紙の本
晩年のルソーの孤独の中での夢想に基づいた10の哲学的エッセイ
2016/07/31 10:24
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、ルソーの執筆によるものですが、あまり世間には知られていない作品です。というのも、この作品は、彼の晩年に書かれたもので、彼の全盛期の頃とはかなり異なった内容となっています。晩年には孤独にさいなまれ、一人で散歩する中で、考えた、「思索」というよりも、むしろ「夢想」というべきものが10の物語として語られています。読んでいくうちに、最盛期の様々な作品とのつながりがぼんやりとみてくるのが読者にとっては本書を読む楽しみではないでしょうか。
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ここにいるのは人間ルソー。歴史上の偉大な人物ではなく、いや、でもありつつ等身大のルソーがいる。勘違いかもしれないけど、ここに書かれている感情、情動の多くは私でも体験したことがある。素晴らしい著作だなぁ。
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ルソーは、理性の時代を生きる人間としては、優しすぎた。直感的で、情け深い(そして妄想癖のある)ルソー。そんな「人間」ルソーの魅力を、本書が余すところなく伝えている。
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ルソーでさえ、こんなこと思うんならわたしなんてどうしたら良いんだろう。
うまく孤独にもなれなくて、自意識ばかりが肥大している他人を見て、「ねえ!?あなたは普通!普通なんだよ!!」って言いたくなる。それは自分自身に対しての言葉でもある。
とてつもなくいたくて辛い。
そんな惨めな思い、誰だってするのだろう。ただ、こうやってルソーのように明確な言葉になんてとてもじゃ、ないけどできない。
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愛に破れ世間から敵視され隠遁したルソーが書いたエッセイ。逆境でもなお心にハリを保つために、いつか読み返す機会があれば。
ルソーは世間に敵視されているものと完全に決め込んでいるが(実際にそうだったかは分からない)、それに比べたらいまの自分は世間が優しいと信じられていることは分かった。あれだけの迫害でここまで心の自由を保っているのなら、いわんや自分は……。でも、自分一人で完結しているのだと何とか無理やり言い聞かせているという気もしないでもない。
これも買っておきたい。
p.116 第五の散歩
だが、確固たる基盤を得て、魂がすべてをゆだね、過去や未来に思いを馳せることなく存在のすべてを今ここだけに結集させることが可能になるような状態というのはあるのかもしれない。時間を感じさせない状態。ただ現在だけがあり、その持続性も継続性も感じさせず、欠落も充足も、喜びも苦しみも、欲望も不安も感じず、ただ感じるのは自分の存在だけ、しかもその存在感だけで自分が満たされる状態。もし、そんな状態が続くならば、それを幸福と呼んでもいいだろう。ここで言う幸福とは、日々の快楽にあるような不完全で脆弱な相対的な幸福ではなく、充足した幸福、完璧な幸福、魂の中に埋めるべき空白を残さない本当の幸福である。[...]こんな境地にあるとき、人は何を楽しんでいるのか。自分の外にあるものはまったく関係ない。自分の内なるもの、自分自身そのものだけで十分なのだ。この幸せな環境が続く限り、自分が自分であることだけで神のように満足できるのだ。あらゆる雑多な感情から自由になったとき、それだけで穏やかに満ち足りた崇高な気持ちになれる。
p.128 第六の散歩
つまり、自分のもって生まれた傾向に従うこと、気が向いたときだけ「良いこと」をし、満足感に浸るということは、徳とはいえない。本当の徳とは、義務によって命じられたときに、自身の性向に抗ってでも、なすべき善をなすことにある。
p.157 第七の散歩
個人に関するもの、肉体の苦痛や快楽に関するものに本気で心を奪われることはない。瞑想や夢想において最も甘美な体験は、自分を忘れるときにのみ訪れる。私が言葉にならないほどの恍惚と陶酔を感じるのは、生命の大きな体系に溶け込み、自然そのものと一体になるような気がする、まさにそのときなのだ。人間が皆、兄弟のように思えたころは、地上の幸福を求めていた。[...]個人の幸福に心を動かされたことはなかった。だが、私を貶めることこそ、自分たちの幸福だと思い込む彼らの姿を見て、私は変わった。彼らを憎まずにいるには、彼らから逃げるしかなかった。私は「万物の母」である自然に助けを求めた。
p.184 第八の散歩
無実の罪で迫害された者は、大したものでもない自分の高慢な心を、いや、これは正義に対する純粋な気持ちなのだといつまでも思いたがる。だが、不穏な気持ちの本当の源がどこにあるか分かれば、それをもとから断ち切ること、せめてもの流れの方向を変えさせることは簡単だ。自尊心は、誇り高き魂にとって最大の動機となる。利己愛は、さまざまな幻想をかきたて、ただ自分が可愛いのではなく自尊心の��題なのだと嘘をつき、信じ込ませようとする。だが、その幻想を見破り、ひとたび利己愛を自覚することができれば、もう心配はない。
p.193-194
渡しの場合、外からの刺激が一瞬ごとに更新されていかない限り、苦しみが長続きすることはない。ほんの一瞬でも間があけば、私は自分を取り戻すことができる。私の感覚が彼らの攻撃に反応している限り、私は彼らのなすがままになっている。[...]他人が何をしようと、私の平常の姿はそこにある。それによって、私はどんな不運に襲われようと、自分にふさわしい幸福を味わうことができているのだ。[...]今の私を動揺させるのは、彼らがこの先まだ何か仕掛けてくるのではと案じる気持ちぐらいのものである。だが、たとえ彼らが新たな攻撃を仕掛けてきても、それによって永続的に心が乱れることはないと確信しているので、私は彼らの邪な策略な笑い飛ばし、彼らのことは忘れてひとり楽しく暮らすのである。
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ルソーたん!!!!私がいる!私がいるよーっ( ;∀;)!!!!と呼びかけてしまいたくなるほど冒頭から悲壮感漂う。栄光から一転、迫害を受けたルソーが自分の殻に閉じこもって書いた夢想の束。でも読み進めるにつれ、被害妄想の羅列と化していき、「わかった、わかった」と聞き流してしまいそうに(笑)けれど、ところどころにはっとさせられる言葉が散らばっており、「なぜ生きるかを知っている者は、どのように生きることにも耐える」というニーチェの言葉を思い出した。時代が彼に追いつくまでは、まだ少し時間が必要だった。次は『エミール』読もう。
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晩年のルソーが、
故国フランスを追われ、社会から断絶された状況下で、
過去の華々しい栄光と栄華を忘却の彼方に見ながらも、
今を生きることの幸せと儚さを、独り言のように綴った日記のような書。
人間不平等起源論や社会契約論を著して
フランス革命思想に貢献したルソーが
これほどに理不尽と思える仕打ちを受けるのか
と思いたくなる。
最後には革命軍によって、
亡骸はフランス故国へうつされたようである。
ルソーという人間がまたひとつ深く知れる書。
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ルソーの著書『エミール』が禁書処分になり政府に追われ、迫害されている時期にルソーが書いた夢想の書。思索のように真理を追究するものではなく、あくまで自己の追求を目的としているため、タイトルが「夢想」となっているそう。さらに「夢想」は誰にでも実践可能のように見える。自分のための書としながらも、文中ではどこか読者を想定している感がある。ルソーってなんかかわいいな…。夢想は、老いや嘘、道徳、自然などをテーマにして自己の分析や再認識を行っている。「夢想」は自分がどう生きたいか考えるきっかけになるかもと思う。
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以前に岩波文庫を読んで挫折し、光文社から新訳で出ていたので読了。
非常にわかりやすい翻訳のように思います。ただ、そもそもの内容が「夢想」っていうくらいなので、読者から歩み寄っていかないと理解するには難しかった。
紆余曲折を経たルソーが晩年このような「夢想」を文章として残していたことに感謝したくなる一冊。ルソーは「書くことをやめた」と言いながらも、どこか読者を意識している、特に、孤独という誰もが切っても切れない課題にいつか思い巡らすであろう読者にメッセージを送っているように感じます。
歳を重ねて再読すると、また印象が変わったり味わい深くなりそうな一冊でした。
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フランスでは、青少年が一度は手にとって読む本だという。
社会科でも習った宗教改革の箇所で必ず出てくるルソー。
人生の晩年は、教会からも、学会からも弾圧、無視され寂しい人生だったようだ。
それらからの疎外感に憤りを感じて憤死してしまうような日々を送っていたが、怒りも一巡すると静かに自分自身を見つめる時間に変わる。
そんな自分自身を見つめる10章。
遺作となる。
冒頭から読み始めないで、訳者後書きや、80ページにわたる解説から読むと、どうして冒頭から怒りに満ちた作者の心情が読み取れる。
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初めてのルソーでした。
彼の哲学は個人的には少し共感もありました。
自分の置かれている身にとっては、良い本に出会えました。
ルソーという人物が知りたい方、初心者にはこの本が良いかもしれません。
彼は繊細な方だという印象を受けました。
訳が非常に分かりやすく、また読みやすかったです。
光文社も初めてでしたが、これから躊躇なく手に取ろうとも思いました。
なんか、ルソー可愛かったです。
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迫害という真実とそうではない被害妄想に囚われたルソーが世間を忌み苦しみながらもどう生きていくか、という本。
夢想をし、植物研究に熱中し、己を肯定する為に自己弁護と理論武装をして未来の読者に向けて(ルソーはあくまでも余生のためと書いているが)託したかったのだろう、正直なところ救ってほしかったのかもしれない。
個人的に人間臭いルソーが苦手で、でもこの丁寧な解説があるのに、苦手なんて言えないよねと思った。
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ルソー初読。エセーを読んだ時も思ったが、教科書で学んだ哲学者たちの著作を大人になって実際に手にしてみると、想像以上の人間臭さに驚く(学生時代に背伸びして読んだカントからは全く感じなかったが…)。思想を吟味するというよりは、親近感をもって軽く読んでしまった。また読み返したい。
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徳を積むという行為は、特別なことをしなくても、日常の生活の中にあることがわかった。
『方丈記』鴨さんと同じ行為で精神を落ち着かせるのに驚いた。時代も国も違うのに、同じものにたどり着いている。人間の本能なのだろうか。
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図書館で借りたが、すごく良かったので自分で買って手元に置いておくことにした。
第五の散歩、サン・ピエール島の話は全てが美しくノートに書き写したくなった。