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紙の本
花と龍 下 (岩波現代文庫 文芸)
著者 火野 葦平 (著)
時代は昭和へと移る。金五郎は若松市会議員となり、すでに押しも押されもしない貫禄の親分である。しかし波止場の近代化の陰に、吉田親分との因縁の対立は徐々に深まる。マンと彫青師...
花と龍 下 (岩波現代文庫 文芸)
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商品説明
時代は昭和へと移る。金五郎は若松市会議員となり、すでに押しも押されもしない貫禄の親分である。しかし波止場の近代化の陰に、吉田親分との因縁の対立は徐々に深まる。マンと彫青師お京、金五郎をめぐる女たちもしのぎを削る。明治から昭和戦前に至る北九州若松を舞台に展開するロマンティシズム溢れる波乱万丈の物語。完結。【「BOOK」データベースの商品解説】
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紙の本
力と力が激突した若松港での港湾ストライキ
2008/05/17 10:36
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐々木 昇 - この投稿者のレビュー一覧を見る
火野葦平も実際に陣頭指揮をとったという若松港での沖仲仕のストライキがクライマックスに登場するが、火野自身、相当な数の左翼系の思想本を読み上げていたといわれる。陸軍に幹部候補生として入営しても、営舎内でレーニンの本を隠し読みしているところを発見され、下士官へと降格されて除隊しているほどである。
その実録小説といわれる本書において、火野は前面に出てこずに父の玉井金五郎を英雄に仕立て上げている。火野にとって、父である玉井金五郎への感謝と鎮魂の意味をこめて書いた作品といわれる由縁である。
実録小説といいながら、読み物としては日本人の大好きな勧善懲悪のストーリーなので、おもしろいようにページが進む。
さらに、男と女の機微が盛り込まれ、特に金五郎とお京のプラトニックな関係がマンの疑念へとつながり、これはこれで義理と人情だけではない面白さを展開する。
あとがきにおいて、火野自身が吉田磯吉一派の分の悪さを謝罪しているが、明治という日本が世界に飛び出ていくにあたっての勃興気、俗に言う若気の至りと思えば互いに水に流せるのだろう。
ましてや、その世界を相手に戦争をし、かつての若松港を舞台にした敵が同志とならなければ敗戦後の混乱期を乗り切れなかったからだろう。
火野自身は文学者戦争犯罪人として追放を受けていたが、海外からは逆にヒューマニストとして、反戦作家として絶賛されているのは皮肉なものである。 いずれにしても、火野自身が庶民や社会の最下層で蠢く者の味方であったということに終始変わりはなかったということである。
玉井金五郎、マンという両親のもとで、火野自身が極めて正義感に溢れた人間らしい人間であったことを偲ぶことができる小説ではないかと思う。
紙の本
玉井金五郎を襲った弾丸は右耳をかすめただけだったけれど・・・
2021/06/01 17:16
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:719h - この投稿者のレビュー一覧を見る
持ち前の底抜けの楽観主義を武器に、
戦前の北九州の一地方港湾都市の、
相当にやさぐれた社会を渡っていく、
夫婦者の姿を描いた出世譚です。
その2人の主人公の夫の方、玉井金五郎が、
日若座で銃撃される場面に差し掛かった時、
2020年12月に中村哲氏の身に降り掛かった
事件が、忽然として脳裏を過ぎったことで、
個人的には忘れ難い読書経験をしました。