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紙の本
ドブネズミガンバの成長物語―忘れかけていた何かを思い出させてくれる作品
2011/01/19 23:28
10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:wildcat - この投稿者のレビュー一覧を見る
『冒険者たち―ガンバと十五ひきの仲間』、『グリックの冒険』、『ガンバとカワウソの冒険』の3部作は、
ドブネズミのガンバとその仲間が登場する冒険の物語である。
『冒険者たち』と『ガンバとカワウソの冒険』は、ガンバが主人公である。
『グリックの冒険』はシマリスのグリックが主人公で、ガンバは途中のエピソードに一時的に登場する。
この3冊の共通点は、ページ数が多くて重いことだろうか。
文庫も出ているけれど、ページはやっぱり多い。
『冒険者たち』が378ページ、『グリックの冒険』が346ページ、『ガンバとカワウソの冒険』に至っては546ページ。
小学校時代を懐かしみ、当時読んだハードカバーでと思って勇んで図書館からまとめ借りしたものの、
全部で1270ページ・・・は、さすがに重かった。
小学校時代に読んだ本で、同様に厚くて重いハードカバーといって思い出すのは、アーサー・ランサムの全集。
あれも同様にどれも500ページ近かった。
あちらは、全集制覇には本好きでも根性が要るが、ガンバは読書経験がなくても大丈夫。
読みやすく、分かりやすい言葉で、楽しく冒険しながら、大切なことを教えてくれるようなお話だ。
読書経験があまりない子もなぜかすっとおもしろく読める本である。
ガンバとカワウソは環境問題も関わっていたり、主人公たちの心情の複雑なところにより入っていき、
ページ数が多いだけでなく若干難易度が上がるため、もう少し読書経験が上がってからの方がよいだろう。
ガンバの物語は、(私は見たことはなかったが。)テレビアニメにもなっており、
劇団四季のミュージカルとしてニッセイ名作劇場の演目にもなっており、
小学校で春と秋に上映されるアニメ映画にもなっていた。
グリックの冒険は、自分が小学校の低学年の頃のアニメ映画だったと記憶している。
私が小学6年生の頃は、ミュージカルもアニメ映画もガンバで、なんだか縁がある作品だった。
クラスではガンバの原作を先生が紹介してくれて、みんなで読んだと記憶している。
卒業から二十数年後に開かれた小学校の同窓会で、6年生の時の担任だった先生が、
『冒険者たち』を読書には興味を持っていなかった男の子が読み切ったという話を嬉しそうに話していたことを思い出す。
再読してみて、通勤電車で読むと手がしびれるものの、やっぱり読みやすい本だったと思った。
語りや歌が重要な役割をは果たしていて、アニメや映画やミュージカルにも向いている作品である。
文章から情景や歌が浮かびやすく、クライマックスも立体的な表現が映える。
3部作で共通に出てくる冒険の歌があるのだが、
それは今風に言い回しを替えて、ミュージカルでも使われていたことを思い出す。
節回しまでなんとなく覚えていた。
記憶に残りやすいメッセージを携えていたのだろう。
『冒険者たち』の冒頭では、ガンバは自分の家で食べるものにも困らずどこにも行かず
寝ているだけで十分と思っているようなタイプのネズミだった。
それが、海が見たいという幼馴染のマンプクに同行して港に向かったことから
今までとは全く違う生活に身を投じていくことになる。
家にいた頃のガンバはリーダー・キャラでは決してない。
それが、追い込まれ、決断を迫られると、彼は、周りを動かすような発言ができるのである。
彼は、投票で冒険者たちのリーダーに選ばれる事になるのだった。
リーダーは、ひとりでいるときからリーダーの器でいるというわけではなく、集団の中で頭角を現し、
周りにも支持されることで、成長していくものなのだということが、非常に分かりやすく表現されている。
ひとつひとつの物語が楽しめるだけではなく、3部作全体を通してのガンバの成長物語としても読むことができる。
味のある登場人物たちの個性も味わえるし、その個性的な面々がすべていろいろな意味で必要な仲間たちだったのだと実感できる。
最初は役に立たないと思われていた者も何かの重要な役割を持っていることがあとあとわかることになるのだ。
子供時代に読んだ児童書をもう一度読もうと思い立ったときに、
シリーズがあまりに多いもの、長いものだと、ちょっとタイムスリップでは済まないような覚悟がいる。
この3冊は、子どもにとって読みやすいだけでなく、
大人にとっても、手軽に懐かしさを味わえ、
しかも、忘れかけていた何かを思い出させてくれる作品である。