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「奇跡の自然」の守りかた ──三浦半島・小網代の谷から
源流から海までの生態系が自然のまま残された「小網代の谷」はどのように守られたのか? 地元の人や訪れた人たちが手伝い一緒に森を育てる、自然保護の新しい形とは?
「奇跡の自然」の守りかた ──三浦半島・小網代の谷から
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「奇跡の自然」の守りかた 三浦半島・小網代の谷から (ちくまプリマー新書)
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紙の本
自然を守る。どうやって、何を守る?
2016/08/04 17:04
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投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
神奈川県にある、2014年から一般公開もされるようになった小網代地区。なんといっても特徴は、一本の川の最上流から河口の干潟までがまるごと保全地区になっていること。さまざまな偶然が重なり、道路や住宅が入る前に自然を残すことができた場所だという。本書は、この地域の保全を進めてきた人たちの活動を記載したもの。自然保護活動には様々な意見があると思うが、対立する意見も盛り込まれているので、関心のある方には参考になるだろう。
「流域としてとらえる」ことを著者は提案する。「湿原」「干潟」など一つ一つを守ることは大事だが、そこに流れ込む川が変わってしまえばそこだけを変えないようにすることは難しい。川を変えないためにはその周囲の山林も残っていなければならない、ということなのだ。「丸ごと一つの生態系」というように考えたらよいのだろう。
「保護」の考え方について、本書が提出していることはこれからも問題に上がってくることだと思う。「手を付けないで残す」か「手を入れて残す」のか。著者たちは「何も手を入れないで放置すればもっと壊れていく場所もある」という意見である。このあたりは「何を残したい、守りたいか」でも変わってくるだろう。それは「残したい自然」として何を思い描くのかにもよるのだと思う。全くの原生林のように、何百年もかけて少しずつ変わっていく景色を残すのなら何も手を入れないという考えもあるかもしれない。著者たち、あるいはたくさんの「普通の人(日本人?)」が思い描く「残したい自然」は、どちらかというの「人の手がある程度入った里山のような場所」なのではないだろうか。それならば人間がある程度手をかけることもその中に織り込まれている必要がある。
本書で紹介された小網代も「いわゆる里山」に準ずる自然なのだと思う。何を残したいか、によってやり方も少しずつ違うということなのかもしれない。
行政や開発企業との関わり方、地域住民との関わり方。一つの「ある程度目的が達成された例」として参考になることは多い本であった。本書を読んで「そんなところなら行ってみようか」と興味がわく人も多いと思う。しかし、安易に「珍しいものを見たい」と出かける前に、ルールや運営している人の考え方もよく理解してから行きたいものである。