紙の本
「血塗られた夏」(Blutsommer)
2016/07/27 23:32
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投稿者:kapa - この投稿者のレビュー一覧を見る
今年「月の夜は暗く」(アンドレアス・グルーバー)に次ぐ二冊目となる酒寄進一訳ドイツ・ミステリー。酒寄氏のあとがきによると、昨年購入して読んでいた「悪女は自殺しない」(ネレ・ノイハウス)・「漆黒の森」(ぺトラ・ブッシュ)・「ゲルマニア」(ハラルト・ギルバース)の三冊とともに、氏ご推奨のドイツ・ミステリー大型新人デビュー作であり、全四冊を読んだことになる。
主人公は事件分析官と女性のコンビ、事件は被害者の体・臓器の一部がなくなるので、「解体屋」と呼ばれる猟奇的な事件と、「月の夜」と同じく、構図は似ている。また、「月の夜」は、連邦刑事局事件分析官へのキャリア・アップを目指すミュンヘン市女性刑事ザビネーであったが、こちらは、すでに若き事件分析官のエリート女性クリスト。(クラリス・スターリングと同じく?)スタイル抜群の美人プロファイラー。こちらの事件分析官アーベルは、スナイデルのように犯罪者の心理を読み解くスタイルではなく、遺体と「対話」する(「しばらく遺体と「二人」だけにしてほしい」)手法でその声を聴くことで、犯人像に迫っていくスタイル。麻薬は吸うは、本の万引きはするは、というワルのスナイデルに対し、アーベルは変人、しかし二人ともその能力は抜群というところも同じ。そして二人の主人公は、過去のトラウマに捕らわれている。クリストはアーベルのノウハウを貪欲に学び取ろうとするが、その変人ぶりについていけず、凸凹コンビになってしまうというところも似ている構図だ。このコンビでのシリーズ化はないな、と思ったら、お互い死の淵を彷徨う体験をしながら、事件が解決したことで、急速に関係改善、最後は次回作を期待させる関係になっていく。本書の現代は、「血塗られた夏」(Blutsommer)だが、2014年に第二作Blutdaemmerung「血塗られた黄昏」が出ており、このコンビでBlut(血)を主題にシリーズ化されるようだ(グルーバーは、1回限りのコンビであったが、Tod(死)を主題にシリーズ化)。
本書の遺体の状況、殺害と「解体」の描写など著者が「解体屋」ではないか、と思わせるほどリアルな描写である。それも当然で、著者は丹念に関係者へのインタビューと現場を取材したようだ。少ししか登場しないが、ぜひシリーズで再登場してほしい法医昆虫学者なる専門家が実際にいるというのも面白い。そう言えば、「羊たちの沈黙」でも、遺体についていた虫が犯罪解明の端緒となっていたことを思い出した。著者自ら言っているように、やはり「羊たちの沈黙」にインスパイアされたところは多い。誰がクラリスで、誰がハンニバルかは、その立場こそ違え読み進めていけばおのずと判ってくる。また、事件のプロトには、デンゼル・ワシントンとアンジェリーナ・ジョリーのコンビの「ボーン・コレクター」を思い出させる。
スナイデルのような気の利いたセリフはないが、アーベルがラジオを通して犯人に自らの分析結果を説明するところは、おそらく事件分析官の能力の見せ所としておいているのだろうが、私としては、アーベルが被害者の遺族への事情聴取で、これまた型破りな方法で、遺族の抑圧された心理を癒していくところが、アーベルの人間味を感じさせるところが気に入った。そしてこの遺族からは、思わぬ形で捜査の協力を得ることになるのだが。また、クリストとアーベルの会話シーンが節目節目で挿入されているが、その微妙な変化も二人の関係の今後を占うものとして読むと面白い。おまけに、(本人は死の恐怖に抗っているのだが)タカビーのクリストのちょっとしたお色気シーンもあり。
紙の本
犯人の異常性が際立つ
2017/05/17 21:42
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投稿者:J・P・フリーマン - この投稿者のレビュー一覧を見る
事件分析官アーベルと新米事件分析官のハンナが猟奇殺人事件の捜査を担当する。途中でアーベルとハンナがお互いひかれあうようになるけど、そうなるのに急性感が否めないです。犯人の名前はわかっているのに、その正体には驚かされました。そういう伏線だったのね。しかし、〇〇を武器にする主人公なんて初めて見たよ。
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う~ん
2017/06/05 00:22
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投稿者:読書灯 - この投稿者のレビュー一覧を見る
割と退屈な始まり方で、最後まで読めるか危ぶまれたが、主人公アーベルが独特なやり方で犯人をプロファイルし始めてから面白くなってきた。
しかし、いい感じに事件が進んだところで唐突に挿入される主人公の子ども時代の回想や事件とかなり関係ない相棒とのラブシーンには参った!
あと一歩で犯人が分かるかもっていう時にいい仲になり、色ぼけした頭でまったく犯人に興味がなくなってしまう主人公二人組。
ドイツの警察の捜査能力を疑ってしまう。
挙げ句の果てに事件は誰あろう犯人自身からのタレコミにより一気に進展、解決。
笑うしかない。
それでも作者は性格がよい人なんだろうなと感じさせるお話だった。
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グロ耐性あるけどなかなかきつい描写も多い。
プロットもシンプルやけどこれでいいと思う。キャラは個性あって尚いい。
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ドイツ発の警察物。事件分析官=プロファイラーが主人公となるが、決して万能ではない。・・・どころか、いささか偏屈な主人公のキャラがよく描かれている。パートーナーとのぎくしゃくした関係が徐々に固まっていく辺りはよくある横糸ではあるが、丁寧に描かれているので違和感はない。
そして、人形遣いのキャラ、そして少しずつ犯人に肉薄していく過程がじっくりと描かれていて全く飽きることなくラストまで読めた。
ドイツ物だと、セバスチャン・フィッツェックが有名だけど、このライナー・レフナーも完成度では引けを取らない。
北欧物といい、次々と英米以外のミステリー作品が読めるようになったのは嬉しいけど、新作もしっかり出してほしい。
フィッツェックとか新作が来ないし…。
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ドイツのケルンで起こる連続猟奇殺人事件。被害者は老若男女を問わず、切り刻まれ、臓器の一部が抜き取られるなど惨たらしい仕打ちを受けています。心に傷を持つ気難しい刑事局の事件分析官アーベルは、この事件に手を焼いたケルンの刑事警察に招かれ、若い女性事件分析官クリストとともに、犯人との対決を繰り広げることに…
主人公のアーベルは、風貌は冴えない中年男(ハンサムではあるようです)で、仕事(事件)に没頭するあまり家庭は崩壊。別の男と再婚している元妻には、子供にもなかなか会わせてもらえない有り様です。
ヒーロー然とはしていませんが、それでも、仕事の腕は超一流で生きたまま伝説と化しつつあるほど。
ラジオで犯人に向かって語りかけるシーンは、静かで落ち着いてはいるものの凄みがあり、背筋が震えます。
余談ですが、雫井修介さんの「犯人に告ぐ」を彷彿とさせるシーンでした。
そんなアーベルの相棒となるクリストは、三十路に差し掛かったばかりの美しく優秀な女性刑事であり、事件分析官の候補生です。
彼女もまた、両親の離婚により、離れて暮らす父親との仲がギクシャクしているという問題を抱えています。
自ら望んで、アーベルの相棒となったものの、彼の言動には辟易することばかりで、本当にやっていけるのか、読者としてもハラハラさせられます。
そして、警察やマスコミからは「解体屋」と呼ばれ、自らを「人形遣い」と名乗る残虐な犯人。
本書では時折、「過去」というタイトルで、その出生から少年時代のエピソードが挿入され、彼自身も壮絶な過去を持っていることが明かされます。
とはいえ、同情はできても共感はできませんが。
彼ら三人に、ケルンの刑事警察の捜査責任者である首席警部や、アーベルの上司などが絡みながら、派手さはないものの、物語はスピーディにサスペンスフルに展開します。
リーダビリティも高く、翻訳ものが苦手という方にもオススメです。
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【ネタバレ】ドイツ人著者によるドイツが舞台のサイコパスミステリー。Aと思わせておいてB、Bと思わせておいて・・・という鮮やかなどんでん返しには見事に騙されました。本国では続編も出版されているそうなので、この先が楽しみです。
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カバーに、“事件分析官アーベル&クリスト”とあるので、シリーズとして続くみたい。“事件分析官”とは、プロファイリングとさらに科学的な分析も行いながら捜査に加わる刑事のようです。「クリミナル・マインド」に、ほんのり「リンカーン・ライム」を加えた感じかな。主役のコンビは、有能だが変わり者の分析官と、彼に戸惑い反発する若き女性助手という典型的なパターンで実にわかりやすい。
ドイツミステリだがアメリカンな雰囲気でストーリーは進む。よって映像としてイメージしやすい。猟奇殺人を扱ったドラマとしてどこかで観たような感覚で読んでいた。かといって退屈するのではなく、骨格やディテールはしっかりしているので安定感はある。でもライトな感覚は否めない。ドイツや北欧ミステリってもう少し重めのイメージが強いのだが、こういうのも悪くはないか。でも毎回こんな感じだと飽きが来そう。
本国では「事件分析官」を扱った作品も多く、本作品は人気のシリーズなのだとか。主役コンビの関係が安直で気に入らないけど、何作かリピートしたい気にさせるお話でした。
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ものすごく飛び抜けたものがあるわけではないし、キャラクタは思わせぶりなのに深いところには踏み込んでいないし。
でもだから? シレッと読み終わってしまった。
シリーズの1作目と考えたら掴みは十分。訳者のあとがきも思わせぶりだし、次も出たら読むと思う。
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ドイツの大型新人デビュー作。
あらすじ
ケルンで起きた連続猟奇殺人は、被害者の体や内蔵の一部が失われ、血液がなかったため、〈解体屋〉事件と呼ばれていた。地元警察の要請で、伝説的事件分析官あーベルと、若き女性クリストが事件解明にあたる。どうやら犯人は「人形遣い」と名乗る、警察関係者のようだった…。
すごく期待して読んだけど、予想とは違った。登場人物ひとりひとりがなんか芝居がかっている。事件の真相が私には猟奇的だった。全体的に読みづらかった。デビュー作だからかな?
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重すぎず暗すぎず、適度にスリリングで一気読み。事件も人間関係も真新しさに欠けるが、エンターテイメントととして気楽に読める作品。ただかなり薄味だったので、すぐに記憶が薄れそうだ。
イギリスや北欧のミステリに比べるとかなり大味。様々な要素や設定で中途半端さが目立ち、謳い文句ほど中身が伴っていない印象。犯人も容易に分かってしまい、読者を欺く仕掛けもあるにはあるが、捻りが足りない。
超法人類学者ハンターシリーズ『骨と翅』の超ライト版な感じ。
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初ドイツミステリー。途中で犯人は分かった それに付随する嫌なエピソードも想像通り。ただそのまま終わらず二転三転するのだが..犯人の背景・動機?は最近ではありきたりで 先日読んだ「アレックス」「イレーヌ」に比べると深みやじんわり心に入り込んでくる怖さは感じられなかった。主人公二人が心を交わすのが唐突で 心境の変化が??って感じだった。続編も出版されているらしが それならばもっとゆっくり二人の関係を育てて欲しかったな。でも途中で飽きず一気に読める面白さはあったw
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ハンナの怒りのスイッチがどこにあるのかわからない。えっ⁉ここ、怒るとこですか?みたいな…。怒りの導火線短すぎるやろw プライドのたけー女だな。
アーベル元妻のリザの方が同性から見てもぜーったい、いいよ。しかし悲しいかな、元さやに戻ることはもう不可能なようで…。アーベル、逃した魚はあんたが思う以上にでかかったぞよ。
犯人の持ってる人形が、表紙の絵の人形と、全然違うんですけど。そっち系の人形だったとは…。表紙の絵、まぎらわしいのと妄想のじゃまです。
犯人のグロさは悪くはないが、同じドイツ人作家ネレ・ノイハウスの刑事オリヴァー&ピア・シリーズのほうが全然好きだな。
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久しぶりの創元推理文庫。400頁超の推理小説を久しぶりに読んだので、最初は目の動きと認知に要する時間??にだいぶギャップがあって疲れました。。。
読めてた筈の早さで目を動かしてたら、全然目が文字を拾えてなくて前の文章に戻る、みたいな。何か名称があるのかな、あれ。
読んでから大分日が経ってしまったので、感想というより取り留めのなくなってしまった雑感を以下に。
ドイツの新人ミステリ作家。
連続猟奇殺人。
遺体の声を聞くことができる変わり者のホームズ(ベテラン分析官)と、彼に反発しながら成長していく優秀なワトソン(新人)。
うーん、ミステリスキーのキラーワードてんこ盛りですね。ごちそうさまです!
ただ、残念なことに、本作に関しては誉田哲也のストロベリーナイトを読んでる時に経験したことを再体験してしまいました。
犯人が登場した瞬間に、「あ、こいつホシだな」って分かっちゃうやつ(悲)。
犯人が出てきたページをドッグイヤーして、後のページは伏線回収のために読み進めました。この人物が犯人ではないという描写がどこかで出てくるんじゃないか、大ドンデン返しがあるんじゃないか、、、、そう思いながら、ヒロインを窮地に陥れる犯人が姿を現した時、安堵とも失望とも取れる溜息が出たのでした。やっぱお前かーい!って(笑)。
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別シリーズの1作目と勘違いして購入したのだけど、これがラッキーなことに、かなり面白かったのだ。
サイコもいいとこな猟奇殺人モノなのはアレだけど、アーベルとハンナのやりとりも含めて、何度も息を呑む展開に唸らせられた。
ちょっとリンカーン・ライムシリーズの2人を思い出させられたかな。
正直、ミステリー自体というより、この2人の今後が気になって、これからも読みたいと思ったよ。