紙の本
圧倒的アウトロー
2020/11/02 09:05
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投稿者:くみみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
目を背けたくなる様なあらゆる暴力が蔓延る世界。一番怖いのは“これはただのフィクションだ”と思ってしまう事。生きる術も知らない子供達が本能で虐待を耐え抜く様を読むのはとても苦しく、途中で何度か読むのを躊躇ってしまう程の緊張感を味わった。児相職員の過酷な環境も浮き彫りになっていて、世に出る極一部のイメージが更に人員不足の負の連鎖に繋がり、どんどん頑強な鎖を生んでる気がした。物語としては最後に僅かに射した光にただただ安堵した
紙の本
表紙の雰囲気とはちがっていて・・・
2021/11/21 09:50
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投稿者:owls - この投稿者のレビュー一覧を見る
内容をまったくしらず、表紙とタイトルで購入しました。話は重く深刻で、読んでいて苦しい。読むのをやめたくなる場面も多々ありました。・・・が、最後はホッと。救いがあってよかった・・・。読み終わっても考えさせられます。
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労働者相手の娯楽の街として栄えた多摩川市は、貧困、暴力、行くつく先は家庭崩壊と、児童相談所は休む暇もない。この荒んだ地域に寄り添って暮らすカイとナギサは、街をふらつく幼児にハレと名付け面倒をみることにする。居場所のない子供たち。彼らの幸せはいったいどこにあるのだろうかーー。
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児童相談所に勤める松本悠一。実の兄から性的虐待を受け続ける少女那希沙。不妊治療に必死になって自分を見失いつつある主婦郁美。
多摩川、という土地で虐待を受ける「幼児」にかかわるそれぞれ三人の物語。
仕事として日常的にかかわる悠一には悠一にしか見えない世界があり、自分自身が被虐待児であったにもかかわらず見ず知らずの幼児の世話をする那希沙には那希沙にしかできないことがあり、自分の子どもを持つことのできない郁美には郁美なりの思いがある。
虐待には身体や心を傷つける、世話をせずに放置する、などいろんな種類があるが、そのどれをとっても子どもにとって不幸でしかない。虐待が度を過ぎて命の危険にさらせれることも多い、実際死に至ったニュースのいかに多いことか。その度に、児童相談所は何をしていた、公的機関の介入は適切だったのか、近所の人は気付かなかったのか、と怒りを覚える。
けれど、問題はそんな簡単なことではない。実際に虐待を受けているはずの子どもがそれを否定し、家族とともにいることを望んでしまうことも多いから。それが、「家族」であるがゆえ、というのが何とも痛ましく切なく悲しいが。
他人であり素人であり部外者である私たちそれぞれにはできることとできないことがある。
だけど、何もせずに遠くから正義の拳を振り上げて批判だけする「他人」にはなりたくない。
少し気を付けてみれば、自分の周りにもいるはず。声をかける、気を付けて見守る、それだけでも何もしないよりはましだろう。見ているよ、というメッセ―ジ。虐待をする側にもされる側にも伝わるように。
と、書いてきて、ネタバレなので触れずに置いたある驚き。
この驚きあってのこの物語である。単なる虐待する親許せない!虐待される子どもかわいそう、だけど希望を捨てずに生きていく姿に感動、なんて一枚の絵じゃない驚き。
ある箇所で気付く。「はっ!そういうことか!そういうことだったのか!」と世界がすとんとまとまるカタルシス。
宇佐美まこと。すごい。
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宇佐美さんの作品は初期から読んでる。内容は目新しくないがしっかりした文章で読み込ませてくれた。
今回のは、既に多くの作家が取り上げてきた分野と同じなので、またか〜っと思いがなくもない。
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治安が悪く荒んだ下町を舞台に繰り広げられる、ちょっと痛々しくて切なくて、でも最終的には少し救われる物語。読み始めはそうは思わなかったけれど、読み終えてみればミステリでもありました。
虐待される子供を救おうと奔走する児童相談員。劣悪な家庭環境の中、それでも懸命に将来を求める少年少女。そして不妊に悩まされる女性。どれも絶望に沈んで苦しく思えるそれぞれの物語が少しずつ繋がっていき、そこには希望が見えてくるのか。どの人もこの人も幸せとは程遠く思えるのだけれど、それでも拠り所となるものがあるのとないのとでは全然違うのかも。そして結局のところ、助けを待っているだけではダメなんだろうなあ、と。
ラストで明かされるあの人の犯罪は、正しい行いではないかもしれないけれど。それでも誰も非難はできないでしょうね。生き延びるためにはそうするしかなかったのかも。むしろそこまで強く決意できたことは偉いすらと思ってしまいました。平穏な暮らしをできている人からは、想像もつかない状況だものなあ。
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「川崎アンダーグラウンド」という感じ。この時期の川崎が実際こうだったかは別だが。
救いのない話が苦手なので、結末はよかった。
終盤までわからないように工夫された構成のトリックも効果的。わかった瞬間、そこまでを読み返して確認してしまった。
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11月-7。3.5点。
児童相談所の男性と、虐待された高校生カップル、
不妊治療に悩む夫婦。場面が変わりながら進む。
夫婦の隣には、虐待する親と息子の声が聞こえ。
うまいオーバーラップ。ラストもすんなりいった感じ。
上手いな。
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展望塔が街を見下ろす多摩川沿いの地域は、貧困や反社会的勢力などにより治安の悪い地域だった。…
児相職員の悠一、貧しく不幸な生い立ちの海とナギサ、親からの虐待にあう6歳の壮太、不妊治療の甲斐なく子供に恵まれない郁美。
彼らがどのように関わっていくのかが気になり、またその壮絶な不幸に顔をしかめながら読みました。
親のせいで不幸に見舞われる子供達を救う児相の状況も垣間みることができ良かったと思います。
虐待死のニュースの度に頭を下げる地元の児相の方々の見えない苦労は、これからは想像しなければならないと思いました。
心配していた子達の先の姿が見れたラストにグッときます。
そして、著者により仕掛けられた事実に唸りました。
素晴らしい作品、印象に残る出逢いでした。
2021/11/26
展望塔のある多摩川沿いの街、児相の職員、家族関係に難のある子供達、不妊治療中の主婦の3つのストーリーが絡み合っていく。
再読。
登場する子供の壮絶な環境は、目に余るもの。
でも、実際にあちこちで起こってることなのでょう。
それに対応する児相や市の職員の方には頭が下がります。
子供は守られて幸せであるべきだと思いますが、そうでない環境に置かれている子が沢山いる事実が辛いです。
著者のミスリードに寄って、最後まで飽きることなく一気読みでした。
ほぼ内容を忘れていたので、今回再会できて良かったです。
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初めての作家さん
児童虐待をテーマに時には目を塞ぎたくなる描写もあるが、それがまたリアルに感じ逆に目を背けちゃいけないなと。
合田課長の子供は死ぬために産まれた訳じゃない、の一言にドキドキし、郁子の荘太を家に入れてたところでまたドキドキし。うん、読んで良かった。
こんな世の中、なくなればいいのにな。
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子供への虐待が事件になるたびに、なぜ児相はもっと早く動かなかったのか、なぜ行政は子供を無理にでも親から離さなかったのかという話になるが、それはもしかしたら、とても皮相的な捉え方なのかもしれないと感じた。虐待を放置しておいてもいいはずは当然ないが、かといって親子を引き離せばそれでいいのかといえば、それも正しいのかどうかわからない。世の中は、きっとそんなに単純ではないのだろう。
ひとつ感じたのは、ほんの少しのきっかけで、悲惨な状況にいる子どもたちも自分の人生を見つけることができるのではないかということだ。
そんなきっかけをひとつでも多く与えることができる社会。大人が子どもたちのためにするべきことは、そういう社会をつくっていくことなんだろう。
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作者の「聖者が街にやって来た」でも描かれた架空の街神奈川県多摩川市。この街を舞台に、児童相談所で働く悠一、自らも凄絶な虐待に会いながらも港で出会った少年に「ハレ」と名付け目をかけるナギサとその男友達・カイ、子供を欲しながら不妊治療に明け暮れ精神的に追い込まれる郁美、3つの場面が章ごとに移り変わりながら物語は進む。
描かれるのは胸糞が悪くなるほどの児童虐待の姿と、無力感に苛まれ疲弊していく児童相談所の職員たちの実態。もう、感情のスイッチを切って読むしかないほどの怒りと悲しみに襲われる。
よくよく読み込めばわかるんだけど、ちょっとしたミスリードの罠にはまり、ラストであっ!と驚き、最初から読み返したくなる展開は見事で、真相がわかってからの悠一、ナギサそれぞれの生きざまは人間の強さと可能性を信じたくなる。
タイトルに秘められた思い、どん底の状況にあるからこそ「希望」の持つ力は絶大で、追い込まれ狭い世界で苦しむ子供たちが、ちょっとしたきっかけや手助けで違う人生を歩むことができるということがささやかな救いでした。
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那希沙の壮絶すぎる生い立ちや
虐待されている子供達の描写には
読んでて正直しんどかった。
ちょっとここまで酷いと
リアリティがないのか
ありすぎるのかよく分からない。
でも終盤のサプライズで報われたような…
重いテーマなだけに考えさせられることの方が多かった。
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いやあ、よかった!
これ映像化してほしいなあ。
登場人物のキャラがどれも際立ってました。
実際に映像化するとなると、那希沙役は
かなり体当たり演技がいるけど
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2つの大きな社会問題を取り上げている。児童虐待事件が報道されるたび、死者がでたから大事になったのだろう、潜在的虐待は多くあるのだろうと思う。また福祉機関が家庭の中に介入することの難しさも理解できるので、一方的に責めることもできない。物語は登場人物の環境を極端に表現しているが、差別や貧困や暴力の連鎖は強固であることは現実だ。とても悲しい話だったが、ちゃんとミステリーとして楽しませてくれた。老朽化して撤去予定の塔は、底辺の人々にとって希望や救済の象徴。希望や勇気を持つことが難しい社会になってはいけない。