紙の本
スチームパンク時代のジェンダーフリー
2017/10/31 05:06
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る
これはちょっと間違えて予約しちゃった・・・『叛逆航路』の作者の人の最新刊かと思ってしまった(正確には訳者が同じ人なので、私の勘違い)。表紙やパラパラめくってみたときの主人公の一人称の感じがライトノベルっぽくて、「あれ?」と気づいた。
でも、主人公(女性)が好きになるのは女性、登場人物紹介のところで「性自認は女性」というコメントがあって・・・LGBT的に結構厳密な内容が根底にある?!、と感じて改めて見直した。
タイトル通り、スチームパンクな世界観を利用しつつ、描きたいのは<ガール>なのかもしれない。だとしたら、私の好みだ!
ということでさっそく読みだす。舞台はゴールドラッシュに沸くアメリカのある港町ラピッド・シティ。物語はスチームパンクであり西部劇でもあり、切り裂きジャック的な殺人事件も絡ませ、高級娼館で働く人々の暮らしを活写しつつ、語り手の<わたし>の成長物語でもある。
男らしさとか女らしさとかにこだわることなく、自分を偽らず正直に生きる人たちはたいていなんらかのハンディを抱えている社会的弱者。対して悪役たちは文化的男女の違いに忠実で、頭が固くてあくどいから権力を手に入れている。そんな一部紋切り型の構図がまったく気にならないほど、<わたし>たちは生き生きとしていてとても前向きでナチュラル。この感覚、今でこそ必要というか、これが常識になってほしいというか。
ラノベと勘違いしちゃってすみません(別にラノベを下に見る気はないんだけど、一部表紙があまりにもマニア向けなんで知らないとちょっと引いてしまうのです)。
描かれている時代は19世紀だけど、21世紀だからこそ生まれたスチームパンクSFでした。読後感も最高!
紙の本
エリザベス・ベアの2作品目
2019/07/30 00:55
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投稿者:マック・ディオナー - この投稿者のレビュー一覧を見る
1800年代から1900年代のスチームパンクなのだけれど、その技術レベルや時代背景はぼかし放題。まあ、こんな感じが入っている開拓時代でいいでしょ的な世界。後半のある船にはびっくりしました。吸盤って・・・まあ面白いです。
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内容紹介が気になったので購入。
東京創元社のメルマガでチェックした時はもう少し大人しめの内容かと思っていたが、けっこう派手な内容だったw 割と若い読者を想定しているのかな〜という感じ。
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レビューを書き忘れていたから急いで書いた。出版されてすぐに読んで、途中までで図書館に返したのだった。
創元から出てるにしては、スチパンSFで百合設定。主人公の一人称語りで進むこのお話、私には異色に思えた。アニメのノイタミナ枠なんかでやったら良さそうな話。
筋書きは皆さん紹介してらっしゃるから割愛するが。なんとなく生気のない、無気力そうな主人公の
語り口がしんどく、鋼鉄の街の風景には惹かれるけど、ちょっとあわないなと思って閉じてしまった。
読ませるちからがない本じゃないから、お好きな向きにはたまらないはず。私はもっと、生き生きした主人公のほうが好きだったというだけなので。新味のあるSFがお好きなら、おすすめ。
ちょっとけだるげな少女が戦うのが好きなら、きっといいですよ。
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盛りだくさんな内容で面白かった。思ったより派手なアクションシーンが多かった。縫い子が娼婦の隠語なのは知らなかった。(そこから、という感じだが……。)
街並みの描写が雑多で魅力的。
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SFではないな。
空想冒険科学小説を擬した分野のようだ。
ラノベだと言われても問題はない。
世界観を楽しむのが一番だと思う。
地の文章はそうでもないが、括弧書きの挿入が多すぎて辟易とする。原文が、そう言う書き方をしているんだと思うけども。
ストーリーは単純だが、人物描写や背景の描写は浅い。
面白くないとは言わないが。
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決して面白くないわけでは無い作品なのだが、
タイトルから想像するに、サクラ大戦(帝国華撃団)的な
蒸気で駆動されるパワード・スーツ同士の集団白兵戦の描写を
勝手に期待していたので、予想外に地味な展開に肩すかしを食らったかのような読後感。
でも、ゴールドラッシュ時代のアメリカの雰囲気が楽しめたので良しとしよう。
*** 追記 ***
そういえば、日本語の『みしん』とは、
英語の“Sewing Machine”の“マシン”が訛ってできた
和製英語でしたね。
だから語源的には、ミシン(Machine)が
パワードスーツに変形しても問題ないとの理屈なのかしら。
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一昔前の香りのする近未来のアメリカ,サンフランシスコのようなラビッド・シティを舞台に、娼婦のカレン達が自分たちを守り闘う友情あり恋愛ありの物語.縫い子やミシンというありふれた言葉と少し違った働きをする物に始めは慣れなくてわかりずらかったりするが,少女達の生命力溢れる姿に引きずり込まれた.
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19世紀後半のアメリカ北西部の港町をモチーフにしたスチームパンク小説。
ラピッド・シティの高級娼館モンシェリで働く主人公カレンが、別の娼館から足抜けしてきたインド人の美少女プリヤをかくまうところから物語は始まる。
カレンはプリヤに一目惚れしてしまい、プリヤのために彼女の妹を救出しようとして……っていうお話。
スチームパンク小説なので、いろいろなアナログガジェットが登場するんだけど、なかでも注目はカレンが乗り込む甲冑型ミシン!(いったいどんな構造なのー?)
この小説の世界では、甲冑型の機械っていうのはごく普通の工業製品で、甲冑型ミシンもそのひとつ。
ただ、モンシェリのミシンは、カレンの仲間にしてマッドサイエンティストのリジーが改造して汎用的な動きもできるようになっちゃってる、っていう胸熱なガジェットなのだ。
敵方のバントル一味は、もっと強烈というか悪辣なガジェットを持っているんだけど、ネタバレになっちゃうからここでは内緒。
そのほかに自動調理機や手術機(なぜ娼館にあるのかは察して……)なんてのもごく日常的な道具として利用されていて、ガジェット好きにはたまらないかも。
とはいえ、ガジェットよりも活躍するのが実は馬だったりする、というのもこの小説の面白いところ。
馬に寄せるカレンの愛憎が、物語を前に進めていく大きな要素になってるんだよね。
もちろん、クライマックスではガジェット同士が盛大にドンパチしてくれるから、スチームパンクの王道?は外れていない。
ハッピーエンドで終わるし、敵方もロクでもないやつらばかりなので、スッキリと勧善懲悪エンタメとして楽しむことができる。
ところで、ラピッド・シティの特徴でもある新道っていうのが絵的によく分からなくて、情景がうまくイメージできなかったんだけど、訳者あとがきでシアトルにそういうのがあった、って書いてあったからググッてみた。
観光名所になっているシアトルの地下街(Seatlle Underground)がそれで、画像を見てから小説を読むとラピッド・シティの街並みがうまくイメージできるんじゃないかな。
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ファンタジー。SF。スチームパンク。
16歳の娼婦が主人公。
100年(?)くらい前のアメリカの雰囲気。
冒険あり、殺人事件あり、アクションありで盛りだくさん。が、なかなか夢中になれなかった。どうしてかな…?
括弧を多用する文章はクセがあるとは思う。
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蒸気機関で動くミシンがモビルスーツ代わりに武器として使うことが出来る19世紀のアメリカが舞台。
売春宿や黒人保安官や中国人やゲイが主要な登場人物を占めていて、マイノリティばかりを描く独特な描写だ。
蒸気歩行ミシンが活躍するシーンはちょっとだけなので、殆んどはストーリーと小物のガジェットで楽しむスチームバンクだ。
面白いけど少し長い。
設定命と言うわけでもないが、設定を活かしきれているとも言い難い。ビミョーな作品。
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ジャンルは一言でいうならスチームパンク百合。女性の職業選択の幅がない時代に”縫い子”=売春婦として働く主人公の一人称小説のため、ちょっとバトルの描写が窮屈に感じるが、主人公は少女ながらプライドも自立心も高いので応援したくなる。主人公サイドが人種やSOGI的な意味でマイノリティで占められているのは、映画シェイプオブウォーターと同じ趣向ですね。
”ミシン”の描写等はアニメや実写に向いていると思うので映像化してほしい。
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例えば、バントルの屋敷の機械がダイナマイトでぶっ壊れるシーンとか、派手な戦闘や爆発シーンなど過激な部分(ついでについでにいうと言うとお色気シーンも)、つまりはアクション娯楽映画でメインになる部分の描写がカットされていますね。これをこのまま映像化すると、1人でキネマの木根真知子姉さんが観たら消化不良を起こして悶えそう。
でも、スチームパンクのガジェットはとっても素敵です。
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マイノリティに焦点を当てたスチームパンク
あんまり描写が細かくないからかなあ、ミシンのワクワク感がもっとあったら嬉しかったなあ
馬に乗る気持ちのとこはさすが素敵だった
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カレン・メメリーは”縫い子”だ。
彼女はモンシェリという館で働いている。
実際に19世紀後半のシアトルで約三千人の女性が”縫い子”として登録されていたそうだ(訳者あとがきより)。
どうして” ”がついているかって?
だって彼女たちは、娼館で働く、娼婦だから。
本書にはアメリカの歴史がそれとなく織り込まれている。
私はなんとなく舞台をイギリスのように感じていたが。
例えばラジウム時計の生産現場で、筆を舐めてその先を尖らせていた女性行員たちに発症した奇病。
放射性物質を摂取したことで起きた顎の骨のガンだ。
この話などが盛り込まれることで、近代と、SFが混ざった独特の面白い世界を作り上げている。
また、主人公メメリーの恋や、解放奴隷の副保安官(かっこいい!)といった、今までの常識を外れたことで、よりその新鮮さが際立つ。
愛しているのに嫌い。
カレンは父を殺し、カレンを娼婦にした馬に複雑な感情を持つ。
様々に揺れ動く感情が本作の魅力だ。
スチームパンクっぽさは物語の後半の方が強い。
やや冗長に感じた前半部分は、それを求めてしまうと物足りないかもしれないが、多様性、矜持、そう言ったものに目を向けてみると面白さを感じられる。