電子書籍
昭和29年
2022/09/28 23:06
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投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
中禅寺敦子と呉美由紀の二人組は、すごいなぁ。二人がタッグ組むとなんでも出来そうな……。どのお話もかなり、暗くて、おどろおどろしていますが、この、「鬼」も「河童」も「天狗」もそれぞれ……。
紙の本
そりゃないよ京極さん
2020/12/28 00:57
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投稿者:イシカミハサミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
そうじゃなくても京極作品は
似たタイトルが多いのに、
“鬼”“河童”“天狗”合わせたら“月”ってそりゃないよ。
なるべく内容知らずに読みたいからあんまりあらすじ読みたくないのに。
まあ、鬼は未読だったから、ここは“鬼”のレビュー。
でも読まないままでもよかったかな。
美由紀の啖呵がこのシリーズの見どころだけれど、
容疑者の少なさも相俟って、
最後の詰めのシーンが結末がわかってからも長すぎた。
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最初に3話3冊の文庫で出版された時点では、まだ本編を全部読めてなかったこともあって、買いそびれていた。
図らずも合本、しかも講談社文庫で出てくれたのは単純に嬉しい。
やっぱり京極堂シリーズは講談社文庫がしっくりくる。
本編好きなので、スピンオフは(大抵中禅寺も榎木津も出てこないので)いつもちょっと物足りなく感じてしまうのだけど、本作品は予想より面白かった。
やっぱり中禅寺も榎木津も出てこなかったけど。特に主人公気質の榎木津は主役の座を奪っちゃうから、出せないのは分かる。
その代わり、準レギュラー(青木とか益田とか鳥口とか)は惜しみなく登場してきて、中禅寺、榎木津の気配を常に感じることができたのは良かった。
で、噂では、敦子と美由紀のバディモノで敦子が真相に辿り着くけど自分が分かった時点で気が済んで解決しようとしないので美由紀が困る、みたいに聞いていたけど、実際はちょっと違って、敦子は持ち前の誠実さで事件に真摯に向き合ってた。
敦子、理詰めなところが中禅寺に似てる。
それにしても、3話3冊を並べてもこの厚さにはならない。京極夏彦、さすがに加筆し過ぎだと思う(笑)。
(比較してないけど)
ちょっと堂々巡りみたいな会話シーンが目立った。
・鬼…美由紀と敦子の初顔合わせにして、無差別辻斬りの話。鬼の刀に斬られる家系の血塗られた過去と、土方歳三の話の絡ませ方が、上手い。
十二階の歴史も興味深い。
妖刀に取り憑かれた、みたいな感じだけど、まず刀ありきで人間の狂気が表出してしまうのは、『邪魅の雫』の原理に近い。
賀川刑事はまたどこかで会えそう。
榎木津は日光で『鵺の碑』で触れられるべき事件に巻き込まれ中な様子。
・河童…冒頭の、河童で盛り上がる女学生同士の会話が面白い。
京極堂シリーズの登場人物の中で唯一積極的に嫌いな多々良が出てきて、萎えた(笑)。
事件はかなりややこしくて、京極堂シリーズぽい。「高貴な」人の持ち物だった宝石をめぐる話。こういう、史実を取り入れた事件の構築は、京極夏彦のオハコですね。
・天狗…篠村美弥子にまた逢えるとは思っていなかった。キップのイイお嬢様だったから、京極夏彦は好きそう。
友人が高尾山で行方不明になり、解決を依頼しに薔薇十字探偵社を訪ねた美弥子に美由紀は気に入られ、事件の解明に巻き込まれてゆく。
『邪魅の雫』で私の中の青木評価がだだ上がりなので、青木が出てきただけで楽しく読んだ。
青木の敦子に対する感情がお子様な美由紀にまでバレバレで、笑ってしまった。隠せや。
事件の真相は、本当にヒドイとしか言いようがない。
あなたは海軍だけど自分は歩兵、みたいな兵役経験が男性社会の共通の話題として成立してる悲しい時代に、男尊女卑的な考え方は余裕で大勢を占めてたと思うけど、一方で令和の世でもまだ完全に行き渡ったとは言えない超リベラルな平等主義を、昭和29年の女性が堂々と発言することの意外性というか、令和の世に生きる自分が読んでも感銘を受けちゃったりして、この物語世界のそういうところがすご��好き(語彙力)。自分は同性愛にはそんなに抵抗ないけど、この時代から65年経ってもやっぱりまだカミングアウトするには勇気がいる現状を知ってると、明るい未来に期待する美弥子の発言に謝りたくなる。
旧態然とした老害に、通じそうな言葉を選んで冷静に語りかける敦子は、やっぱり中禅寺の妹である。
榎木津は河口湖に出かけている。このあたりまで京極夏彦の脳内にプロットが出来上がってるのか(期待)。
これで物語世界が昭和29年の秋まで進んでしまった。
「ゴジラ」の封切りもすぐそこだ(笑)。
個人的には、やっぱり時間軸は本編に先導してもらいたい。
しかし、京極堂シリーズが講談社ノベルズ/文庫に戻ってきて、きっと大幅に加筆した京極夏彦の意識下にも物語世界が戻ってきて、『鵺の碑』の刊行もいよいよ現実味を帯びてきたのではないか。
めちゃ期待してるんだけど。
歴史的瞬間(大袈裟)に立ち会えますように!
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・京極夏彦「今昔百鬼拾遺 月」(講 談社文庫)を 読んだ。これは分冊で 出てゐた鬼、河童、天狗を一冊にまとめたものである。その時点で「今昔百鬼拾遺」とついてゐたのだから、最初からまとめるつもりであつたのであらう。 私は河童を読んでゐなかつた。そこでまとめて読み返さうと思つて読んだ。三編読んで感じたのは敦子と美由紀の〈役割分担〉であつた。 初めは新鮮でも、 最後になるとさすがに鼻についてきたのであつた。
・鬼は辻斬り事件とその刀にまつはる物語である。敦子はその謎を解き明かすために様々な方面にいろいろと尋ねまはつてゐる。警察にも 行くのだが、その 刑事は謎を解かない。いや、正確には謎を解けないと言ふべきであらうか。最後は敦子の方がその謎に迫つて解決していく。その最後のところで美由紀が出 てくる。「ばん、と大きな音がした。(原文改行)美由紀が立ち上がっていた。(原文改行)『いい加減にしてッ』云々」(287頁)か ういふ一文一行は 京極の得意とするところで、クライマックスになると力が入る(かに思はれる)。以下、美由紀は「私、そう云うべちゃべちゃしたのは嫌いなんです。」 (同前)といふことで、犯人のハル子に関する様々な事柄を滔々と語つていく。ページ数にして7、ほとんど美由紀の語りである。その 間、「敦子もまた、 何も云うことはなかった。香川は目を泳がせ、暫く口を半開きにしていたが、やがて瞼を閉じて、ううんと唸った。(原文改行)『全く以てその通りだよ。 云々」(294頁)といふことで、最後は完全に美由紀に仕切られてゐる。美由紀は14歳とある(11頁)。いくら「そう云うべちゃべ ちゃしたのは嫌 い」であつても、現実の14歳があれだけのことを言へるのだらうかと思ふ。大演説である。14歳があんなことを言つてしまつたら大人は形無しである。 物語の現実もさうなつてゐる。所詮物語、登場人物を動かすのは作者、作者の考へでそのあたりはどうにでもなる。たぶんかういふことで あらうと思ふ。そ れにしてもである。これはできすぎではないかと思ふ。かういふスーパー女子中学生に京極は憧れてでもゐるのであらうか。最後の天狗になると、物語が LGBTと家の問題が根深く絡んでゐる。家にこだはる頑固ジジイとL孫の対立に端を発する。敦子も美由紀も、そして天狗の登場人物美 弥子も、思ひこみ 等の「極力そうした覆いを取り払うように心掛けて生きている」(783頁)人である。そんな女が頑固ジジイと対すればその結果は見えてゐる。敦子はそ の中で犯人を示した。それは論理的に導かれたものであつたらう。しかし、それでは解決しない。事を収めるのは美由紀であつた。「いい 加減にしてくださ いッ。」(1070頁)と美由紀はどなつて立ち上がり、また滔々とジジイと親父の考へ違ひを指摘しはじめる。これが10頁続く。美弥子はこれを「演説」 (1081頁)と言つた。さうして警察が踏み込むのである。スーパー中学生の面目躍如である。これだけの社会の矛盾等を指摘できる人 間は、大人に だつてさうゐまい。古本屋や憑き物落としの代りに美由紀がここにゐる。物語での美由紀の役割はそれだけのことではあらう。しかし、それが中学生であら うと はと私は思つてしま��。が、いくら物語とはいへ、これは出来過ぎなのである。いや、物語であればこその融通無碍な展開と言ふべきかも しれない。こ んな感じ方は、私の「極力そうした覆いを取り払うように心掛けて生きてい」ないことの表れであらうか。特に天狗で書かれてゐる思ひ込みや偏見が捨てきれな いのであらうか。そんな人間のために、美由起の演説の続編がありさうな気がする物語であつた。
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自立する。これぞ京極作品w「鬼」:これだけで40ページ近い加筆がある。昨年読んだ文庫版に比べたらスカスカな感じもなくなり、本拠地講談社文庫らしさがあり。「河童」:二度目もやはり”彼”に哀しさ・哀れを感じる終り方。磯部警部と益田の例の事件の時のことを確認したくて『絡新婦の理』の再読までしてしまった。「天狗」:こんな粗忽で愚かな動機があって良いものか。美弥子さん、いや美由紀同様憤ってしまう。敦子の調査力・分析力が磨かれ、美由紀もより子相手に伝えられる言葉が出てきている気がした。『百器徒然袋 鳴釜』、内容があれなのであまり読み返さないのだけど、美弥子さんと金ちゃんのことを確認したくてこちらも再読。ただ分冊で読んだ時は「天狗」がよかったけど、合本で読んだ今回一番よかったのは「河童」だった。
そして帯にある「『鵺の碑』(近日刊行予定)」の文字に心躍らせ、刊行を楽しみに生きるのであるw
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全編通して中禅寺敦子と呉美由紀が出てくる。
そして美由紀がとにかく通快。
【鬼】
因縁がキーワード。結構突拍子もない名前が出てきた。犯人はまあそうかなという感じ。そこに至るまでがぐるぐるしてる。
【河童】
河童のことが色々知れて楽しかった。
久々に多々良先生に会えた。
【天狗】
この時代では革新的というか、今では当然の考えを持ち合わせている美弥子がとてもかっこいい。
理想に軸足を置くか(美弥子)、現実に軸足を置くか(敦子)というのが印象に残った。
実際この時代にこういう方がいたかどうかは分からないが、いてほしいという三人の女性陣だった。
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京極さんの作品は、面白いんだけど作中に差し挟まれる妖怪蘊蓄が兎に角長いので、そこんところに興味が薄い私のような者には所々読み難い、と常々思っておりましたが、この本に収められている三作品には、いつも長々と妖怪の蘊蓄を語る京極堂さんは出て来ず、妹の敦子さんと女学生の美由紀さんが主役。妖怪(今回は鬼、河童、天狗)の蘊蓄は、女子トークのなかに盛り込まれていることが多く、その辺、かなり読みやすかったです。
『天狗』は特に秀逸。
ミステリーとしてももちろんですが、過去に榎木津探偵とも関わりのあった真のお嬢様、美弥子様の発言がとても痛快でよかったです。
LGBT(だけに限らずですが)に対する偏見もテーマになっており、もしや?と思って初出の年月を見ると、例の杉田議員の「LGBT生産性発言」と時期が重なるので、それに対する意見も織り交ぜてあるのかな?と感じました。
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レビューはブログにて
https://ameblo.jp/w92-3/entry-12647889390.html
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「鬼」「河童」「天狗」の合本。それぞれ文庫で読んでいたので内容としては再読。どの話も過去の因縁とか因果とかしがらみとかが根底にあった話だったわけだが、どれも最後に美由紀ちゃんが啖呵を切ってくれるのですっきりとした読後感が残る。中禅寺敦子と呉美由紀のコンビはそれぞれだけでは機能しないけれど、二人が揃うことによってどんな困難にでもぶつかっていける、そんな予感を抱かせてくれる。「鬼」も「河童」も「天狗」もどれも陰惨な話ではあったのだが、そういった夜明けを感じさせるような煌きもあった気はした。
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千頁越えは京極食堂での並盛。三編合わせてだから小皿三品ってところか。定食(本編)好きな常連には満腹感に欠けるものの、味付けがらしくてそれなりに美味い。サブキャラを上手く使っているのは『河童』。饒舌で脱線してユーモアを加えてる。『鬼』鬼の副長との結び付けをもっと期待してしまった。『天狗』美由紀と美弥子の掛け合いはいいけど、ここでジェンダー論やらんでも。次は何を食べようか。
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ストーリーが女子高生と敦子の視点で進むからなのか、狙ってる?と思うほどに読み難い。
京極堂の説明って言ってること難しいけど、整然としててわかりやすかったな、と実感したわ…...。
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3つの作品が1つになった作品。百鬼夜行シリーズの探偵役の妹が主人公の小説で、本編のスピンオフ的な作品であると理解。
鬼、河童、天狗という文字にひかれて初めて買った、京極夏彦の作品。普通に面白いものの、過去の事件や本編を知らないとイメージしづらい登場人物が出てきたため、この作品を読見終えた次の日、姑獲鳥の夏と魍魎の匣を購入。
物語として普通に面白く、同時に色々な伝承の話等も知れる一冊。
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面白かった。続編も書いて欲しい…
エモーショナルに叱りつける呉さんの痛快さがお約束化されている。敦子の情報整理→解きほぐしにそのお説教が加わって、それで京極堂の「憑き物落とし」に近い効果になる。
「河童」「天狗」はお馴染みのキャラクターが小出しに登場する楽しさもあり、地理院地図で夷隅川や高尾山の地形図を見ながら読み進めると旅気分で楽しかったりした。
『絡新婦の理』ではフェミニズムもテーマのひとつだったが、その中心にある人物が「これを語っている人が犯人かもしれないと読者が疑いつつ読ませる」構成でもあったため、どう受け止めれば良いものか悩んだりもした。本作は自らを「属性」で語られることの違和感を対話篇的に議論するパート(とくに「天狗」)が多く、そういう意味では読みやすかった。
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【2023年108冊目】
百鬼夜行シリーズでお馴染み、京極堂こと中禅寺秋彦の妹である敦子と、「絡新婦の理」で初出した女子高生、呉美由紀を中心とした3つのお話。合わせて文庫本で1000頁超えなので、それぞれのお話が短編集とは言えません。本体もサイコロみたいに分厚い。
鬼、河童、天狗をモチーフにした怪異譚。多々良先生なんかも出てくるので、なかなかに豪華。敦子さんの、「ああ、京極堂の妹だなぁ」と思わせる語り口と、美由紀ちゃんの読者を代弁するような説教が胸に刺さります。
特に「天狗」の話は男尊女卑をテーマにもしているのですが、なかなかに読んでて辛かった。いや、どのお話に出てくる人も、殺されるべき理由なんでないんですけどね。
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鬼、河童、天狗のそれぞれの単行本の出版社の、どれとも違う京極堂シリーズと同じ版元から出版された月。
ここらへん出版社の垣根を超えたシリーズ刊行できるあたり京極夏彦のすごさなんでしょうか。
バラバラの時の挿絵(モデルさんがお面つけて立ってるやつ)も雰囲気あって好きだったけど、今回の装丁はいつもの京極堂シリーズでその重み(物理)と相まってしっっっくりきた。
最後の天狗の話が一番好きやなぁ。女性の考えをはっきり口にしてくれて爽快。こんなふうにズバッと物言いできないです。