紙の本
詩のようなSF
2017/02/28 14:28
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オオバロニア - この投稿者のレビュー一覧を見る
円城塔が言語×SFだとすると、飛浩隆は文字×SFに思えました。
文字情報が平面を抜け出して、立体的な情報として人を進化させたり破滅させたりする世界観です。短編集なのにかなり濃いイメージが浮かぶし、物語の形をとった詩のような作品群です。
特に「海の指」は秀逸。
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実に残念なことに、あまり楽しめなかった。何と言ったって飛浩隆十年ぶりの作品集である。期待が大きかっただけに、いやもう残念無念。
「ビジョンズ」で読んでいた、冒頭の「海の指」は何度読んでもすばらしい。目眩がするような異形の世界の姿に幻惑される。次の「星窓」はノスタルジックな一篇でまずまず。その後の五篇は同じ設定の連作になるのだが、この世界に私はうまく入っていけなかった。
これは多分に、私の理解力やSF的想像力の不足から来るのだろうとは思う。「言葉」をめぐって繰り広げられる思弁やイメージが、どうしてもとらえられないのだ。華麗なイメージとして受け取ろうとすると理屈に邪魔され、理屈で考えようとするとはぐらかされる、というか…。
寝かせておいて再読しても味わえるような気がしない。むぅ、本当に残念。
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僕の個人的な思想ともリンクする部分があって、生きることと、さみしさとが強く結びついていく。ほんと、この言いようのない切なさは、僕らがヒトザルの頃から、ずっとずっと昔から抱えてきたんじゃないかという気がしてくる。
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新作が出てとにかくうれしい。言葉や音楽が想起するイメージの宇宙を漂うような、濃厚な短編集。映画のエッセンスもところどころに盛りこまれ、調べながらまた再読して楽しめる気がする。「廃園の天使」も待っています。
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本書のジャンルはSFではなく、詩だと思う。語彙とイメージ力がハンパではない。
最初の「海の指」は、脳内で諸星大二郎&大友克洋両巨匠の絵を想像しながら読んだため、なんとか「見る」ことができたが、あとはもう私の貧弱なイメージ力ではとうてい追いつかない。
イメージが降りてくるまで時間がかかって、読了まで(短編集なのに!)時代小説や推理小説などの一般的な小説の2、3倍も時間がかかってしまった。まるで詩みたいな読み方だ。
そしてそれがまた気持ちのいい小説群で、400年後の誰かが見ている夢を見ているような読後感はちょいとクセになる。
この著者の作品は初めて読んでみたが、すごい人っているもんだ。たぶん脳のつくりがホモ・サピエンスとは違うのかもしれない。
長編にもトライしてみたい。
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"星ぼしは人間にまったく関心なく、ただ超然と、荒涼とか輝くだけだ。"
美しく残酷な世界観のSFで、脳みそがかき回される快楽があるが、特に本書後半のアリス連作シリーズは私の理解力の遥か彼方に作者の思考実験があり、味わいきれていないのが残念。
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待った甲斐がありました。
…とは云え、2編は最近他のアンソロジーで読んだばかり
でしたので、物足りない感も。
『星窓』だけはキュンキュンする!ノスタルジックでちょっと他の作品と違うなあ、でも素敵だわ~と思っていたらば
若かりし頃の作品だそうで!『グラン・ヴァカンス』の冒頭の瑞々しさはこれがルーツなのかしらとか思ってみたり。
潤堂さんがカッコいい。『ラギッド・ガール』におさめられていた『魔述師』にちょっと似てるかな。
巻末のノートに、長編が1本あるみたいな事が書かれてあったので、今か今かと待ちわびてみます。廃園の天使の続きもお願いします。
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もう滅びてしまったものと、まだ生まれていないものとでは、どちらを書き著すほうが難しいのだろう。
帯にある「世界の秘密」というフレーズが、まさにこの小説の存在する意味を表していた。
それはこの世界の成り立ちの秘密か、それとも終わりの秘密か。おそらくそのどちらでもあるのだろう。
言葉によって創造された世界が、言葉によって解体されていく様を見るようであった。
このような穏やかな終末であるのなら、喜んで受け入れよう。
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何かの書評をきっかけに図書館で借りた。決して読みやすくない。というかよくわからない。でも立ち昇るイメージは美しくて冷たい。特に最初の短編海の指が恐ろしさとグロテスクさと懐かしさと美しさみたいな全然違う感覚を呼び起こす感触で、とても不思議。
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短編集7編
複雑で精緻,異世界的な未来あるいは別の天体,意識と時間のなかに忍び寄る音,響.天才詩人アリスに象徴される言葉による新世界.短編どうし関連したものもあり,壮大なスペースオペラを奏でている感もある.なかなか理解しづらいところも多かったし,空中の浮遊しているような安定感のなさを感じながらも,基調として流れている静謐な音楽が感じられて,思いの外読後感がいい.
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なんなんでしょう、このキラキラと美しくもおぞましく、混沌とした「世界」は⁈こんなイマジネーションを持ったSF作家がまだ現代日本にいたなんて、びっくりだわー。
ボブ・ショウのスローガラスからノスタルジーを除いて、バラードの「結晶世界」を覗き込む感じ。
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想像力に自信がないなら読まない方がいい。
SFだし、シュルレアリスムの絵画のようだし、壮大な音楽でもある。イメージ遊びを突き詰めてそれをどうにか文字で読める形にしておきました、読めるものならどうぞ。みたいな、平気で読者を置いてきぼりにする世界だから、むきになってがつがつ読んでしまう。
「野生の詩藻」の一見、ロボットSF的なダイナミックさもあるところがたまらなく好き。
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十年振りの作品集とのこと。
僕は三年程まえに著者を知り、その面白さにはまったのだが、その時点でわずか三冊の作品集しか出版されておらず、あっという間に全てを読破してしまった。
だから、ずっと発売を待っていて、期待に胸を膨らませて読み始めたのだけれど、どうもその期待が少々大きすぎたのかも知れない。
七編からなる短編集で、そのうち四編は「Visions」や「Nova1」「Nova8」といったアンソロジーで既読。
その「Visions」に収められていた「海の指」、及び「Nova1」に収められていた表題作「自生の夢」の二編は文句なしに面白かった。
残りの五編のうち、「#銀の匙」「曠野にて」「野生の詩藻(La Poesis Sauvageを改題)」の三編は「自生の夢」の前日譚となっているので、単独で読むよりも、「自生の夢」と合わせて読むことで、より面白みは増したように思う(「#銀の匙」「曠野にて」は単独作品として「Nova8」に収録されていた)。
残りの二編も面白くない訳ではないのだが、飛浩隆であればもっと面白いものを期待してしまう。
例えば「ラギッド・ガール―廃園の天使〈2〉」や「象られた力 kaleidscape」などは僕にとって本当に極上の作品だったから。
とまぁ、なんだかんだ愚痴っぽくなってしまったが、やはり読み始めたら夢中で一気読みしてしまいました。
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SF。短編集。
表題作と「はるかな響き」は既読。
相変わらず難しい。
「♯銀の匙」「曠野にて」「野生の詩藻」は「自生の夢」とのシリーズもの。正直ニガテ。
「海の指」「自生の夢」「はるかな響き」は好きなため、ハッキリと好き嫌いが別れた作品集でした。
「海の指」人類滅亡もの。海洋の100%、陸地の99%が灰洋となり、人類の99.9%が消えた世界。灰洋という独自の世界観。圧倒的なビジョン。想像力が及ばない。傑作。
「星窓 remixed version」幻想っぽい。ジュブナイル?読みやすい。
「自生の夢」言語SF?VR?会話が刺激的で面白い。
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過去に出版された作品を収録した短編集。作品自体はほぼ独立してるのだが、頭から読んでいくと、登場するキャラクタや場面が何度か登場し、あたかも連作短編集のように読める。むしろ、連作と思って読んだ方が驚きが大きい。例えば、最初の「海の指」。穏やかなどこにでもある漁村の物語のようだが、実は現実と異なる世界を見事に構築している。これだけでも面白いのだが、「曠野にて」などで「海の指」で描かれるあのシーンがここにつながっているのかなどと気づいた瞬間に、本全体がとてつもなく深いものになる。ここで二度目の驚きを体験する。SF大賞(2017年度)を受賞したのも頷ける。