紙の本
何も知らずに読んでほしい。
2021/12/13 02:08
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:初レビュー - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルとあらすじに惹かれて読んだ作品。
でも、人に薦めるときは、タイトルもあらすじも知らないまま、読み始めてほしい。
そんな風に思えるほど、書出しからの展開がすごく好きだと思ったら、書評で辻村先生も同じようなことを仰っていて共感した。感動を言語化してくれていた。
物語の設定はよくあるものだけれど、新しく、生々しいと思えた。設定は最後まで活きているし、細やかな描写が効果的だった。主人公たちとほぼ同世代で生きているから、胸に迫るリアリティを感じたのかもしれない。おジャ魔女とか、家族や友人たちの在り方とか。ジェンダーやセクシャリティのようなものを内包して超えていく、というか、飲み下して続けていく、というのか。そんな一人の人を描きだしたような爽快で満足する読後感がよかった。
他者は自分の鏡だとか、秘密の共有が一番の絆になるとか、よく言うけれど、それだけがテーマになっていない。読めて嬉しい作品だった。
でも、本当に、タイトルもあらすじも隠して、人に薦めたい。その状態で、騙されたと思って、最初の1章をを読んでもらいたい。面白いから。と言いながら手渡したくなる本。
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ばんどらい - この投稿者のレビュー一覧を見る
入れ替わりによってもう一人の自分と呼べるほどに絆を深めた男女の物語。がらりと世界が変わってしまったことを文章力で巧みに表現している。タイトル回収の部分は必読。
投稿元:
レビューを見る
読み終わり興奮冷めず感動しました。男女入れ替わりの奇想天外のお話こんなにも思い悩むものかと心が痛んでしまいました。
今までにあった男女入れ替わりではない驚愕のお話だと思います。
もし入れ替わりが戻らなければ夫婦になってしまえばいいのにと思ってしまいましたが、はたしてどうなることやら、一気読み間違いなし、あなたも興奮し下さい。悩んで下さい。
投稿元:
レビューを見る
作品のあらすじを読んだ時から、発売日を心待ちにしていた作品でした。そんな期待値の高い状態で読み進めましたが、その期待を裏切ることのない、心動かされる素晴らしい作品でした!
男女入れ替わりと言えば、恋愛に結びつきそうなところを新たな切り口から、人生観を表現していたところが素晴らしかったです!
投稿元:
レビューを見る
あっという間に、半日で読み終えてしまった…
水村さんの相手を思ってのらりくらりとしている優しさ、強さ?がすごいなー。
投稿元:
レビューを見る
古今東西、身体入れ替わり物語は数々あれど、当事者のネガティブな感情、混乱葛藤苦しみをきちんと描いたものはなかったのでは?
どうしても男女の身体入れ替わりにはそこから生まれるトラブルをそこはかとないおかしみに焦点を当てて描きがちな気がする。読者も異性の身体を持ってしまうことから生まれる騒動を楽しみながら読でしまう。
でもよく考えたらそれはすぐに元に戻る、という大前提あってのこと。
もしも、入れ替わったまま15年もの月日が流れたとしたら…
高校生だった二人は、大人になっていく。恋もするだろうし結婚出産という、人生の中での大きな経験もするだろう。また、本当のことを言えないまま家族との永遠の別れもあるだろう。
そんなあったかもしれない当たり前の人生を、他人の身体のまま生きていくとしたら…
投げ出したくても投げ出せない人生。自分の人生なのに自分だけのものじゃないという足かせ。
いつ終わるとも知れない薄闇の中で折り合いをつけて歩いていく不安。
それでも繰り返し訪れる明日という時間を照らしてくれるのは、約束という光。
もし目の前に二人がいたら、思いっきり抱きしめてあげたい。抱きしめてよく頑張ったと頭をわしゃわしゃ撫ぜてあげたい。
今日と明日の間にいる二人と笑顔でハイタッチしたい。
投稿元:
レビューを見る
もしかして、私たち入れ替わってるー?!の映画は見たことないし、全然興味がないけど、そういった物語はたくさんあって、大体が最終的には元に体に戻れて良かったねで終わってる。
だけど、この物語は元に戻れないまま15年過ぎた。15年。めちゃくちゃ長いし、人生も変わる。高校1年生だった男女は30歳になって、片方は結婚して子供が出来て、片方は仕事に恋にエンジョイしてる。男女入れ替わったまま。
毎年7月の第3土曜日は、夫が知らない男に会いに行く。一年に一回の逢瀬。15年前、朝起きたらクラスでもあまり話したことにないクラスメイトの水村になっていた。戸惑う坂平の前に現れたのは、坂平自身。ただし、中身は水村だ。2人は元に戻るために、さまざまなことに挑戦するが戻れない。お互いに情報交換しながら坂平は水村を、水村は坂平を演じる。
印象に残ってるのは、部活顧問からのセクハラに対して水村が顧問を殴ったこと。坂平の父親が亡くなったあとの限界が来てた2人の決別。そして、妊婦になった坂平が水村に電話したところ。坂平が選んだ旦那さんもすごくいい人だったなぁ。
元に戻れない展開の入れ替わり系物語。なんだか新鮮ですごく印象に残った。あっという間に読んでしまった。
2021.12.31 読了
投稿元:
レビューを見る
君の名は、で入れ替わりものって極めつくされたと思ってたんやけどいい意味で裏切られた◎
この特異なケースを使って、普遍的なテーマのな恋愛・友情・親子愛の感情を描くという作戦勝ちにただただ唸らされましたねぇ
投稿元:
レビューを見る
何かが変わってしまうことが昔からずっと苦手だ。中学や高校に上がった時も初めて会社勤めをし始めた時も不安でいっぱいだった。その不安は今でもまだ付いて回っている。いずれここまで積み上げてきたもの全てが崩れ去って、何もかもが変わってしまうんじゃないかと恐れている。でも、その方がいいんじゃないのかとも思っている。(P.7)
空は子供が画用紙に塗りたくるような嘘っぽすぎる青で、雲はその中をちらちら泳ぐ。真ん中には自己主張の強い太陽が一つ光っている。確かに、晴れた空を眺めるのは久し振りだった。どうしてだようと考えて、雨が降りそうな曇りの空の時にしか、天気なんて確かめたりしないからだと気付く。(P.66)
たぶんいつまでも幼さを武器にしているわけにはいかない。大人になることを強いられるときがやがて来る。制服でラーメンを食べることができなくなる。そう考えると、やり残したことばかりのような気がする。水村も、そして田崎も、同じような不安を抱いていてくれていたらなと思う。もう少し先の未来がどうなるか分からなくても、今日までの過去をいつまでも美しいと思っていたいと、ラーメンの中のコーンをすくいながら考えていた。(P.85)
自分の本当の親でなくても、そういった姿を見ると感傷的な気分になってしまう。そうやって周りの人は変わっていく。普段は何とも思わないくせに、突然突きつけられるその変化にたじろぐ。(P.118)
水村の両親が坂平陸という男に見せる愛想や歓迎は、他人に対してだからこそできることだ。本当の子供にだけ見せるぞんざいさやいい加減さはそこには存在しない。水村が本当に欲しているのはそちらなのに。聞こえの良い言葉で溢れた丁寧な愛情なんて、欲しいわけがない。(P.174)
埃が電化製品を緩やかに破壊していくように、細かなひびが少しずつ入っていって、そして割れた。(P.177)
好きだったところが嫌いになり、許せていたことが許せなくなり、気になってもいなかった部分が鼻につき始める。きっとそう思っていたのは田崎だって同じだっただろう。最後まで俺たちは本音をぶつけ合うことをしなかった。真剣になることを嫌って、不満を奥歯で嚙み潰して飲み込んだ。胃の腑に溜まっていく負の感情は二人をうんざりさせるには充分な重さだったように思う。(P.178-179)
ああ、また一つ失ってしまった、と思った。糸を紡ぐのにはあんなに苦心するのに、ぷつんと切れるときはあっという間だ。(P.179)
男と女が入れ替わるだけの物語ではなく、個々の登場人物の「人間」を見ている感じがした。家族、友達との関係。恋愛。その人だけにしか築けない関係が渦巻いていた。その人だから、愛される、慕われる。許される。日常の中で、誰かと会話をしていても「人間」と話しているのだ、とまじまじと意識していることはほとんどないが、この本を読むと、私が関係を築いてきた、またはいる相手も一人一人がオリジナルの人間で、その人自身の人生を歩んできたのだと感じさせられる。
今は素直になれなくてもいずれ消えてなくなってしまう友達との時間、家族との時間、恋人との時間。目に見えないものにその人の全てが詰まっている感じがして、なんだか胸が苦しくなるようなザワザワするような、感情的になるような。不思議な気持ちになった。
私がもし、入れ替わって他の誰かとして生きることとなったら上手く生きていけるだろうか。今の自分より楽しい人生を送れるだろうか。それか、今の自分の人生の方が充実しているのだろうか。
簡単に繋がりなんて切れてしまう時代に生きている私は日常が単調になりすぎているような気がしている。そんな日常の中で親とした会話、友達とした会話、誰かと話した時間こそが今の私になっているのかな。なんて思った。今の自分が好きかと問われると素直に頷くことはできないが、たまには自分を客観的に観て、褒めてあげるなり、叱るなり、許すなりしてあげても良いんじゃないかな。とも思った。
久しぶりに時間も忘れて没頭できた1冊。お気に入りになった(*ˊ˘ˋ*)。
投稿元:
レビューを見る
男女入れ替わりとか
今更なありふれた設定のはずなのに
その性に対する違和感や苦悩を
丁寧に繊細に描こうとしていて
物語の中にぐっと引き込まれた。
男でありながら
女として親友だった男と共に過ごす一夜や
妊娠して出産するまでの不安…
そして、このタイトル
「君の顔では泣けない」のとおり
わけもなく入れ替わってしまった相手を
きちんと思いやり、尊重しあっていて
自分以外の他人との関わりについて思ったりした。
投稿元:
レビューを見る
男女が入れ替わって、お互いに二人だけの秘密にしながら生きていく話
よくドラマでもあるけど、あー入れ替わった後元に戻らないパターンでした
読みやすかったから星4
投稿元:
レビューを見る
リアル!リアル過ぎて自分が自分でなくなってしまいそうだった。入れ替わりって有りがちなテーマなのにこんなにリアルに我が身に起こりそうで怖いと思った事は一度も無かった。
投稿元:
レビューを見る
改題した題名に引き込まれた。
当たり前にある家族を無条件で愛おしく感じること
他の家族じゃダメで
家族に自分を認めてほしい、
愛されたいと期待してしまう気持ち。
周りのみんなが大人になって
自分だけ置いてかれてる焦りみたいなもん。
似た経験したなぁ
過去に執着してしまうこともあったな
でもホント、
出会った人との思い出は血肉になってる。
自分は、ずっと自分だけど、
誰のために生きてるだろうか
自分のために一生懸命生きているだろうか
結末はどっちでも良い。
これ捨てちゃまずいやつなんじゃないかと思って
に感動。
投稿元:
レビューを見る
よくある入れ替わりの物語とは全然違う。今までにない感じ。
入れ替わってから15年。元に戻った時に困らないよう日記をつけ、お互いの人生を生きていく。
友達や家族との関係、その時その時の描写が胸にぐさぐさささってきました。
投稿元:
レビューを見る
男女入れ替わりの話と聞くと、ドタバタ系のラブストーリーだったりを思い浮かべるけど、この話は入れ替わったまま一度も戻らず15年も過ぎてしまう。
え~どうなっちゃうの、と思って読み始めたら、ポロポロ涙が止まらない。
そんなに泣かせにきているような文章とも思えないのに、読んでいて辛くて泣いてしまう。
空虚感、孤独感、背徳感、罪悪感…中でも圧倒的な孤独感がすごかった。さびしかった。
そう思わせるのはきっとリアリティを追求した作者の筆力なのかな。
読み終えてもどこかさびしくてたまらない。