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紙の本
文系?理系? 人生を豊かにするヒント (ちくまプリマー新書)
著者 志村 史夫 (著)
学校の成績だけで、「自分は文系(理系)」と決めてつけてはもったいない! 進路決定の前に、あるいは長年の思い込みから自由になるために。豊かな精神で生きるための「文理芸融合」...
文系?理系? 人生を豊かにするヒント (ちくまプリマー新書)
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商品説明
学校の成績だけで、「自分は文系(理系)」と決めてつけてはもったいない! 進路決定の前に、あるいは長年の思い込みから自由になるために。豊かな精神で生きるための「文理芸融合」のススメ。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
志村 史夫
- 略歴
- 〈志村史夫〉1948年東京生まれ。名古屋工業大学大学院修士課程修了。静岡理工科大学教授、ノースカロライナ州立大学併任教授。著書に「寅さんに学ぶ日本人の「生き方」」「「水」をかじる」など。
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紙の本
『物理学への招待状』とかにでも改題すべき内容。そのうえ物理教育への批判も弱い。
2015/12/18 23:44
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Spanish moon - この投稿者のレビュー一覧を見る
「人生を豊かにするヒント」とかいう副題がついているから、てっきり生涯学習のことにも触れた本かと思っていたが、見立てが甘かった。この本は進路選択を控えた中高生向けの本。文体は極めて易しく、振り仮名もついているので小学生でも無理なく読めるだろう。
要するに筆者の主張は、若者にもっと物理に「興味」を持ってほしい、ということだ。最近物理学人口が減っていて、理系であっても化学や生物しか勉強しない人が増えているということに危機感を感じている筆者が、高校生や大学生にもっと物理に「親しんで」ほしいということを訴えるために書かれた本だ。本書は「文系」と「理系」を対比した本というよりは、むしろ「物理学を学ぶ(学んだ)者」と「学ばない(学んでいない)者」とを対比している本であるから、したがって本書のタイトル『文系?理系?』は不適切だ。『楽しい物理』みたいなタイトルがちょうどよい。
ところで、志村氏も含めて「理系離れ」や「理科離れ」を論ずる者は、大抵その原因を「子供たちが理科に【興味】や【親しみ】を持たなくなったからだ」などと主張するが、果たしてそれはどうだろうか。身近な物理現象に興味さえ持てれば、万事解決なのか。物理が苦手な人に「夕陽はなぜ赤いのか」や「信号機の“止まれ”はなぜ赤いのか」といったウンチクを得意げに披露した直後に、「ほうら、物理に興味がわいてきただろう?じゃあ、僕と一緒に勉強しようか♪ファインマン物理学の133頁を開いて。この関数の積分は初歩の初歩だけど、ちゃんとできるかな?」なんて言ったって、馬の耳に念仏であろう。
化学を専門に研究しようと思ったら量子力学の知識が要る。物理学を本気でやろうと思ったら数学が要る。理科は、けっして理科だけで完結する世界ではない。数学と理科は相互に利用し利用され合うという密接な関係にあるのだ。そこを無視して表面的な「ぶつり」だけ教えても、幽霊物理学徒を量産するだけだ。
物理の何が面白いって、それは私たちが普段肉眼で見ているアナログな世界のあらゆることが、デジタルな数式一行で書き表せてしまうことなのだ。自然界や人間界の有象無象に実はとんでもなく高度な一貫性が存在していることが明らかとなったのも、数学のおかげだ。学問には一貫した理論があるからこそ面白いのであって、バラバラな各論が総論となるからこそ面白いのだ。個別の物理現象をその眼に見せて、天下り式に「これはこうだからこうなる」と教えたって、いつかは飽きるにきまっている。
志村氏だって、物理教育を何年もやっていらっしゃるのだから、そのくらいのことはわかっているはずだ。なのに、彼は書かない。小難しい話を書くと若者にそっぽ向かれるのではないかなどと恐れていては、物理学者で物理教育者たる人間の使命を果たしたことにはならないのではないか。物理学の魅力を原色のまま伝えるべく、理論の美しさを(中高生にもわかるように)より強調して伝える努力を見たかったのに、べつに専門家でなくても伝えられるような「科学のたのしさ」を訴えるだけの内容に成り下がっていたのは非常に残念だ。物理学性の減少に本当に危機感を抱いているのならば、100人のエセ物理学徒を育てるよりも、10人の「真正」物理学徒を育てる方が良いと思われるが、その辺に関する志村氏の見解は如何か。何か深い考えでもあるのだろうか。