紙の本
ポップな文学的パフォーマンスにハマるかどうか
2013/08/31 15:17
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ががんぼ - この投稿者のレビュー一覧を見る
やや長めの短編、あるいは中編と呼んでもいい表題作を最初に置き、
同じぐらいの長さの「もうすぐ結婚する女」を終わり近くに置いて、
あいだ(と終わり)に間奏曲的に短編のような断章のような話をはさんだ構成。
連作短編集とも言っていいのかもしれないが、
互の関係は深いので、むしろ全体でひとつの作品にもみえる。
タイトルの意味は、パイプ椅子のように形が決まっていて、積み重ねができる、
ということらしい。
もちろんそれは一種の比喩で、
ある会社を舞台に、組織の中で型にはめられて生きているということと、
さらには取替え可能な、ひとりひとりの個性、独自性の埋没した状況を意味するものか。
だから表題作では、多数登場する人の名前はアルファベットを使った匿名だし、
しかもそれが重なっていったりする。
と書くと何やら重苦しい小説のように聞こえるが、実際の印象はかなり違う。
会社に限らず、社会の中で生きていくことにまつわる
違和感、不安、孤独、苦さ、苛立ち、怒り、悲しみなどが描かれているのは間違いない。
しかしその表現の仕方といえば、
何というかポップな、苛立ちをバシバシと叩きつけるようなパンチの効いたスタイルであったり、
自分で派手に顔をしかめたり吐き捨てたり笑い飛ばしたりするような、
パフォーマンスの効いたユーモアであったり、
と思えば、切ないまでの苦さが滲み出るシュールな描き方であったり、
なかなかに仕掛けが多い。
本としての全体の構成だけでなく、一つ一つの物語も創意に満ちているのだ。
たぶん相当好みに左右されるが、
一種ノリのいい仕掛けに、何か痛快なものを感じてハマる読者もいるはずで、
となるとかなり愉しいのではないか。
わりに個性的な作品を選ぶという三島賞の候補になったのも頷ける。
表題作では男性の視点も少なからず取り入れられているとはいえ、
ベースにあるのは、作者自身ではないかと思わせるような、
頭がよく働いて、だるそうにみえても、苦い思いも含めてどこか深いエネルギーを秘めていて、
比較的若い年齢層の、女性のリアルな感覚ではないかと思う。
それが様々な形で前面に出ているのが新しくもあり、共感を呼ぶところでもある。
ちなみに作者は、先ごろ芥川賞を受賞した藤野可織さんと、
同じ同志社大学文学部の卒業で同じ学年らしい。
タイプはまるで違うけれども、またまた新しい楽しみな才能が出てきたという印象。
紙の本
絶えることのない苛立ち
2017/12/23 11:27
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投稿者:ペンギン - この投稿者のレビュー一覧を見る
日々の会社生活で出会う、絶えることのない苛立ちが詰まっているような本だ。今度自分が会社のエレベーターや、オフィスの自席や、居酒屋の隣の人の会話にイラッとしたら、同じように感じる人が私以外にもいるんだと思ってやり過ごすことにする。
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読者を選ぶと思う。
女性、若い女の子ではないけれど中年と呼ばれるには抵抗がある、という年回りの女性でないとぴんとこないだろう。固有名詞がいっぱい出てくる。
読み終えて、ヘタウマのコミックに付き合った後と同じ疲労感を覚えた。
日本語がところどころへん。意図的なものではなく、著者の言語能力によるものだと思う。
でもそこで本を閉じさせない勢いがある。
好きではないけど好きな人は大好きだろう、小説ともエッセイとも戯曲ともつかない小品集。
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話題になってる本。最初の「スタッキング可能」は、かなりのアイロニーが利いていて、面白く読めたけれども、その後の短編は正直まったく理解できなかった。
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シュールレアリスム好きには、現実的すぎると感じる。エッセイとか好きな女性は楽しめると思う。ノーベル文学賞作家のジョゼ・サラマーゴ「あらゆる名前」これの簡易VERみたいな。
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「スタッキング可能」、これは読みながらドキドキした。緊張でもあるし、楽しみでもあるし、恐怖でもある。うまく言い表せない。奇妙に見えて、実によくある、共感しやすい話。
「マーガレットは植える」は、小説としてどうかという感じもしないではない。
「もうすぐ結婚する女」は「スタッキング可能」と一緒に収録されているからこそ映える作品。松田さんのこの偏屈さはどこから出てきているのだろう。スタッキング可能より実験的だと思った。
「ウォータープルーフ嘘ばっかり〔じゃない〕!」を読みながら笑いもしたが、なんとなく松尾スズキとかそういうラインを思い出した。面白いには面白いけども、この毛色のものがずっと作品に紛れ込み続けるなら疲れるだろうな。
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久しぶりにどストライクな面白さのつまった本に出会ってしまった。
本屋で目につき、なんとなく手にとったが大当たり。
皮肉を描くのがうますぎる。そしてこのリズム。ぐんぐん読んでしまう。ん? と疑問が生まれ数頁戻り、理解しまたリズム良く頁をめくる。
久しぶりに読書というものを楽しんだ。面白い。皮肉り方とか最高。じわじわくる面白さがたまらない。
Amazonレビューでこの本を面白くない、つまらない、意味分からないというレビューが多々あったけど、まどろっこしさはあるが、面白くないところがないくらい個人的にはどツボにはまった。
わたしはこの本を面白いと思うひとと仲良くなれるし、そうでないひととはなにも分かち合えないんだろうな、とまで思った。
このユーモアセンスにすっかり魅了されてしまった。読み切るのが惜しくて時間かけて読んだほど。
スタッキング可能もウォータープルーフ嘘ばっかりもマーガレットは植えるももうすぐ結婚する女も全部面白かった。この著者の作品、もっと読みたいです。
本谷有希子さん、西加奈子さんの毒が好きなひとは楽しめるかも。それよりもずっと読みづらい感じではあるが。
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からくりがあってなかなか読み解けなかった。今二回目読んでいる。わかるまで他人のレビューは見ないようにしないと。それにしても松田さんの文は中毒性がある。リズムで言ったらダダダダダってかんじ。他の作品も読みたい。
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元ヨーロッパ企画の役者さんが作家さんになって
その小説が出たとゆうことで読んでみた。
独特の文面が最初はちょっと読みにくいけど、
読んでるうちにクセになってくる。
登場する全員の心の中の描写が見事に個性的で楽しい。
女の人っていろいろ大変だなあ(笑)
あと、短編の『ウォータープルーフ嘘ばっかり!』の
掛け合いのテンポやらモノの例え方が面白すぎて、
ニヤニヤしながら読んでしまいました(^^)
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どれも不思議なはなしだった。
部分部分、マンガやアニメの名台詞が織り込まれておいおい、とかぷっと吹いたりするし、巧みな言葉遣いと、あるあるネタで納得もする。
でも総じてとても不思議。
表題作は特に。
ごくごく短いセンテンスでいろんな人物が描かれて、時々クロスするのだけど濃密には絡まない。解決もしない。それこそが「スタッキング」なのかなぁと。
ただちょっと私には長かった。
初出を見たら「早稲田文学」とのこと。たしか芥川賞の「abさんご」もそうだったよね? やっぱりそっちも読むか。
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会社の中での出来事を、複数の視点で螺旋状に描いた表題作への評価は高い。
その他、ややフェミニズム視点での自虐的コント「ウォータープルーフ嘘ばっかり」は、可笑しくも悲しい。特に後半の畳み掛けは笑える悲劇である。
実験的な文体であり、短編向きな作風である気もするが、ぜひ中長編も読んでみたい。
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こ・れ・は・・・。1回目、なんかそわそわしちゃって全体がもやもや。2回目は図を書きながら。とっても達成感。
「ウォータープルーフ嘘ばっかり」ダイスキ。
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今年はまだ始まったばかりだけれど、今年一番に決定!宮崎誉子を初めて読んだ時を彷彿とさせるが、それより年季入ってるというか、肝座っているというか。ある人にとっては皮肉でしかないんだろうけれど、私にとっては、うまいこと言われた感がすごくする。
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~こんなにみんな同じだと思わなかった~個性的なチームリーダーが気になる。チームリーダーに幸あれ。収録作「もうすぐ結婚する女」を中盤まで読み進め(うん?)初めに戻る。行ったり来たりで2度おいしかった。
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これは間違いなく新しい会社小説!
会社で働く人びとを複数視点で描いた作品で、かといって仕事をしているシーンはほとんどなくあっさりと楽しめる。そして、言葉運びというか文章リズムもよい。他に収録された短編も楽しめた。
さらに、合間に入るSS「ウォータープルフは嘘ばかり!」、「ウォータープルフは嘘ばかりじゃない!」はコント調。作品の構成の仕方が、YMOのアルバム「SERVICE」のスネイクマン・ショーを思い出した。