紙の本
空白は満たされるのか
2016/09/13 15:11
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オオバロニア - この投稿者のレビュー一覧を見る
一度死んだのに甦って復生者として生きる主人公とその家族を描いた長編作品です。上巻では主人公の死の真相が明らかになり、下巻ではその真相と向き合い、前に向かって歩き出す姿が描かれます。
自分がなぜ死んだのか、これからどう生きていけば良いのか。主人公が自分自身と周囲の人々の空白を満たしていく過程を追いかけていくと、死生観について考えさせられます。
上巻のレビューでも書きましたが、本書は感動する作品というよりは深く考えさせられる作品です。哲学的な部分もあり、不思議な気持ちになりました。
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璃久が駆け寄ってくる。
2016/04/30 00:04
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投稿者:soprannome - この投稿者のレビュー一覧を見る
抱き締めるまでは、もうあと少しだった。
この最後の文章を読み終えたあと地下街を歩いていたら、大きな書店に偶然
この作者のサイン本が並んでいた。読後の余韻が残っていたので、そこを
素通りすることが出来ず、思わずその本を手にしてしまった。笑
それはともかく、再度じっくりと読みたい本ですね。
紙の本
空白を満たしなさい
2022/07/25 15:24
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投稿者:gaco - この投稿者のレビュー一覧を見る
上巻の続きが気になり、下巻が到着し早速読んでおります。まだ途中ですが、主人公が死に至った経緯など興味深く読んでいます。
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さて物語は下巻に入り、復生者の全国集会に参加した徹生は、自らの死についての衝撃的な真相を知る。全ての謎が解き明かされ、その気づきからやるべきことを見出していくが…。
ここに到って、徹生の死の真相を語りながら、作者が言うところの「分人」という考え方が提出される。
「分人」とは、対人ごとに存在する様々な自分のことで、たった一つの本当の自分なんて存在せず、対人ごとに見せる複数の顔が全て自分であるという考え方。
嫌いな自分を肯定するには? 自分らしさはどう生まれるのか? 他者との距離をいかに取るか?そういうことを考えると、確かに興味深い考察ではある。
また、人が死んでから遺るものということで〈記憶〉〈記録〉〈遺品〉〈遺伝子〉〈影響〉の5つに整理されていくのも成程と思う。
復生者が次々と再び死にいく中で、いつ来るとも知れぬ死の恐怖に苛まされながら千々に乱れる心情もよく書けていると思うし、何とも知れない性格が遺伝しているのを見て、親としてその子が、そのためにどんな悩みを抱いてどんな損をするかに心を痛める様や、大切な人が亡くなった後、その悲しみを乗り越え、故人を思い出すことを喜びと感じられるようになる〈喪の作業〉の説明など、「死」について深く考えさせられる。
ただ、しかし、何となく御説を拝聴したという印象が強く残り、物語としてのカタルシスに繋がらなかったように感じる。
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全国で生き返る「復生者」たち。その集会に参加した徹生は、自らの死についての衝撃的な真相を知る。すべての謎が解き明かされ、ようやく家族に訪れた幸福。しかし、彼にはやり残したことがあった……。生と死の狭間で「自分とは何か?」という根源的な問いを追究し、「分人(ぶんじん)」という思想が結実する感動長編。
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消えてしまうのかな。
なんだか爽やかな印象を受ける最後だったけど。
凄いモヤモヤ。
何かと解決出来たみたいだけど、自分だったらあんなに潔くなんてできんな。
生き返らなければよかったのに。
最後、絶対思う。
〚分人〛
この考え方はちょっと好き。
穏やかに暮らすのに使ってます。
しがない管理職なりに部下に対する分人。
プロポーズ1年ほったらかしてる相方に対する分人。
私の中のいなくなれば良い分人はどれだろうね。
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自殺する人の心境を考えたことはあったけれど、より実感に近い感覚が描かれていた気がする。
自分も家族も日々、成長。一人も欠けてはいけない。
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そういう終わりなのねー。もやっとするけど本題はそこじゃないので気にしない。
上巻と比較して一気に内容が濃くなる。人間の一生が何を残すのか、とか、人はなぜ自ら死を望むのか、とか。
「分人」って考え方とともに、この本での自殺のメカニズムはすごく印象に残った。
*以下引用*
「ブッダは、一切皆苦だと言ってますよ。生きることすべてが苦しみだと。せっかく死んだのに、また生まれ変わったりしないための宗教です、仏教は。」(p19)
「…アダムとエヴァを追い出したあと、神は独り、エデンで寂しかった。二人の裏切りを憎み、二人への不寛容を悔いた。エデンの美しさは、もう誰のためでもない。以来、神は今も、独り寂しい。」(p42)
「誰も、人間の苦悩する権利を否定することは出来ません。それは、残酷なことです。我々はいつでも、癒しを与えることを急ぎすぎ、自分の住んでいる世界を憎悪から守るのに必死で、他者の苦悩を尊重することを忘れがちです。」(p44)
「苦悩を否定された人間は、悲劇的な方法で、それを証明するように追い詰められます。(中略)生きることに肯定的な人間も、否定的な人間も、同じこの世界を生き、同じ人間としての生を生きています。世界を愚弄され、人生を貶められれば、生きようとする人間は、当然、反発します。自分を守るためです。私たちは、無価値な世界で、無価値な生を生きているなどということには到底耐えられません。それは、恐ろしいことです。」(p45)
「自分を誤解されることは、苦しみではないですか?」(p57)
「私の死が、私の罪の数々を帳消しにし、私の人生を全面的に肯定するなんてことがないように、あなたの死が、あなたの行った素晴らしいことをすべて台なしにして、あなたの人生を全否定するなんて、そんなことは決してないのです。」(p58)
「どんな人生でも、死に方さえ立派であれば、立派な人生だ。それは、人を破滅させる思想です。戦争になると、政治家はこの考え方を徹底させます。たとえこれまでの人生が不遇であっても、最後に国家のために戦って死ねば、国家は立派な人間として、あなたの人生を全面的に肯定する、と。恐ろしい、卑劣な唆しです。…私は、苦しみに満ちた人生を送ってきた人間が、死に方一つで、最後にすべてを逆転させられる…自分の一生を、鮮やかに染め直すことが出来ると夢見ることに同情します。その真剣な単純さを愛します。自分は表面的には違っていても、本質的に立派な人間だったのだと、最後に証明しようとすることを理解します。しかし、賛同はしません。」(p61)
「人間は、生きていくためには、どうしても自分を肯定しなければならない。自分を愛せなくなれば、生きていくのが辛くなってしまう。しかしですよ、自分を全面的に肯定する、まるごと愛するというのは、なかなか出来ないことです。よほどのナルシストじゃない限り、色々嫌なところが目についてしまう。しかし、誰かといる時の自分は好きだ、と言うことは、そんなに難しくない。その人の前での自分は、自然と快活になれる。明るくなれる。生きてて心地が良い。全部じゃなくても、少なく���も、その自分は愛せる。だとしたら、その分人を足場に生きていけばいい。もしそういう相手が、二、三人いるなら、足場は二つになり、三つになる。だからこそ、分人化という発想が重要なんです。」(p96)
「精神科医をしていた頃から、私はいつも、自殺未遂の常習者は、病んだ分人が、健康な分人を傷つけているのだと考えてきたんです。私だけじゃない、世間の誰もが、恐らくそう思っています。病気が…彼の中に住んでいる病人が、彼自身を傷つけているのだ、と。(中略)むしろ逆だ、と。病んでいない分人たちこそが、病んだ分人を殺そうとする。(中略)だったら、わかる。だったら。病んだ分人に、もうこれ以上、苦しめられたくない。だから、みんなで結託して殺そうとする。そういうことでしょう?」(p104)
「あなたのその幸せで、忍び寄る死の恐怖や生きること自体の緊張を、本当に克服できますか?誰よりもあなた自身が、そんなこと、信じちゃいないんですよ。だから虚しい。…図星でしょう?」(p146)
「お前を愛してた。嘘じゃない!俺はただ、この幸せを守りたかったんだ。信じていた!だから、妙な考えにとらわれてしまった、惨めな自分を消してしまおうと、必死で藻掻いたんだよ。」(p151)
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結局,なぜ生き返ったかは不明のままであるが,主人公の死の理由は明らかになる.ただ,その謎解きは主題では無く,家族愛をめぐる物語だった.何故主人公は幸せな暮らしをしていたのに自殺したのか?そこに「分人」という概念で解釈が図られ,また,妻のトラウマが明らかになり,主人公は再び与えられた生を精一杯活かすべく奮闘をする.
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初平野。第七章28、の徹生とラデックさんの会話がとても印象的でした!自己とは何か?を追求し続けた物語。「分人」という考え方はとても興味深かったです^^
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(※直接本文の内容とは関係ありません)
この本で出てくる『分人』と云う考えが当てはめられるとしたら、自分の身内も、とある分人はあまり良い人生では無かったと思っていても、少なくとも自分たちと接している分人だけでも「しあわせだ」と感じていてくれたとしたら救われるのにな、と思いました。この場合救われるのは私の方だけかもしれませんが・・・。
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上下巻 いっき読みしました。
死んだ人たちが生き返る。
それも 2年も3年も経って。
周囲も本人もその出来事に 戸惑いながら なぜ死んでしまったのか。どうやって周囲はその死を受け止めたのか。気持ちを吐露しながら <生き返った>ことを受け止めていく。
自殺志願者の気持ちを 生きている人たちがナントか分かりたい・・・という気持ちが伝わった。
でも なぜ 生き返ったのか? 謎のまま。
わからん。
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友人の薦めで。『私とは何か』を読んでいたので、分人の説明のところはあっさり読んだが、自殺を分人論で解釈するところは目から鱗だった。
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いい意味で予想を裏切られず、後味が良く終われました。なぜか最後どん底になると思い込んでた…。
「死」を区切りとしてとらえず、他人との交わりのなかでの「人生」を考え詰める素晴らしい本でした。
ちょっと教訓めいた思想を感じる。
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やはり不思議な作品だった。
死んだ人が生き返り(復生)し、再び消えていく。
そんなストーリーの中に人間の想いが深く綴られている。
大切な事を簡単に語っているのではなく、じっくりと語っているところが良い。
涙腺が弱い方だが、泣く作品ではなかった。