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商品説明
事故で死んでしまった三毛猫の小春。ある時息子が裏の空き家から小春の声がするといい…。「まつとし聞かば」など、住居にまつわる怪異を営繕屋・尾端が鮮やかに修繕する全6篇を収録。『幽』『怪と幽』掲載を改稿し単行本化。【「TRC MARC」の商品解説】
両親と弟が鬼籍に入り、かつて花街だったという古い町並みにある町屋の実家に戻ってきた貴樹。貴樹が書斎として定めた部屋の書棚に立てかけられた鏡をずらしてみると、柱と壁に深い隙間があった。そしてその向こうに芸妓のような三味線を抱えて座るはかなげな着物姿の人影が見えた。やがて貴樹がその女を見ずにはいられなくなり……。(「芙蓉忌」より)
佐代が生まれた家の町の一郭に神社があった。その神社の脇に背戸があり、夕暮れになると暗くて怖い細道だった。まるで『通りゃんせ』の歌のように。あるとき時間を忘れて遊びすぎ、忘れ物を取りにさらに遅くなり、夕暮れの闇が迫る中、怖いけれど急いで背戸に向かって走っていると、瀬戸に豪華な模様の入った袴を着た鬼が立っていた。その鬼は逃げようとする佐代の肩を掴み――。(「関守」より)
離婚して実家に帰ってきた俊宏の母親が飼っていた三毛猫の小春。半月前に家を出て、そのまま交通事故にあって死んでしまった。母親は2か月前に倒れて意識もなく病院で寝たきりの状態だ。そのいずれも息子の航に告げることができないまま日々が過ぎていくのだが、あるとき航が「小春がいると思うんだ」という。裏の古い空き家から声がするという。さらに「布団に来た」ともいう。布団を調べると僅かな汚れと激しい異臭がする。その得体のしれない「何か」は徐々に迫ってきて――(「まつとし聞かば」)
古い民家をリフォームして住むことに憧れをもっていた育は、築50年以上のこの物件を暇を見つけては手を加えてきた。ある夜零時過ぎ、風呂上りにドライヤーで髪を乾かしていると女の呼ぶ声がする。しかも何かを責めるような強い語調だった。このところ続けて見る、暗闇に人影が座り込んで何かを責めている夢と煩い隣人との関係は――。その答えは意外なところにあった。(「魂やどりて」)
恋人に結婚を切り出すと「僕には結婚する資格がないんだ」「たぶん僕はもうじき死んでしまうから」と。その理由は小学校五年生夏休みにさかのぼる。広い川の大きな堰の先にあるブロックで遊ぶ幼馴染のリュウちゃんを見殺しにしたも同然だった。亡くなった翌年から、背後からふっと淀んだ水の臭いが漂うようになる。臭いはどこかくるのか――。(「水の声」)
祖母の家に引っ越してきてから、両親の不仲から逃れるために押し入れに寝場所を作ると、天井に屋根裏へ通じる隙間を見つけた。上がってみると、誰かが作った屋根裏部屋だった。その脇にゆらりと揺れる影――項垂れた人の黒い影だった。それは片眼のない片脚もないお腹も血だらけだった――。(「まさくに」)
優しさと哀しみと恐怖に満ちた全6篇。
【商品解説】
目次
- 芙蓉忌(ふようき)
- 関守(せきもり)
- まつとし聞かば
- 魂(たま)やどりて
- 水の声
- まさくに
収録作品一覧
芙蓉忌 | 5−51 | |
---|---|---|
関守 | 53−103 | |
まつとし聞かば | 105−158 |
著者紹介
小野不由美
- 略歴
- 〈小野不由美〉大分県生まれ。作家。「残穢」で山本周五郎賞受賞。ほかの著書に「魔性の子」「東亰異聞」など。
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紙の本
前作に比べれば、怖さはマイルド
2019/09/29 09:59
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ねこまるた - この投稿者のレビュー一覧を見る
古い城下町を舞台にしたホラーです。建物にまつわる大きな事件では無いかれど、ジワ~と怖くなる話が連なっています。
前作に比べると、「怖くて一人で読む事が出来ない」「物音にびびって後ろを振り返る」とう事にはならなかったですが、途中で「早く営繕屋出てくれ、怖い」と思う事は何度かありました。
あくまで怖さがマイルドなのは前作比ですので、ホラーが苦手な方は注意して下さい。
紙の本
そこにある怖さ
2020/01/12 12:33
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:るう - この投稿者のレビュー一覧を見る
まかり間違えば自分に降りかかるかもしれない恐ろしさのある連作短編集。
今回は「魂やどりて」が印象的。育の傲慢さ、身勝手さがものに残る思いを怒らせる過程はいかにもありそう。
ものの歴史を受け入れるつもりがない人間は古道具に手を出す資格が無いのだな。