紙の本
好きな人は好きだろう著者
2020/07/05 18:57
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投稿者:makiko - この投稿者のレビュー一覧を見る
『ふがいない僕は空を見た』のときも感じましたが、著者の醸し出す空気感が独特。好きな人は好きだろうけど、私は少し苦手です。兄と結婚するかと思われていた女性が、流産を経て、弟の方と結婚するストーリー。実際にこういうことがあったら周囲の人との関係が面倒くさそうやなーという感じでした。目をそらして見なかったことにしておきたいような物事に焦点を当てて描き出す著者だから、苦手なのかなぁ。
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はじめの「なすすべもない」が群を抜いて良すぎた。これが「ふがいない僕は空を見た」を書いた著者が書くさらに進化した作品か、と思わず震えた。狂気とかあの抑えることのできないどうしようもない感情たちすべてが共通していた。
みひろと二歳上の圭祐とその弟でみひろと同い年の裕太は同じ商店街の中で生まれ育った幼馴染だ。高校時代圭祐は弟もみひろに好意を持っていることを知った上で交際を申し込み今に至る。保育士のみひろは圭祐とセックスのない同棲生活をしており冷え切ったなかで裕太の優しさに刺激されメス化する。
第二章の裕太の章もまぁよかった。が、第三章の圭祐のくだりがおもしろくなかった。必要なことだったのかもしれないけとれど、延々と続く青年時代の回想シーン。父の浮気相手に想いを馳せるあの頃的な。第一章でがつんとやられたから弱く、響かなかった。
再びみひろ、裕太、そして圭祐と視点が変わりラスト。
以下ネタバレあり。
圭祐と別れ裕太と結ばれることになったのは幸せなことだと思う。わたしは読んでいて裕太に惹かれるものがものすごくあったし、みひろを決していんらんおんなだとは思わないから。けれども、圭祐のあのラスト、京子とのラストは好きじゃないかなー。なんかありきたりというか華がないというか。非衝撃的で。響かなかった。第一章がとにかくよすぎて、胸の奥がきゅうとなるほど切なくて、もどかしくて、叫びたくなるあの感じが続かなかったのがとても残念。ふがいない〜のがずっと良かったかな。エログロさがなく読みやすかったですけどね。
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昔ながらの商店街を舞台に性格が対称的な兄弟と幼馴染みの女性を中心とした人間ドラマ。今回も期待を裏切りません。あまりにリアリティーがありすぎて苦笑いしてしまいます。何で男のアホな心情をここまで理解されてるのか。とにかく面白かった。家族とはセックスできないとか男の女性の胸の谷間への憧憬とか。逆に男にとって女性心理を理解できたり。兄弟や親子の微妙な距離感と関係とか。いろんなエッセンスが詰め込まれた魅力的なお話でした。根底にあるのはやっぱ生と性なんだなと妙に納得。
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きっと、あらすじを説明するのは、簡単なことだと思う。そしてその時に、誰を主語にして語るかどうかは、人によって、異なるんじゃないかな。
窪さんの独特の表現が、すごくすき。ふだん、恋愛小説を読まないわたしだけれど、この作品は、立ち読みをしていたら止まらなくなるほど、引きこまれた。
『ふがいない僕は空を見た』以来の窪さんの作品。
また、あの時と似たような感覚。
それぞれ、みんないろいろあって、それをうまく言えずに、あるいは隠して、一生懸命生きている。苦しいのは、辛いのは、自分だけじゃない。
みひろが主人公でも、裕太が主人公でも、圭ちゃんが主人公でも、胸が苦しくなった。
誰かが、何かが、悪いわけではないのに、うまくいかないことは、いくらだってある。それでもきっと、誰かのせいにして、誰かを許して、生きていくのだろう。人のぬくもりを頼りに。
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親子三代顔見知りといった具合の古い商店街の、文房具屋の娘と酒屋の兄弟の恋愛模様を中心に、ままならない男女の関係を描いた連作短編集。
http://www.horizon-t.net/?p=1146
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最初の『なすすべもない』読み終わって溜め息。ふぅ~凄い、エロさが日常や家族的なものを丁寧に描いてる故に際立ち、彼女の苛立ちが映える、そして最後の行動の熱の行き先と高まりが。
二人だけでいいのに付随してくるものや関係性。
『よるのふくらみ』もだし過去作も連載中『さよなら、ニルヴァーナ』も連作短編集として各登場人物の視線から一話が書かれて一冊の小説に綴られている。だから窪さんの連作短編集はやはり素晴らしく巧いし、いろんな読者から支持されるのはいろんな視線があるから。
『平熱セ氏三十六度二分』はもう、こういう話大好きというかもうねえって感じだわ。窪さんの小説好きな人は『素晴らしい世界』『ひかりのまち』なんかの初期の浅野いにお連作短編好きだと思った。
『なすすべもない』読み終わった感想。男女の空洞が互いに挿入され擦れ熱が生まれる。溢れでる液体は喜びや哀しみ、愉悦や劣情様々な感情をすでに孕んでいる。熱と液体により生まれた僕たちは空洞を埋めるためにもとめるが満たされることはなく、満たされても刹那という永遠の中に。
「星影さやかな」を。主要人物三人の視点で各話展開しているから少しずつ同じ時期の出来事に対しての想いやバックボーンがわかってくるから三者三様の中に自分に似たものを見つけることになる。そういうのを読むと窪さんは丁寧な書き手だなあといつもながら思う。丁寧に傷に塩を塗り込んでくるとも言える。
マリアさんの胸に顔を埋めたいと思わずにいられないのが「星影さやかに」なんだけど、いんらんおんなと言えて自分のしてきたことを引き受けるしっかりしてる女に甘えたいんだよなあ男は。
で、その弱さもわかるし彼女は何にも言わないからどうにもならい怒りが圭ちゃんみたいに表れるんだよなあ、本当に。最終的にミミと圭ちゃんの関係にも繋がるわけで。
『よるのふくらみ』表題作を読み終わると朝だった。ふくらんだものは膨張し破裂するか抜けて萎むしかない。生活の中で想いや性欲やそんなものたちは自我で抑え込めるか膨らむのを止めないか、だけどもどちらになろうとも後悔は後ろ髪を引きずっと居座るんだろう。
羽化(浮か)して翔べるんだろうか?
六つ目の「瞬きせよ銀星」読み終わり。
四つ目の「よるのふくらみ」以降が特に心を揺さぶられた。五つ目の「真夏日の薄荷糖」と最後の「瞬きせよ銀星」で泣かされた。心の奥の方の自分だけの場所をかき回された感じがする。正確には読んで波立てたのは自分なのだけど。
なんだろう、三つ目の「星影さやかに」以降なんか、なにかが明らかに変わってる感じがすんだよなあ。窪さんの執筆力というよりもなんか最初の二編となんか違うものが宿ってるそういう感じっていうか、なんだろうよくわかんないけどギアチェンジというか意識が変わってるというか。そんな気がした。
『よるのふくらみ』はいろんな人を泣かせる小説になると思う。感動とか泣けるとかじゃなく泣かせるのは無意識化に、ブラックボックスに仕舞いこんだ自分の感情や欲望と小説を読みながら向かい合うことになるから。自分の感情や欲望に向き合うとチャクラが開かれていろんなものが開放されてしまう。
開かれた後の大問題はそれもう閉まらないよっていうラインを越えてしまうから戻れない。こういう作家は怖いんだ、世界のみえかたを改変させれちゃうから。窪さんといい樋口さんといい、熱狂的な支持を受ける作家は読者のOSを新しく物語によりインストールして尚且つアップデートしちゃう、質が悪いw
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今回の作品は全てがストレートで心にズーンといろいろな感情が押し寄せてくる。みひろ・圭祐・裕の交錯する気持ちが切なくて、思い通りにいかない恋愛を見ているともどかしい。セックスという身体同士の繋がりも大切なのかもしれないが1番重要なのはお互いの心の繋がりなのかもしれない。この作品から学んだ事は自分が思ってる事や感情をきちんと伝えないと相手には伝わらないという事。3人共、悩みを抱えながらもがき苦しみ、最後には全員救われた。みんな、苦しかっただろうけどこれで良かったんだと思う。
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揺さぶられました。
何て言うか、心の中、それも普段自分でも蓋をしている深いところを覗かれた様な気分になります。
だからこそ、自分でも言葉に出来なかった本音を代弁してくれる様でもあります。
1人の女性と2人の兄弟を中心に、章ごとに視点と時間軸を少しづつ変えながら、連作短編として物語は進んで行きます。
章ごとにしっかり感情移入にして、すぐに引き込まれました。
一気読み必至です。
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同じ地元の商店街で育った性格の違う二人の兄弟と幼馴染の女性、それぞれの視点で展開する大人の恋愛小説。
恋人となって付き合いも長く、結婚も目前に迫り、周囲は祝福ムード―でも自分の気持ちは晴れず、むしろ別の男を思い浮かべる。自分の想いを告げられない相手を想い、気持ちに反して別の恋に向かう。結婚相手の本心に気付きながらも、見て見ぬふりをして幸せを装う。そんな理性と感情と行動がちぐはぐな登場人物たちは、妙にリアル。
恋人や結婚相手を前に、100%この人で間違いないと思い日々を過ごす人はどれくらい居るのだろう。きっと現実でも、表には到底出せないような想いを抱えつつ、理性とモラルで抑えながら穏やかな日常を作り上げている人が大多数な気がしてならない。私も然り。
でもそれが人間で、人間くさくて悪くないな、と思う。
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言いたくても大声で言えないことを、ここまでズバッと書かれると、どうすればいいのか……。「いんらんおんな」というキーワード、どストレートでした。
商店街という狭い世界でいろいろなものを飲み込みながら生きている人々と、「誰にも遠慮はいらないの。なんでも言葉にして伝えないと。どんな小さなことでも。幸せが逃げてしまうよ」と言うマリアさんと……。
登場人物が、ことごとくズルイ人ばかりでしたが、これが人間模様なのかな。
圭ちゃんに幸あれ。
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読んでいる間のドキドキ感がたまらない。
みひろと、圭介と、裕太の、読んでいて苦しいほどの三角関係。
三人とも、不器用だけど一生懸命に生きてるのがよく伝わってくる。
窪美澄さん、毎度毎度、面白い作品を作ってくれてありがとうございます!
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良くも悪くも全てが筒抜けの小さな商店街で育った兄弟と、その幼馴染。
父と自分を捨てて出て行った母親を許せず、それでもその母親と同じようになっていく(かのように感じる)自分を持て余す女性を中心に、なんとかパワーバランスを取ろうとする兄弟と、彼らを取り巻く人々。
全体にこれはしんどいなぁという物語だけど、最終章には救われた。
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う、うーん・・・嫌いじゃないし、好きな部分もある・・・けど、ちょーっと物足りない感じ?
でも、みんな幸せになって欲しいな♪
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その体温が、凍った心を溶かしていく。
29歳のみひろは、同じ商店街で育った幼なじみの圭祐と一緒に暮らして2年になる。
もうずっと、セックスをしていない。
焦燥感で開いた心の穴に、圭祐の弟の裕太が突然飛び込んできて……。
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この物語はフィクション。
物語の中にある、登場人物も街も会社も、もちろん実在しない。
けれど、登場人物達の感情や悩みや、心の動きは現代の人達のリアルなものだと思う。
こんなに嫌味なくエロくなく、生と性の関係性を描けるのは窪さんだけなんじゃないかと思います。
誰にも遠慮はいらないの。
なんでも言葉にして伝えないと。
どんな小さなことでも。
幸せが逃げてしまうよ。
この一文が凄く好きです。
私は、きっとこれからも窪さんの作品を読み続けます。