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電子書籍

半次捕物控

著者 佐藤雅美

相模屋の店先で雪駄が一足盗まれた。上野山下の助五郎親分は、懸命に追い、下手人・仙八を挙げた。そこで相模屋出入りの岡っ引・判次は、穏便に赦免してもらおうと、親分に頼みこんだ。ところが、うまくいかない。単純に見えた事件は意外な展開をみせはじめ、やがて大きな謎が……。直木賞作家の傑作捕物帳。

影帳 半次捕物控

税込 586 5pt

影帳 半次捕物控

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みんなの評価4.3

評価内訳

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紙の本髻塚不首尾一件始末

2011/07/10 13:24

蟋蟀小三郎と風鈴狂四郎

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:saihikarunogo - この投稿者のレビュー一覧を見る

蟋蟀小三郎の好敵手の風鈴狂四郎が現れた。お互いに、闘えばどちらかが死ぬとわかっているので、闘わないようにしている。ところが、おせっかいなお殿様が、なんとかしてふたりを闘わせようと、あの手この手を出してくる。第一話から第八話まで、大筋は、ふたりを闘わせようとするお殿様と、闘いを避けようとするふたりの知恵比べ……みたいなもんである。

この間に、蟋蟀小三郎はきっぱり浪人して「ちよ殿」とめでたく所帯を持ち、剣術の道場を開いて、破落戸候補生の不良少年たちを集めてしごき、それが評判になって道場がはやり、うそのようだがいかにも道場主らしく威厳や品格を保つようになった(?!)。というのは人前だけで、半次の前では相変わらずだ。

半次は蟋蟀小三郎と風鈴狂四郎とどちらにも関わりを持ち、やっかいごとにまきこまれ、どいつもこいつも疫病神だと思っていたら、意外といいヤツだったことがわかる。狂四郎の後ろ姿が見えなくなるまで呆然と立ちすくんでいたという場面が、いい。半次の正直さがわかる。

江戸時代、将軍の御前試合というものがおこなわれたことはなかった。また、剣術の果し合いは、ただの人殺しとして、処罰の対象となった。敵討ちは、奉行所に届け出ておかなければならなかった。武士でも、一生、刀を抜いたことのない人も多かった。無礼討ちも取り調べの対象となり、目撃者の証言などがないと、殺人として処罰された。作者の説明は、いつも、時代劇のイメージだけでは誤解していたような、意外な史実を教えてくれる。

その御前試合が、吹上御庭でおこなわれることになるというのが、第八話である。ときの将軍は徳川家斉。これまで闘いを避けていた蟋蟀小三郎と風鈴狂四郎も、一方は日の本一の達人という名誉をかけて、一方は藩に帰参して老母を養うという名誉と実利の両方をかけて、立ち合う覚悟を決める。そこに、父子二代の確執を抱いた剣豪も加わり……。将軍の前で礼式に則って始められた試合は、峻厳で端然としたものとは程遠い、血みどろのぶつかりあい、遺恨と、相手を殺して生き延びたいという欲望のむきだしの闘争となった。作者の現実的な人間観がおもしろい。最後に、「命あっての物種」としんみりとつぶやく蟋蟀小三郎の姿に、私もほっとする暖かさを感じた。

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紙の本命みょうが

2011/07/06 13:58

性格はルパン三世で剣の腕は五右衛門の男

3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:saihikarunogo - この投稿者のレビュー一覧を見る

>「蟋蟀小三郎。我が一族はみんな蟋蟀と名乗っておる。田舎にいけば一帯は蟋蟀姓ばかりだ」

うーむ、『聊斎志異』には蝗の一族が出てきて人間に婿入りしようとしたり嫁入りしようとしたりする話があるが、まさか、この男も……?!

>まるで能楽師が能を舞っているようだった。いや、蝶々が花から花へ舞っているといったらいいのか。壁にへばりついていた蟋蟀小三郎が八人の男の間を擦り抜け、擦り抜けるたびに、一人、また一人と倒れて行く。刀を振りまわしてはいない。脇差で鳩尾を突いてまわっているのだ。

蝶のように舞い、蜂のように刺す、と言われたボクサーがいたが、江戸では蟋蟀が舞い、突くのか。

>「蟋蟀さんはなにも言い返さず、すっと片膝を立てた。と、佐七の首がスパッと胴から離れ、三尺くらい舞いあがって、転がりもせずにすとんと土間に。まるで首をそっとおいたように」

きゃ~~~~っ!

こうやって、蟋蟀小三郎な何度も半次の危機を救ってくれた。なのに、半次は、蟋蟀小三郎を疫病神だという。最初に出会った時は大番屋に留め置かれていて何日も入浴も散発もせず、むさいことこのうえなく、本人は悠々としていて取り調べで黙秘を続け、それは実は捕われる前はホームレスだったのでそのときに比べればずっとましだったからなのだが、半次のもとにひきとられて居候してからも別に長屋を借りてもらってからも、まるで当然のように三度三度の食事をたかり、半次は下戸だが彼の愛妻の志摩はいける口なので、小三郎が晩酌につきあって仲良くし、半次の留守でも平気であがりこみ、猫撫で声で
「志摩殿」「志摩殿」
と呼びかける。まるで、ルパン三世の「富~士子ちゃ~ん」みたいだ。

蟋蟀小三郎は半次についてまわって金儲けのタネになりそうだと思うと頼まれもしないのに用心棒や敵討ちを引き受け、次々と騒ぎを起こす。女好きで志摩の他にもあちこち手を出し、実はなかなかのハンサムなのにくだらん駄洒落を連発したりへたな三味線を得々と弾き鳴らしたりするので女性たちからもあきれられ、さる事件で誤解されて怨みを買って若い女性から刃物を突き立てられても、かすり傷だと気にもせずに彼女の手を優しく撫でたりして、ニクい男。

佐藤雅美の数あるシリーズもののなかでも、最も愉快痛快厚顔無恥なキャラクター、蟋蟀小三郎の登場で、『半次捕物控』はユーモア度No.1になった。

蟋蟀小三郎は、どんなにずうずうしくとも、たとえば『物書き同心居眠り紋蔵』の『伝六と鰻切手』に出てきた伝六みたいな、気持ちのわるいずうずうしさはない。伝六みたいな人物は何人か佐藤雅美の作品に出てくるが、彼らは命にかかわるほどの大仕事を小説の主人公に押し付けて、主人公が苦労していても知らん顔、どこまでも人に善意の協力を強要して恥じるところがない。

だが、蟋蟀小三郎は、最終的な危険を我が身一つで引き受けることを当然としている。そこが気持ちいい。ただ、それがあまりにも自然で、潔いのに潔いという言葉が似合わないと感じさせるほど世俗の欲にまみれていて、食欲と色欲を臆面もなく追及し、まわりの人間はあいつがいると迷惑だ、なんとかして息の根を止めてしまえ、とやっきになるが、本人は飄々と降りかかる災難を交わしていく。かっこいい!おもしろい!私は蟋蟀小三郎の大ファンになった!

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紙の本泣く子と小三郎

2011/07/09 13:46

「守銭奴の我利我利亡者の乞食も同然、匹夫下郎の下種野郎!」

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:saihikarunogo - この投稿者のレビュー一覧を見る

>「金にならねえことを、てめえがするものか」
>「て、てめえだと? 誰に物申しておる?」
>「守銭奴の我利我利亡者の乞食も同然、匹夫下郎の下種野郎にだ」

言いも言ったり、半次親分、今までも何度も蟋蟀小三郎と一触即発の危機になったが、今度という今度は抜けば首を跳ばされるのを覚悟で抜き合うか!

と思ったら、また、何事もなく収まった。だいたい、蟋蟀小三郎は故郷に帰っておとなしくしていたはずなのに、三月もせぬうちに江戸に舞い戻って、またぞろ、「志摩殿」と、まるでルパン三世の「富~士子ちゃ~ん」みたいな(いやこれは読者の私が勝手に連想しているのだが)、猫撫で声を出して半次の家に入りびたり飯だ酒だとたかり金儲けの種を漁り……「疫病神」と半次に人がいるところでもいないところでも呼ばれ罵られてもどこ吹く風。

ところが、今回、蟋蟀小三郎は、「ちよ女」とか「ちよ殿」とか言い出した。あまつさえ、付け文を渡してくれと半次に頼んでばかにされ、懲りずに仲人(ちゅうにん)を頼んで首尾よく同居を始めたのはいいが、思いもかけず、ちよ女は三人の子持ちでしっかり者で財布の紐を握られてしまい、以来、ことあるごとに、蟋蟀小三郎は、
>「うおーん」
と子供のように泣きわめいては半次に慰められたりお金を貸してと頭を下げて頼み込んだり、なんかもう駄々っ子なのか甘えっ子なのかわからないけど、とにかくめちゃくちゃ。でも、おもしろい。

蟋蟀小三郎が連れてきて半次に押し付けた、沈念という小坊主が、いたいけでけなげである。沈念の生い立ちが、『物書き同心居眠り紋蔵』シリーズの『向井帯刀の発心』に出てきた、向井帯刀の生い立ちによく似ている。じゃあ、沈念の父親の正体も同じかな……と思ったら、これは違っていた。半次も、居眠り紋蔵が文吉や勘太といった、わけありの少年たちを引き取って育てるのと同じように、沈念こと恒次郎を我が子同様に育て始める。漢文の素読を「お経をよむように」やっている、とお志摩さんが言うのがおかしいが、寺子屋の師匠から神童と言われるほど優秀である。半次の父親ぶりも楽しみになってきた。

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紙の本疑惑

2011/07/07 13:54

「あれで実は女房子供がいて、子供は物覚えのわるい洟垂れで……」

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:saihikarunogo - この投稿者のレビュー一覧を見る

>「女房は研いでいる爪をのべつ小三郎に立てていて、家では居場所がないなどという正体がわかったら大笑い」

愛妻志摩が朝帰りや無断外泊を繰り返し、蟋蟀小三郎との逢瀬を重ねているのではないかという疑惑にとりつかれた半次は、こんな黒い妄想にふけり、一膳飯屋にいるときも、家の長火鉢の前で煙草をふかしているときも、ぼーっとしていることがしばしば。

そんななかでも、迷い子のしょうた(正太郎)の世話を焼く一件は、半次の暖かさを感じた。佐藤雅美の小説では、主人公の男性が、たまたま関わりあった気の毒な境遇の子供に親身に世話を焼いたり養子にしたりする話が多い。

蟋蟀小三郎の傍若無人は相変わらずで、奉行所からも元の主家の有馬家からも狙われ呪われ、遂には、油井正雪の乱の丸橋忠弥以来という大捕物になって捕り手に囲まれても、悠々とトイレを使って辟易させたうえ、大山鳴動鼠一匹の顛末で、半次の憂鬱と蟋蟀小三郎の躁状態は続く……かと見えた。

一方、志摩は志摩で、蟋蟀小三郎の元の主家の有馬家に出入りするようになり、奥女中はおろかお殿様にまで気に入られ、ふと半次が気づくと、蟋蟀小三郎の元気がない。まるで別人のようにおとなしい。さては、お殿様に志摩をとられたか!と、夫である半次自身はもはや蚊帳の外と想像するのが気の毒である。

蟋蟀小三郎は何かというと人の首をはねたり腕を斬り落としたりするのだが、今度もまたそんな事件を起こした。とうとう、お縄にかかり、奉行所は手ぐすね引いてさあ死罪か遠島かと詮議を始めたところ、大勢の目撃者が、町のダニを始末してくれたのですと、弁護に赦免の嘆願にと騒ぎ奔走するのでお手上げ。

だが、蟋蟀小三郎がどこかおかしい。褒められても図に載らない。儲けを半次に譲ろうとする。きれいどころを呼んでもどんちゃん騒ぎをしない。こんな蟋蟀小三郎って……もしや……まさか……実は?!という展開が、楽しかった。

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紙の本揚羽の蝶 下

2011/07/05 14:53

いい男は悪い男?

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:saihikarunogo - この投稿者のレビュー一覧を見る

大名家の跡取りっていうのは、ちゃんと長男が成人していても、それを押しのけて、母方の親戚のよその大名家の若様を押し込もうとか、それもその母方の親戚の大名自身ではなくて母方の親戚の女性に仕える奥女中が画策していたりとか、将軍の若様を、それも将軍自身ではなく、将軍の機嫌をとって出世したい大名……自身ではなくその大名の家来が、押し込もうと画策するとか、なんかもう、おそろしいやら、あほらしいやら、ややこしいやら。

将軍家斉の時代を、佐藤雅美は多くの作品で描いている。何十人も息子娘がいて、そのひとりひとりを大名家の養子にしたり嫁入らせたりすることで、たとえば水野出羽守は史実でも家斉のお気に召したらしい。もっとも水野出羽守はそれだけではなく、なかなかの能吏だったということもまた、多くの作品で佐藤雅美は描いているが。

この『半次捕物控』の『揚羽の蝶』で、半次を巻き込んだお家騒動の仕掛け人は、水野出羽守の競争相手の大名の家来である。彼と、半次の命の恩人の美女志摩の恋人で池田家の若手の鑓手のハンサムな武家とが関わっている。このふたりの武家はふたりともかっこよくて女性にもてる。そしてふたりとも出世欲が強く、狡猾である。だが、お志摩さんのほれた男性のほうが、少なくとも恋人としては、いい男だと思う。

しかし、半次の養女の幼いお美代を誘拐するとは、言語道断だ。そして、いが茄子強盗の犯人も、やっぱり、許せない。

大名屋敷の身分の高い武家を相手に、半次は、知恵を絞り、仲間の力を借り、お奉行まで敵に回しても、お美代を助けようとする。いが茄子強盗を探索させるだけだったのが、たいへんなお家騒動に手を突っ込んでしまったとわかって焦る奉行は、事件を揉み消しにかかる。

最後は……これも佐藤雅美作品によくある結末で、表面上は何事もなかったかのような顛末を迎える。ただ、幼いお美代がストックホルム症候群になってしまって、それが半次にとって、もしかして、縁結びの神になりそうな雰囲気なのは、悪くなかった。

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紙の本揚羽の蝶 上

2011/07/05 14:50

「丸に抱き茗荷」から「揚羽の蝶」に

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:saihikarunogo - この投稿者のレビュー一覧を見る

「朝鮮朝顔、または、ダチュラ、曼荼羅華」というと、私としては、京極夏彦の『姑獲鳥の夏』でおなじみだったが、「いが茄子」という呼び方は、この佐藤雅美の『揚羽の蝶』で初めて知った。インターネットで調べてみると、現代でも各地で牛蒡とまちがえて中毒を起こす事故が起こっているらしい。

そのいが茄子を使って人をしびれさせ、強盗を働く事件が起こった。そのうえ、娘さんに対して性犯罪まで働いたという。その犯人をつかまえろ、というだけなら、普通の捕物帳の話ですんだのだが……。

なんで、その犯人を見つけるために、江戸から備前岡山まで、大名行列に人足として雇われてついていかなければいけないんだ?犯人は人足のなかにまぎれこんでいるからというが、そもそも岡っ引きは江戸の外では犯罪者を検挙することが許されていないのに。一応、それらしい理由も付けられてはいるが。

それにしてもなぜその命令が半次に下されたのだ?

『半次捕物控』の前作『影帳』で、半次は両親が誰かを知らず、おばという、御殿女中らしい人が、大金を遺してくれたという話が載っていた。そのとき、そのおばが遺してくれた袱紗包みは「丸に抱き茗荷」の紋だと書いてあった。

今作『揚羽の蝶』では、そのおばは、揚羽の蝶の紋のお屋敷に奉公していた、となっている。揚羽の蝶の紋は、備前岡山と鳥取因幡の両池田家の紋だった。(……まあ、都合だね)

備前岡山池田家の一心斎というお殿様のエピソードは、佐藤雅美の作品によく登場する。『物書き同心居眠り紋蔵』シリーズの『ちよの負けん気、実の父』には、ちよの友達のみわが赤ん坊のとき池田家の前に捨てられていた、という話がある。さてこちら、『半次捕物控』の『揚羽の蝶』では、主人公はひょっとして一心斎の息子か?!すわ、お家騒動の渦中の人物になるのか?!と私は色めきたったのだが。

だけど、半次自身は、自分の父親がどうやら先代のお殿様らしいとわかっても興味を示さないのはまだいいとして、自分の母親が誰かも確かめようとしないなんて、拍子抜け。いが茄子強盗を追いかけていたはずなのにお家騒動に巻き込まれて何度も命を狙われて、半次の運命やいかに、と手に汗を握り、しかも美女に命を救われたり、その美女が実は池田家の若手の鑓手のハンサムな武家と恋人同士で、その若手の鑓手のハンサムな武家もお家騒動に関わりがあったりと、なかなか、おもしろいのだが。

私としては、半次の出生の秘密を知っている誰かが陰謀を企んで彼を岡山へ送ったのに違いない、と思って真相が明らかにされるのをうずうずして待っていたら、なんだか半次が最初に捜査員として指名されたのはあくまでも偶然だったみたいで……そんなことってあるのか?!

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紙の本影帳

2011/06/30 19:30

お天道様は納得しない!

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:saihikarunogo - この投稿者のレビュー一覧を見る

こんな結末ってあるだろうか。

>しかしお天道さまはそれで納得されるだろうか。
>納得なんかされやしねえ。

そう、そのとおり。

半次が、尊敬していた方こそ友の仇であると知り、その罪を暴こうとするが、奉行所は、初めに殺人として取り上げたはずの事件を再捜査の名目で事故として処理しようとする。権力とお金のある人々の根回しや圧力に屈して、何もなかったことにしてしまおうというのだ。半次は自分ひとりで殺人者となってでも仇を討とうとするが……。

これがたとえば、刑事ドラマ「相棒」なら、主人公の杉下右京は、断固として罪を暴くであろう。たとえ、警察組織を揺るがし、多くの同僚たちが職を失うばかりか刑事罰を受けるような事態になるとしても。

「相棒」といえば、2010年12月15日に放送された「ボーダーライン」で、様々な不運が重なって自殺した青年の、最後のきっかけを作ってしまった人物が、そのことに気づかずにいる、という場面があった。この佐藤雅美の『影帳』のラストも、それと同じような場面で終わっている。この終わり方は、非常に良かった。

物語全体は、最初の一行から最後の一行まで、文章も練れていて、登場人物のひとりひとりが生き生きしていて、非常におもしろかった。最初に、下駄を盗んで捕えられた男が、そんなの裁判になったらそのほうが出費がかさんで面倒だからなかったことにしてやると被害者側が言っているのに、頑固に、裁判を受けることを主張する。いったいなぜだ、という謎と、半次の先代の親分の息子が最近身を持ち崩し始めた原因、人目を忍ぶ半次の恋人の思いもかけない浮気、親友に死をもたらした人物は誰か、などの謎が、徐々にからまっていき、怪しいと思った人物を追いつめると意外な事実が明らかにされるということが繰り返され、最後の最後まで、サスペンスが続く。

ただ、せっかく、すべての謎が解かれ、真犯人がわかったというのに、あまりにも現状維持を図りすぎ、正義をないがしろにしすぎる。『物書き同心居眠り紋蔵』シリーズの『密命』も、似たようなラストだった。だが、あれは、何十年も前の犯罪を問題としていた。だから、今、生きているひとたちのために、真犯人を見逃すのも仕方がないと思う。それに対して、この『半次捕物控』の『影帳』は、現在の殺人事件なのだ。それなのに、半次自身が真犯人とのおつきあいをやめる、って、それだけでいいの?

何も刑事罰を与えなくとも、殺人の命令を下した真犯人と実行犯とから、その殺人によって守ろうとした利益を奪うべきだ。彼らが利益を得ている場所への出入りを差し止めるべきだ。そうしないと彼らはまた同じことを繰り返すかもしれないじゃないか。

帳合米取引。この、世界最初に日本の大坂堂島会所で始まったと言われる、穀物の先物取引は、同じ作者の『縮尻鏡三郎』シリーズの『老いらくの恋』にも詳細に描かれており、また、山本一力の『背負い富士』でも、清水の次郎長がそれで大きな利益を得た話が描かれている。佐藤雅美の『影帳』は、帳合米取引の場所を、「御免博奕場」とも書いている。その御免博奕で、運命を狂わされたり、倫理観を狂わされたりした人々への哀歌が聞こえるような小説だ。

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紙の本影帳

2010/09/12 16:55

岡っ引半次が複雑に絡んだ事件を、猪突猛進、危なげに解決する半次捕物控シリーズ第一弾

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:toku - この投稿者のレビュー一覧を見る

佐藤雅美の作品には、過去の判例を繰る例繰方同心を主人公とした「物書同心居眠り紋蔵」シリーズや、とある訳で失職して『縮尻御家人』となり大番屋の元締めに落ち着いた主人公の「縮尻鏡三郎」シリーズなど、特徴的な主人公を描き、当時の風俗を生々しく描いているものが多い。

この「影帳―半次捕物控」も同様。主人公・半次が務める岡っ引について、その生々しい生態を描き出している。
岡っ引は同心との個人契約であるとか、給金は家族四人が生活できる金額の四分の一の一分程度だとか、それでは生活が成り立たないから『引き合いを付ける』『引き合いを抜く』といった盗難被害者の足下を見たような行為で稼ぐ、といったことまで。

『引き合いを付ける』とは、捕まえた盗っ人の盗難先を調べ上げ、その一軒一軒に事件と関わりある旨を告げること。
『引き合いを抜く』とは、引き合いを付けられた側は御白州へ呼び出される際、色々と出費がかさむ。盗難被害にも遭い、金と時間もかかるので、よほど高価なものが盗まれたのでなければ、盗難は無かったことにとお願いする。それを岡っ引たちが聞き届けること。
引き合いを抜くには、もちろん引き合いを抜いてもらう側がいくらか掴まさなければならず、岡っ引たちは盗っ人を捕まえるとできるだけ多くの引き合いをつけて、相手に抜かせることが稼ぎになっていた。

この作品の物語の事件も、この引き合いを抜くことが大きく関わってくる。
岡っ引の主人公半次が出入りしている米問屋相模屋に盗っ人が入ったが、取るものが無く雪駄一足を盗んだ。
この盗っ人を捕まえたのは評判の良くない助五郎という岡っ引。引き合いは他に一軒しか付けられず、普通なら引き合いを抜くところを抜けないという。
一方、半次は、世話になった嘉兵衛親分の伜で跡継ぎの岡っ引幸太郎のことも気になっていた。
助五郎とつるみ、賭場に出入りして嘉兵衛親分の遺産を食いつぶしたという噂があり、会おうにも半次を避けているようである。
そこで幸太郎と兄弟同様に育てられ、かつて半次の下っ引だった常吉に、幸太郎とのつなぎを頼んだ。
しかし幸太郎は半次との待ち合わせには現れず、後日、常吉が土左衛門として上がった。
相模屋の一軒、幸太郎の行動、常吉の死。これらには助五郎が噛んでいると睨んだ半次は、周囲を探り始めた。


本書は、猪突猛進の岡っ引の主人公半次が事件や問題の解決に奔走する、長編推理物。
幾つかのまったく関係なかった事件や問題が、やがて一つの事件に収束していくため、かなり読みごたえがある。
話の進行中に入る長めの解説が興を削ぎがちなものの、その内容は先に説明した『引き合いを付ける』『引き合いを抜く』や岡っ引や盗っ人が引き合いの関係で持ちつ持たれつであるなど、当時の風俗に関係しており、読み進めて行くにしたがって、生きた江戸の世界が構築されていく。
物語の結末も、白黒はっきり付けるず、丸く収まるように融通をきかせているところに、人間的な生々しさが感じられる作品である。

居眠り紋蔵や縮尻鏡三郎とは違った、生々しい江戸の世界が楽しめそうで、第二弾も読んでみたいと思う。

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紙の本影帳

2002/07/31 17:44

推理捕物帳。

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:凛珠 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 相模屋の店先で雪駄が一足盗まれた。犯人は捕まったが、雪駄一足で面倒を起こすのも煩わしかろうと、相模屋出入りの岡っ引・半次は、犯人を捕まえた上野山下の助五郎にことを穏便に処理するよう頼み込む。だが何故か上手くいかない。雪駄の盗みという小さな事件の背後には、大きな謎が広がっていたのだった……。
 岡っ引・半次を主人公にした捕物帳。続編『揚げ羽の蝶』も文庫化されている。綿密な時代考証を施した歴史小説も書かれる著者だが、本書は難しくない市生捕物帳。軽くも無く、ささいなことが末広がりになってゆく、長編小説らしい面白さがある作品だ。

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