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紙の本
白洲次郎への熱烈なファンレター
2005/12/18 23:16
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:GTO - この投稿者のレビュー一覧を見る
これは、著者から白洲次郎への熱烈なファンレターである。ラブレターといってもよいかも知れない。白洲次郎はそれに値する人物である。そして多くの若者につい最近までこのような人物がいたことを、知ってほしい気持ちが私にもある。最近は、何ごとかを成した人物の業績を知るよりも前に、欠点や短所ばかりに目をやる風潮が強い。確かにどんな人物も私たちと同じ人間である。だが、他人の人生を見る時大切なのは、足を引っぱるようにして彼(彼女)を自分のレベルに引きずりおろすことではなく、見習うべきを見習い自分を高めることなのではないだろうか。白洲次郎は、そんな中でも一級のお手本だと思う。他に第一級と私が考える人物は、勝海舟、古田織部、西岡常一、上杉鷹山、坂本龍馬などである。
著者は、読者にある程度の背景的知識があることを前提にしているようなので、この本を読む前に『風の男 白洲次郎』と『白洲正子自伝』を(できれば、『プリンシプルのない日本』も)読んでおくのがよいだろう。そうすれば、著者とは違った面でも白洲夫婦に出会える。
さて、何冊かこの著者の本を読んできたが、彼の不幸は学生時代に生身の良き教師に出会えなかったことではないかと思う。良き教師などというものは、その待遇ゆえ滅多に存在しないのだからしかたがないが、それにしてもこの本に出てくる著者が出会った教師は程度が低い。心を揺さぶるような教師に出会えていたら、これほど遠回りせずにすんだのではと思う一方、だからこれらの作品が書けたのだとも思った。
最後に、白洲次郎のような人物がまた登場する可能性は低くなりながらも、ある。いわゆる教師など必要なからである。しかし、鈴木真吉のような人物が生まれる可能性を失ってしまったことが、日本を衰退に向かわせるのではないかと危惧する。鈴木真吉や西岡常一のような職人(大工以外にも、製造業の世界にはつい最近までたくさんいた)には、よき親方というか先輩とそれを受け継ぐ優秀な弟子が必要だからだ。百姓や職人が尊重される日本を再構築しなければと思う。いま日本にいるのは、商人と役人ばかりである。これは教育だけの問題ではない、社会全体の価値観の問題である。