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著者 グスタフ・ルネ・ホッケ (著),種村 季弘 (訳),矢川 澄子 (訳)
迷宮としての世界 マニエリスム美術 下 (岩波文庫)
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みんなの評価4.3
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評価内訳
2011/08/20 11:37
投稿元:
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何にでもマニエリスムを牽強付会する困った本だなと思っていたが、高山宏氏の解説を読んで、マニエリスムを拡大解釈というか、欧州の文化基底の一つと数える本だと理解すべきだと知る。アンチボルドの絵より先に国芳のを知った身としてはマニエリスムは基底になりうるのかなと思わないでもない。とりあえず、睡魔に襲われつつ読んだので、ろくに頭に入ってない故、後日再読せねば。。
2023/10/17 15:34
下巻では、ルドルフ二世やフロイトなどその時代の象徴であった人物に触れたり、アルチンボルドやレオナルドを深掘りしたり、一角獣やヘルマフロディトゥスがなにを象徴しているかについて詳細に語ったり、と、あちこちに話が飛んでいく。男女が抱き合うことは、対立するものが対立するままにともに存在すること。古典主義とマニエリスムも、相手の存在ゆえに存在する。その二つを無理に結合しようとするのではなく、板挟みの状態のまま、間を歩んでいくことが最後に推奨される。シェイクスピアやレンブラントのように。
2023/02/26 12:03
美術史のなかでルネサンスとバロックのあいだにある過渡期を指す時代区分の名前だった「マニエリスム」。ホッケはその様式を一回性のものではなく、古代から繰り返しあらわれる「ヨーロッパの常数」として定義し直し、20世紀前半のアートシーンを結びつけようとした。マニエリスム芸術の評価を変えた一冊。 澁澤・種村のネタ元のひとつ、やっっっと読めた………!何度もチャレンジして挫折してきたけど、少しずつ美術史関連の本を読んできた今だからこそ理解できる内容だったと思う。 読み通して意外だったのは、予想以上に本がでた当時の同時代ムーブメントだったシュルレアリスムを語るためにマニエリスムを援用する内容だったこと。ホッケはベルギー生まれだがドイツを拠点に活動し、原書は戦後の54年に刊行されているのだが、ホッケはなかで「原子力時代」への危機感を語り、ヨーロッパ精神とは元々「多元主義」なのだと、世界の分裂をつなぎとめようとしたルドルフ2世へのシンパシーをあらわにしている。この辺の熱い筆致が魅力なのと同時に「いささかヤクザ」(由良君美)と言われる所以なのだろう。 ホッケのマニエリスム論の概略は「既存世界を形作っていた秩序が崩壊し、目に見えるものが信じられなくなったとき、直観的・幻想的な芸術がよりイデア的な〈真実〉味のあるものとして求められる=常数としてのマニエリスム」と理解した。1520~1650年代(狭義のマニエリスム期)は、それまでのキリスト教会が唱えてきた世界観が変容を迫られた。1880~1950年代は、アフガン戦争を皮切りに西洋が大戦へなだれこんでいった時代だった。ホッケはそれまで過度に人工的で遊戯的な退廃趣味としか思われていなかったマニエリスムの背景に、時代の現実に対する切実さを見いだし、己の時代と重ね合わせようとした。 「世界は迷宮であり、解き方を知る者だけが真実に辿り着く」と言うマニエリスムの世界観は密教的で、陰謀論的ではある。そこに現代に通じる危うさがあるからこそ、本書は今後も読み継がれていくんじゃないかと思う。 今回初めて知った作品では、16世紀のキュビストと呼ばれているルーカ・カンビアーソが面白かった。デッサン人形のように単純化した人体を描いている。ボッロミーニのサン・カルロ・アッレ・クワトロ・フォンターネ聖堂のドームのデザインもモダン。20世紀の芸術家ではクレリチびいきなのが嬉しかったな。私も好き。
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