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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2006.12
- 出版社: 青土社
- サイズ:20cm/334p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-7917-6313-0
紙の本
負の数学 マイナスかけるマイナスはマイナスになれるか?
著者 アルベルト・A.マルティネス (著),小屋 良祐 (訳)
マイナスかけるマイナスがマイナスになるような数学のシステムをつくることが出来るだろうか? 伝統的な代数の日常的な体験に対応していない側面を紹介し、物理的な世界を描写するの...
負の数学 マイナスかけるマイナスはマイナスになれるか?
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商品説明
マイナスかけるマイナスがマイナスになるような数学のシステムをつくることが出来るだろうか? 伝統的な代数の日常的な体験に対応していない側面を紹介し、物理的な世界を描写するのに役立つ新しい数学を生み出す方法を示す。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
アルベルト・A.マルティネス
- 略歴
- 〈アルベルト・A.マルティネス〉テキサス大学オースティン校で科学史および数学史の講義を担当。
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紙の本
概念の歴史がおもしろい
2008/03/27 22:13
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:キュバン - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本の想定読者は、「負×負=正」である実例をよく知り理解している者、ないし、よく理解しないまでも当然として受け入れている者である。腑に落ちないとか疑問があるとか理解できないとか言う読者が答えを求めて読むべき本ではない。この本の3つの目標はp15にはっきりと述べられた通りで、まとめれば「伝統的代数が唯一の正しい代数ではない」ことを示すことだからだ。
2-3章では、現在の初中等数学では常識である「負の数」がはっきりと受け入れられたのは1800年代中頃という結構新しい時代のことであることが述べられ、それまでのそうそうたる数学者、科学者、哲学者達の(現代の者から見ればの)困惑ぶりがこれでもかこれでもかと、淡々と記されている。さらに、もっと受け入れがたかった「虚数」が絡んで、混乱する論争に拍車がかかる。「負×負=正」に自分なりの確信を持たない読者は、この混乱に巻き込まれてしまう恐れもあるので読むことは勧めない。著者がp35で勧めるように過去の人々に感情移入すれば、なおさらその危険は大きい。
5章では、非ユークリッド幾何学、ハミルトンの四元数、グラスマンの有向線分(ベクトル)の登場により、数学には異なる多数の種類のものがあり得ることがわかってきた、ということが語られる。もしも読者が「数学的真理はひとつ」という現在では誤りとされる思い込みを持っていたとすれば、ここで少し思いこみを正される。そして6章で著者は「負×負=負」である数学を構築して見せる。6章は慣れない読者は何度も読み直さないと理解しにくいであろう。
野心的な試みの本だが、同じことを表現を変えて何度も繰り返しているため文章が長くなっており、すんなりとは読み進めにくい。本書のハイライトであるはずの6章も、簡潔な数式的まとめがあればもっとわかりやすかったはずだ。7章で示されたモデルももう少し詳細に描けば説得力が増すと思う。例えば取り去る長方形を負と定義するモデルでは、正×負の定義がなされていないので不完全である。
ただ、"訳者あとがき"にもあるように、"負の数についての歴史的解説などは、類書を圧倒するものである"ことは確かであり、数学史に興味のある読者には必読とも言えるのではないだろうか。