紙の本
途切れることのない情熱
2020/07/20 09:02
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
老舗の和菓子屋さんを切り盛りする、店主の努力に頭が下がります。日が昇る前から行列に並んででも、食べる価値はありそうです。
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老舗経営者の処女作を読む時は、いつも心の中に葛藤が生じます。
ひとつは、経営者に対する「書いて欲しくなかった」という感情、
そしてもうひとつは、編集者に対する「よくぞ書かせた」という感情。
それが、思い入れのある老舗であれば、なおさらこの葛藤は強くな
ってしまうのです。
土井が「小ざさ」を知ったのは、阿佐ヶ谷に住み、吉祥寺の事務所
に通っていた貧乏ライター時代でした。
師匠が、「飲んだついでに」といって朝方4時から並び、「小ざさ」
の羊羹を買ってきたのです。
その上品な甘さは、今でも覚えていますが、味以上に驚いたのは、
朝4時から並んで手に入れたい人が大勢いる、という事実でした。
それ以来、「小ざさ」は土井にとって「伝説の店」なわけで、その
「小ざさ」の社長が本を書いたというのは、本当に驚きでした。
たった1坪で年商3億、商品は羊羹ともなかの2品だけ。
40年以上行列がとぎれない秘密はどこにあるのか、もちろん読まず
にはいられない内容です。
美味しい羊羹を作るための「四つの交点」の話、父から娘へ引き継
がれたビジネスの教訓、そして仕事人としての心構え…。
やや話が「小ざさ」に寄ってしまっているのが玉に瑕ですが、商売
人の魂を感じる、心のこもった文章だと思います。
個人的に印象に残ったのは、「温度や湿度による微妙な変化を感じ
取」るという、写真と羊羹作りの共通点。
「美しい紫の一瞬の輝きが見たい」がために羊羹作りに励む著者の、
魂の原点を見た気がしました。
まさに一流の仕事には「偶然による奇跡」が宿っている。そんなこ
とを感じた一冊でした。
羊羹をつくり続けていると、感動的な喜びを味わえる瞬間がありま
す。炭火にかけた銅鍋で羊羹を練っているときに、ほんの一瞬、餡
が紫色に輝くのです。透明感のある、それはそれは美しい輝きで、
小豆の“声”のようにも感じられます
いざ羊羹を練るときは、私ひとりきりの世界。誰にも邪魔されずに、
羊羹と向き合う瞬間です。唯一、無心になれる時間。いろいろな思
いを引きずっていては、絶対にうまくはいきません
結局、私は羊羹をつくるのが心底好きなのです
「問屋は育てるもの」が父の口癖でした
父は「もなかの栞」にこう書いています。《原料本来の特色を生か
し、砂糖の甘味をならす、言い方をかえますと、丸い味とすること
が、和生菓子を創る上の、究極の奥義かと信じます》
並んでいるお客様が自然に仲良くなり、いつの間にか「小ざさ会」
というグループができました。お客様同士で一緒に温泉や旅行に行
かれるなど、楽しく活動されていて、ときどき「この間、どこそこ
に行ってきたのよ」というお話を聞かせていただきました
お客様とは節度をもって接しなければいけない。馴れ馴れしくして
はいけない。だから、あまりお��様に近づきすぎてはいけない、と
いうのが父の教えでした
小ざさの羊羹がほしいときは、家族でも従業員でも、ほかのお客様
と一緒に行列に並ぶのがルールです
「バケツは、水を汲んで運ぶだけだと思ってはいけない。洗い桶に
もなれば、土を入れると植木鉢にもなる。バケツの底に小さな穴を
いっぱい開けて、高いところに吊るせばシャワーにもなる」(中略)
その後も父はことあるごとに、「そのものを、そのものと見るな」
と教えてくれました
貧乏しているときにこそ、人の気持ちがわかる
まだ子どもだったナルミ屋時代、父から声をかけるタイミングを教
わりました。店に入ろうかどうしようかと迷っているお客様に、や
たらと声をかけてはいけない。「爪先がちょっと店のほうに向いた
瞬間に声をかけろ」
「一家を背負え」「背負えば背負うだけ力が出てくるんだから、背
負え」小ざさ創業の頃から、父は私にだけこう何度も言っていました
出来があまりよくないときには、「全部捨ててしまいなさい」と言
って、捨てたこともありました。「それがお客様の信頼を勝ち取り、
小ざさの伝統をつくっていくために最も大切なんだ」というのが父
の信念でした
「家の者は誰よりも働くように」
◆目次◆
プロローグ 40年以上、早朝からできる行列の裏側で
第一章 2品だけの究極の味を求めて
第二章 たった1坪の店で
第三章 私の仕事観を形づくった出来事
第四章 屋台からの「小ざさ」創業
第五章 父から娘へ
第六章 障がいのある子どもたちと共に
第七章 次代に伝える
エピローグ 125歳まで現役で──
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40年以上も行列が途切れないという、吉祥寺の和菓子屋「小ざさ」の女社長・稲垣篤子さんによる会社と自身の歴史と和菓子づくりの精髄を語った一冊。商品は羊羹ともなかという2種類のみ。特に羊羹の餡にかけるこだわりは半端ではない。また小ざさの創業者である父親のエピソードも昔の職人気質がよく現れている。稲垣社長もその父の背中をみて育ったというのがよくわかる。「日本でいちばん大切にしたい会社」の坂本光司先生も絶賛されているというけど、彼女の経営方針を読んでいるとそれも納得。ぜひ次世代へつなげていって欲しい会社。
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小規模企業のあるべき姿のひとつが、具体例を通して述べられています。
ただ、小ざさの場合は、伝統とか歴史とかがあることと高度経済成長を背景としていることが機会として働いていることは、割り引かなければならないかもしれません。
とはいえ、日本の伝統的な商いの哲学を学ぶにはとても良い本だと思います。
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おざさ店長さんの話
この人武蔵境在住らしい。
羊羹を練っていると、紫色に輝く瞬間があるらしい。
小笹ようかんが欲しくなった。
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前向きに頑張る仕事の姿勢には感心させられたが、類似本は結構あるので心を動かされるほどではなかった。
マーケティングの視点からも得るものはなかった。そこを期待して読んだのだが。
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こういう方を芯の通った、ブレない人、と言うんだろうなと思った。
どうかお元気で、本当に125歳までお勤めできますように。
出来るならそれまでに一度、最中だけでも頂けたら幸いです。
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すばらしい経営者だと思います。
昔ながらの仕事観を持ち、78歳で今なお現役で仕事をされています。
商品は、羊羹(ようかん)1本580円と、もなか 1個54円の2種類のみ
40年以上早朝から、行列が途切れない店、
お店は、1坪、年商3億
是非読んでみてください。
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あんの練り方の話が、詳しく話されている部分が興味深かったです。(自分が学んでいるマクロビとも共通点があったりして)
かなり細く書いていただいているので お店の風景が目に見えるようです。
こんなお店の残る吉祥寺がうらやましく思いました。
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吉祥寺にある和菓子屋さん、小ざさの社長が書いたビジネス書です。78歳の女社長の生き方と商売に対する厳しい考えは読んで心にしみました。「まじめに、いいものを安く売ること」を親子二代で守り続けた年商3億の会社のビジネスの秘密が書かれています。
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~抜粋~
まだ子供だったナルミ屋時代、父 から声をかけるタイミングを教わりました。
店に入ろうかどうしようかと迷っ ているお客様にやたらと声をかけ てはいけない。
「爪先がちょっと店の方に向いた 瞬間に声をかけろ」
また、父は常々こう言っていました。
「お客様がいなくても、ただ突っ立って いたら店の空気が澱む。
お掃除をしたり、ちょっと品物を直した り、なにかしらしていなきゃならない」
目には見えませんが、空気が澱んでいる ところにはお客様は入っていきにくいも のです。
ですから、人が動いてウィンドウを拭い たり、品物を直したりと、
空気を動かさ ないといけない。
お客様が誰もいなくても、店員がせっせ と何かをしている店は活気が失われない ものです。
「一家を背負え」
「背負えば背負うだけ力が出てくるんだ から、背負え」
小ざさ創業の頃から、父は私にだけこう 何度も言っていました。
私は障害のある子たちと一緒に仕事をし てきたことで、待つことの大切さを学ん だように思います。
普通の人よりも時間はかかりますが、どんな風にたどり着くかの違いだけで、た どり着く場所は同じなのです。
「少しずつ少しずつ前に出ていけば、い つか一番いいところにいける。
だから急がなくていい。
ただ、前に出ることだけはわすれずに。」
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御歳80歳になられる稲垣社長。 そして社長が丹精込めて「練った」羊羹アンド最中の、たった二品目で行列が切れない和菓子店「小ざさ」の軌跡。
稲垣社長も凄いが、預金が封鎖された敗戦下の日本に、台湾より帰国し、すぐにキャラメルの製造、そして小ざさを立ち上げた親父さんもすごい。この親父さんの商売にまつわる教え「箱はキチンと並べすぎると取っつきにくいから少しズラして陳列する」や「店は雨が入っても、ちょっと下がって入店できるように設える」あるいは「お客さんのつま先がちょっとお店のほうを向いたときに声をかける」は、お菓子に人が求める心を知りぬいた達人の至言ではないでしょうか。
そして、親父さんを継ぐ二代目として、徳川秀忠の研究にまで着手した稲垣社長が切り盛りする、小ざさ丸の繁栄を素直に祈ってしまう、否、甘いものは苦手だが、一度は小ざささんの羊羹や最中をいただいてみたい!そんな風にさわやかに思わせてくれる一冊でした。
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お客様がいなくても、ただつったっていたら店の空気が澱む 品質でお客様にきていただくようにしなければいけない 少しずつ少しずつ前に行けば、いつか一番いいところに行ける 。だから、急がなくていい
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高校卒業後まもなく、
一家16人の生活を1人で背負ってお店に立ち続けた女性の実話。
決して弱音を吐かない・泣かないと覚悟した芯の強さ、
1つ1つの和菓子に妥協しない職人魂、
お客様に真心をこめて売り続ける愛情、
社員を対等に扱い育てる優しさ・・・
彼女を見ていると、
仕事とは本当に厳しいもので、
けれども決して弱音なんて吐いていられないいもので、
そこから得られるかけがえのないものがあることに気づかされます。
「背負うものがあるほど人は強くなる」
「親が一生懸命生きている、その姿を子に見せれば大丈夫」
・・・私も、弱音なんか吐いていられないですね。
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和菓子屋だと思ってあなどることなかれ、という印象でした。仕事や経営に関する大切なことがたくさん書かれていた、良い本だと思います。経営に関わる方には特におすすめです。