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紙の本
余白の春 金子文子 (岩波現代文庫 文芸)
著者 瀬戸内寂聴 (著)
関東大震災後の混乱のなか、大逆罪に問われた金子文子とパートナーの朴烈。過酷な境遇にあって、自らの生を全力で生きた文子の、獄中で自殺するまでの23年の生涯を、実地の取材と資...
余白の春 金子文子 (岩波現代文庫 文芸)
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商品説明
関東大震災後の混乱のなか、大逆罪に問われた金子文子とパートナーの朴烈。過酷な境遇にあって、自らの生を全力で生きた文子の、獄中で自殺するまでの23年の生涯を、実地の取材と資料を織り交ぜて描いた不朽の伝記小説。【「TRC MARC」の商品解説】
「私は生を肯定する。……生を肯定するが故に、生を脅かそうとする一切の力に対して奮然と叛逆する。」 無籍者、虐待、貧困――過酷な境遇にあって、自らの生を全力で生きた金子文子(1903―26)。パートナーの朴烈と大逆罪に問われ、獄中で自殺するまでの23年の生涯を、裁判記録や取材を織り交ぜ描く、不朽の伝記小説。【商品解説】
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金子文子と朴烈の大逆事件
2019/04/06 12:11
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くりくり - この投稿者のレビュー一覧を見る
「金子文子と朴烈」という映画が、ロードショウされている。監督は「空と風と星の詩人~尹東柱の生涯~」のイ・ジュンイク。
大正12年の関東大震災の時に、在日朝鮮人の大虐殺が行われた。朝鮮人が震災に乗じて暴動を起こすというデマが広がる中での事件だった。「日頃朝鮮人に対して行っているひどい差別や虐待の事実を振り返れば、そんな報復があっても不思議でないという恐怖感があったから」虐殺は広がっていく。当時の原内閣は朝鮮半島の独立運動を阻止するために武力弾圧を強行していた。日本への憎悪を持つ朝鮮人民と在日朝鮮人の社会主義者が手を組むことを阻止することを狙っていた日本政府は、その両方の弾圧を狙っていた。震災に乗じた虐殺と朝鮮人保護を名目にした在日の朝鮮人活動家の一斉検挙はこうした背景で起こった。
本書は、朴烈というアナーキストと思想を同じくした日本人の内縁の妻金子文子についての書籍。出生から、とらえられて「大逆罪」として死刑宣告され、獄中で自殺を遂げる人生を、彼女の手記、彼女とかかわった人々を国内、朝鮮に訪ねてあらわしたもの。初出は40年以上前の1971年から約1年以上にわたる婦人公論への連載。映画の公開にあわせて、今回再発行されたのだろう。
この文子の生涯がすさまじく不幸であった。恵まれなかった家族関係と貧困、しかし、文子の向上心が勉学への道をこころざし、上京させる。上京しても貧困のまま、思うような成果が得られない。こうした中、朴烈と出会う。自身の境遇が社会によるものと目覚める中で、無政府主義から虚無主義へと傾倒していく。
文子が、獄囚で自らの出自と境遇を綴った「何が私をこうさせたか」に詳細は記述されているが、文子は、貧困と不条理の中から考える。文子の母が嫁いだ田舎での都会による田舎の搾取や自分を捨て、婚姻を繰り返す母の夫や婚家にのみ頼る女の生き方。
社会主義や女性解放運動の黎明期に確固たる思想の確立をなしえないままに、権力によってその芽は摘み取られてしまった。
同様に大逆罪で殺された菅野須賀子や伊藤野枝に比べ、金子文子はあまり知名度はない。 はたして、この「大逆事件」と言われるところの犯罪は成立しているのであろうか。およそ、若者の頭の中だけで計画されたものであり、本書に示された文子の証言からも、朴烈が死刑になるのであれば、同じ刑で朴烈とともにありたいという文子の証言は、証拠としては不十分だ。死刑に値するような罪は認められないだろう。若者の熱情を裁くものだった。