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揚羽の蝶 半次捕物控(上)
著者 佐藤雅美 (著)
大店の娘にしびれ薬を飲ませ、貞操を奪った「いが茄子男」を見つけ出せ――御奉行からの密命を受けた岡っ引半次は、岡山松平様お付きの足軽が犯人らしいとの情報から参勤交代に加わっ...
揚羽の蝶 半次捕物控(上)
揚羽の蝶 上 (講談社文庫 半次捕物控)
商品説明
大店の娘にしびれ薬を飲ませ、貞操を奪った「いが茄子男」を見つけ出せ――御奉行からの密命を受けた岡っ引半次は、岡山松平様お付きの足軽が犯人らしいとの情報から参勤交代に加わって、東海道を抜け備前岡山まで殿の荷を担ぐことに。だが出発早々、殿の毒味方が毒殺され、半次に嫌疑が? 傑作時代長編!
目次
- 第一章 密命
- 第二章 お国入り
- 第三章 雨の茅葺き小屋
- 第四章 満天の星
- 第五章 夕闇の人影
- 第六章 川面に浮かぶ縄
- 第七章 掃部助の高笑い
著者紹介
佐藤雅美 (著)
- 略歴
- 昭和16年兵庫県生まれ。早稲田大学法学部卒。「大君の通貨」で新田次郎文学賞、「恵比寿屋喜兵衛手控え」で直木賞を受賞。ほかの著書に「わけあり師匠事の?末」など。
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紙の本
「丸に抱き茗荷」から「揚羽の蝶」に
2011/07/05 14:50
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:saihikarunogo - この投稿者のレビュー一覧を見る
「朝鮮朝顔、または、ダチュラ、曼荼羅華」というと、私としては、京極夏彦の『姑獲鳥の夏』でおなじみだったが、「いが茄子」という呼び方は、この佐藤雅美の『揚羽の蝶』で初めて知った。インターネットで調べてみると、現代でも各地で牛蒡とまちがえて中毒を起こす事故が起こっているらしい。
そのいが茄子を使って人をしびれさせ、強盗を働く事件が起こった。そのうえ、娘さんに対して性犯罪まで働いたという。その犯人をつかまえろ、というだけなら、普通の捕物帳の話ですんだのだが……。
なんで、その犯人を見つけるために、江戸から備前岡山まで、大名行列に人足として雇われてついていかなければいけないんだ?犯人は人足のなかにまぎれこんでいるからというが、そもそも岡っ引きは江戸の外では犯罪者を検挙することが許されていないのに。一応、それらしい理由も付けられてはいるが。
それにしてもなぜその命令が半次に下されたのだ?
『半次捕物控』の前作『影帳』で、半次は両親が誰かを知らず、おばという、御殿女中らしい人が、大金を遺してくれたという話が載っていた。そのとき、そのおばが遺してくれた袱紗包みは「丸に抱き茗荷」の紋だと書いてあった。
今作『揚羽の蝶』では、そのおばは、揚羽の蝶の紋のお屋敷に奉公していた、となっている。揚羽の蝶の紋は、備前岡山と鳥取因幡の両池田家の紋だった。(……まあ、都合だね)
備前岡山池田家の一心斎というお殿様のエピソードは、佐藤雅美の作品によく登場する。『物書き同心居眠り紋蔵』シリーズの『ちよの負けん気、実の父』には、ちよの友達のみわが赤ん坊のとき池田家の前に捨てられていた、という話がある。さてこちら、『半次捕物控』の『揚羽の蝶』では、主人公はひょっとして一心斎の息子か?!すわ、お家騒動の渦中の人物になるのか?!と私は色めきたったのだが。
だけど、半次自身は、自分の父親がどうやら先代のお殿様らしいとわかっても興味を示さないのはまだいいとして、自分の母親が誰かも確かめようとしないなんて、拍子抜け。いが茄子強盗を追いかけていたはずなのにお家騒動に巻き込まれて何度も命を狙われて、半次の運命やいかに、と手に汗を握り、しかも美女に命を救われたり、その美女が実は池田家の若手の鑓手のハンサムな武家と恋人同士で、その若手の鑓手のハンサムな武家もお家騒動に関わりがあったりと、なかなか、おもしろいのだが。
私としては、半次の出生の秘密を知っている誰かが陰謀を企んで彼を岡山へ送ったのに違いない、と思って真相が明らかにされるのをうずうずして待っていたら、なんだか半次が最初に捜査員として指名されたのはあくまでも偶然だったみたいで……そんなことってあるのか?!