紙の本
本書収録の「終わりの日」を強くお勧めしたい
2004/11/27 11:18
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る
リチャード・マシスンの「終わりの日」を初めて読んだのは「SFマガジン 64年9月号」掲載の日本語訳でした。物語展開の衝撃とラストシーンの息をのむ美しさとを鮮明に憶えています。
天体異状によって地球最後の日を迎えつつある人類。青年リチャードと仲間たちは「最終日」をセックスとドラッグに溺れながら、絶望に駆られてただひたすらなまでにふしだらに生きようとする。しかし、最後の最後にリチャードが共に時を過ごそうと考えた人物がいた。その人物とは…。
マシスンが描き続けたテーマは、自分は一体誰なのか、そしてその自分という手応えを確かに感じるには一体どうしたらよいのか、ということです。換言するならばマシスンは、「生きてある」と思っていた自分がひどく脆く不確かなものであるということを知った時の言い知れぬほどの不安と恐怖を、執拗に我々に突きつけてきました。
「終わりの日」でも、地球の滅亡によって歩んできた人生が無に帰する事態を目前にして、主人公は自暴自棄へと突き進んでしまいます。しかし、自らの人生を否定するのは地球の滅亡ではなくて、投げやりに生きる主人公の決意そのものであることをマシスンは語りかけているのです。ささやかであっても大切に育んできた自らの人生を自らが否定することの醜悪さこそを私たちは一番に恐れるべきなのです。
この作品には、自分が確かに生きていたという実感を与えてくれる「人物」が登場します。同じような人物が読者の隣にもいるかもしれないということ、そしてそのことのありがたさを知らせてくれる物語でもあります。
主人公に自らの名前を与えたことからも、作者が強い思い入れを持ってこの短編にのぞんだことが読み取れます。
手元にある旧訳に比べて本書収録の新訳はより洗練された日本語になっています。この作品を本書に収録する決断をした編者、そして新訳に取り組んだ訳者に拍手を送りたいと思います。
紙の本
シャレた短編のみ、SFの多様な面を、色々味わえる。
2003/05/18 20:27
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:萬寿生 - この投稿者のレビュー一覧を見る
1940年代から90年代までの、英語圏のSFを10年毎にまとめた、全6冊のアンソロジー・シリーズの第2巻である。1950年代の代表的短編が、作者一人につき一作品ずつ収録されている。シャレた短編のみである。SF初心者でも、どっぷりSFにはまり込んだ読者にも、それぞれ楽しめる。短編集なので手軽に読め、SFの多様な面を、色々味わえる。
紙の本
収録作品リスト
2000/12/15 20:33
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:bk1 - この投稿者のレビュー一覧を見る
レイ・ブラッドベリ「初めの終わり」
ロバート・シェクリイ「ひる」
フィリップ・K・ディック「父さんもどき」
リチャード・マシスン 「終わりの日」
ゼナ・ヘンダースン「なんでも箱」
クリフォード・D・シマック「隣人」
フレデリック・ポール「幻影の街」
C・M・コーンブルース「真夜中の祭壇」
エリック・フランク・ラッセル「証言」
アルフレッド・ベスター「消失トリック」
ジェイムズ・ブリッシュ「芸術作品」
コードウェイナー・スミス「燃える脳」
シオドア・スタージョン「たとえ世界を失っても」
ポール・アンダースン「サム・ホール」
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あとがきにもあるのだが、このアンソロジーシリーズは、その時代がわかるようにテーマ付けられている。
50年代アメリカ核と共産主義への恐怖。
二次大戦のあとでは科学ですべてが解決するとは思われなくなった。
またマッカーシズム吹き荒れる中ではいつ隣人が、そして自分が敵となるか(思われるか)わからない恐怖があったことから、
侵略者は目に見えなくなってくる。そんな暗い時代だったのだ。
ディックの『父さんもどき』やアンダースンの『サム・ホール』はこの辺の空気を現わしている。
今回気に入ったのは
『終わりの日』マシスン、『幻影の街』ポール、『証言』ラッセル、『たとえ世界を失っても』スタージョン、『サム・ホール』アンダースン。
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証言(エリック・フランク・ラッセル)消失トリック(アルフレッド・ベスター)たとえ世界を失っても(シオドア・スタージョン)
とかよかった。
「証言」はうるっときました。
この巻では「信じる」というのがひとつのキィワードのような気がしました。
(それはつまり不安とか恐怖と背中合わせのものなんだろうけど。)
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ウルトラシリーズの元ネタがあるなー。
「証言」が好きです。
これ読んで、「わがパキーネ」を思い出した。
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なんでも箱は彼女にとってライナスの毛布のようなものだったのかもしれない。ただし彼女の毛布は特別製で、安心だけではなく美しい世界を与えてくれる、そんな特別な存在だったのかもしれない。
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英米SFの1950年代短編集。
巻末の「解説」を読むと、1950年代は日本への原爆投下以後、核兵器実験や米ソの冷戦構造、急速な科学技術の発展があり、それらが「放射能への恐怖」や「未来に対する不安」、「科学そのものへの懐疑」をもたらしたとある。そのため、そのような時代背景を反映した作品が多い。
収録されているものは、発表されて半世紀以上たった作品ばかりなのに、古さよりも恐怖やユーモアを感じさせてくれる作品が多くとても楽しめた。
また、このシリーズ全体に共通することだが、当時のSFを取り巻く状況を教えてくれる巻末の「解説」は勉強になり良い。
【印象に残った作品(備忘録)】
「ひる」ロバート・シェクリイ 恐怖とコミカルさが両立し面白い ★★★★★
「隣人」 クリフォード・D・シマック 牧歌的な語り口が良い ★★★★★
「幻影の街」 フレデリック・ポール 仮想現実もの怖い ★★★★
「証言」エリック・フランク・ラッセル ファーストコンタクト×裁判 ★★★★
「消失トリック」アルフレッド・ベスター テレポーテーション、風刺 ★★★★★
「芸術作品」 ジェイムズ・ブリッシュ 記憶・人格の複製、残酷 ★★★★
「燃える脳」コードウェイナー・スミス なんかかっこいい ★★★★★
「たとえ世界を失っても」 シオドア・スタージョン 異星人、同性愛、詩的 ★★★★
「サム・ホール」ポール・アンダースン 超管理社会の破綻 ★★★★★
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シオドア・スタージョンとディックが好き。
他には「燃える脳」、「なんでも箱」が良かった。
ブラッドベリは前から好きなのであえて言わないけどやっぱり好きです。
20世紀SFはどれも面白いけど、3と5が群を抜いて面白いかな。
これも悪くはないし、いいんだけど、強烈に印象に残る作品、てのがなかった。
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「初めの終わり(レイ・ブラッドベリ)」「ひる(ロバート・シェクリイ)」「父さんもどき(フィリップ・K・ディック)」「終わりの日(リチャード・マシスン)」「なんでも箱(ゼナ・ヘンダースン)」「隣人(クリフォード・D・シマック)」「幻影の街(フレデリック・ポール)」「真夜中の祭壇(C・M・コーンブルース)」「証言(エリック・フランク・ラッセル)」「消失トリック(アルフレッド・ベスター)」「芸術作品(ジェイムズ・ブリッシュ)」「燃える脳(コードウェイナー・スミス)」「たとえ世界を失っても(シオドア・スタージョン)」「サム・ホール(ポール・アンダースン)」「SFブームとその終焉(中村 融)」
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http://shinshu.fm/MHz/67.61/archives/0000313273.html
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「ひる」シェクリィ 浅倉久志
「なんでも箱」ゼナ・ヘンダースン 深町真理子
「隣人」クリフォード・D・シマック 小尾夫佐
「証言」エリック・フランク・ラッセル 酒井昭伸
が良い。
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「初めの終わり」 レイ・ブラッドベリ
「ひる」 ロバート・シェクリイ
「父さんもどき」 フィリップ・K・ディック
「終わりの日」 リチャード・マシスン
「なんでも箱」 ゼナ・ヘンダースン
「隣人」 クリフォード・D・シマック
「幻影の街」 フレデリック・ポール
「真夜中の祭壇」 C・M・コーンブルース
「証言」 エリック・フランク・ラッセル
「消失トリック」 アルフレッド・ベスター
「芸術作品」 ジェイムズ・ブリッシュ
「燃える脳」 コードウェイナー・スミス
「たとえ世界を失っても」 シオドア・スタージョン
「サム・ホール」 ポール・アンダースン
SF読みならどこかで読んだのも幾つとなくあるでしょうが、再読を楽しめる作品ばかりだし、SF初めての方にはバリエーション豊かではずれが少ないとこでオススメしやすいかな。
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SFがしっかりと成長した結果、多種多様な作品が生まれた時代のようだ。中には現在では実現してしまったテクノロジーなどが見られるが、作品としてしっかりしているので、テクノロジー云々以外のところで楽しめる。SFの入門にはならないけど、最近SFを読み始めたので、経験したことがない1950年代という時代を知りたい人にはうってつけだろう。個人的に好きな作品を挙げると、「終わりの日」「隣人」「幻影の街」といったところ。
以下、個別作品の感想。
◎初めの終わり(レイ・ブラッドベリ)
宇宙時代の始まりを描いた作品。これはSFなのかなあと感じてしまうほど、今となっては普通の出来事。当時は夢のような話だったのだろうと想像しながら読むと楽しめる。題名が「初めの終わり」であり、「初めの始まり」ではないことが、現代の宇宙活用時代を見透かしていたようで作者の慧眼に驚く。
◎ひる(ロバート・シェクリイ)
“昼”ではなくて“蛭”だったのか。なんでも食べるひるがどんどん成長して地球を食いつくしかねない状況。これは恐ろしい。面白かった。
◎父さんもどき(フィリップ・K・ディック)
これも何か恐い話だ。宇宙人の侵略でもないし、行きすぎたテクノロジーの暴走でもないし、自然の反乱なのかなあ。
◎終わりの日(リチャード・マシスン)
地球最後の日をどう迎えるか。個人の本性が出るところかもしれない。よくあるのは絶望した人々が略奪や殺戮を続けてどうしようもない世紀末の地獄が描かれるものだ。本作品もそんな感じなのかと思いきや、最後はいい話になる。母ちゃん最高だぜ!
◎なんでも箱(ゼナ・ヘンダースン)
少々難しかった。“なんでも箱”は何を象徴しているのか理解できなかった。少女が求める理想郷? 分からないが、何となく恐怖を感じた。
◎隣人(クリフォード・D・シマック)
ほのぼのとする作品。ある意味で理想郷なのだろうなあ。人間は欲深くないありのままの現状を受け入れる生活を望むのが最良なのかもしれない。面白かった。
◎幻影の街(フレデリック・ポール)
この時代に知能の仮想化のような話が発表されている事実に驚いた。また、当時は存在しなかったインターネットマーケティングのような概念が登場しており、今読んでも面白い。
◎真夜中の祭壇(C・M・コーンブルース)
あまり内容を理解できなかった。これから物語が進むのかなと思ったところで終わっているようだ。
◎証言(エリック・フランク・ラッセル)
ソウヤーの「イリーガルエイリアン」を思い出す作品。エイリアンが被告人となって地球の法廷で裁かれる。この光景、想像すると笑えてくる。ファニーでもありシュールでもある。
◎消失トリック(アルフレッド・ベスター)
戦争のショックで特殊能力を身につけてしまう患者たち。病棟から消えて戻ったりを繰り返す現象を起こす。物語自体が面白い。どこかコミカルである。
◎芸術作品(ジェイムズ・ブリッシュ)
人工知能で亡くなっている芸術家を復活させる。作曲家ではなく文筆家を人工知能で復活させ���技術はすでにGoogleが手掛けており、2016年にwiredで記事にもなっている。きっと作曲家の人工知能も実際に研究されているに違いない。2016年になって、現実の世界がSFに追い付きつつある状況ともいえる。逆に1950年代にここまで未来を予想できていたのが素晴らしい。この作品は技術云々よりも人工知能(のようなもの)の心情を綴る表現が出色である。
◎燃える脳(コードウェナー・スミス)
これは宇宙を舞台にしたラブストーリーではないか。人(人格といってもいいかもしれない)の本質的な姿、愛とは、などをSFを舞台にして語られる。ラストでは周りから見れば大変そうだなと思うかもしれないが、当人にとっては最高の幸せを手に入れたのかもしれない。
◎たとえ世界を失っても(シオドア・スタージョン)
ネタバレになってしまうかもしれませんが、同性愛者の物語だ。本作品の出版当時であれば許されたのかもしれないが、現在では差別的とされて受け入れられないかもしれない。当時は当時でタブーに挑戦したのだと思うが、現在では異なる角度でタブーに対してしていると思う。
◎サム・ホール(ポール・アンダースン)
マイナンバーが日本国民に配布されてからは、政府の国民の管理がどの程度までなされるのか、不安がより現実になってきた。この作品も国民をコンピュータ管理する世界を描く。架空のデータをコンピュータに投入することで、革命をなそうとする。現実は、セキュリティを保つために単独でデータ改竄するのは不可能だと思うのだが、それはこの時代のおおらかさなのか実行できてしまう。まあ、このような抜け道があるからこそフィクションとして楽しめるわけだけれど。普通に面白かった。
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1 初めの終わり Bradbury Ray/著 中村 融/訳
2 ひる ロバート・シェクリイ/著 浅倉 久志/訳
3 父さんもどき フィリップ.K.ディック/著 大森 望/訳
4 終わりの日 リチャード・マシスン/著 安野 玲/訳
5 なんでも箱 ゼナ・ヘンダースン/著 深町 真理子/訳
6 隣人 クリフォード・D・シマック/著 小尾 芙佐/訳
7 幻影の街 フレデリック・ポール/著 伊藤 典夫/訳
8 真夜中の祭壇 C・M・コーンブルース/著 白石 朗/訳
9 証言 エリック・フランク・ラッセル/著 酒井 昭伸/訳
10 消失トリック アルフレッド・ベスター/著 伊藤 典夫/訳
11 芸術作品 ジェイムズ・ブリッシュ/著 白石 朗/訳
12 燃える脳 コードウェイナー・スミス/著 浅倉 久志/訳
13 たとえ世界を失っても シオドア・スタージョン/著 大森 望/訳
14 サム・ホール ポール・アンダースン/著 広田 耕三/訳
15 SFブームとその終焉 中村 融/著