電子書籍
少年少女向け
2022/08/17 18:57
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
しかし、大人が読んでも充分な濃い内容です。時代は、第一次世界大戦終わって、ワイマール憲法の制定されるドイツ、ベルリンです。貧しい通りに住むヘレという少年とその家族ゲープハルト一家の物語です。
紙の本
「希望」と「未来」が親子三世代で受け継がれていく大河群像劇
2021/07/07 11:17
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kapa - この投稿者のレビュー一覧を見る
酒寄進一氏訳のドイツ警察小説新訳が最近ない。ピアとボーデンシュタイン・シリーズ新刊『森の中に埋めた』Im Waldが最新。そのほかのシリーズ、ワイマール時代からナチ抬頭までのゲレオンラート刑事物語(フォルカー・クッチャー)、また、第二次世界大戦末期から終戦後の混乱期のオッペンハイマー刑事物語(ハラルド・ギルバース)など、最近ない。いわば、「酒寄」ロス状態なのだが、今年に入って岩波少年文庫として、これらの警察小説と同じベルリンを舞台に、二つの世界大戦の間の時代設定としている小説が登場した(2006年に出版されたものを岩波少年文庫シリーズで再発売)。著者は旧東ドイツ出身の作家クラウス・コルドン。タイトルは「ベルリン1919;赤い水兵」「ベルリン1933;壁を背にして」「ベルリン1945;はじめての春」と『ベルリン三部作』。しかもドイツ革命・ナチス政権成立・敗戦とドイツ近現代史の三つの画期となる年の物語。「1919」ではベルリンの貧しい地区で育った少年ヘレ(ヘルムート)、「1933」では彼の弟のハンス、そして「1945」ではヘレの娘ヘンネと、労働者階級ゲープハルト家の3世代にわたる同じ年齢の子供を主人公とし、彼らの目から見た、激動のベルリンを描いている、トーマス・マンの長編『ブッテンブローク家の人々』のような、まさに「大河群像劇」である。したがってこのシリーズのブック・レビューも「大河」レビューとなる。
まずは「1919赤い水兵」から。舞台はベルリン、1918年11月キール軍港の水兵の反乱に端を発するドイツ革命勃発から1919年1月のスパルタクス団蜂起と鎮圧、ドイツ革命の挫折という3か月余の物語。上巻は革命勃発から1918年末まで。主人公ゲープハルト家のヘレは、社会民主党支持者であったが、革命勃発をきっかけにエーベルトらの社民党から離反し、傷病兵として復員した隻腕の父と貧しい生活を支える母とともに革命の大波に飲み込まれていく。物語の視点は、したがって、社民党に批判的なものとなっており、エーベルトは、資本家と将軍と結託した悪玉の首魁である。
対象年齢が中学生なので、読みやすい文体(おそらく原書でも)で書かれてはいるが、内容的には、革命を中心に、ベルリン労働者階級の都市・住宅・食糧事情などを社会事情も織り込みながら、緊張感溢れる当時の時代を描写している。物語は、ヘレの目から見た革命の実情を中心に展開する。そして次第に政治の理解も深まってきたヘレは、次第に革命を弾圧した社民党に対して批判的になっていく。彼はいずれ父母と同様共産党に入党するだろう。ドイツでは子供は「小さな大人」と扱われる。例えば、兵士の間では共和国樹立を宣言したシャイデマンを「糞野郎」Scheisse-manと馬鹿にしていたことを父が口にするが、このような言葉を少年対象の本に書いてもいいのだろう。その子供の口からは、「死んだ人を直接知らなければ、楽だよな。死者が少なかったって、喜ぶことができる。だけど知っている人が死んだら…。」というように、革命批判のはっとするような言葉が飛び出す。
偶然知り合った若い水兵ハイナーらとともに、子供でありながら革命の現場に立ち会い臨場感のある情景が広がる。エピソードとして政府鎮圧軍の介入を阻止した女たちの行動は面白い。一方市街戦の合間には、学校の同級生との日常、嫌いな先生との対立、また、同じ住宅街の病気のアンニとの淡いロマンス、といった少年文学的な内容もある。また、クリスマスが近づくゲープハルト家の家族模様、とくにわがままな妹マルタ、危うく栄養失調になりそうな弟ハンス坊や、ここでの彼らの姿は、第二部へと引き継がれていくことだろう。
投稿元:
レビューを見る
昨年にデビュー作の「オーブランの少女」、そして「戦場のコックたち」を読んだことで、お気に入り作家となった深緑野分(ふかみどりのわき)さん。
Twitterで、ご本人のアカウントをフォローさせていただいていますが、少し前からこの本を激推しされていて、オビの推薦文も書いておられるということで、発売日に書店を3軒回って見つけ、迷いなく手にとりました。
岩波少年文庫を買うのって何年ぶりかなぁ。
「ニールスのふしぎな旅」、「エーミールと探偵たち」、「名探偵カッレくん」、「レムラインさんの超能力」、「シャーロック・ホウムズ(←この表記がレアねww)」シリーズなどなどなど、小中学生の頃はよく読みましたが、50になろうとする年に買うとはいやはや。
さて前置きが長くなりましたが、本作はベルリンの貧しい通りに住むヘレという少年とその家族ゲープハルト一家を中心に、1919年、1933年、1945年といずれもドイツにとっての激動の年代を描く三部作の物語の第一部です。
1918年の11月革命による皇帝の退位とドイツ帝国の終焉〜ワイマール共和国の樹立、その後のスパルタカス団の蜂起と鎮圧の様子などが、生々しく臨場感たっぷりに描かれます。
それらと現在の僕自身を比べてみて、贅沢こそできないものの日々の食べる物には困らない生活、あるいは戦争とは無縁の生活のありがたさをヒシヒシと感じながら読み進めました。
少年向けというよりは、もう少し上のヤングアダルト世代向けに書かれているようですが、読みやすくかつ読み応えがあり、あらゆる世代の心にささる物語です。
革命が起こってから一区切りの終焉までという意味では、描かれる年代は異なるものの「小説フランス革命」を彷彿とさせられ、また第一次世界大戦と社会主義革命を目指す有志たちという観点からは、舞台となる国は違えど「チボー家の人々」を思い起こさせられました。
ここ1〜2年で読んだ別々の本のストーリーが、パズルのピースのようにカチカチとハマっていく感覚を味わえました。これも読書の醍醐味ですね。
第二部の1933が4月に、第三部の1945が6月に出るそうで、買い揃えることが確定しました。
投稿元:
レビューを見る
20世紀前半ドイツの3つの転換期を、激動のベルリンで生きる、貧しい労働者一家の目線からとらえた『ベルリン3部作』。
「ベルリンは晴れているか」の深緑野分さんも推薦するこの作品に大変興味を持ち、1919上巻を読んでみた。
前半、取り巻く背景が少しややこしく、ちょっとだるいかなぁ・・・って思ってたのが、終盤あたりから、「ヤバい、これ、めちゃくちゃ面白くなる」と感じてきました。
そして、ドイツの歴史を頭に入れて読んだ方が更に面白くなると思ったので、ドイツの歴史を勉強してから下巻、そして1933,1945にうつろうと思います!
投稿元:
レビューを見る
ドイツ革命、激動の3カ月に起きたこと。
その只中で生きる13歳の少年ヘレにとっては、歴史なんかじゃなく、家族や友だちとともに否応なく巻き込まれていく現実。
ヘレの気持ちや生活の描写が丁寧で、ヘレの気持ちで読み進めます。
食べるものも暖房もままならない冬のドイツで、家族や仲間たちの安否を懸念する緊迫感に引き込まれました。読み終えて、ドイツ革命の歴史をおさらいして、また読んでいます。
投稿元:
レビューを見る
1918年冬。第一次世界大戦下のドイツ帝国・ベルリン。ヘレのお父さんが片腕をなくして戦地から帰ってきた。一家の暮らしは苦しく、市民の間でも政府への不満が高まっていた。ヘレも市民革命に巻き込まれ、危険な任務をこなすようになる。皇帝が亡命し、革命が成功したかに見えたのもつかの間、事態は思わぬ方向へ。
あまり語られることのなかった近代ドイツの混沌を子どもの目線から描く傑作。
投稿元:
レビューを見る
何ヶ所、号泣したかなあ・・・
1919年、ドイツ。戦争を終わらせるため、水兵が蜂起したことをきっかけに起こったドイツ革命。それらに命をかけたベルリン市民の闘いを軸に、貧しくも誇り高い主人公ヘレの一家と隣人たちが、世界を、生活を、未来を良くしようと挑む命がけの日々。
大きな時代のうねりをしっかりと描きながら、登場人物それぞれの心の動き、その背景にあるものを蔑ろにしない。とりわけ、主人公ヘレ目線での、家族や友人そして社会に対する心情の描写が素晴らしく、何度も息が止まりそうに切なくなった。
革命がなくても、戦争が終わっても、食うや食わずの苦しい生活の中で、家族や隣人たちと心を寄せ合い、ユーモアを忘れずに暮らすヘレたちの姿に励まされ、その深い人間愛に胸を射抜かれまくりでした。
一ヶ所には到底しぼれないのだけれど・・・
そんな毎日の中でのクリスマス。大切な人へのせいいっぱいの気持ちを贈り合う場面では、彼らの生活や激動の数週間を思うとこみ上げるものが。ラスト近くの送別の場面も、もう泣くに任せるしかない。という状態でした。
こんなすばらしい物語の感想なんてまとめられない!そして、これまで知らないで生きてきたわたしのばか!今読むことができて本当に良かった・・・
投稿元:
レビューを見る
ナチス台頭の前のドイツ、ベルリンの様子。帝政を覆したはいいけれど、また新たな圧政に苦しみ、抵抗する労働者たち。少年の目を通しての描写だから、より純粋で素朴で、せつない。真実を映す鏡のよう。人間がその愚かさに気づくには、100年、200年くらいでは足りないんだな。
投稿元:
レビューを見る
分断によって、友情が壊れたり、人が人を殺したりするようになるのをヘレの目を通して見た。
ここから1933, 1945につながるとのことで、こちらも楽しみに読みたい。
投稿元:
レビューを見る
貧しいゲープハルト一家の子供たちの視点から、20世紀前半の激動のドイツの転換を眺めることが出来る三部作の第1部のお話です。
投稿元:
レビューを見る
子ども向けの柔らかな語り口に反して、突き刺さる内容でした。戦争や革命は私が子供の頃にはもう「歴史」だったけど、この時期に生きていた子どもたちにとっては「日常」だったんだな、と。
戦時中の人々の生活の悲惨さや革命の荒々しさだけでなく、その中で暮らしている人々の葛藤や衝突がとても丁寧に描かれていました。
ヘレとフリッツが仲違いしてしまうシーンはとても悲しかった。父親の思想によって子どもたちの友情が分断されてしまうなんて、とても残酷。
ヘレがこれから何を見て考え、思想はどのように変化するのか。下巻も楽しみです。
投稿元:
レビューを見る
ドイツの児童文学なのですが、65を過ぎたジジーが、昔を思い出して興奮しています。
第1次大戦に敗北したドイツ帝国、労働者の尊重される社会を目指したローザ・ルクセンブルグやカール・リープクネヒトが虐殺される1919年のベルリンの町で「まっすぐ」な中学生が生きています。すでに歴史を知っているジジーの目から見れば、すべてに悲劇的な結末が待っているのですが、生き生きと活躍する少年を描くことで、現代の子供たちに、もう一度「歴史」に目を向ける契機をつくりだしているクラウス・コルドンに拍手です。
近代社会に限らず、ご都合主義の蔓延する日本の子どもたちに比べて、ドイツの子どもたちは幸せだと思いました。
ブログにもあれこれ思い出を書きました。覗いてみてください。
https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/202107120000/
投稿元:
レビューを見る
はじめての海外文学スペシャル2020で三辺律子さんが紹介していた『ベルリン三部作』の第一巻を読んだ。
クラウス・コルドン作、酒寄進一訳、岩波少年文庫
動画はこちら。
https://youtu.be/ch4hv_7FlpU
第一次世界大戦末期のドイツを舞台とした児童文学
この第一巻では1918年の11月から1919年の冬までのベルリンが舞台。第一次世界大戦末期に革命が起こり、皇帝が降り、その後の新たな社会体制について人々が混乱する様子が、貧富の差の激しいベルリン市内の中でも特に貧しい地区のアッカ―通りに暮らす13歳の少年ヘレの目線から語られる。
イベントの中で三辺さんは、子どもの目線から語られていることによって三つの効果が生まれているとおっしゃっていた。
複雑な政治事情などのわかりやすさ、子どもが目にする大人の余裕のなさ、そしてヘレが素朴な心で本質を突いている点だ。
わたしもそれに沿って感想を書いてみようと思う。
ちなみに三辺さんが引用しようとした箇所のツイートはこちら。
https://twitter.com/RitsukoSH/status/1322796215990325249?s=20
子どもの視点に合わせた、わかりやすい説明
確かに私のような、一応世界史選択だったのにほとんど何も覚えていないような人にもわかりやすくて非常に読みやすかった。
わかりやすいというのは単にドイツの歴史の流れというだけでない。どうして戦争は起こるのか、誰が戦争を起こしているのか、といった根本的な疑問についてもきちんと説明されているというのが、非常に勉強になる。
多様な思いが交錯する大人の社会
二つ目の「子どもが目にする大人」に関して、特に私の印象に残ったのは、そこに描かれる大人の多様さである。
『動物農場』っぽい?
読んでいて思い浮かんだのはジョージ・オーウェルの『動物農場』だ。あの作品の中でも様々な動物たちが人間に対して革命を起こした後、それぞれが異なる態度を取るようになる。これは現実の社会情勢を見ていてもとてもリアルに人間を表していると思うし、ロシアの革命とドイツの革命は違うもののはずなのに、この『ベルリン1919』に描かれる人々もまさに『動物農場』に描かれる寓話と通ずる部分が多くあるように見えた。
徐々にあらわになる分断…
さらには、始めは戦争をやめさせ皇帝を退位させるという目的でまとまっていた人々が、それが果たされてしまうとその先に望むものの違いから分裂してしまう様子がとても切ない。
意見が合わなくなってしまった者の中には、いつもヘレが学校に行っている間ヘレの妹に仕事の手伝いをさせて弟の面倒を見てくれるシュルテばあさんや、ヘレの父の親友オスヴィンやいる。
シュルテばあさんは皇帝を神と同一視していて、どんな苦しみも神様が理由があって与えた試練なのだというが、ヘレには納得できない。
一方オスヴィンは平和的解決を願い革命には消極的で、急進派のヘレの父とすれ違う。
ヘレの父が戦地で負傷して帰ってきた際には、帰還を祝いに来てくれたオスヴィンとの間で���治の話が始まるとだんだんケンカの様になってしまう。
オスヴィンが「なにかほかの話をしないか? 再会の喜びがだいなしだ」と悲しげに言い、仕事や旧友の話をしようとするが会話は盛り上がらずオスヴィンは帰ってしまう。
その後に父さんはヘレに
「オスヴィンにはすまないことをした。おれがもどったことをあんなに喜んでくれたのに。おれだってうれしかった。だけど、うそをつくわけにはいかない。」「おれたちは、ぜんぜんちがう体験をして、ぜんぜんちがう道を進んでしまったんだ。それをなかったことにするわけにはいかない。」(p.128)
と言う。
オスヴィンはもともと身体に不自由があったため兵役を免除されていたが、国に貢献しようと意気込んで戦地に行ったヘレの父がそこで知ったことや体験したこととの溝は計り知れない。
分裂していた政党が手を組んで連立内閣をつくることになった際は、そんな団結はいかさまだと憤るヘレの父に対しオスヴィンはがっかりして「いかさまでも、これ以上死人がでなけりゃ、わしはいいけどね」という。するとヘレの父は、革命で命を落とした人々は気の毒でも、戦地では「七十万人が意味もなく死んだ」と反論する。
こんな具合で何度も仲直りを試みながらもやはり意見の相違で行き詰ってしまう二人の関係性が切ないのである。恐らく多くの読者としてはどちらの考えもわからなくはない。どちらも平和と平等を望んでいるはずなのにもかかわらず、どうしてもかみ合わない。特に「団結」か「分裂」かという部分に関する二人の会話は、切実な問題に思えるのではないだろうか。
自分自身の答えを探す少年
ヘレはヘレでそんなオスヴィンに70年前の3月革命についての話を聞きに行く。
「問題は、なにを望んでいるかじゃないんだ。それでどうなるかなんだよ。不正との戦いに身を投じる。聞こえはいいが、はたして報われるのかね? 武器をとって戦ったら、それ自体、不正になりはしないかね? そしたら、またしてもほかのだれかが不正な目にあうことになるんじゃないか? 結局、世界の歴史は不正の連続なんじゃないのか?」(p.246)
オスヴィンの言葉に答えに詰まってしまうヘレだが、やがて何が正しいのか、自分の答えを見つけるという点も個人的に気に入ったポイントだ。
「正義の反対はまた別の正義」なんて言葉が人気だったりするが、確かに完璧な方法で完璧に達成できる完璧な正義なんてものはないかもしれない。しかしどれほど難しいとしても、「最善」というものはあると思うからだ。
ただし、注意しなければならないのは、ヘレの父だって初めからそのような考えを持っていたわけではないということである。むしろ国のためにと戦地に行くことを誇りに思っていたのだ。また、戦地で腕をなくしたが父だって敵を負傷させたり殺したりしていた可能性は十分高いのだ。そこに問題の複雑さが見え、その複雑さに惑わされず諦めずに真実を読み解いていく努力の大切さが浮かび上がるのだと思う。さらにそこで鍵になるのが「歴史」というものだろう。
しかしそんなことを考えながら読んでいると、ふとこれは1919年の第一次世界大戦が舞台であり、この後にヒトラーが��場し第二次世界大戦に突入するのだということに気が付き、無性にどうして?という悲しい疑問で胸がいっぱいになったりもする。
子ども同士の関係にも変化が…
ところでヘレの父とその友人が葛藤する一方、ヘレ自身の人間関係にも溝が生まれる。役人の父を持ち高級住宅街で暮らし私立の学校に通うフリッツとの友情だ。フリッツの父はヘレを息子に悪影響を与える存在として忌み嫌い、ヘレの父もヘレに「あの子はいい子だ。だがうちには合わない」「お前と比べたら、ずっと幼い。」と忠告する。だが父親の意見を取り込んでケンカしてしまったあと、知り合いの元水兵がその友情を大切にするようにという。自分はもともと皇帝派だったが、水兵で仲間に出会って考えが変わったのだと話すのだ。
「戦友たちに出会わなかったら、おれは向こうについていたかもしれない。わけもわからずにな。わかるか?」
「どこの出でもいい。どこへ行くかが問題だ。」(p.331)
意見の合わない人を拒絶して分裂してしまうのは簡単だが、身近な人との間、もしかすると特に子どものうちは、わかり合う可能性というのもあるはずだ。そんな希望が垣間見えるシーンである。
人間の腕は一本いくらか?
このほかにもたくさんの印象的なシーン、不意を突かれるセリフがあるのだが、最後に一番考えさせられたヘレの純粋な疑問をあげておく。
『ベルリン1919 赤い水兵 上』
13歳の少年の視点から語られる戦争と革命。同じテーマの色々な作品そして現実に起こっている様々な出来事と重なる部分もたくさん。社会が変化し立場の違いが浮き彫りになっても互いに助け合い、友情を維持しようとするヘレやその周囲の人たちの姿が1番印象的だった。 pic.twitter.com/jxWwfbeuWv
— Lux (@ariel__1226) 2020年11月15日
「ひとりの兵士が右腕をなくしたとき、それは体の何%?」というヘレの質問、
A. 兵士が労働者で、仕事に両手が必要な場合
B. 兵士が公務員で、左手で文字が書けるようにならなければならない場合
C. 兵士が金持ちで、人に指示を与えるだけでいい場合
っていう条件付きなのが…すごくハッとさせられる…
— Lux (@ariel__1226) 2020年11月15日
武器や兵器にはお金を払うのに、人間の兵士には払わない。人間の身体に値段などつけられないから。といっても例えば腕をなくした時に稼げる金額と、腕があったら稼げるであろう金額には差がある。そしてその差は、誰もが「平等」ではない…それはその人の何%で、いくらのものなのか?っていうところに
— Lux (@ariel__1226) 2020年11月15日
何というか、すべてが集約されている気がする。ヘレが体験して見聞きしたことから導き出された、父さんや母さんたちが正しいんだという答えと繋がっているみたいな…?
— Lux (@ariel__1226) 2020年11月15日
自分でもまだうまくまとまっていないが、この答えられない質問は、例えばBlack Lives Matterのような様々な人権の問題ともつながっているはずだと思う。
まとめ
戦争と革命という社会の大きな出来事によって変わりゆく大人と子供の人間模様。夢中になってしまうような描写の中から、貧し���苦しい生活が変わるときはいつになるのか?現代とも重なる部分がないか?平等とは、団結とは、幸福とは?と様々な問いが生まれてくる、素晴らしい作品だった。
昨日下巻が届いたので今日から読む。
その後
ベルリン1919 赤い水兵 下
下巻読み始めたばかりだけど初っ端からグサグサ来すぎて辛い…兄妹は少しずつだが着実に成長しているし、公正なメディアとは?平和を達成する正しい方法とは?立場の異なる友達と友情を維持するには自分の信条に嘘をつくしかないのか?どこからが自分でどこまでが親の意見? pic.twitter.com/LQNE8afiwk
— MA (@ariel__1226) 2020年11月17日