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電子書籍
義経の悲劇
著者 著者:奥富 敬之
薄幸の生涯を終えた、という人物像が先行する義経。はたしてそれは本当なのか。歴史のうねりの中で翻弄され続けてきた義経の知られざる実像を、兄頼朝との対比を通して史実に沿って検...
義経の悲劇
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義経の悲劇 (角川選書)
商品説明
薄幸の生涯を終えた、という人物像が先行する義経。はたしてそれは本当なのか。歴史のうねりの中で翻弄され続けてきた義経の知られざる実像を、兄頼朝との対比を通して史実に沿って検証。真実の義経像に迫る。
※本作品は紙版の書籍から口絵または挿絵の一部が未収録となっています。あらかじめご了承ください。
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紙の本
義経の実像を兄頼朝との対比を通じて描き出す。随所に新鮮な知見が盛り込まれた素晴らしい歴史書。
2004/10/07 23:22
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ブルース - この投稿者のレビュー一覧を見る
来年2005年度のNHK大河ドラマは、宮尾登美子の小説『宮尾本平家物語』を脚色した『義経』が放映される。単に、悲劇の武将を主人公にしたストーリーではなく、義経を巡る家族や女性達との係わりも充分描き込んでいくという。果たして、どのような義経像を見せてくれるのか大河ドラマファンとしては楽しみである。出版界も来年の大河ドラマを当て込んで、この英雄のことを書いた一般向けの歴史書もぼつぼつ刊行される。管見の限りでは、本書の他にも、岩波新書の『源義経』、ミネルバ日本評伝選シリーズの中の『源義経』、など興味深い本が相次いで出版予定となっている。
本書は、角川選書の一冊として、この10月に刊行されたばかりであるが、高名な日本中世史家によるものだけあって、コンパクトで平易に書かれていながら、多くの新鮮な知見が盛り込まれた内容の濃い本となっている。
一般に義経と言えば、仇敵平氏を天才的な戦略で打ち破り、あまりの大功ゆえに兄頼朝から疎まれ、逃走と流浪の果てに奥州平泉で討たれ不運な短い生涯を終えたとされている。この悲劇の天才武将としての義経像は、能・歌舞伎・
映画・テレビドラマ・小説などで繰り返し描かれていて深く世間に流布している。しかし、このように巷間に伝えられている義経像は、どの程度事実を伝えているのであろうか?
本書は、歴史学から、その問いに答えようとしたものである。著者は、冒頭で、義経の悲劇の発端となった兄頼朝との不和は何故生じたのかと問い掛け、その原因を両者の成育史から探っている。これは、なかなか新鮮な視点かと思われる。兄頼朝は、早くから源家の総領として育てられ、父義朝亡き後は伊豆に流刑となるが、小さいながらも一種の所領(本書では「喝命所」と表記)も与えられていた。関東に根を下ろすことで、当時の関東武士団が時の貴族政権からどのように圧迫されていたのかを実際に見聞きすることも多く、在地領主たちの喜びと悲しみをつぶさに体験することが出来たのではないかという。一方の義経は、父の敗死後は鞍馬寺に預けられるが、やがて出奔して各地を流浪し、糧を得るために「土民百姓に服仕」するような底辺に近い悲惨な生活を送り、後年の大功を立てるまでは所領らしいものを持たずに育った。(これは、当時の歴史書「吾妻鑑」の中で、後年の大功を立てる以前の義経のことが御曹司と呼称されていることからも立証されるという。御曹司とは、一族の長の屋形の一室を与えられたのみで所領を持たない身分を指す。)当然、関東武士団とは全く異なった環境で育ったことになり、この辺りに兄頼朝が目指していた関東独立・鎌倉武家政権樹立の大業を理解出来なかった淵源があったのではないか。著者はこのように言うのであるが、肯定できる見解と思われる。本書は、このように鮮やかで手堅い手法で、義経の栄光と悲惨を辿っていく。義経のことを書くとどうしても悲劇の武将という面が強調されがちだが、感傷的にならずに曇りない史観でその軌跡を描いている著者の姿勢は共感が持てる。
なお、本書では、義経に劣らず頼朝についても触れられており、この武家政権創始者の歴史の動きを見る目の確かさとシャープな動きが史料の裏づけをもって的確に書かれている。また、鎌倉御家人たちが独断専行の多かった義経を非難する時でも、頼朝は後々までこの弟をかばい温情をもって遇した気配があると当時の文書から指摘している。義経のことを書いた本の中ではどうしても頼朝の冷酷な一面が強調されるのだが、本書はこの点でもバランスの取れた歴史書と言えよう。
本書は、背景に日本中世黎明期の熱い歴史のうねりも同時に描き出しており、義経ファンのみならず、広く歴史を愛好する読者に是非一読を薦めたい。
電子書籍
頼朝と義経
2021/08/19 15:32
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:福原京だるま - この投稿者のレビュー一覧を見る
義経が頼朝の意向を理解できずに勝手に任官したことで関係が修復できなかったことがわかる。ただ頼朝が関東独立の意思を強く持っていたというのは言い過ぎなとこがあるように感じる。