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商品説明
拍手とスポットライトと緞帳、ちやほやされた経験、プレッシャー、不純な動機…。松島トモ子、小林綾子、水谷豊、梅沢富美男など14人にインタビュー。体験者自らが語る「子役」の状況と意見を集大成。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
松島トモ子 | 松島トモ子 述 | 11−30 |
---|---|---|
小林綾子 | 小林綾子 述 | 33−50 |
長門裕之 | 長門裕之 述 | 53−74 |
著者紹介
中山 千夏
- 略歴
- 〈中山千夏〉1948年熊本県生まれ。俳優、TVタレントとして活躍。参議院議員を務めた。著作活動に専念するかたわら、死刑廃止運動など市民運動を続けている。「どんなかんじかなあ」で日本絵本賞受賞。
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紙の本
ぼくはふつうの子どもだった
2008/09/13 17:21
8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
子役と呼ばれた人たちはいつまでも子役であることはない。成長とともに彼らは「かつての子役」になり、「往年の子役」と呼ばれてしまう。子供たちが演じて(あるいは歌って)いたのであるから、それは避けることができない宿命である。
失礼ではあるが、その言い方をせざるをえないので書くが、「かつての名子役」中山千夏さんがホストになって14人の「かつての子役」たちとの対談をまとめたのが本書である。その14人の顔ぶれを紹介すると、松島トモ子(知らない人多いかな)、小林綾子(おしんです)、長門裕之(津川雅彦さんのお兄さん)、浜田光夫(吉永小百合さんとのコンビがよかったですよね)、四方晴美(TV黎明期の子役といえば、やっぱりこの方チャコちゃん)、柳家花録(名人小さん師匠のお孫さん)、小林幸子(紅白の衣装の話ではありません)、和泉雅子(日本人女性として初めて北極点到達に成功したんですよね)、水谷豊(『相棒』で今もブレイクしてます)、風間杜夫(この人の日活ロマンポルノ主演作好きだったな)、矢田稔(さすがに私でもわからない戦中に活躍された方)、弘田三枝子(彼女の「人形の家」は名曲です)、和泉淳子(狂言の、そう節子ママは本書でも少し登場)、梅沢富美男(夢芝居です)、となる。
ついでに、中山千夏さんのことを書くと、舞台の『がめつい奴』で子役として人気を博したらしいのだが、私のなかではあの『ひょっこりひょうたん島』の「博士」の声を演じた千夏さんであり、ご本人は封印されているらしいが『あなたの心に』(1964年)を歌った千夏さんである。その後参議院の議員にもなられているが、色々な市民運動に参加されてもいる。しかし、やはり私にとっての千夏さんは子役からやや成長期を迎えられた頃がもっとも親しみやすい。そのように考えると、「子役」というのは情報の受け手であるこちら側の年令とも密接に関係している存在であることがわかる。例えば、本書に登場する水谷豊さんなどは手塚治虫の実写版『バンパイヤ』を演じていた頃を知っている人にとっては「子役」水谷豊であったかもしれないが、現在の『相棒』の右京役で水谷豊さんを知った世代にとっては「子役」どころかしぶい中年役者としての認識だろう。つまり、水谷豊さんなどは役者として極めて幸福な事例であるといえるし、本書に登場した14人それぞれが「子役」にひきずられることなく、今も立ち位置がはっきりしている幸福な人々だといえる。
千夏さんが書かれているように「芸能界はオトナ中心のオトナ社会だ。とりもなおさず子役とは、オトナ社会を子どもが生きる体験だ」(8頁)と思う。そして、そのオトナ社会に負けてしまった多くの「子役」がいることも事実だ。それは週刊誌的にいえばスキャンダルと犯罪に走った「子役」たちだ。彼らへのインタビューが実現しなかったことについて、千夏さんは「多くは連絡がとれなかったし、こちらも無理はしなかった。そっとしておいてもらいたいのが当然だと思ったからだ」(322頁)としているが、やはり彼らこそ「子役」という重い過去を背負った人々だろうし、彼らが「子役」であったことをどう語るのかは極めて重要なことだと思う。
子どもはいつまでも子どもであることはない。しかし、子どもは「子役」とは違い、成長したからといって「かつての子ども」とか「往年の子ども」と呼ばれることはない。そのことだけでも「ふつうの子ども」は幸せなのかもしれない。