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第20回島清恋愛文学賞受賞作。
淡々とした文体で描かれているが、登場人物同士の関係は何処か歪。その歪さが切なさの源になっているのだろうか。
正直、デビュー作の『魚神』を読んだ時は、作風がこういう方向性に変化するとはまったく予想していなかったので、新鮮だ。
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連作短編集。ひとりの男から始まり、男とつながりのある登場人物たちの視点に変わり物語が続いていく。
目に見えないかたちを追い求め、目に見えるかたちを遺したいと思う現代の恋愛を描く。
イナダがマジックで描いた黒い指輪、冗談の中に埋もれる真実。水草の「たとえ、明日世界が終わるとしても魚も人もきっと恋をするもの」という件が良かった。
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「からまる」がとても好きだったため、書店で平積みされてるのを見て購入。
水の中にいるような、ふわふわとした気分になる。心地よい。
繋がったり、離れたり、遺したり、遺せなかったり。変わっていくのは必然で、それを受け入れてなお繋がっていたいのかな、なんて。
千早茜さん、とても好きな作家さんになりました。
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恋愛がテーマの連作短編集だけど、どの作品も恋愛における甘さや浮き立つようなところがなく、ほろ苦く、孤独で、寒々とした印象が残る感じ。
サキちゃんと松本君の大学生コンビの話と最後の千影さんの話は微かに明るさが見えるかな?
まだ25歳なのに、急いで結婚した明美さん夫婦の話は、こういう夫婦は熟年離婚しそうだなあと読みながら思った。
文章が端正でとても好みだったので、この作者さんの話をもっと読んでみたくなった。
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島清恋愛文学賞受賞の恋愛連作短編集。決して、甘くはない。ほろ苦い恋愛小説なので、沈んだ時に読むのがぴったりな感じがした。甘々な恋愛小説もいいのだが、この作品のような恋愛小説も粋な感じがして非常に良い。装丁がアーティスティックでお気に入り。千早茜は苦手意識が強い作家で避けてきたのだが、これを機に再読したりしたいかもと思ったりしている。
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ぐっとくるものがない。
そう思っていた。
だが、アルコールを入れた瞬間に文章がするすると溶けるように入ってきた。
自身の無い嘘ばかりの生き方を持っている自分にとっては、正直になればなるほど訴えかける話かもしれない。
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<内容>
実体がないような男との、演技めいた快楽。結婚を控え”変化”を恐れる私に、男が遺したもの(「ほむら」)。
傷だらけの女友達が僕の家に住みついた。僕は他の男とは違う。彼女とは絶対に体の関係は持たない(「うろこ」)。
死んだ男を近くに感じる。彼はどれほどの孤独に蝕まれていたのだろう。そして、わたしは(「ねいろ」)。
昏い影の欠片が温かな光を放つ、島清恋愛文学賞受賞の恋愛連作短編集。
(カバーあらすじより引用)
<感想>
非常に個人的なことではあるが、28歳である今、周囲の結婚ラッシュの前半戦がほぼ終わりを迎えつつある。
結婚を控える友人たちの悩みに対し、そうなのかと相づちを打つなかで、僕の中にまで形づくられた「もやもや」。
ラベルをつけるのが難しい、それらのもやもやを整理してくれるような小説を探していたときに、本書と出会うことができた。
本書は主人公の異なる6つの短編集であるが、登場人物が立場を変えながらゆるやかに関連し、物語は連動している。
結婚を目前にして、出会った男と浮気を重ねてしまう女性を主人公にした『ほむら』。
子どもが生まれ、変わりゆく家庭に困惑する男が、突然自殺した上司について回想する『てがた』。
家庭や夫への不満を昇華しようとし、いつのまにか不倫にはまっていく女性を描く『ゆびわ』。
傷にすがり、生きがいを覚える少女とその友人のつかの間の同居生活を描いた『やけど』。
その少女に対する気持ちの変化を、少年の視点から鮮やかに描写した『うろこ』。
彼とのすれ違いの生活が、奔放な人々と出会い、自分の孤独と向き合う『ねいろ』。
本書の登場人物は、それぞれがそれぞれに寂しさ、満たされないむなしさのようなものを抱えている。
解説の中で「現代的な不全感」という言葉で表されるその「もやもや」を、彼らは心のままに軽々しく誰かにぶつけたりはしない。ぶつけることができないのかもしれない。
その理由は『ほむら』の中での「信じるものがないんじゃないかな。あなたも僕も」という台詞に集約されている気がする。
かたちにならない「不全感」が、人と関わり合うなかで、やんわりとかたちを成していく。
そして、かたちなきものがあったという痕跡だけは、それぞれの中に「あとかた」として確かに残っている。
その跡形を様々なモチーフを使って嫌みなく表現していく作者の力に驚いた。
これらの物語を恋愛小説と冠していいのかどうかはわからないが、現代をリアルに描いた小説として秀作だと思う。
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千早茜3冊目。アンソロジーとかでも見かけるからもっと読んでるつもりだったけど3冊目。千早さんの連作はわりと好きな感じ。ずっとざわざわしてて最後の話でなんとなくまとまる。でも大団円ではない。今回も盛大にからまってた。みんなもふだんからからまってんのかな。わたしはいつも積極的にからまりに行くけど、気がついたらつるんって追い出されているので、うらやましいです。
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誰かを愛していること、又は誰かに愛されていることで、自分の存在を確認できる。そんな男女の愛の影を切なく描く恋愛連作短編集。
松本と藤森の不器用な若者二人の物語が秀逸。ゴールデンタイムのドラマでは演出できない、一瞬の心の変化の描き方が素晴らしい。「今日、藤森が帰ってきたら笑おう、と思った。藤森の笑う顔が見たいから」…涙が出た。
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「ほむら」から連なる6つの短編。登場人物が緩やかに繋がり、それぞれの視点から物語が紡がれていく。
誰もが孤独で、愛を渇望し、それでいてそんな自分の気持ちにすら気づいていない。物わかり良く、相手のためと自分の気持ちに無意識に蓋をして・・・このザラリとしたほの昏い雰囲気が心地よい。
「ゆびわ」のラスト、遊びの関係のはずが、やはりどこまでも愛を求めていることに気づいた明美の涙がいい。
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「からまる」を読んでから気になっている作家さん。
短編の中で登場人物が重なり合っている構成が、わたし好み。
「からまる」もそうだけど、なんとなく登場人物が影というか闇というか…なんとも言い難いものを抱えていて、作品の中でそこが現れてくるたびに引き寄せられてしまう。…でも。こういう闇ってたぶん誰でも少しは抱えているもので、だからこそ引き寄せられてしまうのかもしれない。短編1ではいい顔してるサブ、でも2でその人に焦点当たると複雑な思考。人間臭さ、あるよね。
・かたちを、とどめる?壊す?作る?、いずれも変化すること。拒みつつ、どうにもできないことも理解する。
・しあわせのかたちにこだわって、結局何がしあわせなのか
・やけどとうろこは対。若いからこそ先が楽しみ。
【かたちなんて何回壊してもいい。膿んで腐って、それすらも乾いてしまって、諦めきった頃にあんがい欲しかったものなんてぽろりと転がっているのかもしれませんよ】
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読んでいくとすべての登場人物がどこかでつながっていて、読みながらそれに気づいていく
『よるのふくらみ』のような、語り部が変わっていくスタイルの話
私は最後の「ねいろ」で泣きました
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現代の恋愛模様を描いた連作短編集。
6つの短編が静かにしっとりと絡み繋がり、各々の登場人物の秘かな想いが徐々に明るみになっていく様が見事に描かれている。
千早さんと言えば、摩訶不思議な妖しい世界観の物語しか読んだことがなかったのでとても新鮮で、男女間の微妙な気持ちのズレ等の描写に説得力があり共感が持てた。
また各章のタイトルが全てひらがな3文字で統一され、その付け方が絶妙で的を得ているものだった。
人は「かたち」あるものをつい求めてしまい、それ故孤独感や虚しさが一層深まっていく。
それでも誰かを好きになるってやっぱり凄いことなんだよね。
ラストの彼の何気ない一言は彼女の頑なな心を溶かしてくれた気がする。
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千早茜さんはたまに読むと、がっつり引きずりこまれる作家さん。
今回は初めての短編連作集。
正直、なんだかこなれてしまった感が。
鶴の恩返し、よろしく、自ら血を流しながら描いている印象を勝手に抱いていたので。うん。
一番響いたのは「ねいろ」。
「ゆびわ」も終わりに近づくにつれハマった。
でもなんかもやもやと輪郭のない不穏な感じが、千早茜さんぽかったかも。
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ほむら・てがた・ゆびわ・やけど・うろこ・ねいろ
少しずつ絡まるそれぞれの物語が心地よい。
とてもよかった。