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紙の本
牧野富太郎 私は草木の精である (平凡社ライブラリー)
著者 渋谷 章 (著)
自らを「草木の精」と呼び、95年の生涯を植物に捧げた牧野富太郎。約2500種の学名をつけ、幾多の著作を残し、今もってその業績は燦然と輝いている。世界的植物学者の人間性に迫...
牧野富太郎 私は草木の精である (平凡社ライブラリー)
牧野富太郎
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商品説明
自らを「草木の精」と呼び、95年の生涯を植物に捧げた牧野富太郎。約2500種の学名をつけ、幾多の著作を残し、今もってその業績は燦然と輝いている。世界的植物学者の人間性に迫る。リブロポート1987年刊の再刊。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
渋谷 章
- 略歴
- 〈渋谷章〉1948年東京生まれ。上智大学大学院文学研究科修士課程修了。淑徳短期大学教授。著書に「回想のモーリッシュ」、共著書に「定理・法則をのこした人びと」などがある。
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紙の本
ひとつのことに人生を使いきる
2023/04/17 13:32
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ポラーノの広場 - この投稿者のレビュー一覧を見る
牧野富太郎先生は草木を愛し、草木と共に生きた人です。幼少の頃から始められた身の回りに見る小さな草や花を観察してありのままに記録する。この作業を丹念にし続けるなかで次々に湧き起こる疑問を解くために人生を使いきった人。ご自身も植物分類学の研究者である著者は本書で牧野富太郎の生涯を丁寧に描いており、牧野富太郎の生き方と共に草木を愛する心を学ぶことができました。人生をかけてひとつのことに打ち込むことの大変さと大切さ。誰でもできることではありませんが、だからこそ尊いことなのだと思います。
紙の本
「天才」とはどのようなものかを知るに格好の一冊
2001/03/29 18:16
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:赤塚若樹 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ある分野で「人並みはずれた」業績をあげた人物の生涯が、いい意味でも悪い意味でも「ふつうでない」のは、おそらく「常識的に」考えれば考えるほど正しいだろう。そして、そういった人びとの伝記がおもしろいのは、まさにその「常識外れ」の点に——その人物がどのくらい「常識」から遊離しているかという点に——あるといってよいはずだ。
とはいえ、「ふつうの」人びとには、その人物が専門分野で残した仕事については、せいぜい「人並みはずれた」ところがあるという事実がわかるにすぎない。だから、「常識的な」人びとが伝記文学をとおしてその人物の「常識外れ」の点を知るのは、よくいうところの「ひととなり」についてということにならざるをえず、そこで自分とくらべられるからこそ、その伝記は興味深いものとなるのだろう。では、この本で取り上げられている牧野富太郎はどうか?
牧野富太郎(1862年生まれ)は、ときに「日本の植物学の父」とも呼ばれる著名な植物学者で、生まれ育った高知にはその名を冠した植物園までもがつくられているほどだ。1951年には吉田茂首相が発案した「文化功労者」に選ばれており、1957年に亡くなると、すぐに文化勲章も授与されている。植物学において具体的にどのような業績をあげたのかはわからずとも、こういった事実を知るだけで、この人物が相当偉い植物学者だということは理解できるだろう。
とすれば、もしかしたら「常識外れ」の人物ではないか、と想像するのはそれほどむずかしいことではない。東大からちゃんと学位を授与されている立派な「博士」だが、最終学歴はなんと「小学校中退」。酒造業を営む商家に生まれ、社会的にも経済的にも恵まれた環境にいた牧野富太郎は、寺子屋や塾で学問を学んでいたために、新設された小学校での生活や学習内容に耐えられず、辞めてしまったのだという。それ以後ずっと独学をつづけていく。
そのうちに植物への関心が高じると、生家の財力にまかせて書物を買いあさり、植物学者になることを志す。上京して、東大に出入りが許されるようになると、まもなく頭角をあらわしはじめるが、目立てば目立つほどお偉方からは疎まれていき、しかも上下関係をあまり尊重しないものだから、とうとう研究室から追放されてしまう。やがて理解者を得て、また大学にかかわるようにはなるが、そこにいるあいだ待遇は決してよくはならなかった……。
しかし植物への情熱は半端ではない。金持ちのぼんぼん気質が抜けきらなかったのか、もともとそういう性格なのか、大学からの給料をはるかに上回るお金をつぎ込んでいき、あるときは月給30円の身分なのに借金が3万円。裕福な理解者によって救われ、そのうえ援助までしてもらえるようになるものの、しばらくすると不義理からそれも打ち切られてしまう。万事がこの調子なのだが、牧野富太郎はやはり常識を越えたオプティミストで、すべてを自分のいいように解釈して植物研究にはげんでいくのだ。すさまじいとはこういうことをいうのかもしれない。そのすさまじさは、たとえは蔵書が4万5千点もあったことや、所有していた40万点ともいわれる標本を専門家がひととおり整理するのに20年もかかったという事実からもわかるだろう。
本書はまさに「天才」とはどのような人間かを知るに格好の一冊だと思う。そしてまた、これを読めば、牧野富太郎へのさらなる興味が湧いてくることはもちろん(そのさい、手近なところでは、俵浩三『牧野植物図鑑の謎』[平凡社新書]がとても興味深い)、植物そのものへの純粋な関心も芽生えてくることだろう。なお、ここまでくればもやは予想どおりかもしれないが、本書の「解説」が荒俣宏によって書かれていることをつけくわえておこう。 (bk1ブックナビゲーター:赤塚若樹/翻訳・著述業 2001.03.30)