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新装版で再読。
本書と『新世界』は長野まゆみ作品の中でも人気作だと思うのだが、久しぶりに読むとやっぱり面白かった。
謎めいた世界が広がる中での少年たちの人間関係、終盤に向かうにつれて徐々に満ちてくる崩壊の気配、そしてラストシーンと、読み返すたびに何か新しい発見がある。
刊行当時も話題になった『暗号』は、著者が『あとがき』で『意味は無い』『解読する必要は無い』と名言したにも関わらず、知りたい読者が多数いたようだ。確かに最初に読んだときは気になったが、私は根気も語学力も無いので解くのは諦めたw(※余談だが、検索すると解いた人が回答を公開している。いい時代になったもんだ)
巻末の解説にも書かれていたが、本書はその後の『新世界』に繋がる多くのモチーフを内包している作品でもある。また、『新世界』の後は少し作風が変わったように感じられる。そう考えると、本書と『新世界』は一種のターニングポイントでもあるのかな、とも思う。個人的にはこの頃の作品が一番好きなので、またSFを書いてほしい。
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ジロがとても好き。
意地悪で高慢だけど、アナナスに対する分かりにくい優しさが見え隠れしていた。
だからこそ、二人が歩み寄れていたら……と思ってしまう。
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とにかく謎の多いお話で、何がどうなっているのか理解が追いついていません、、。
いくつかの観点から感想を書いたのですが、読後からしばらく時間が経っているため、まとまりのない文章になってしまいました。
生徒たちのコードを当てはめると下記のとおり。
シルル:ML-0021754、イーイー:ML-0021234、アナナス:MD-0057654、ジロ:MD-0057864
コードから推測するに、本来はML、MDどうしでセットにならないといけないのに、アナナスはそのルールを破ってイーイーとセットになっているようですね。
それは異常ではあるけれど、AVIANが計画して仕組んだ故意の異常ということのようです。
途中、イーイーがアナナスに「失うのなら体と心どちらがいいか?」を尋ねます。
精油を飲むと体は失われるわけですが、その際に浮いた心はセットであるどちらか一方(名称から考えるとレシピエントの方)に吸収されてしまうのかもしれません。
シルルとジロは正式なセットではない上に、こちらも正式なセットでないアナナスとイーイーがセットであるかのように振る舞っているため(多分«クロス»)、浮いた心が収まるべき体に収まらず、消滅してしまったのかもしれません。
最後、イーイーの体が失われたとき、彼らと同じようにならなかったのは、AVIANが彼らを«コンビネェション»=セットと同じようなもの見なしたため、イーイーの心がアナナスにうつり、消滅を免れたから、、、でしょうか。
ただし、セットとは違うので、アナナスの中で2人が共存できるのか、より優秀であるイーイーがアナナスを食ってしまうのかはわからない…とのことでしたが。
途中、とっても面白い記述があって、P407のイーイーの言葉ですが、
「形を遺すものがなければないほど、失くすものが少なければ少ないほど、始末がいいように思うだろう。制御しやすいし、目が届く。
エネルギイもいらない。(中略)今ではもう捨てるモノが見当たらない。でも捨てたい。捨てるという衝動を抑えられない。(以下略)」
「(略)身のまわりに捨てるモノがなくなったとき、最後に捨てるのはボディとスピリット、・・・・・どちらを先に手放すか、今は誰もがそれを悩んでる。」
という部分です。昨今の物を捨てるブーム、何もない部屋で自分の体一つで生活するというのは、わたしにはとても恐ろしいことのように思えます。
というのも、特にこの国は生活するうえで必要なほとんどのものを多くの人がすでに手に入れているにも関わらず、わたしたちはまだ何かを手に入れたくて、もうあとは自己承認欲求くらいしか残ってないからこうやって必死にSNSでアピールをしていると思うんです(笑)
しかし、自己承認欲求さえ満たしてしまい、もう他に何も手に入れるモノがなくなったとき、捨てたいという新たな欲求を見つけてしまうのかもしれません。
断捨離とかミニマリスとという言葉が流行するほど、「欲しい」でなく「捨てたい」という思いを満たすことで充実感を得られる、「何かを捨てる」ことが新たな欲求として理解され、浸透し始めていることを恐ろしく感じます。
あと、「世にも奇妙な物語」で以前見た作曲家の話も思い出しました。
作曲のために静かな環境を探し、防音室にこもった作曲家がまだ音が聞こえる、とペンを自分の心臓に刺して鼓動を止める、という話です。
(※ここからメモのようなものをまとめた内容になるので一層まとまりがなくなります・・)
アナナスが憧れている「アーチィの夏休み」はイーイー…の元になった人間のその記憶でしょうか。
彼は溺れた犬を救おうとして亡くなり、その人格を元にイーイーが形成された・・?だから自分が死ぬ原因となった犬をよく思っていない。
アナナスは特に最後の方はよく海のイメージを頭に描いていますが、それはイーイーが«クロス»をしてアナナスに自分が持つ記憶のイメージを流し込んでいるから?
イーイーがアナナスに記憶をもたらすことをよくないとしているAVIANはピパを用いて別の記憶を流し込んで矯正しようとするけれど、うまくいかない。
イーイーからもたらされる記憶と、Serviceで行われる矯正によってアナナスは記憶障害を起こしている・・・のかなあ?
AVIANは浄化の後、また生徒をつくり、同じことを繰り返すのでしょうね。けれど、AVIANの管理下を離脱したアナナスをAVIANは操ることができない。
浄化後のアナナスは浄化前のアナナスとはまた違うである上に、イーイーの心(というか人格というか‥)も付加されている。イーイーは消えてしまったので、浄化後の世界には存在しない。
こう考えると、髪をピンクに染めた少年(これは浄化後のアナナスと思います)が砂浜を歩いていく描写とイーイーの行動が一致するんですよね~。
この話が特にややこしいのが最後の「南国の島」という章ですが、数種類の世界線のようなものが入り混じっているように思えます。
ロケットでテレヴィジョン・シティを脱出しようとするアナナス、カナリアン・ヴュウで休暇を過ごしそのまま島に留まったアーチィ、浄化後のアナナスの3種類かと推測します。
テレヴィジョン・シティはAVIANというコンピュータが管理・作動しているわけですが、すべてはこのAVIAN内での話であり、生徒たち、家族についての概念、鐶の星、青い惑星に対するあこがれもすべては実体として存在しないのかもしれません。
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世界観を想像するのがとても楽しかった。
この何とも言えない読後感が長野さんならでは。
他では味わえません。
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長野まゆみさんの作品のなかで一番好きな作品です。
中学生ごろに長野まゆみさんの作品に出合って、この静謐でひんやりした世界観を堪能してきましたが、この作品は跳び抜けています。
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2016年9月30日読了。
ずっと読みたいと思っていて、新装版が出たと知ってそわそわしていたらお友だちがプレゼントしてくれました。
賛否は分かれるのかもしれないけれども、私にとっては素晴らしい物語でした・・・。
性別も時間も超越した美しいバランスの舞台設定と物語。
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新装合本版。読むのはかなり久しぶり。
乾いた白く銀色の世界、機能が停止していく恐怖。碧い惑星への憧れ。ラストの寂寥感。あんなに晴れやかな夏の描写なのに、これまでの積み重ねにより虚無に思える。何度読んでもイーイーのちょっと捻くれた献身さが良い。理解出来ない部分もあるが、そこをあれこれ考えるのも楽しみのひとつ。長野先生の初期の到達点的作品と言える。
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上下巻が1冊になった復刊も登録します。
内容は変わらずなので解説のみ読みました。
長野まゆみさんによると、「少年」とは「性別分化前の存在」だそうです。
初期の少年はこの感じがします。好きです。
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『千年王子』のほうを先に読んだことがあるけれど、似てるなぁというのが一番。上か下かも、ブルゥかレッドかも不確かな閉じられた世界での幻想。これが本当にわたしたちの未来になるのかなぁと感じさせてくれるような話。記憶を失ってダメなやつになってるアナナスを苛立ちながらも優しく見守ってくれるイーイーが好きです。
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長野まゆみをただのBL作家だと思うのは間違い。テレヴィジョン・シティに勝る耽美的SFファンタジーを知っていたら教えてほしい。
本家にあたる宮沢賢治の銀河鉄道の夜だろうか。
またこんな本に巡り会いたい。
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大好きな小泉悠氏がその世界観に圧倒されたと語っていた事から、何の予備知識もなく図書館で借りて読み始めた。
この作品を読むには私は歳をとりすぎていた感あり。小泉悠氏のお勧めとブクログの星の数、そして図書館の返却期限が無ければ数頁で投げ出してたと思う。とは言え後半は一気読み。
自分の存在に悩み、嫉妬し、自分を管理している何者かから逃れようともがいている様は、10代の頃に読んでいたら胸が苦しかっただろうと想像できる。
最後の手紙の日付から、ストーリーがループしているのがわかる。最初に戻って確認し始めたら止まらなくなってしまった。私自身が作品の中でループしている感覚に陥る。
よくわからない部分がたくさんある。
答え合わせがしたい。