Todosloさんのレビュー一覧
投稿者:Todoslo
2015/09/24 04:19
想像力の旅へ
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アラビア半島の遊牧民ベドウィンは全財産を持って砂漠を移動する。一度中継地点を出発すると次のオアシスにたどり着くまで休むことができない。一夜だけのつもりでシャハラザードの話を聞いたシャハリヤールは話の続きが気になって、妻を斬ることをためらう。本書を一度開くと全巻読破するまで止まらなくなるだろう。マルドリュス版の千夜一夜物語は少し堅苦しい。やはりバートン版は自由奔放で読者の空想を掻き立ててくれる。
紙の本14歳からわかる生命倫理
2015/07/22 11:51
命までもが格差社会
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
この本の著者は1975年生まれだ。1990年代就職氷河期に社会にでていったいわゆる「ロストジェネレーション」にあたる。新しい価値観や技術がひろがっていくなかで、取り残されたしまった人たちもいるはず。この本のなかには経済的な格差だけではなく、生命の格差にまで苦しめられる人たちが登場する。そんな弱者に光を当てようとすることは、決して無駄ではないだろう。
電子書籍JR上野駅公園口
2020/05/02 23:21
ふたつのオリンピックに挟まれた男
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1964年の東京オリンピック開催時に肉体労働に励んだカズは、戦後の日本そのものです。2020年のオリンピックを見ることなく、上野の人混みに消えていった後ろ姿も忘れられません。
紙の本タロットの宇宙
2017/05/08 05:21
タロットが導く
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
19世紀のマルセイユにさかのぼるほどのタロットカードの奥深さを感じた。1枚のカードから鬼才たちが巡り合うところが良かった。
2016/12/20 10:59
子鬼の子供
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スイスのチューリヒを牛耳っていた投資家の息子が、投資のリスクについて語るところは説得力がある。儲けのために危険を顧みないところは、父親譲りかもしれない。
紙の本服従
2015/11/25 04:24
さらに優れた小説
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本書が発表された2015年1月17日に、シャルリー・エブドが襲撃されたのは運命的だ。優れた小説は今現在の空気を感じて描かれる。さらに優れた小説はこれからの出来事を鋭い予感で伝える。イスラムに心をとらわれた世界を映し出した本書が、後者に当てはまるのは間違いないだろう。
紙の本心は孤独な狩人
2020/04/21 20:21
みんな寂しがりや
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聴覚を失った青年と、彼に魅せられた人たちが織り成す人間模様が美しいです。つかの間の交流の終わりと共に、離れ離れになっていくラストに涙してしまいました。
紙の本一九八四年 新訳版
2017/10/05 05:41
最悪の未来を描くことで
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現実の世界が抱えている矛盾点や問題が浮かび上がってきました。時代の流れが逆行するような今だからこそ、読まれるべき1冊のはずです。
紙の本パレード
2017/08/25 15:07
行定勲監督映画化原作
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平凡なルームシェアに隠されている思わぬ展開には驚かされました。それぞれの若者たちをスケッチスタイルで描いているところが良かったです。
紙の本唐獅子株式会社
2017/08/15 06:57
帰ってきた組員
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「唐獅子株式会社」と「唐獅子源氏物語」のふたつの本を一度に読むことができるのが嬉しいです。1970年代から80年代にかけての流行が思い浮かんできました。
2017/04/26 04:19
ねこの波間に
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可愛らしいねこの写真が満載されている。文章から貨物輸送船の内部の様子まで伝わってくるところが良かった。
2015/10/07 03:54
失ったものと手に入れたもの
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ユダヤ人の少年フリードリヒとドイツ人の「ぼく」は立場を超えて友情を深めていく。しかしナチスによって支配された時代を下で徐々に引き裂かれてしまう。著者自身も第2次大戦によって左腕をなくした。たくさんの大切なものを失うことによって、初めて本書のようなやさしさ溢れる1冊を残すことができたのではないだろうか。
紙の本百年の孤独
2015/07/24 03:44
20世紀を代表する1冊
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20世紀ラテンアメリカ諸国の小説家がノーベル賞を立て続けに受賞したことにより、マジックリアリズムが大きな注目を集めた。現実と虚構が入り混じった世界には、シュールレアリスムにでてくる精神分析はなく、民間伝承や神話に深く引き込まれていく。その代表作ともいえるのが本書ではないだろうか。固有名詞の乱出や時間の流れの攪乱などに苦しめられるかもしれない。物語のすべてを否定するラストはぜひ多くの人に読んでほしい。
紙の本恋する原発
2012/02/08 00:43
遠い震災文学
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高橋源一郎は1988年、「優雅で感傷的な日本野球」で三島由紀夫賞を受賞している。この小説は野球とは関係ないことを書いていくことで、野球を書くという特異な小説だ。
今回のこの小説も、東日本大震災とまったくかけ離れたAV制作の場面が、延々と語られる。あまりに不謹慎と、感じる読者もいるかもしれない。しかし、3.11直後の、過剰な自粛・節電・「絆」の連呼は、表現の自由を侵害してしまうこともあるのだろう。物語終盤に、突如スーザン・ソンタグ(9.11直後に過剰な愛国心に反対した)がでてくるのは、これからの文学に対する作者の危機感の表れかもしれない。