向けの小説家と言われています。え?言われてない?うちの近所の人たちはそう言ってるんですけどね。
一章につき一作品といった作品紹介です。気にいった章から読んでも差し支えない構成です。史跡を訪れながら福田さんの思いを綴る構成なのですが、これがめっぽう読みやすい。すいすい読めます。序でいきなり獅子文六の話始めますからね。買った本を間違えたかと思いましたよ。
山周作品は「赤ひげ」のように、みずみずしい登場人物の生命力と共に青臭いセリフがたまに出てきますが、それが上滑った言葉じゃない腹の底から出ているような言葉のように聞こえてくる不思議さがあります。
その土地の地に足の着いた人の描写がうまいからだと思います。山周作品ではいろんな世間を引きずりながら、そこから逃れられないけど懸命に生きる人たちが登場します。中には「なんだ?この人」っていうとんでもない人も出てきますが、それでも読んでいると「ま、こういう人がいるのもありかも」と思えてくるから不思議です。
ここが共感できるポイントなのでしょう。単に勧善懲悪でなく中年になると背負うものがたくさん出てきます。いろんな世間をまたいで、トレードオフな事を学びます。そして若い頃のような意思や根気のリソースが有限であることを身体知で認識します。はい、階段上るの最近しんどいです。
目立たないけど、辛抱とかを貫き「わかっておくれよ」と言わんばかりの誠実な態度を示す登場人物の豊富さが中年の共感を呼ぶのではないか?と思ったんです。
福田さんは「あとがき」でこう述べます。「読者は周五郎の小説の中に自分がよく知っている自分を見つける。また自分が知らなかった自分を見つける。それが明日を生きる希望となり、活力となる。周五郎の作品が今なお残っている理由はここにある。」
ふだん、おじさんが言葉にしにくい気持ちがここにはある。
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