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―みんないつでも前のめりで、五分先を生きている―
突然の、けれど必然だった恋の終わり。
改めて想う、人とのつながり。
雫石と楓の危ういような、落ち着いているような不可思議な関係が、あの独特の刹那さを生んでいるのだと感じた。
雫石の王国は、古き良きヨーロッパ風の、あの家だったのだろう。
二度と暮らすことのない、楓の家が。
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読み終わりました。
最後は、主人公が恋人との別れを乗り越え、
自分を見つめ直し、再生してく物語。
登場当初から、謎多き存在だった真一郎君でしたが、
ここにきて、このためにいたのかと思えました。
真一郎君が選んだ相手にはちょっと驚きましたが、
2人の結末は予想どおりの展開だといえましょうか。
一方、片岡さんが、どんどんイイ男になっていくのは、
全くもって予想外の展開でした。
楓と雫石という浮世離れした存在を
現実につなぎとめる大切な重しとしての存在。
マジで格好いいな、片岡さん。
ばなな女史の作品で、男性に惹かれることは
本当にめったにないのですが、片岡さんはイイ!
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再読。ハードカバーで読んだときの印象は、時を経ても変わらなかった。作者の、世の中に対する否定的な感情が、色濃く反映されすぎているのだと思う。山を降りた雫石がみたもの。かんじたこと。生まれたての子供のような無垢な魂。
大きな展開はなく、ただ観念的なモノローグが続くだけの物語には閉塞感を感じる。わたしは割と熱烈なばななファンだと思うけど、「王国」だけはどうしても肌馴染みが悪いのだ。苦手。
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物語としてはちょっともの足りない感じなんだけど、傷ついてるときに読むときっと癒されるんだろうなぁと思う。
今この傷から立ち直った状態で読んでしまったので、冷静にあのときのことを分析しながら読んでしまった。
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なんでもないところにすごくはっとするような文章が書いてあるのがこの人の作品の特徴なのかなー、と思う。
とても普通に日常のことを書いてる日記にしてもそんな感じだから、多分つくるもの全てが作品になってしまう人なのかも。
それってすごく楽しくて大変なことだよなー。
雫石というひとは間違いなくよしもとばななさんそのものだと思う。
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雫石の旅の終わり。新しく世界を開き、その内側を旅して、今回は、苦しみながら、閉じなければいけない世界は閉じて、研ぎ澄ませて選び抜いた世界をつむぐための準備。
見ないふりをすることもできるのに、不器用に傷つきながらも、自分の感覚を信じて潔く自分の周りを取捨選択していく。まっすぐ、正直に。ほんとは、そのほうが自然で、最終的には絶対楽なのに、それをできない人がどれだけ多いのか。
いろいろと、取捨選択したい気分になりました。いろいろ相当大変だけども。
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最近のよしもとばななの本、途中で読むのをやめてしまってた。
なんだか、いつも同じ話の感じがしたり、
スピリチュアルとか宗教とか、なじみでないものに入って行けなくて。
でもこの『王国』、まさにスピリチュアルなものが出てくるしいつもの調子なのだけど、要所要所はっとさせられる記述や展開があって、登場人物たちもなんだか愛すべき人たちで、すごく沁みた。
よしもとばななの小説は、現実的ではないようなきれいな台詞が並ぶので、少女マンガだとかリアルじゃないと思う人はいるかもしれないけど、それはちょっと違う。
多分彼女の小説は、伝えたい事や言いたい事を物語にのせて書いているので、それがリアルだとかそうじゃないとかいうのはちょっと視点がずれていて、その物語の奥にある厳しく大きいものを見ると、その深さにただただ感動する。
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王国シリーズの最終巻。
読み終わる頃、「この小説はなにをいいたかったんだろう」と
ふと思ってしまう。
登場人物は少なく、とても大切な人しかでてこない。
主人公が出会っていく、人生の大切な芯はなにか。
そこなのかな。
気持ちのよい仕事のありかた、やりかた、
今生の使命について。
ひとりの女性の生き方に沿って、
そのことを描いていたのかな・・・。
かな。。。でしか推し量れないけど
一気に読んだ。
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いやー。
久々にいいお話だった。
いのち、植物、生きること。
なんかそういうのを優しくやわらかく伝えてくれる。
こころが疲れている今、
すごく染みわたるような小説だった。
女でよかったなーとか思ったりして。
雫石ちゃんみたいに、前向きに、健康に、明るく、頼もしく生きていきたいと思った。
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久しぶりのばなな本だったが、昔のようにストーリーや情景にどっぷりひたる感じではなく
日々の暮らしに対する姿勢、こうあるべき生き方のようなものが伝わってきた。
でも押し付けがましい感じではなくて、いつもなんとなくしか感じていないので、
うっかり忘れてしまいそうだけど覚えておきたい教訓のようなもの。
こんなストイックにはやってられないよなぁと思いながらも
忘れないように傍線をひきたい気持ちになった。
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――私は知っている。ずっとずっといっしょにいて、という願いは幻に過ぎないと。
それでもあの夢の中で、私はほんとうに真一郎くんにそう言ってみたかった。別れのときも。でも、言えなかった。
――泣けるだけでいい、泣ける場所があるだけ。そう思った。
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最初から分かっていた。
不倫は長続きしないことを。
「いつかバレるかもしれない」
「我々はいけないことをしている」
というスリルから来る胸の高鳴りが
恋をしているときのそれと勘違いしているんだろうなー、と。
吊り橋現象ですよ。
雫石はあれで良かったのだと思う。
もちろん真一郎くんとのやりとりは好きだったけれど
すぐに高橋くんの家に越した真一郎くんは
死んだ友が残した庭の管理、という大義名分を使って
初恋の人の元に行ってしまった、ということへの
嫌悪感はぬぐいきれない。
雫石は私と同じ言葉で復活する。
「彼が私を愛していたことも、2人の思い出も色あせないし、誰もその思い出をいじることは出来ない」
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「ありがとう、すごいことに気づかせてくれてありがとう。あなたの創ったものは私を刺激し、確かに変えてくれました。生きているうちに会えなくてとても残念でした。」
その3でした。
あっという間に世界は終わってしまうけれど、読み終わった後の不思議な幸福感は、この最後の台詞を思った時の雫石に似ているんじゃないかなぁ。
とても、優しくて、暖かかった。
しかし、今回、雫石が味わったこと。
それは、私の思っていたところとも結構重なる部分が明確にあって、突かれているようで苦しかったのだ。
あーあ、あーあ、あーあ、、
なんでなんだろう?なんてモヤモヤとしてしまったりする部分に対して、大丈夫だよって、言ってもらえているような気もしたのでした。
【8/3読了・初読・個人蔵書】
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「理解できるけど、どうしてそんなひどいことが言えるのか、僕には理解できない。人が人として生きていくことを、侮辱しているように思える。そしてそれは僕にとって、君の最大の魅力でもあったんだ」
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意味がない存在でいると、頭の中の声が大きくなってくる。頭の中でいつもぶつぶつと考えていたあの機関を経たことで私は私が生きていることが、今、どういう流れの中にあるのかはっきりと理解していた。
みんないつでも前のめりで、5分先を生きている。みんな急いでいる。無駄にエネルギーを使っている。それはエネルギーはすぐに充電できるという幻想を持っているからだろう。
一人一人の人間がその人本来の姿に戻ったら、怖いくらいの力を発揮する。でもその力は解らずじまいで墓に行ってしまう可能性が高い。それでもいいと人々は思っているのだろう。
人の心は本当は無限に広がっていく限りないもので、風が吹くたびに、光の感じが変わるたびに世界は違う顔を永遠に見せ続けてくれる、だから果てしないものなのだ。
そのすべてが何気なく生かされるこの毎日が、いつまで続いていてもいい。それが私の人生の望みだ。
人生、そうそう何かあったりしませんよ。怖いのは自分の気持ちじゃない?