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漱石日記
著者 平岡敏夫編
漱石は明治三十二,三年から大正五年の死の年まで断続的に日記やメモを書き残しており,それは全集版で八百ページを超す大部のものである.そのうちからここにはイギリス留学の日記,...
漱石日記
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漱石日記 (岩波文庫)
商品説明
漱石は明治三十二,三年から大正五年の死の年まで断続的に日記やメモを書き残しており,それは全集版で八百ページを超す大部のものである.そのうちからここにはイギリス留学の日記,修善寺大患時の日記,明治の終焉時の日記など,漱石の生涯の節目となった時期の日記七篇を収録.行文から人間漱石の内奥の声が響いてくる.
目次
- 目 次
- ロンドン留学日記
- 『それから』 日記
- 満韓紀行日記
- 修善寺大患日記
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紙の本
生の漱石も面白い
2011/12/01 14:04
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ががんぼ - この投稿者のレビュー一覧を見る
膨大な量のはずの漱石の日記から、文庫用に編集したものらしい。作家自身は読まれるのを嫌がるだろうが、読者とすればこうしたものを読めるのもまた味わい。
というのも漱石という人は面白いのだ。長編の評価は、フランス文学サイドなどから厳しいものがある。一般読者からも、大したことはない、と言われることも少なくない。かりにそうでも、面白さは否定しがたいと思う。内容だけでなく文章がいい。柄谷行人のやったことは漱石のいわゆる再評価になるのかもしれないが、写生文を評価している。あまり虚構の入らないものがいいという考え方もあろう。それは人柄の魅力、ということにもつながるような気もする。癇癪持ちだから、実際会っていたらどうか知らぬが(それでも弟子は多い)、読んでいる分には魅力的な個性だ。というわけで『硝子戸の中』のような随筆集もいいが、より赤裸な日記もまた魅力。
全体を七つに分けてある。異文化衝突の苦労がしのばれる「ロンドン留学日記」、病との対決がスリリングな「修善寺大患日記」、そしてあからさまな内面を露呈した「大正三年家庭日記」が、とくに魅力がある。なかでも最後のは印象が強いが、ここまで公開していいのか、という激しい奥方批判。神経症もあるだけに、ほとんど乱心と見えないこともない。夫人の眼からの本もあるので読み比べると面白いかもしれない。病気の重さもあったのだろうが、死を直前にした最後の「大正五年最終日記」ではむしろ落ち着いている。最後まで『明暗』を書いていたのだからさすがだと思う。
紙の本
多角的な読み方をすると、漱石の日記はおもしろい。
2011/08/12 07:53
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:浦辺 登 - この投稿者のレビュー一覧を見る
夏目漱石のロンドン留学時、『それから』執筆時、満韓紀行、修善寺での療養、明治の終わり、大正時代の日記が2つ、計7つが掲載されている。
この日記のなかでおもしろいのは、ロンドン留学時のことである。欧米の帝国主義のなか、教養の無いイギリス人が日本人を軽視する態度、日本人はエライといいながらも東洋においてはという表現、白人種と結婚しなければ日本人は人種改良できないという意見など、ナショナリズムに目覚める漱石を見る思いである。
また、日露戦争終結後、南満洲鉄道総裁である親友の中村是公の招きで満洲、韓国を旅行したが、すくなからずアジア人種に優越感を感じながらも白人種に対する嫌悪感もある。著名人の日記は記述を追うだけでは面白みはない。しかしながら、漱石が満洲、韓国の旅を終えたとき、伊藤博文暗殺事件が起きている。このとき、中村是公も伊藤博文の随行員としてハルビンを訪れ銃弾を浴びているので、一歩間違えば朝日新聞特派員夏目漱石も銃弾の餌食になっていたのでは、などと推察した。
漱石はロンドン留学時に精神を病んだといわれているが、それが顕著に表れているのが大正時代の日記である。読んでいても、被害妄想、躁鬱病の躁の気があるのではと思える。さらに、そのことで漱石が悪妻呼ばわりした鏡子婦人も随分と精神的に追い詰められていたのではないだろうか。大正3年、この文庫でいえば213ページに出てくる「静坐」という単語だが、前後の「静坐」という言葉からしてこの時代に流行した丹田呼吸法による岡田虎二郎の「静坐法」のことだろう。
ただ、総じて、漱石がこの時代の文壇の寵児であったことは間違いなく、交友関係の華やかさが窺い知れる内容となっている。こういう日記の類は作品だけではなく、関係する友人知人、事件などを知って読むと漱石の思想背景までが窺えて面白い。
紙の本
文筆家の日記というもの
2001/04/18 17:27
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:雨模様 - この投稿者のレビュー一覧を見る
もちろん偉い人、夏目漱石の日記。
ですが、雨・陰・曇、の一字で日記おしまいの日だとか、「昨夜しきりに髭(ひげ)を撚(ひね)って談論せしため、右のひげの根本いたく出来物でも出来たようなり」など笑いを誘う記述がふんだんにあって、最初大文豪に対して構えていたものが、はぐらかされた気になります。
非常に神経質そうで、常軌を逸したような振る舞いを、たしか漱石の奥さんがつづったものがあったと思うのですが、日記からはそんなこともありそうな気が。しかし傍目には非常にユーモラスに映る文豪の意外な一面。