記憶のしくみ 上 脳の認知と記憶システム （ブルーバックス）

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記憶は電気的なものなのかそれとも物質的なものなのかとぼんやり想像したことがあった。そしてこの本には全てとは言わないまでもかなりの部分が開設されている。０８〜０９年に原書のMEMORY:From MInd to Moleculesを徳島文理大学の薬学研究家の修士課程で神経科学の講座に使ったのが縁で一般向けにわかりやすく翻訳していただいたそうなのだが、正直言って難易度は高い。ただ神経伝達の仕組みの図は何度も繰り返し出て来てあーそうそうこの話ねと元に戻らなくても良い所や動物実験の話も含め文字だけではなく絵としても理解しやすいように工夫されているので面白く読める。試験に出されたら多分ダメだけど・・・。

上巻は神経伝達の基本的な仕組みとそもそも記憶ってどういうことって言うあたりから。心理学から始まった記憶の仕組みの研究は認知心理学として発展しシステム神経科学（神経回路やそのシステムの機能の研究）と統合して認知神経科学という学問分野になり、心の動きと神経の働きの研究が統合されて来ている。一方で生物科学の分野では遺伝子や化学物質の働きがわかるにつれ生化学、遺伝学、細胞生物学、発生学そしてがん研究と言った分野が分子生物学という分野に統合された。この本に書かれているのは認知神経科学と分子生物学の統合された姿で、心の動きがどう分子と結びついているのか「認知の分子生物学」に集束していく。原題通り心から分子へだ。

記憶力というとπが小数点何桁まで言えるかとか、駅名だったりとかというイメージだが実際にはもっと幅が広い。この本では言葉として思い出せるようなものを「陳述性記憶」と読んでおり、一方で例えば練習によって自転車に乗れるとか楽器が弾けるとかも記憶の一種で「非陳述性記憶」と区別している。いずれも意識下の記憶と無意識の記憶、短期記憶と長期記憶があるのだ。例えば健忘症の患者であってもトレーニングによって体の動かし方は覚えることができる。例えそのトレーニングをしたこと事態は忘れてもだ。

単純な生き物でも記憶はある。刺激に慣れたり、逆に敏感になったりするのも原始的な一種と言っていいだろう。記憶の研究に用いられた単純な生き物の例がアメフラシだった。馴化という現象ではエラや水管を拡げているところを触ると引っ込むのを繰り返し触ると刺激に慣れて引っ込まなくなる。逆にパブロフの犬の様な条件付き刺激（いわゆる条件反射）では刺激の組み合わせにより敏感になっている例と考えていい。これらはいずれも神経伝達の仕組みによって引き起こされている。ちなみになんでアメフラシが使われたかというと文字通り神経が太い（1mm）ので実験の様子が目に見えるからだ。ついでにいうと遺伝子的な要素の研究にはショウジョウバエが使われているのは遺伝子組み換えがしやすいからだ。

神経伝達の基本的な仕組みはアメフラシも人間も共通している。ニューロン（神経細胞）には感覚系、運動系とこれらを繋ぐ介在性ニューロン（興奮型と抑圧型）がある。ニューロンには向きが有り先端はシナプスという隙間を介して別のニューロンにつながっている。人間の場合は１００〜１０００億のニューロンを持っていて、脳内に１００兆の桁のシナプス結合があ���。このシナプスが強化されたり退化したりすることが記憶のしくみそのものに深く関連している。まあこの辺までは高校生物で習った範囲なので大丈夫w。

ニューロンは通常ー６５ミリボルトの静止電位という電位差を細胞の内外で持っていルてNaイオンが細胞内に入りKイオンが外に出ることで生み出される。何らかの刺激で細胞膜のNaチャンネルが開くとNaが細胞膜に流れ込む。電位はニューロンの軸索に沿って流れある値を超えると超えると末端から神経伝達物質（例えばアセチルコリン）の入ったパッケージが細胞膜に取り付きシナプス中に神経伝達物質が流れ込む。これが次のニューロンの受容体に取り付くとNaチャンネルが開き活動電位が生まれる。一般にニューロンの発火と呼ばれる現象でこれは記憶に関わらず起こっている神経の共通的な伝達システムだ。MRIなどで脳のどこが活動しているかわかるのもこの電位が測定できるからでもある。

１度の刺激だと発火はすぐに収まり、元の静止電位に戻るが繰り返しの刺激でニューロンの電位は脱分極（マイナスの値が小さい）状態が続くようになる。この時神経伝達物質のパッケージはシナプスの近くに集まってきたり、あるシナプスが一定の間結合が強化された状態になる。ただしこの時シナプスの形は変わらない。ある一定期間刺激に対してニューロンの電気的な反応性の上昇あるいは低下が保持されることになる。これが最も原始的な記憶そのものであり、短期記憶は極めて電気的なものだった。（間違ってるかもしれないがそう理解することで長年の疑問が解消できるんだから構わない）パソコンが特異な人なら揮発性のメモリと理解してもそう間違っちゃいないだろう。

シナプスの強化にはセロトニンが大きく関わっている。セロトニンがシナプス間で受容体に結合するのとシナプスの後ろ側のニューロンにCaイオンが流れ込むと酵素が活性化されcAMPという分子が大量に作り出される。このcAMPは細胞内での神経伝達物質として次ぎンの細胞へ神経伝達物質を大量に放出させる、つまり信号を増幅する働きをする。cAMPは記憶のみに関わるのではなく神経を伝わる信号を増幅する際の一般的な仕組みの元になっている。ちなみにこのcAMPの原料はグルコースでつまり炭水化物や糖分だ。よく脳のエネルギーは糖だけだと言われるが脳内の神経が働く時にグルコースが分解されて生体のエネルギー通貨と言われるATPができ、このATPを酵素が分解してできるのがcAMPなので、ニューロンが活発に発火するとATPを多量に消費する。エネルギーとして使われると言うより分子として使われているようなのだ。

話はそれるがドラえもんの暗記パンはできるのか？記憶の増強に関わる分子は存在するのだが、情報を長期に選択的に記憶するためには忘れることが重要だという。完璧な記憶力の持ち主と言われたシェレシェフスキーと言う人がいたのだが電話がかかって来ても声で相手が誰だか認識できなかったらしい。「なぜなら人は一日のうち２０回から３０回声が変わるからである」あらゆることを記憶しても関連付けができないと役には立たずどうやら意味がない。暗記パンの場合は書いたことだけ覚えられるのだけど、やはりそれが何を意味するかはわからないだろう・・・

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非常に興味深いことが書かれているのだが、淡々と書かれているので、あまり楽しみながら読めなかった。固めな本。

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最新の研究結果とともに、記憶の仕組みが説明されています。

記憶の成立はシナプス連絡の数を増やすことだけではなく、伝達機構の変化でもあると書いてありました。
人の脳の神秘性に触れることができました。

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決して内容がよくないというのではなく、思っていた以上に学術的で、正直言って読み進めるのがつらかった、ということで。

学術的ではないところで、面白かった、というか、以前からどうなんだろう、と思っていたことについて、答えがあった。

それは、我々は本当に忘れるのか、それとも、まだ脳に存在している記憶を想起する能力を失っているだけなのだろうか？という疑問に対する答え。

それほどロマンチックではなかった。

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我々の意識という問題を考えた時に最も重要となる記憶に関してノーベル賞受賞者が解説した本。網羅性、わかりやすさ、妥協のなさいずれも最高レベル。

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記憶はどのように組織化されるのか？記憶の種類、記憶を司る分子、学習とシナプス可塑性を中心に解説する。カラー図解による脳と記憶の教科書。

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原著タイトル
Memory: From Mind to molecules 2nd edition
生物学的観点から見た記憶であることに注意
心理学研究に重きはおかれていない

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記憶はどのようにして実現されているのかを最新科学情報で説明する。記憶には陳述記憶と非陳述記憶がある。陳述記憶は、短期記憶と長期記憶に分かれ、短期記憶には即時記憶と作業記憶がある。非陳述記憶は意識に上らない記憶である。アクセスできない記憶とも言える。

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生物にとって記憶とは何か、記憶は神経系のどのような機能によって実現しているか、著名な研究者２人の共著による教科書的な本。陳述記憶/非陳述記憶、短期記憶/長期記憶の区別など既知の内容もあったが、神経細胞内の物質の流れや遺伝子の関わり方など、細かくはあるが重要な点を体系的に知ることができ、大変役に立った。高校生にも読んで欲しいと訳者あとがきにはあるが、文章はそれほど簡易ではない。私は分子生物学と認知科学の基礎的な知識があり専門的語句にも割と慣れているが、それでも内容を理解しながら読み進むのに骨が折れた。

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☆徳島文理大学薬学部で訳出。原典は2009のもの。
なぜ、薬学部がと思っていたが、最後の方にアルツハイマーとかあるので納得。

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第１章 心から分子へ
第２章 非陳述記憶のための修飾可能なシナプス
第３章 短期記憶のための分子
第４章 陳述記憶
第５章 陳述記憶のための脳システム

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科学を楽しみ、神経系がどのようにして学習し、記憶するかについての驚くべき新発見に興味を持つ一般読者でも理解できるよう、必要なところには、生物学および認知心理学の初歩的な知識が補われている。