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電子書籍
セクシャル
著者 桜井亜美
山奥の廃墟「シティ」で、独自の規則と秩序のもと共同生活を送る子供達。彼らのリーダー・アヤは、誰かを愛したいという欲求を持て余している女の子。ある日、危険な思想に侵されてい...
セクシャル
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セクシャル (幻冬舎文庫)
商品説明
山奥の廃墟「シティ」で、独自の規則と秩序のもと共同生活を送る子供達。
彼らのリーダー・アヤは、誰かを愛したいという欲求を持て余している女の子。
ある日、危険な思想に侵されていると疑われた「シティ」の住人は、警察に連行される。
そこでアヤは、脱洗脳士・鹿城と恋に落ちる……。
愛と性のアンバランスな関係を描く、傑作恋愛小説。
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紙の本
閉じた世界からの脱出
2005/01/02 04:22
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:まさぴゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
桜井亜美作品では、一番好きな作品です。たぶんいくつも彼女の作品を読むと、ほとんど全て同型で同じ世界観なので、なんで特別に「これ」だけが好きといえるのか、という疑問が出ると思います。はっきり言って、どれを読んでも同じだからです。
彼女の作品は、たいていが少女の主観を視点に描かれる一人称小説ですが、「世界が閉じている」ですよね。処女作「イノセントワールド」が出たときに評価されたのも、そこでした。そういえば真っ先に朝日新聞で評価したのは、当時の夫であったブルセラ論争で有名だった社会学者の宮台真司さんです。もともとアエラ等で速水由紀子の名前でライターをしていた彼女に小説を書くことを薦めたのも彼だったようです。一時期は、もしかしたこんなリアルな少女の感覚をかけるのは、同年代なのではと作者が分からず騒がれたのを覚えています。それは、90年代後半から出てきた、援助交際やサカキバラ事件に代表される、「なぜそんなことをするのか動機が理解できない」若者の内面への疑問を背景にした問いかけであったようです。
主人公の少女たちは、愛に飢えている存在でありながら、どこか冷めていて何かを諦めたのか最初から期待していないのか、閉塞感のような透明なものを感じさせます。僕は学者でないので、「これ」をうまく描写できませんが。読めば共感できる人には、よくわかる感覚です。全作品に共通のものです。多分桜井さんが描きたいのは、ひたすら「この感覚」なんだと思います。社会を拒否していて、全てが敵のようで、同時にアパシーに貫かれた終末的な感覚とでもいうのでしょうか。
この「セクシャル」の主人公アヤも全く同型の少女です。ミジュンという女性が創ったシティというカルト集団で、山奥の廃墟の中で自給自足で育ったアヤは、コミュニストの子やカルトの子がそうであるように独自の世界観と哲学を身に着けています。警察に介入されカルトは壊滅し、彼女は洗脳を解く更正機関へ送られます。そこで彼女は、その洗脳士鹿城と恋に落ちます。ちなみに、どうみても鹿城ってモデルは宮台さんですよね(笑)。まぁそれはさておき、その時カルトが壊滅した時のために、ミジュンから都市を丸ごと壊滅させられる毒薬のようなものをアヤは渡されており、東京を滅ぼすか、そうしないかを彼女は悩み続けています。
最終的な結論としては、やはり桜井亜美らしく「切ない美しき自閉」に閉じたままで、終わります。けれども、上の設定で、おもしろくないですか? アヤの思想は、ドイツのワンダーフォーゲルやファシズムにつながる濃い設定だし、「世界を拒否する少女」が「世界そのものを壊すに至る動機」は十分だし、それこそ「ここ」から、閉じた世界を抜け出し本格的な物語が始まる萌芽を感じさせたのに、それが萎んで終わったのが、残念でした。僕としては、ここから飛び出て欲しかった。この批判は、評論家中島梓が、「わが魂は洪水に及び」の大江健三郎に主張したものと同じだと思います。作者が描きたい核とはずれるとは思うが、そこから「世界」を描けたら素晴らしい物語になる感触があるのに、というのが僕の印象です。だから、僕の評としては、「物語が始まる萌芽」の作品です。もちろん、作者にとっては、大きなお世話だとも思いますが。
紙の本
自分自身からの開放
2002/02/04 10:07
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:楓 - この投稿者のレビュー一覧を見る
山奥の廃墟「シティ」で、独自のルールのもと自給自足の生活をする子供たち。しかし彼らは危険な思想に侵されていると疑われ、警察に連行されてしまう。彼らのリーダー・アヤは、そこで洗脳士・鹿城と恋に落ちる…。
誰かに愛されたくてたまらないアヤと、しかしそんな自分の患者であるアヤに戸惑う鹿城。愛と性、嫉妬と信頼、過去と未来。さまざまな逆行するものにはさまれ、アヤは自分が本当に望むものとは何なのかに気付いてゆきます。不器用なアヤ。彼女のとる常軌を逸した行動には理解しかねますが、彼女の苦しみ、悩みには共感します。自分には力の及ばないモノが世界にあまりにもたくさんある、という点において…。
巻末には、女優・真中瞳との対談付。