紙の本
政策はどのように形作れるのかを徹底解明した書です!
2018/05/27 11:43
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、徹底的な取材と調査によって、様々な政策がどのように形作られていくのかを解説した画期的な書です。近年発表された政府と日本銀行による「共同声明」や政府が達成すべき目標数値などが、一体、どのように作られたのか。その作成過程で各省庁やざまざまな権力団体がどのように関わっているのか。そういったことを分かりやすく丁寧に解説した一冊です。これを読めば、政界の裏事情までもがよく分かります。
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アベノミクスの形成過程がよくわかる良書。アベノミクスとはつまりは円高と株価対策であったということか。本書において成長戦略が語られないことは、極めて象徴的に思われます。
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2012年11月14日(野田‐安倍の党首討論)から2013年7月1日(日銀短観発表)までの期間、政治家・官僚・日銀・財界・国内外の関係者達が何を考えどういう発言をしてきたかの記録。
アベノミクスの実現(反対意見を排除し、スピード感の強い方針決定)に、人事という飛び道具が重要なファクターとなっていることがよくわかる。
アベノミクスをはじめとする政策の良し悪しについては、各自で考えてくださいというスタンスであるが、安倍政権の国会運営には苦言を呈している。
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金融政策を政党の、そして政府の最重要課題に明記したという点で異形の政策である「アベノミクス」。本書は、時事通信のジャーナリストである著者が、延べ約120人へのインタビュー、公文書、議事録、メモ、日記、備忘録など様々なソースを駆使して、「アベノミクス」という政策について、いつ、どこで、誰によって形成されていったのかの原点を記録しておこうという試みである。
安倍内閣を陰で操っているとも言われる今井尚哉秘書官の影がほとんど見えないなど、安倍内閣の政策決定過程の全てを明らかにできているとは思えなかったが、実力あるジャーナリストらしく、安倍内閣における政策決定の舞台裏を多角的かつ克明に描き出しているという感想を持った。政策決定過程のダイナミズム、また、政治家、経産省、財務省、日銀など、それぞれのプレーヤーの特性がよくわかって、興味深かった。
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経済政策のできる過程を司司への取材から追った本書。
それはいいが、やはり新書、特に岩波新書として出すからには、学術的分析をもっと盛り込んで欲しかった。
タイムラインログとして以上になっていないのが厳しい。
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官僚たちのアベノミクス 軽部謙介著 異形の経済政策の生成過程
2018/4/7付日本経済新聞 朝刊
安倍晋三首相の経済政策はアベノミクスと呼ばれている。異次元の金融緩和に加え、財政政策、成長戦略の組み合わせは「3本の矢」といわれるが、やはり金融政策が前面に出たという点で異形の経済政策といえるだろう。
その政策はいかにして形作られたのか。首相官邸、経産省、財務省、日銀、金融庁、経済界などを丹念に取材し、その過程を克明に検証したのが本書である。インタビューしたのは約120人。驚くような事実が明かされているわけではないが、豊富な取材がその時々の舞台裏を浮き彫りにしてくれる。
たとえば、安倍政権発足前から経産省の一部官僚らがどのようにアベノミクスを準備していたのか。政府・日銀の共同声明はどのようにつくられたのか。アジア開発銀行(ADB)総裁だった黒田東彦氏を日銀総裁に起用する背後で、後任のADB総裁人事にはどんな駆け引きがあったのか――。
極力、価値判断を交えない淡々とした筆致は、アベノミクスを酷評したり、あるいは礼賛したりすることを期待している読者にとってはやや肩すかしかもしれない。それでも同時代を生きるジャーナリストによる丁寧な検証は、アベノミクスの評価や今後のあり方を判断するための貴重な材料となろう。(岩波新書・860円)
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政策を落としどころに収める官僚の調整能力の一端を知れた気がする。政策をめぐる様々な利害の調整は困難なのだと再認識した。
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【混沌からの落穂】2012年の総理就任と同時に,安倍政権の目玉政策となったアベノミクス。その政策の成立過程を追いながら,現代日本の政治システムの内側を垣間見た作品です。著者は。時事通信社で解説委員等を歴任した軽部謙介。
これは名著。政策決定プロセスを考える上でももちろん有益ですが,特に後半に描かれる,政権と日銀の距離感に関する記述と考察が白眉です。新書というとコンパクトかつ軽めの媒体という印象も与えられてしまいがちですが,本書は日本政府の内側にぐりぐりと迫った力作だと感じました。
〜政権がつくられるとき,その政党は特定の政策を実施しようとする。そして,その政策をつくるという意思は,首相→各閣僚→各省庁という形でおりていく。国家意思の貫徹だ。日銀はこのような政治家の意思が貫徹していくべき対象なのか。〜
帰国に伴って久しぶりに読んだ紙の本☆5つ
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第二次安倍政権の誕生とともに金融政策が大きく変わったが、それに至った政治、役所、日銀の攻防が非常に丁寧に、かつドラマティックに描かれていた。当時を知る資料として価値が高いと思う。
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アベノミクスの開始から5年。やっとインフレ2%目標の旗を下ろした。マネーの流れを変えるだけではデフレを抑えるのは無理だった。
残されたのは日銀の大量の国債の保有、国の大借金。景気は少し良くなったかもしれないが、富の集中が進み、庶民の大半は景気の改善の実感がない。
確かに失業率は改善されたが、非正規雇用者が拡大しただけ。この低所得者層は何の蓄えも無く、将来の生活保護受給者予備軍でもある。
特定秘密保護法や安保法などの悪法が推進され、オマケに安倍は憲法改悪を掲げ、総裁3選が確実視されている。
こんな安倍に国民の多くは消極的な支持をしている。もっと真剣に日本の将来を一人一人が考えないといけない。
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周囲に本好きの人は多いが、N先輩はその中でも群を抜いている。
どんな本を読まれるのかお聞きしたら、歴史から医学、財政、福祉、ノンフィクションまで、幅の広さに圧倒されてしまった。「面白そうだから読んでるだけ」と謙遜されるが、忙しい職にあっても新しい本に挑戦される姿勢は見習いたいものだ。
N先輩からご紹介いただいた1冊。
安倍内閣の経済政策アベノミクスは大胆な金融緩和、機動的な財政出動、成長戦略の3本の矢からなる。本書は、第一の矢である金融緩和が、自民党の選挙公約から日銀の政策となっていく過程を、2012年9月の自民党総裁選から翌13年3月の日銀総裁辞任まで辿ったノンフィクションだ。
印象的なことが二つある。
一つは、言葉の扱い方が丁寧なことだ。金融緩和して達成すべきインフレ目標を政府・日銀の共同声明としてまとめるにあたり、財務省と日銀の担当者が協議する。目標2%の明記や達成時期、日銀の説明責任といった点について言葉一つ一つ議論を重ねる。そのやり取りは、似た仕事をしている立場からみても非常にリアルだ。交渉当事者に丁寧に取材し、彼らの意図を正確に理解しなければ書けないと思う。
二つ目は、官邸と日銀の間では結局、実質的な政策議論はされなかった点だ。首相の意思を実現しようと圧力をかける内閣府と「インフレ達成は日銀の仕事ではない」という立場に固執する日銀。もう少し日銀が政権の意図を理解し柔軟に対応していれば、もう少し官邸側が日銀の役割に配慮していれば、違う結果になったと思う。本書の守備範囲ではないが、首相の意向実現のため官邸職員が担当省庁に圧力をかける手法が常態化したことが後日、数々の疑惑を生む土壌につながったのではないかと思う。
いずれにせよ、本書はアベノミクス自体の是非ではなく、その形成過程を記録するスタンスを貫いたことで、政策決定に携わる人間にとって優れた参考書となった。N先輩に感謝。
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本棚で平積みになっていたので気にはなっていましたが、アベノミクスなり経済政策にあまり興味がもてなかったので手に取っていませんでした。しかし、ブクログでフォローしている方が紹介しているのを読むと、テーマは経済政策というより政策形成過程だということ。それならばと読んでみました。おもしろかったです。政治家が旗を掲げて、官僚たちのあれこれの調整がこんなかたちで行われて、具体的な政策としてかたちづくられていくのだというところが。それにしても、かなり生々しい話が盛り込まれていてすごいなあと感心しました。どんな取材をしたのだろう。もし私が取材を受ける側なら、こんな話(特に「あのとき日銀の本音は聞いてたんだけど、交渉のカードをもっておきたいから情報握ってたんだよね」なんて話)、怖くて言えないです(自分の器の小ささをこんなところで感じることになるとは…)。
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アベノミクスがどのように作り上げられたか、第二次安倍政権誕生前からの自民党と経産省、財務省、内閣府、加えて日銀の行動を、アベノミクスの評価はせずにその過程をインタビューから書き起こす。時の政治に振り回されながらも高い事務処理能力で進める官僚の優秀さとそれを動かす政治家の重たい責任を改めて実感する。企業内の政治「的」動きは本物には敵わない(敵う必要ないが)。
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民主党の失敗は、官僚の使い方の間違いも大きいということだろう。
イケイケどんどんな政策の方が官僚もやりがいを感じやすいのだろうが、財政的には配分政策をやらざるを得ないのだから、官僚の姿勢にも問題がある。
ところでアベノミクスの第三の矢はどこに行った?
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政策過程論の学術的な話ではない。ジャーナリストの取材とアンテナによって触診された「アベノミクス」の外形の型取りのようなものと思う。真実は安倍、麻生、甘利、白川にだって全貌としてはわかるまい。彼らだって自分たちの主観と行動を覚えているだけで、全体の力関係がすべて見えていたわけではないだろうから。