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炎の蜃気楼38 阿修羅の前髪
禁忌大法完成の『国譲り』を行うため内宮に現れた信長の前に立ちはだかったのは、弥勒の時空縫合を破り【遙か未来のイセ】から帰還した直江だった。『魂核死の手形』を得るために信長...
炎の蜃気楼38 阿修羅の前髪
阿修羅の前髪 (コバルト文庫 炎の蜃気楼)
商品説明
禁忌大法完成の『国譲り』を行うため内宮に現れた信長の前に立ちはだかったのは、弥勒の時空縫合を破り【遙か未来のイセ】から帰還した直江だった。『魂核死の手形』を得るために信長の真の僕(しもべ)となるか、布都御魂を得るために戦うか、直江に選択の時が迫る。伊勢の市街地では景虎方と織田方の怨霊が激闘を繰り広げ、一方〈黄泉〉の世界では、礼が、流された天孫方の神々を集め始めていた。
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紙の本
覚悟は、決まった。
2003/07/22 13:38
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投稿者:purple28 - この投稿者のレビュー一覧を見る
10年も前に始まったこのシリーズ。もう38巻まできてしまった。
思い返せば長い道のり。
けれど、高耶と直江は、もっとずっと長い400年の月日を生きてきた。
文字通り、精いっぱい“生きて”きた400年。
その物語も終わろうとしている。
松本から始まった高耶の物語は、仙台、萩、阿蘇、四国、熊野、伊勢と舞台を変え、終わることなく紡がれてきた。400年の歴史を背負って。
多くの出会いと別れを経験し、これまでにない過酷な運命をも享受してきた高耶。そのそばには、必ず直江の姿があった。
高耶がどこへ行こうとも、何をしようとも、なりふり構わず従ってきた直江。直江にとっては高耶が、景虎がすべて。
もし、それができなくなるとしたら…。
その“もし”を思うだけで直江は狂う。
そんな直江を思うが故に、高耶も狂いそうになる。
けれど高耶にはしなければならないことがあった。
それは、信長を討つこと。
信長を討ってこその、未来、がある、はず。
〈闇戦国〉は今や、一般市民をも巻き込み、地獄絵の様相を呈している。
自分が生きていた頃の怨みを持ち、自分の信じ従う主のためのみに戦ってきた怨将たちも、今は自分の意志で闘う道を選んでいる。
そう仕向けてきたのは、冥界上杉軍率いるところの夜叉衆元総大将・上杉景虎。
いや、仰木高耶という人格。
自分のためではなく、すべての人が幸せに暮らせる世界を求め続けてきた彼の、これが答えなのではないかと。
信長討伐。
信長だって元は怨将の一人に過ぎなかったはずなのに。
想いの強さが絶大な力を生んだ。
ただ、その思いは高耶とは相容れない。
記紀の時代に行われた国譲りを、現世で行おうとする信長。
記紀の神々に代わって、自ら神となろうとする信長。
信長の作ろうとしている世界は弱肉強食。人間も霊も、強い者だけが生き延びられる。それがこの世の原理である、と信長は言う。
その人に宿る魂に取って代わって生を受ける“換生”という行為を繰り返してきた高耶には、反論する術はなかった。
けれども、換生してきた高耶だからこそ、望む世界は、ある。
そして今それは、現代人の中にも浸透しつつある。
信長に破れれば、この世は終わる。
信長にもし打ち勝ったとしても、高耶の魂核寿命はいくばくもない。
時空縫合で直江が見た、高耶のいない世界。
もうあんな狂おしい思いはしたくない。後悔は、したくない。
直江と高耶の覚悟は決まった。
後がなくてもいい。“今”が納得できるときであるならば。
物語は間違いなく終焉へと向かっている。
なごりおしいけれども、“今”目の前に繰り広げられるこの世界で高耶と直江がいることをよしとしよう。
私の覚悟も、決まった。