紙の本
ルネサンス期に活躍した「前世」の「自分」を探す旅のルポルタージュ
2012/03/26 19:02
6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ろこのすけ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、前世が見えるという女性に取材で出会った作者が、イタリア、ポルトガルまで「前世」の「自分」を検証する旅に出るノンフィクション・ルポルタージュである。
疑り深く、うさんくさいものには距離を置き、自分の目で確かめたものしか信じないという作者に、
「京都に人の前世が見えるっていう女性がいるんです。その人に森下さんの前世を見てもらって、感想を体験記にまとめて欲しいんですよ」という依頼があった。
根も葉もない作り話を聞くのはわかっていると半信半疑で取材を引き受けたところから、ルポルタージュは始まる。
46歳の空間デザイナーをしている女性が人の前世が見えるという人だった。彼女は作者の前世を語りだした。
「あなた、外国人やったんやね。あなたの前世はルネサンス期に活躍したデジデリオという美貌の青年彫刻家です」
この言葉を検証すべくルネッサンスやフィレンツエに関する歴史の本を買いあさり、読み進めるうち、霊能者の言葉を裏付けるような内容に出くわす。しかし、デジデリオという美貌の彫刻家の人生そのものについてはわからず、作者はフィレンツエまで調べに行きたいと思うようになる。
作者は休暇を取ってイタリアまで出かけ、現地の日本人美術家の通訳と共にあちこちの図書館の古文書を調べ、教会へ出向き、デジデリオの出生の秘密を探り、作品と霊能者の言葉との真偽のほどを見極めようと必死になる。その日々はまるでミステリーを解き明かすようで、読者も一緒に謎解きの伴走者になっていく。
しかし、本書の優れた点は、作者が常に心に疑問符を抱いていて、科学的に理論的に検証しようとするスタンスを崩さない点である。
調べていくにつれ、次第に霊能者の言葉の裏付けがくっきりとし、前世探しの旅の先が急がれる。
前世というものに思いを馳せる一方、現実の一回限りの命が切なく美しくはかなく見えてくる。
旅の最後に「自分の墓の上に立った感想」を同行者から求められて、立ち尽くす作者。そこにこの「前世」への旅が作者にとってどういうものであったかのカギが隠されているようだ。
「前世」というミステリアスな冒険の旅へと読者をいざなった本書は、ルネッサンスとイタリアを舞台に魅力に満ちた内容で、スリリングでミステリータッチであるが、どこまでも真実のみのドキュメンタリーである。
検証を重ねれば重ねるほど霊能者の言葉と一致する。そのたびに作者は半分信じ、かつまた疑ってみる。読者と作者は一心同体のようになって進んでいくこのドキュメンタリーは「事実は小説よりも奇なり」の言葉以上の魅力に富んでいてぐいぐい読者を惹きこんでいく。緻密な調査と検証。正確な表現。行動力の素晴らしさに圧倒されるが、それだけこの旅が作者にとっても魅力に富んでいたものであることが想像できる。事実、最後にこの旅への結論付けを作者自身でしているが、それは読者のお楽しみにしておこう。
この作品はドラマ化され 女優の杏さんが主演。日本だけにとどまらず、世界の映画界へ発信する価値が十二分にある魅力に富んでいる。
もちろん、多くの読者にこのドキュメンタリーの魅力のとりこになっていただきたい。
紙の本
サクラメントの祭壇
2019/09/18 14:13
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:earosmith - この投稿者のレビュー一覧を見る
デジデリオの愛人も現在の日本に生まれ変わっているところを読んで、この本を読んだ私達も、デジデリオと同じ時代に生きていたのかもしれない、と思いました。サクラメントの祭壇の写真を見た時は、生命の不滅を本当に感じられて興奮しました。デジデリオのそのまた前世?の鑑真と一緒に来日したという中国人も気になります。例え何度生まれ変わったとしても、「人生は心からしたいと望むことをするためにある。」
紙の本
フィクションかノンフィクションか? 夜明け前の空の様な本
2008/02/09 15:32
6人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:朝光 - この投稿者のレビュー一覧を見る
女性誌の企画で、超能力を持った主婦に自分の前世
を見てもらった著者が、告知された前世の自分につい
てのヒントを調べてゆくルポルタージュ。
前世や超能力を信じない著者が、告知されたルネサン
ス時代の男デジデリオをイタリアまで調べにゆく。
調べれば調べるほど、その信憑性は高くなってゆく。
ヒントの一つ一つの裏を取ってゆくプロセスが淡々と旅行
記録のように記されてゆく。
ルネサンス時代のフィレレンツェの様子もだんだんと浮か
び上がってくる。
もしかしたら、これは実話? 逆に もし創作だとしたら
本当に良くできた物語。
幽玄の書という印象を受けました。 夜明け前の青黒い
中にオレンジが混ざり始めた空みたい。
「身近な不思議」を読んでみたい人にお薦めです。
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人の前世が見えるという清水さんという女性から「あなたの前世はルネサンス期に生きた、デジデリオというイタリアの彫刻家だ」と言われた著者。まさか!と思いつつも、そのあまりに細部に渡る話に、確かめずにはいられずフィレンツェへ旅立つという、とてもわくわくするお話です。調べてみれば見るほど、清水さんのお話は信憑性があり、微妙にずれたりしているところもまた妙に信憑性がある感じがして興味津々。私もぜひ清水さんに前世をみてもらいたいと思うのです。
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前世を言い当てられるという女性に「あなたはイタリア、ルネサンス期に活躍し夭折した美貌の彫刻家デジデリオの生まれ変わりだ」と伝えられたルポ作家が、その真偽を確認しようと徹底的に調べ上げ、ついには、イタリア、ポルトガルまで飛んで その謎に迫るという内容の本だ。日本人が自分の前世についてこれほど徹底的に追求したノンフィクションがあったのとは迂闊にも知らなかった。読み出すと結局最後まで止まらなくなる。わくわくするような謎解きの面白さだ。私も、他の仕事そ っちのけで一気に読んだ。
京都在住の霊能者である主婦が語った著者・森下氏の前世、つまりデジデリオの人生は、その生まれ、同性愛者としての数奇な人生、残された作品の秘密にいたる まで細部にわたり、専門的な知識も欧米語の知識もない主婦が文献で調べあげられるような内容ではない。日本語の文献で必死になって調べても、分かるのはせいぜ い、百科事典的な生涯の記述などごく限られた情報でしかない。欧米の文献でも事情はそれほど変らないらしい。
しかし、イタリアに飛んだ森下氏が、徹底的に調べれば調べるほど、京都の女性 が見たデジデリオの人生のビジョンの正確さが裏付けられていく。そのスリリング な調査のプロセスにこの作品の面白さがある。一例を挙げると、通説では、デジデ リオの友人ロッセリーノの作とされる彫刻があった。実はその顔の部分がデジデリオの作であった決定的な証拠が、偶然に見つけたポルトガル語の文献から確かめられる。京都の女性が語っていたことが正しかったのだ。こうしたいくつかの例から、 京都の女性が見たビジョンはかなり信憑性があると、誰もが思う。
一方で読後に若干の物足りなさを感じる。確かに京都の女性が見たビジョンは、 現地でかなり確かめられていく。しかし、それが森下氏の前世だと主張しうる根拠 は何もない。森下氏が愛用するベネチアグラスの小さなガラス瓶を手に持ちながら 京都の女性が見たのは、たまたま浮かんできたデジデリオの生涯であり、森下氏の人生とは何も関係ないかも知れない。それは、ただ京都の女性の透視力が確認されたに過ぎないのではないか。そういわれても反論できない。森下氏とデジデリオに 説得力のある共通点があるわけでもなく、デジデリオゆかりの場所で、彼女が何か強烈なインパクトを受けるわけでもないのだ。
それにしても、これまで精神世界とは無縁の仕事をしてきたルポルタージュ作家が、懐疑を捨てきれぬままに霊能者の見たビジョンにしたがって徹底的に調べ上げ、 ついに通説を超えたデジデリオの真実に迫ったという事実は、高く評価されていい。
この作品は、ぜひともその続編が書かれるべきだと思った。霊能者の女性によれ ば、デジデリオと変らぬ愛を誓いあった同性愛の相手が、今日本に生まれ変わって、 彼女と同じライターの仕事をしているという。その人物については、もちろん何も 手がかりがないのだが、もしその人物との出会いが語られるならば、この作品は見事に完結するだろう。デジデリオを調査する過程で起こった数々のシンクロニシテ ィを思えば、そういう結末があっても不思議ではない。
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もしも 輪廻転生が証明されたら すごいと思いませんか?
⇒ http://resonohondana.seesaa.net/article/224196872.html
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地理、歴史、ちょっとミステリー、スピリチュアル、色んな要素がからまってるわりに、ご本人が基本「前世とか信じない」という態度を貫いているのでどっぷりな感じではなく読みやすかった。
わたしも前世を見てもらったことがあるので、自分の前世が個人を特定できるレベルまでわかったら…と思い読みながらドキドキ。
ヨーロッパに行きたくなりました。
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BSジャパンでやっていた「フィレンツェラビリンス」の原作。当たり前だがドラマより情報も多く、丁寧に描かれている。何より、デジデリオという日本ではメジャーでないアーティストを知ることができ、満足。でも、真実は分からない。
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BSのドラマで「フィレンツェ・ラビリンス」というのをやっていまして。イタリアの町並みと建造物の美しさ、ストーリーの完成度に思わず「原作が読みたい!」と衝動買い。
ドラマのほうが確かにまとまりはありますが、描かれなかった部分にも面白いお話が沢山あってとても面白かったです。
ただ、一部同性愛表現があるのでいやな人はご注意です。
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著者はフリーのルポライター。女性だが、占いのような非科学的なものは全く信じない性格。ところが、あるとき行きがかりで占い師の取材をすることになり、そこで「あなたの前世は中世ルネサンスの彫刻家デジデリオ」と告げられる。聞いたこともない名前だったが、その話があまりにも微細に渡っていたので調べてみると、確かに史実と一致した。しかし、日本語の文献だけでは載っていない部分もあり、にわか仕込みにしては手が込みすぎている…気になり出して調査を続けるうち、ついに著者は仕事を投げ出してイタリアまで足を運んでしまう。
「前世」というスピリチュアルな内容だが、いわゆる「スピ本」ではなく、普通の視点で書かれている。それだけに神秘性がいっそう際立ち、ミステリアスな印象を与える。「そんなことがあるものだろうか」と思っているうちに、ぐいぐい引き込まれてしまう。なまじ前世というものを信じている人より、著者同様信じていない人の方が楽しめるかもしれない。
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デジデリオって誰?
雑誌の取材で、眉唾物の企画と思いながらも人の前世が見える人のインタビューを行い、自分の前世がイタリアルネサンス期に生きた夭折の彫刻家デジデリオであるといわれてしまった著者。
最初はペテンと決めつけていた前世の話も、調べていけばのめりこみ、はてはイタリアはフィレンツェに行っての大捜査。疑い100%で始めていてそこまでやるかという徹底ぶり。そうして得られたものはなんだったのか。
著者は最初から最後まで、基本「前世?そんなうさん臭そうなものはちょっと……」というスタンスを貫くが、それでも眼前に現れる奇妙な符合に心が揺れる。そんなところが実にプレーンで、そしてリアルだった。
いやもう、面白くって一気読み。
でもこの本のジャンルってなんでしょうね。
歴史?
ミステリ-?
僕はあえてノンフィクションに分類してみました。
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ただの物語として読んだとしても、ノンフィクションとして読んだとしても
面白い・・・というか、混同してしまう。
前世をたどる旅してみたい。
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2012.9.2 読了。読み始めておもしろくて一日で読み終えてしまった。。。
ジェットコースターのよう。
謎がとけていくというか、符合があうことに、こわさも感じるような。。。
杏のふむふむ、を読んで、読みたくなった本。最後のメッセージの、人生はおもったより長くなくて、自分のやりたいことをやらなきゃというところが残った。
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前世など信じない私がこの本を読もうと思ったのは、この作者自身も前世というものに懐疑的だったから。読み進めるうちに次々と歴史的な新事実が明るみになり、ドキドキしながらあっという間に読了。オススメです。
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自分の前世を探して旅に出る経験をした人なんて滅多にいないと思う。とても興味深い内容だった。前世を追い求めた結果、最後の言葉も印象的だった。
「人間はどこから来て、やがてどこへ帰るのかわからない。けれど、どこから来て、どこへ帰るにしても、人生は心からしたいと望むことをするためにある」「人生に、遠回りしている時間はない」「心から望むものに向かって、真っ直ぐに来い」
果たして、私が望むものとは何なのか…