紙の本
とても興味深い内容
2023/08/09 12:31
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:M.F - この投稿者のレビュー一覧を見る
脳科学における成果が明らかにしたところによれば、私達は、自分が思うほどには、自分の行動を意識的に決定している訳ではないそうだ。
そのような認識を前提にしつつ、話題は広く刑事政策に関する考察にまで及ぶ。
個人的には非常に興味深く読ませてもらったし、そもそも「知性」と言われているものは何なのか、考えを新たにさせられた。
日本語訳も非常に自然で読み易く、ひきこまれるようにして読んだ。
本来であれば星五つを付けたい。
だが、私自身はこの分野に関して全くの素人で、この本で指摘されていることが、この分野の専門家の間で一般的に(正当と)認められていることなのかが、わからない。
そのような訳で、個人的感想だけに基づいて、星五つ付けるのは、レビューを参照しながら購入を検討している方々に対して無責任で有るようにも思われ、控えめに星四つとさせていただいた。
また、少し古い本なのも気になった。
文庫化されたのはもう少し後だが、最初に本書の日本語版が出版されたのは2012年のことである。
もちろん、原著の出版は、さらにそれより前ということになる。
さすがに十数年もの時間がたつと、現在の脳科学の観点からは古くなってしまっている記述が含まれている「可能性」を否定しきれない。そして、もし仮にそういう記述が含まれていたとしても、素人の私にはわからない。
判別出来ない。
そういった点も、星五つを堂々と付けることをためらわせた。
最後に、繰り返しで申し訳ないけれど、純粋に個人的感想だけに基づくならば星五つ。
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自分が何かをしていると感じる意識は、実は何もしていない、脳が無意識のレベルで全て勝手にやっており、それを最後に「意識」が自分がやったと感じるのだという、考えを、様々な脳科学的知見から展開している本です。取り上げられる脳科学の知見は、脳科学本でよく取り上げられるものなので、目新しい物はあまりありませんが、新しい視点から、研究を取り上げており、興味深かった。おそらく第6章の、実際にやったことが、無意識のレベルで勝手にやったことを、「意識」が自分がやったと感じているのならば、犯罪の責任はどう問えるのか?脳科学の時代にどう対応していくべきなのか?が1番主張したかったことのように思います。どうなんでしょうね??
脳と意識の関係の理解が進まないことに関して、「光学を理解してもいないのに虹の理論を構築しようとすることを想像してほしい」と述べ、まだまだ道が遠いことを示唆しているのが印象的でした。
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自覚できる「自分」は本当に僅かであり、実は自分を構成する認知・判断は殆ど見えないところで行われているというお話。
事例紹介が豊富で多岐にわたっており、専門知識がほぼ無くても面白く読めました。
脳が背後で処理し終わった情報を、あたかも(自認する)「自分」が今思いついたように手柄を横取りしてしまうという表現が面白い。脳は1歩引いた位置からその人がより「良い」選択を行うためのアイデア出し役と折衝役を担っているんですね。
脳の異常で起こす犯罪に対する線引き論も興味深いです。自由意志はほんとうに存在するんでしょうか…。V.S.ラマチャンドラン氏の『脳の中の幽霊』を再読したくなる内容でした。
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読み漁っている脳科学に関する書籍のうちの一冊
とくに「理性と感情」についての説明が目を引く
2006年に起きたメル・ギブソンのユダヤ人への差別的な発言を例にとって、
直観的にわかりやすく説明されている
誤った二分法(白黒思考)によってひとや物事を認知しがちな自分にとって、
なぜ誤って二分してしまうのか、どのように考えればいいのか、
意外なところで初めて理解できた
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脳が第一に考えていることは自らの生命維持と種を残すこと。意識とか自我と思っているものは生命維持と種を残すために副次的に見え隠れしているだけで、自由意志と思っている1秒前に脳が既に決断していて、その結論に従っているだけ。平均4年でパートナーへの関心を失うようにプログラムされているとか、不倫にRS3 334遺伝子が関係しているとか、我々はただ物理的に運命に従って生かされているだけ。努力によって人は変わることができるというのは気のせいなのか?
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ここ数年で一番興味深い本であり、是非一度手に取ってみて欲しい。一見、難しそうな内容であるものの、和訳もわかりやすく、読み進めると非常に衝撃的だ。
合わせて、ハヤカワノンフィクションの『ファスト&スロー』ダニエル・キイス文庫『24人のビリーミリガン』も読みたい。
あらゆる行動は、自分自身で決断していると思いがちであるも、過去人類の遥か祖先から踏襲した遺伝子の型と、生まれて以来蓄積されて来た経験、膨大なデータに対し、そのごく一部にアクセスすることが出来るだけであり、それを無意識のうちに選択した結果と言うこと。
その膨大な遺伝子、経験は通常、意識することなく脳に蓄積されているのだと。
(トラウマの正体であり、夢を見る原因であり、酒を飲むと素面では言わないような事を口走る理由...)
『すべての大人には正しい選択をする同じ能力があると考えたがる人が多い。すてきな考えだが間違っている。
脳は人によってまったくちがうものになりうるー―遺伝だけではなく育った環境にも影響されるのだ。』
『私たちには自分の行動、動機、さらには信念を、選択したり説明したりする能力はほとんどなく、舵を取っているのは、無数の世代にわたる進化的淘汰と生涯の経験によってつくり上げられた無意識の脳である。』
どうやら、遺伝子の型を調べればその人の不倫のしやすさ、凶悪犯罪の可能性等の行動パターンを類推することが可能でもあるようだ。
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ぼくたちは自分の意思でいろいろなことをやっている、と思っているが、実はそうでもないよ、という話。
車を運転する、キーボードを叩く、ギターを演奏する、といった複雑な動作をぼくらは「自分で意識して」やっていると思っている。そりゃそうなんだけれど、じゃあ手にこの程度の力を入れて、指をこう動かしてハンドルを回す、目玉を必要なだけ動かして左右を確認する、見えなければちょっと首も動かす、足首を浮かしてクラッチを切る、アクセルをいい感じに踏み込むという細かい動作をすべて「意識して」やっているかというとそういうわけではない。車を運転したことのない人がマニュアルと首っ引きで車庫入れしようとしたらまず失敗する。意識がマネージメントはするけれど、細かい動作は意識に上がる前の情報処理系-筋肉系が片付けてくれるのだ、という。「練習」はそうした動作を意識に上がる前に処理すべく脳をトレーニングする過程なのだという。そういう考え方をしたことはなかったけれど、言われてみればそのとおりで、非常にしっくりくる。ちょっとびっくりした。
翻訳もののこの手の本は回り道が多く、やたら分厚くて苦労することが多いけれど、本書は最後まで興味深く読めた。なるほどねえ。
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『意識はいつ生まれるか』の後に読んだのだが、この本は無意識下の脳の働きの世界に切り込んで、人間の行動、思考を見つめる。むしろ意識はその表面に浮きでたごく僅かな灰汁の様な扱いかただ。
こうなってくると、今いる自分の存在自体が、自分の意思や鍛錬で出来上がったものだなどという自負は砕け散り、“そんなら好き勝手に生きてやれ!”という気持ちにもさせるが、これもまた、このデイビット・イーグルマンの主張に対する私の無意識の反応が関わっている。ということでもある。
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私とは誰なのか、どこまでが私なのか、生まれか育ちか、責任とはなんなのか、さまざまな問いに対して、脳を起点に今までとは違った視点を提供してくれる良著。
この本を読む前と後では物の考え方、見方が変わってしまう。
脳は我々がアクセスできない部分が大半であり、日常生活の様々な活動は、我々が意識しない(したくてもできない)、アクセスできない脳によって行われている。
酔っ払った状況で吐いた暴言はその人の本心なのか?
魅力を感じる仕組みとは?
社会として犯罪とどのように向き合っていくべきなのか?
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この本の素晴らしさは(訳者あとがきでも触れられているとおりなのですが、)「脳って不思議でおもしろいですね~」で、終わらないところにあると思います。
錯覚や認知バイアスを説明するコンテンツは多くありますが、それらは「ある」と知り意識してもなお、逃れることができないから困るし不思議なんですよね。本書はそれこそが『意識は傍観者である』ためだと言います。我々が自分で判断したと思っているもの、いやそれ以前に確かにこの目で見たと思っているものすら、1,300gのプヨプヨした臓器の中で作り出された単なる幻影であり、我々の「意識」は、それが万端にできあがってから、まるで新聞のように受け取っているだけ。なんともショッキングな話ですが、それを裏付ける実験や調査、事故事象が豊富に紹介されています。どれ一つを取っても驚くエピソードで、面白いです。
そして筆者はその見地から、現代の犯罪と法律に切り込みます。これは非常に考えさせられる問題提起であり、ぜひ読んで頂きたいです。
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大抵の人間活動は、無意識下で行われている。
最初に同じ活動を繰り返すことにより脳に回路ができ、あとは意識せずに体を動かせるようになる。意識の役割は、何を脳に焼き付けるかという目標設定のみ。
このような脳の働きは、遺伝子はもとより成長期までの環境・疾患に影響されており、自由意思というものはないとも言える。
それなら、現在の懲罰的な法制度は不適切ではないかというのが主題。
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私たちは意識に基づいて、意思決定していると思い込んでいる。しかし、実際には意識というのは、脳が超高速で複雑な処理をして出力された結果に過ぎない。
脳は五感に基づいて経験を豊かにする。しかし、その一つが欠けたとすると、その瞬間に世界は今までより豊かでなくなる。そこで、感覚代行というものがあり、視覚が失われた人が触覚を通じて世界を理解することが可能になる。途方もない腦の学習が必要になるが、言語感覚で理解できるようなるらしい。
私たちの営みにはアクセスできない。理性と本能という二つの背反するグループが私たちの意思決定に大きく関わっている。どちらの意見が取り入れられるかはその時々の状況による。神経脳科学を駆使して私たちの脳を解明していくが、最近では法学にも関係性が出てきた。
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脳の働き仕組みについて様々な例をあげて丁寧に説明している。自由意志や犯罪者の罰への考察などをはじめ、興味深い発見や意見に感心した。
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「考えついた」というのは、無意識がすでに考え終わったことを意識が知るだけ。「見る」というのは、脳が予め予想したことに対して視覚がフィードバックして調整するフィードバックループによる。脳の神経系は冗長化していて、同じ事柄に異なる解法を試そうとし、ときには対立している。そんな話だけでも刺激的なのに、神経法学、犯罪者への量刑の話へと発展するのが最高です。考え方の次元が変わった気がする。
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よくある錯覚の絵を使い、ほらね、脳が認知できてない部分を補完してるんだよ。という本ではなくその先の話を書いて想像させてくれる本だった。脳が概念的に2.5次元で理解してることから、意識したものが、事が、解像度が上がり脳に情報が入ってくるとはじめて理解できた。目標や言霊を発した瞬間に情報が集まってくることは自然であると思えた。このような気づきがたくさんある本であった。最後の2章では話の展開があり、法が掲げる平等の前提である、『みんなの脳が平等』ということに対して異を唱えており、そこから法律や世界の在り方を説いていた。この部分については他の本におこして欲しい話題だったため、星4とした。実際4.5点位だった。