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  3. かしこんさんのレビュー一覧

かしこんさんのレビュー一覧

投稿者:かしこん

731 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

『ポーの一族』、第二幕スタート!

22人中、21人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

『ポーの一族』、40年振りの新作!、ということで掲載雑誌が即日完売で全然手に入らない・・・という事態が続いた昨年の悲劇(?)をへて、待望の単行本化!

熱狂的なファンの方々からは「絵が、線が全然違う」という文句もあったようですが、私はずっと萩尾望都マンガをリアルタイムで読める分は読んできたので(多分、『マージナル』あたりで追いついた気がするので、それ以前の作品の線の細さなどの違いを私はその段階で受け入れている)、全然気にならない。
そりゃ40年もたてば絵が変わるのは当たり前だし、むしろはっきりした線のおかげで「子供のはずなのにずっと大人みたい」と思われるエドガーたちの特徴が強調されたように思う。

タイトルの『春の夢』はシューベルトから。
ときは第二次世界大戦末期。空襲を避け、イングランド郊外の田舎町にやってきたエドガーとアランはある山荘で暮らし始める。
町中でエドガーは印象深い少女を見かける。のちに、その少女ブランカは弟とともにナチスドイツから逃れてきたドイツ人(実はユダヤ人)であることがわかる。過去から逃れてきた姉弟、しかし二人の心には幸せだった時期の記憶も残っていて・・・エドガーはその悲しみに共鳴する。
これだけだったら、これまでの流れで断片的なエピソードのひとつだったかもしれない。
だが、物語は大きく転換を見せる。
ポーの村にいる他の一族とエドガーのつながり、一族ではないバンパイア(バンピール?)・ファルカの存在、ついに大老キング・ポーの登場!、など、これまで触れられてこなかった一族の秘密について少しずつですが出てくることに違う種類のどきどきが。

この物語はこれ一冊で終わっていますが、来年から新たな『ポーの一族』の連載が始まる様子。叙情的ではなく論理的に進む話になるかもしれませんが、それもまた時代の変化というか、そういう流れのほうが求められているような気がするし(むしろそれ私の好みである気がする)。
個人的にはこれまでのアランの我儘さ・きまぐれさがちょっと・・・だった私としては、本作でその理由がわかって納得でした(当時子供だった自分には理解できてなかったです、ごめん)。でもアランのそんなある種の無邪気さがエドガーの救いになっていたことは感じ取っていたので、それが確信に変わってよかったです。
ブランカの変容は、『すきとおった銀の髪』にもつながるようで・・・切り口は変わってもやはり世界観は揺るがないのだとためいき。
ストーリーテラーとしての萩尾望都の衰えを知らない確かなチカラを思い知らされました。

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紙の本

『亜里沙とマリア』に引き続き、和田慎二傑作選(書籍扱いコミックス)の2冊目が登場!

17人中、17人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

最初はタイトルだけの告知だったので、「『愛と死の砂時計』と『オレンジは血の匂い』か」と予測・・・実際に本を手にしたら、帯に<神恭一郎VS西園寺京吾>の文字。
このふたりは昔の友人ではあるけれど、直接戦ったことはないはずだけど。
どうやら、神恭一郎作品の代表作ともいえる2編に、西園寺京吾の作品も収録されているから、という意味らしい・・・あぁ、びっくりした。

『愛と死の砂時計』は<和田慎二版・『幻の女』>。
でも今回改めて読み直してみて・・・まず視点が違う(『幻の女』他、身に覚えのない罪で投獄される男の側から描かれているけど、これでは男の内面描写はほとんどなく、彼の婚約者視点で物語が動く。 少女マンガだから、と言われるとそれまでですが)、そして中盤でもう犯人が読者にはわかってしまう! 探偵役が真相に近付くにつれ手掛かりを持つ人物が先んじて殺される、という展開だけで十分ハラハラものなのに、犯人が身内にいると早々にばらした上で一緒に犯人を追うのだからハラハラ度倍増! 元ネタを越えよう!、という気概を感じます。

『オレンジは血の匂い』も、和田慎二復讐シリーズ(?)の中で好きな作品の上位に食い込む作品(今は『深海魚は眠らない』がダントツの一位なのですが、それが現れるまではこれがほぼ一位だった。 『銀色の髪の亜里沙』は別格)。
カメオのつくりかたもこれで学んだ。 その当時小学生、以後、大学生ぐらいになるまで「カメオのつくりかた」が一般常識ではないことに気づかなかった!
この作品は細かな章立てが特徴で、結構めずらしいかなぁ(他には川原泉の『銀のロマンティック・・・わはは』ぐらいしか思いつかない)。
ヨーロッパ観光ツアーのように各地を転々とし、ヒロインは命の危機に瀕し、と今思うと二時間サスペンスドラマ要素てんこ盛りなのに、和田慎二世界においては一切がなんの違和感なく存在してしまうすごさ。

『パニック・イン・ワンダーランド』は<マンガ・ファンロード1号>に掲載されたお遊び原稿。 和田慎二レギュラーキャラクター勢揃い。 これだけ1985年のものですが(他の作品は1973年・74年)、人気マンガ家であるが故の企画モノ。

そして『バラの追跡』。
海堂美尾と西園寺京吾の出会いを描いたものですが・・・前半が私の記憶と全然違う!
でもラストは同じで、なんでだろうと思っていたら、和田作品で唯一のリメイク、『バラの追跡』を読者の対象年齢をあげてもう一度新たに描き直した『バラの迷路』があるとのこと。 自分が読んだのはそっちだ!
美尾さんはその後、神恭一郎探偵事務所の秘書として働くことになるので、彼女の人生は『スケバン刑事』でもやんわり語られますが・・・(そこで、西園寺京吾と神恭一郎の繋がりも判明)。
こうやって別作品の登場人物が繋がっていくのがまったく不自然にもやっつけにも感じられないのは、裏シナリオがきっちりつくられているからだろう。

あと、美内すずえロングインタビューと、いろんなマンガ家さんからのトリビュートイラスト集。
美内すずえロングインタビューはそれなりに読み応えあり。 全盛期の仕事のやり方等は勿論面白いし興味深いのだけれど、いちばん切なかったのは、訃報のあと、悲しみを紛らわしたくて和田作品を読みふけろうと思ったのに、自分のは書庫に仕舞っていてすぐに出せる状態じゃないからとマンガ中心の本屋に行ったのに、若い店員さんに“和田慎二”が通じなかった、というくだり。
「いつの間にこんなことになったんだろう・・・」、という言葉が、重い。
なので、更なる作品集の刊行を希望!

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紙の本

このサイズで読める至福

16人中、16人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

和田慎二傑作選ということで、書籍扱いコミックスですが、大きな版で読めるというのはとてもよろこばしいこと(その分、お値段も少々張るけどお金では代えられない)。

『銀色の髪の亜里沙』に出会ったのは小学生のとき。 それから何度繰り返し読んだかわからない。 しばらくぶりに読んで驚いたのは、「こんなにページ数が少なかったか?!」ということ。 特に地下洞窟の部分はもっと長かったような気がしていた(それだけ、思い入れが深かった)。
『大逃亡』はその当時古本屋さんでも手に入らなくて、でも『スケバン刑事』で沼さんの昔語りとして大筋は知っていたものの、全編読むのは初めて。 それでも初めて読んだ気がしないのは、<和田慎二フォーマット>がすでに出来上がっていたからだろう。

このサイズでいいので、昔のノンシリーズの傑作(『呪われた孤島』・『朱雀の紋章』などなど)も再版してほしい。 『パパ!』シリーズで一作もありかと。 お値段は多少高くてもかまいません!
そんな夢を見てしまいたいくらい、この本の発売はとてもうれしい驚きでした。

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紙の本

事件記者の真骨頂をここに見る

13人中、13人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

犯罪ルポものを比較的読み漁っている身としては、筆者の前作『遺言-桶川ストーカー事件の深層』(文庫化に際してタイトルのメインとサブが逆になりましたが)は当然読んでいたので筆者のことは知っていたし、なにかのタイミングでかその当時の日本テレビでの特集(最初は『バンキシャ!』だったと思う)をリアルタイムで見ていた私にはなじみの内容である。
事件で自分は冤罪だと訴えていた方に無罪確定・釈放というのは勿論めでたいことだとが(何年・何十年も理不尽に閉じ込められた方に「めでたい」と表現するのは失礼だとは思うのだが、誤りが正されたという意味で「めでたい」という言葉を選んだ)、私がいつも感じるのは、「じゃあ、真犯人は誰なの?」ということ。 マスコミ報道は冤罪に至った過程を検証するけど、それも重要だけど、真犯人の存在について言及する例があまりに少ない、と常々思っていた。 だから、「あくまで真の目的は真犯人の検挙」という筆者の姿勢が好きなのです。 だから<足利事件>の冤罪証明は途中経過に過ぎない、という発想に同意。

なにしろテレビ報道をそのときは期待して見ていたので、「あ、あの部分は書かれてないんだな」といろんなことを思い出す(主に被害者家族の言葉が印象に残っていたのだが、あえてそちら方面にはあまり踏み込まないようにという気遣いかもしれない。 必要最小限かつ重要なことは記載されている)。
「真犯人らしき男について、実は特定している」という報道も見た記憶はあって、でもそのあとどうなったのかわからなかったのでこの本を読んでみたわけですが・・・そうか、もうちょっと、というところで3.11が来たのか・・・私の記憶も飛んでいるはずである(ただ、何故真犯人と目される男に筆者が辿りついたのかの説明がぼやかされていて、そこは少々イライラするところではある。 でも確たる証拠がないし警察も動いていない以上、プライバシーその他は守らねばならない)。

当時科警研が進めていたDNA型鑑定の弱点についてつっこまれて、それを証拠として有罪が確定した案件までもひっくり返されることを恐れる警察・検察・裁判所・法務省などひっくるめてこの事件に知らんぷりしたい・・・という組織側の姿勢を激しく糾弾しつつ、真犯人に対してもケンカ(?)を売っているのがこの本の骨子といってもいいかも。 「ジャーナリズムは公正中立」というお題目にとらわれず、自分が知りたい・やりたいようにやってしまう、だから結構私噴も丸出しで、第三者的視点から語るのではなく自分の言葉で突っ走ってる感じが、私は好きである。
スクープをつかんでも、すぐ発表したらどんな影響があるかわからないのでそれを確認してから、なんてのはある程度当然のことかと思いきや出来てる人、少ないよね~、と感じさせられたりした。

『バンキシャ!』出演時に<(桶川ストーカー事件の際に警察よりも先に犯人を特定した)伝説の記者>と紹介されたのに対し、心の中で「伝説ってなんだ、俺はまだ現役だ」と毒づくなど、私の好きな職人肌頑固おやじ的要素をこの人が持っていると感じられるから好きなのかもしれない。
事件を風化させないために雑誌にも連載し、それでも当局が踏み込まないのでこの本の刊行を決意した、とのこと。 一刻も早い解決を望んでやまない。 そして、他のすべての未解決事件についても。
刑事ドラマ全盛の世の中なのに、実際の警察組織がお粗末なのは恥ずかしいよ。
ハードカバー刊行時以降の動きについても触れられているが・・・解決までにはクリアすべきことがまだあるようです。続報を待つ。

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紙の本

整くんの天然パーマの髪型がすばらしい!

12人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

これは1月発売の新刊ですが、ちょっと気になっていて・・・。
そしたら、電子書籍で「期間限定お試し版」が出ているのに気づき、さっそくダウンロード。無料ですが、お試し版なので冒頭のほうしか載ってないんだけど・・・面白い!
なので速攻、仕事帰りに実店舗で紙の本を購入。

主人公はカレーを愛する一人暮らしの大学生・久能整(くのう・ととのう)。
ある日、警察が訪ねてきて近所で起こった殺人事件について彼から任意で事情聴取を・・・というのが第一話。
マンガでは珍しい会話劇! 筆者も舞台劇をイメージしたみたいなことをあとがきで書いているので、その雰囲気、わかります!(← つまりそれはドラマ化にもしやすいということでもあるのだが、キャストと演出のハードルは高いぞ)
『ミステリと言う勿れ』と言いながらちゃんとミステリなんですけど、そうじゃない部分(?)も同じような台詞量だし、整くんにしてみれば自分が事件を解決するって意識がないからかもしれない。個人主義で、ドライで、シビアなことも平気で言うけれど、整くんの言葉はどこか伊集院大介が話すことにも通じている気がする。だから? どっちにしろ、整くんがにくめない。
第二話が途中で終わっているので・・・早く続きをお願いします! 単行本派なんで(2018年2月19日読了)。

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紙の本

表紙には<門外不出!>とありますけど・・・。

11人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

3冊目の和田慎二傑作選(書籍扱いコミックス)が刊行!
なんと<『パパ!』シリーズ>メインである感じ・・・この調子ではノンシリーズのミステリ作品もまとめられる日が近い!、か?!

収録作品は、順に、
  リョーシャとミオ (雑誌未掲載)
  洋子の海 (雑誌未掲載)
  冬の祭
  ケンタッキーのクマ母さん
  お嬢さん社長奮戦中!!
  姉貴は年した!?
  パパ!
  パパとパイプ
  バニラ・エッセンスの午後
  ホットケーキ物語
  パパ! ネーム

『冬の祭』以降は読んだことがあり・・・多分『超少女明日香』などのマーガレットコミックスに併録されていたもの、かなぁ。<恵子とパパ>シリーズはもっと他にもあったと思うんだけど・・・ライダーたちがもっと騒いでた作品あったような。『キャベツ畑でつまづいて』・『時計じかけのオレンジ・ジャム』もそうじゃなかったかなぁ? ページ数の都合? 版権問題?
ただ『ホットケーキ物語』が最初の単独作品で、そこから着想が広がってシリーズ化したものと思っていたので、実は2作目だと知ってびっくり。そりゃ「パパを死なせるな!」という苦情(?)が殺到したのは当然でしょう。

門外不出とされた『洋子の海』は別冊マーガレットのマンガスクール金賞受賞作とか。実質デビュー作なのに、何故雑誌に載せられなかったんだろ? 主人公がOLさんで読者層より年上だからとか?
『お嬢さん社長奮戦中!!』なんかは超懐かしい。まだこの頃は信楽老は普通の悪役です。
『ケンタッキーのクマ母さん』を出されると、『クマさんの四季』を読みたくなるじゃないか!
若干目玉に乏しく、<恵子とパパ>もコンプリートではないが、「今、読めない作品」ばかりなのは事実。それにしてもあの時代は少ないページで濃密な作品、多いよなぁ。 『冬の祭』のミステリ加減は『呪われた孤島』やのちの『スケバン刑事』へ通じるものを感じますし。
お値段はマンガと考えるとお高いのですが、続刊を出していただくためにはやはり買うしかないわけで。
4冊目の傑作選、待ちます!

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紙の本

紙の本萩尾望都SFアートワークス

2016/06/26 06:52

裏表紙は『百億の昼と千億の夜』

11人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

表紙が目に入った途端、「おぉ、『スター・レッド』!」とつい声が出てしまった。
萩尾望都のSF作品を中心としたカラーイラスト集。 作品についての作者コメントつきとあれば、そりゃほしいですよね!

私がリアルタイムで萩尾望都の雑誌掲載作品を初めて読んだのは多分『モザイク・ラセン』。 その次が『A-A´』(これはとてもショッキングだった・・・)。
なのでそれ以前の作品は、当然ながら後追いで読んでいたわけです(でも『モザイク・ラセン』のときにはあたしはすでに萩尾望都を知っていたので、ほんとに最初に読んだ作品はいまいちはっきりしていない。 旧文庫版の『11人いる!』かなぁ)。

これもいちいち思い出話がつきないのでやめておきますが、萩尾望都が新しいものに対して常にいい意味で貪欲で、新人の新しい作品もどんどん褒めたりするところとか、勿論ご本人の性格もあるだろうけど、絶対「SF好き」だからではないか、と思う。 だから新しいものに抵抗がない・固定概念に縛られないのだ。

ハヤカワ文庫のために描いた表紙イラストなども収録されており、「あ、これ知ってる!」と別の意味で懐かしい(タニス・リーの『闇の公子』とか、まさに表紙につられて読んだなぁ、的な)。 ページをめくりつつ、まったくもって私は実に充実した小学校高学年~中学~高校時代を過ごしたのだのだなぁ、とヨロコビをかみしめる(今もまだ続いているけど)。
絵や作品に関して、ご本人の短いながらもコメントがついているのがただの画集と違うところ。
結構いいお値段でしたが、後悔はない!

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紙の本

やっぱり表紙は『摩利と新吾』なのだな~。

10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ずっと、世間的には木原敏江は過小評価されているのではないかと思っていた。
でも、このような形でムックが出たのは、すごくうれしい!
あぁ、なんてゴージャス。

私が初めて木原作品を読んだのは、小学生のときの『アンジェリク』。
全5巻のプリンセスコミック版は、何度も繰り返し読んだため(そしてその後、妹もはまったため)、ヨレヨレ。コマ割りからセリフまでほとんど覚えているのに、家を出てからやはり読みたくて文庫版を買った。なのに新装版も買っちゃったくらい、私はこの物語に今も夢中である。
LGBTの人に「(性的少数者に対する)あなたの理解力と共感力、偏見のないフラットな見方はどこから来るのですか」と聞かれることがあるのですが、それは自分ではわからない。もしかしたら、ずっと木原作品を(そして萩尾望都や青池保子、竹宮恵子作品も)読んできたから、かな。
リアルタイムで読み始めたのは『夢の碑』の途中ぐらいから。それまでは過去作品を古本屋さんで漁ってました(そして結構泣いていた)。『摩利と新吾』も完結していたのではないかしら。
そんなわけでものすごく私はこの人の影響を受けている。
だからちょっと高いけど、このムックを飛びついて買いました。
ご本人インタビューに、胸をときめかせるたくさんのカラー原稿(あぁ、この絵、綺麗ですごく好きだった・・・とかつい思い出す)。
なにより楽しいのは木原敏江×萩尾望都×青池保子の三者対談!

そしてつくづく思うのは・・・編集者の存在って大事だなぁ、ということ。相性の合う編集者と組んだときはすごくいい作品になるし、いまいちな編集者のときは意思疎通もろくにできてなくて構想に対して短すぎる連載期間になってしまうことも。そんな山谷があってもこれだけの作品を残してきている・・・やっぱりすごい人だと思う。
収録されている『封印雅歌』・『夢占舟』を読んでじぶんでもびっくりするほど泣いてしまった。多少大判で、新しい印刷で、となると更に胸に迫るのかしら(特に『封印雅歌』はかなりカラー復元バージョンだったし)。
私自身はファンレターとか出さないタイプなので、「読者からの反応が薄くて落ち込んだ」と聞くと大変申し訳ない気持ちになる。今からでも出したほうがいいかしら・・・(『夢の碑』でいちばん心えぐられたのは『風恋記』と『雪紅皇子』です!)。

現在連載中の『白妖の娘』は現在単行本が2巻まで出てますが、4巻で完結予定とのこと。
「これが最後の連載」とおっしゃってますが、『杖と翼』のときもそうおっしゃっていたので、そんなことはないと思いたい。いえ、密度が濃いから短編でもいいんです、描き続けてください!
<エレガンスの女王>という称号は初めて聞いたけど・・・まぁ、確かに。でもそれだけでは絢爛豪華な作品群のことを言い尽くせてはいないんだけどね。
選ぶ言葉の美しさとリズムに、もっと注目したコラムがあってもよかった。まぁ愛読者ならば、すでにわかっていることですが。
以前の作品の復刻が難しいなら電子書籍化を進めてほしい。『ダイヤモンド・ゴジラーン』とか『無言歌』とかいろいろまた読みたくなってしまったから。読んだらまた泣いちゃうんだけどさ(『アンジェリク』だって数えきれないほど読んでいるにもかかわらず、同じところで泣くからね)。
少女マンガ界において比類なき語り部。木原敏江に影響を受けたマンガ家は大勢いるが、フォロアーと呼べる人はどこにもいない。萩尾望都や青池保子と同じく、彼女もまた唯一無二の存在。彼女の読者でいられて、私はとてもしあわせだ。

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紙の本

紙の本現代思想の遭難者たち

2016/05/30 02:51

増補版、待望の文庫化!

8人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

これの最初の単行本を持っているのですが、いつの間にか増補版が出ており、今回、その増補版での文庫化、ということで・・・確かに読んだことない章がある!
その第3章はギャグのキレがよりいつものいしいひさいち節で、思想家たちのキャラを自分のものにしてしまった強みを感じました。

もともとは<現代思想の冒険者たち>というシリーズ全集の月報に載っていた4コママンガ。 20代の私は図書館から順番関係なく一冊ずつ借り出してちびちび読んでいましたが、いつしか月報の4コママンガがいちばんの楽しみになり、そのギャグを理解したいがために本文を読んでいた、ような気がする(ギリシア~近代ぐらいまでなら結構親しみもあるのですが、現代哲学はユング以降さっぱりだったもんで)。

で、これだけ一冊にしてくれればいいのに、と思っていたので最初の単行本を持っているのです。 でも・・・遅ればせながら完全版を手に入れて、満足。
思想家のことは結構頭の中でごっちゃになっているので、これで復習できそうです。

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電子書籍

素晴らしい終幕。されど終わってしまうのが寂しい。

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ついに出ました、最終巻。 徳川の、江戸時代の終わり。
生き残っている人たちの言葉はそれぞれに重く、「うおぉ」と読みながらうなり、じわっと涙がにじむ。
将軍が女であったことは世界的に見て国の恥であると語る西郷隆盛の言葉にギリギリとこぶしを握り締めていると、それにばしっと叩きつける和宮の言葉にスッキリするけど、やっぱり泣いてしまう。
でもいちばん好きな言葉は、和宮さんの「何言うてはるの 私はいつだって私です」。

「ジェンダーのことが意味わからん」な人たち(年齢性別関係なく)はもうこれ全19巻を読んでくれ!、と心底思うわけです。
ただ、電子で特別版を買ったのはちょっと微妙だったかも。
紙で買って、電子通常版も買えばよかったかも?

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紙の本

紙の本ユニコーン ポーの一族

2019/07/22 01:12

表紙はマットな手触りに銀の型押し。二人はこんなプリントの服を着ているのではなく、あくまでイメージ映像。

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

<新世紀の“ポーの一族”>、二冊目の単行本。
長編だった『春の夢』と違って、今回は短編集。
なれどバリーという新キャラクターをめぐる長編という見方もできる(時代があちこちに飛ぶので章立てが変わる、とすれば)、更に一族の秘密や“エディス”後のエドガーとアランにかかわる事実がいろいろと判明する、かなりつっこんだ話になってます!
それがいいのかそうじゃないのか、好みがわかれそう・・・。

2016年、ミュンヘンに現れたエドガーは憔悴している。ファルカらは久し振りの再会を驚きと喜びで迎えるが・・・(“私に触れるな”)。
あとは過去の話なので、2016年の話の続きが次の巻になるのかな、と思います。
“エディス”後のことは「知りたいような知りたくないような・・・」の気持ちが私にも少しあるので、リアルタイムで『ポーの一族』を読んでいた人・大ファンだったけどその後萩尾望都作品にあまり触れてこなかった人たちが反発するんじゃないか・・・という危惧を感じます。いや、『春の夢』のときに「絵の変化についていけない」人たちがいっぱいいたから、そういう人たちはこっちは読んでないかな。そのほうがお互いの精神衛生上にいいような気がする。

もともとの『ポーの一族』に比べると格段に台詞は多くなっていますが、あちらは主に<人間界に紛れ込んだバンパネラ>たちの話(なので短い時間しか生きられない人間から見たら彼らは永遠の謎)、こちらは<人間のいる世界に生きているバンパネラ>たちの話、と土台が違う気がするので単純な比較は無意味かと。完全に主役はバンパネラたちで、人間は添え物というか、彼らが出会うその他大勢に過ぎなくて。
むしろ、長く生きてしまうが故に感情的なわだかまりをいつまでも抱えて生きていかなければいけない、忘却という安らぎがないという悲しさがより強まる。
だから、それが<執着>という感情につながっていくのかな、と、<アラン=イノセント>を求め続けるエドガーに涙なのです。

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紙の本

『11人いる!』は世界に通用するSF

7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

『ポーの一族』に続き『11人いる!』まで大判で復刻(カラーページ・2色印刷や綴じ込みポスターも再現)・・・でもこれは<プレミアムエディション>ではないようだ。
紙質が違う(マンガ雑誌のものと似ている)ため、本体は大きい割に軽い。
だけど大判で読めるのがやはりうれしいのですよ。
『11人いる!』と続編『東の地平 西の永遠』収録。できれば『スペース・ストリート』も入れてほしかったけど・・・『東の地平 西の永遠』のシリアス具合を考えるとバランスが・・・かしら。

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紙の本

やっぱり、買った!

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2・3年前に復刻版が出たばっかりでは!、と思ったのですが・・・「現在の最高の技術で全てスキャンし直し、モノクロ原稿を美しく再現することを目指した」というので・・・お高いのですが予約しちゃいましたよ(上下各税抜2600円!)。

大きいサイズの『ポーの一族』は持っていないのです。パーフェクトセレクションのときは『スターレッド』だけ買ったけど、気づいたら全作絶版になっていたので「買っておけばよかった」と後悔したのです(『トーマの心臓』も愛蔵版を持っていたけど、今手元にはないから)。
というわけで届いたこちら、開いた瞬間、「わっ、ページがおっきい!!」とびっくりする。台詞の活字もすごくでっかい。ベタ(黒塗り)の色がすごく濃い! 連載時のカラーページも再現ということで・・・B5判のまさに雑誌サイズで読めることにものすごいうれしさが。
小学館文庫版を回数的にはいちばん読んでいたので、もう絵の迫力が! 面積的に約3倍の大きさですので目に飛び込んでくる勢いが素晴らしい!
何回も繰り返して読んできた作品ですが、改めて読みふけってしまう。
エドガーは「呪いを引き受けた子供」の真骨頂。
来月から始まるという『ポーの一族』新章がとても楽しみです。

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紙の本

紙の本アウシュヴィッツの図書係

2016/12/30 20:12

ディタにとって本の存在はまさに、「絶望に差し込む希望の光」。

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

1994年、アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所には、いつ来るかわからない国際監視団の視察をごまかすためにつくられた子供たちの為の学校が存在した。 そこには青少年のリーダーであるフレディ・ヒルシュが尽力してつくり上げた蔵書8冊だけの秘密の図書館がある(のちに、「物語を語れる者」が「生きた本」として登録される)。
フレディに図書係を任命されたのは、14歳のチェコ人少女ディタ。
その仕事は、本の所持など禁じられている中、ナチスに見つからないよう日々隠し持ち授業の間に先生や子供たちに回し、一日の終わりには無事に“図書館”に戻すという危険なもの。 だが、ディタはその任務も、本を手近に扱えることも誇らしく、うれしかった。
これはそんなディタとその家族・仲間たちの(アウシュヴィッツにいるという<非日常>における)日々の記録と、日常化したナチスによる強制収容所の運用が淡々と同時進行で描かれている。 そんな、事実に基づく物語。

途中から、描かれるところの少女たちの姿が、ブラッドベリが描くところの少年のように思えてきた(少年のように描かれているのではなく、その本質に詩的に迫っているという意味において)。 少年にとって少女たちは永遠の謎で、何を考えているかわからない。 けれど少女たちは考えている、少年以上に少年とは違う次元で。 少年と少女は、夢見る世界の方向が違う、現実との折り合わせ方もまた違う。
そう感じたら、全体の文章もどこかブラッドベリぽく勝手に思えてきて・・・もしも彼がアウシュヴィッツを描いたならば(多分ありえないけど)、こうなった部分があるんじゃないか、という気さえした。
これは原文のせいなのか、翻訳者の技量故なのかわからないけれど、なんとなく・・・こちら側にフィットする何かがあったのだ。 とてつもない残酷なことをさらりと告げる一文の軽さのようなもの。 現実なのにどこか現実ではないような。
それを私は<詩的>と感じたのかもしれない。
たとえば、地の文で、

1944年3月8日の夜、B2b家族収容所にいた3792人の収容者がガス室に送られ、アウシュヴィッツ=ビルケナウの第3焼却炉で焼かれた。

と、この一文でその章をしめくくるように。
これは「事実を基にした物語」であるが故に、<著者あとがき>もまた本文に含まれる。
そこで語られる“現実の後日談”こそが読者をさらに打ちのめし(当時アウシュヴィッツの存在に懐疑的だったユダヤ人に対して真実を告発したハンガリー系ユダヤ人との軋轢が今尚残っているとか、結局同族内においても争いは消えない)、また(ディタのモデルになった女性がいまも生き続けていて、本に対する愛情を失わないでいることなどにも)勇気づけられる。

最近日本でまた<アウシュヴィッツ物>関連の映画が公開されるのが続く。
一時期、「いつまで“ユダヤ人は弱い被害者”像を描き続けるのか」という論争があったことが忘れられたかのように(勿論、近年の映画はかつてのものよりタッチが違っていることは確かだが)。
でもこの本の立ち位置は少し違う。
筆者がスペイン人だということもあるけれど、これは最後まであきらめなかった少女の物語であり、“本”や“物語”がいかに過酷な現実から救ってくれるものであるかという証明であり、アウシュヴィッツにおけるアンネ・フランク以外のアイコンの誕生でもある。
これは歴史、大きな歴史年表に埋もれてしまいそうな、けれど忘れてはいけない歴史のひとコマなのだ。
読んでよかった。 現在のイスラエルがしていることはどうなんだとかそういうことはまた別にして、そんな気がした。

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紙の本

今回の表紙はアンジュー公アンリ

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

『王妃マルゴ』もいつの間にやら4冊目。
一年に一冊出るかどうかのペースだから、1巻目が出てからもう3年ぐらいになるのか、ということに驚く。 作中では、もっと時間が流れているので特に違和感はないのですが。
“萩尾望都、初の歴史物!”、というふれこみで始まったこの物語、実際は「こんなにも自分が“女”であることに疑いをもたず、本能のままに行動するヒロインがこれまでの萩尾望都作品にいただろうか!」というほうが長年の読者としては驚きで、マルゴという人物をとてもハラハラしながら見てきたのですが、<運命の恋>に目覚めてからの彼女は一途な萩尾キャラらしくなり、しかし歴史の流れはその一途さを許さず、昔からのテーマである<母と娘>についてが際立って浮かび上がってくる仕掛け。

でもそのために“歴史”を背景としてただ借りてきたわけではなく、歴史の流れそのものもきっちりと過不足なく描き出す。 このバランス感覚、さすがです。
ちょうど『サラディナーサ』(これはスペインがメイン)で描かれていたほぼ同じ時代、フランスではどうだったのかがこれを読んでわかる!、というあたしのような世界史音痴にも大変ありがたい作品です。 カトリックとプロテスタントとの対立がだんだん明白になっていくところも非常に今日的というか。

マルゴをめぐる3人のアンリのうち、あたしはナヴァルのアンリが結構好きなんだけど・・・悲劇の予感で幕を閉じてしまった。
あぁ、早く続きを!

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