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SPEED スピード
著者 石丸元章 (著)
「初めてのスピード。初めてのシャブ。どうってことなかった。ただ、なんとなくウキウキしてるような、ただそれだけ。……なのに、気がつくともう朝の9時近くだった」。コカイン、ハ...
SPEED スピード
スピード (文春文庫)
商品説明
「初めてのスピード。初めてのシャブ。どうってことなかった。ただ、なんとなくウキウキしてるような、ただそれだけ。……なのに、気がつくともう朝の9時近くだった」。コカイン、ハシシ、スピード、LSD……。取材ライターの“オレ”が巻き込まれた、薬物使用者の壮絶でクレイジーな世界。ありとあらゆる薬物にはまり、幻覚、幻聴に苛まれ、精神と肉体を病み尽くした悪夢の4年間を、狂気と正気の間を往復しつつポップな文体で綴る。新感覚スラップスティック・ノンフィクション。
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紙の本
スピード
2001/05/30 02:05
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投稿者:伊藤竜太 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本の内容は音楽に関するものではないが、まったく無関係な事柄ではない。
ドラッグで音楽を作っていた時代は確かにあった。現実から離れて妄想の中に創造の源を求め、幻想と思想の狭間で排泄されるイマジネーションの泉によって、枯渇していた戦後の若者たちの魂は癒されるかと思われた。だがその後、現実逃避によって生み出されるものなど何もないと人々が気づき始めた瞬間に共同幻想は崩壊し、本来の創造の基盤を失いつつあった音楽そのものが失速して行ったように思う。
何のために音楽を創り、演奏し、聴くのか。癒されるためか、逃避するためか、踊るためか、狂うためか、見つめなおすためか。ドラッグに染まって行くミュージシャンは多いと言われる。
実際に私もそういうミュージシャンを何人かこの目で見て来た。繊細だから、傷つきやすいから仕方がないのか? ドラッグがどれだけ、どのように人を狂わせるのかをこの書物がじゅうぶんに語っている。音楽が魔をおびき寄せるのか? 音楽が人を狂わせるのか?
そうではない。人が人を、自分が自分を狂わせるのだ。
あなたが今聴いている音楽は素晴らしいですか? 聴いていて楽しいですか? きっと今は楽しいでしょう。でも、聴いて残るものはありますか? 癒されていますか? もし答えがNOならば、癒されぬ楽しみの末路を本書の中に学ぶべきでしょう。日本社会に蔓延している創造なき消費の罪から、足を洗うために。
(伊藤竜太・フリーライター)