テレビドラマのよう
2024/05/23 15:43
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投稿者:302 - この投稿者のレビュー一覧を見る
家族関係・友人関係・恋人関係・職場関係、様々な関係の様々なタイプが出てきて、登場人物の誰かしらに共感できるし、逆に嫌悪感もある。
何が正しいわけでも、比べられるものではないのに、どうしても人のことがよく見えたり自分だけが辛いような気持ちになるものだよなぁと思う。
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元アイドルで現在はデザイン会社の社長である菜里子と、アイドル時代の菜里子に憧れて芸能界を目指していたが挫折した環。
環が就職したのは、菜里子の会社だった。
時を経て二人を結びつけたのは、いかにも運命的だが、実のところは環が菜里子に対して強い憧れの気持ちを持ち続け、近づきたいと願った結果である。
環が菜里子を慕うという一方通行だった関係が、様々な出来事(楽しいこともあり、辛いこともあり)を経て、双方向の信頼関係に変わっていく様は、読んでいて胸が熱くなる。
戦うべき相手が完全な悪ではなく、でも立ち向かわなければならない。そんな感情を振り切れない時も、1人より2人の方が心強い。お互いを必要とし、気遣いあって、距離を縮めていく2人の関係が、とても尊く愛おしい。
「2人なら大丈夫」
そう思える彼女たち一人ひとりの強さとひたむきさに、希望をもらった。
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同作者が過去に出版した2冊では恋愛を中心とした物語が描写されていたが、今作も恋愛は絡んでいるものの、今までとはやや変わった新しい視点の物語だった。
恋愛至上主義が代表となっていた平成までとは打って代わり、恋愛が数ある娯楽や体験の1つとして捉えられつつあるこの令和における女性たちの心情を、とてもリアルに捉えて描いている作品だと感じた。
作中にある「これ以上この男に費やす時間が惜しい」というふうな表現についても思わずその通りだ!と頷ける、読者を引きこむ魅力に溢れていた。
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ストーリーの端々が、主人公たちの言葉の端々が、心に響くお話だった。コロコロと変わる語り手たちのおかげで、全く退屈することなく読み終えた。自分が見えている世界はとても狭いもので、自分勝手に見ているんだなと、自らが持つ偏見を感じた。コロナも夫婦の姓の問題も推し活も、今を代表する話題だが、とても生活に馴染んだ形で登場して、どこまでも自然で、だからこそ彼女らを襲う問題に向き合う感じがしてとても苦しかった。でも運命の出会いってあるよね、それが苦しいことも多い人生を救ってくれるよね。わたしも出会いや縁を大事にしたい。最初は疎ましく思っていた環の存在を大切にする菜里子さんの存在がとっても自然で、よくよく気持ちがわかって、共感の嵐だった。
p.116 お節介な子だった。人と人とをつなぐのが自分の使命だとでも思っているようだった。
p.130 テレビに出る仕事と言うのは、用意された台本に則り、自分の感情を殺して動かなければならない。ときには、無知なふりをし、不条理を受け止め、平気な顔をして振る舞わなければならない。お金をもらうとは言え、なんて酷なんだろう。人の心が殺されていくの鑑賞するので、なんてグロテスクな娯楽なんだろう。
p.136 私、最近、順子の感情のゴミ箱にされているような気がする。そんな自分の気持ちに気づいて菜里子はぞっとする。
p.157 「分かり合うっていうのは、相手との距離をゼロにするためじゃなくて、適切な距離を探すために必要なんじゃないかな。うまく言えないけど」
p.158 その迷いのない瞳がとらえる世界に、どうかずっといられますように。そのために、ぶれない軸を持った人間になれますように。チョコレートを花咲に差し出してくるような風に吹かれながら、環は小さく祈った。
p.238 「たとえ悪意ある振る舞いじゃなくても、自分の負担になることってあると思います。本当に自分を大切にしてくれる人っていうのは、自分との距離感を大切にしてくれる人のはずですから」
p.244 「料理の数だけ、料理の作った人と間接的に出会っているわけだしね。感謝の気持ちで取る人もいるんじゃない。きれいなものとかうまそうなものを写真でコレクションするっていうのもさぁ、文化の発達によって生まれた1つの趣味なんだから、意味なんかなくていいんだよ」
p.250 たった1人で吸うこと。満たされすぎているときは吸わないこと。吸う時は3本まで。そんなルールを自分に貸していた。誰も知らない小さな儀式のように。
p.316 物心ついた頃から、どんなことだって無邪気に量子に話してきた。よく遊ぶ友達の名前も、嫌いな先生の話も、初め、ての恋人のことも円なんだって笑顔で受け止めてくれていた。2人の中に、それらが記憶となって蓄積される事はほとんどなかったのだろう。見えていた世界の色が、反転していく。
かわいいと褒め、そやし、何でも自由にやらせてくれる。優しい両親。でも気づいてしまった。彼らは愛情部会というより、繊細さの欠落した鈍い人たちであると言うことに。何でも好きにやらせてくれる事は、無関心の裏返しでもあることに。表面的な愛情は注いでくれるが、娘に対する深い理��や興味があるわけではないことに。
p.325 「あのね。亨輔が言ってるみたいに、わかりあうって距離をゼロにするためじゃないと思うの。あの家はやっぱりお父さんとお母さんの家だし、お父さんともお母さんとも、わかり合うために離れたほうがいいような気がするの。じゃないと、私、いつまでも甘えた子供のままだし、勝手にいろんな期待しちゃうから」「でもね、亨輔との距離はやっぱり0がいいの」ずっとあったため続けていた言葉をようやく喉から解き放った。
p.357 そうだった。あの人、心にもないことを言わない人だった。気づけば、手汗でふやけてしまいそうなほど、婚姻届の両端を強く握り締めている。どうして自分はいつまでたっても弱い人間なのだろう。パソコンのOSをアップデートするように簡単手軽に強くはなれない。せめて、弱いまま強くなりたい。大切にしてくれる人を思いっきり大切にできる程度には。
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ーアイドルになりたかった
ーアイドルになったけれど
20代、ちょっと世間知らずの環は就活の末にフリーイラストレーター・NARIの小さな事務所で働くことになる。以前のセクハラにあった職場とは違うこじんまりとしているけどオシャレなオフィス、てきぱきと働く優しい先輩、そしてなんといってもNARIは環の憧れのあの人かもしれないー。
冒頭は22時台のドラマのようなふわふわっとした感じ、だんだんとそれぞれの人生の隠していた感情や気づいてしまったことがぽろぽろと露になる。
結婚があくまで人生の過程の1つの出来事として描かれているのが印象的でした。
良い成長物語、シスターフッドでした。面白かったです。22時台のドラマのようだと書きましたが映像化に向いてそうな作品。働く女子の心を掴めそうです。
#黒蝶貝のピアス #NetGalleyJP
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アイドルになりたかった環とかつてのアイドル菜里子。
二人が(偶然というより必然的に)出会い、少しずつ互いの過去や内に秘めたものを吐き出して、亀の歩みで距離を縮めていく。
まるで映像を見ているような感覚でページをめくり、会ったこともないけれど登場人物の誰もが生身の人間として感じられた。
結婚してるとかしてないとか、子供がいるとかいないとか、結婚して改姓するのがどっちだろうと、そんなことは些細なことだ、といつかそんな風に誰もが感じる世界になればいい。
立場もステイタスも全然違うふたりでも、心を通わせて家族よりも近くにいてほしいと思えることだってあるし、家族だといって近くにいなければいけないわけでもない。
どんな人生があってもいい。
どんな容姿でどう生きてもいい。
あたりまえのことなのに、それがままならない世の中で小さな希望のような一冊でした。
ちなみに男性陣がわりとクソでわたしは昂って昂ってしかたなかったです(クソ男を見かけると楽しくて仕方ない性癖)
そしてわたしは亜衣ちゃん嫌いになれないなぁ。やったことは悪いけど、なんかこう憎めなくて人間ってこういうとこあるよなというのがとてもリアルだった。どのキャラクタよりも血肉が通った人間ぽくてわたしはわりと好きです。
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2023/06/03予約 7
転職活動をする環は、小さなデザイン事務所の求人に応募する。社長は元アイドルで環が憧れていた、菜里子だった。
そんな都合のいい、と感じたものの話かスピーディに進むためどんどん入り込んだ。
環は、事務所に入ってしばらくは有能な先輩、亜依に圧倒され、憧れの菜里子のそばにいることで意気込むもののうまく行かず空回り。
それが、様々な出来事により菜里子と環の距離感がちょうどよいところに到達する。
ゼロでもなくちょうどいい距離感。
でも彼氏の享輔とは、ゼロがいい…
それぞれ家族に問題を抱えていたり、気づいていなかったり、距離感をつかめずにいる。
環の両親はすべてを受け止めやりたいようにやらせてくれる、それは興味がないことの裏返し。
菜里子の家は、『気づいた人がやればいい』が合言葉だったが、気づくのは菜里子だけ。貧困家庭を支えていたのは父親の弟からの援助だった。そして菜里子にアイドル活動をさせていたのは一家の収入源になるから、だった。
弓子の彼氏は、おかしな男らしさに縛られている。
どのエピソードも読みながら身がキリキリする。
恋人との距離感より、友人知人、会社、家族、血族、そんな話がとても染み入った。
『炭酸水と犬』よりずっと好きな作品。
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『アパートたまゆら』『炭酸水と犬』
2021年に同日発売された二作で心を鷲掴みにされた砂村かいりさんの最新作。
本作もとても良かった。
舞台は小さなデザイン会社。
求人に応募した環は、その場所でかつて推していたアイドルユニットの菜里子と再会を果たす。
恋愛要素も織り込みながら主軸となるのは環と菜里子。
親や友人との関係性や性的搾取、仕事、恋愛等で揺れ動く感情が丁寧に掬い取られ、瑞々しい筆致で紡がれる。
自分が過去に経験した記憶が思い起こされ共感を覚える。
互いに支えあい試練を乗り越え絆が深まっていく二人の姿が眩しかった。
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描写も、心情も、人間関係もリアル。
汚い側面ときれいな側面があってこその人間。
わかりあうことは距離を0にすることではなくて、適切な距離を見つけるために必要なこと。
近づけばいいってもんではないし、接していくうちに合う合わないはわかっていくもの。
結婚するとかしないとか、子供がいるとかいないとか、女が男の身の回りのことをするとか、親との確執とか、全部全部些細なことと考えられるようになりたい。
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砂村かいりさん三作目
前作2作品は恋愛物でしたが、今作は女同士の関係性。プラス恋愛も。
地元アイドルをしていた菜里子と、小さい頃に菜里子に憧れてアイドルを目指した環。
アイドルを辞めてデザイン会社を経営している菜里子の元で働き始める環。
少しずつ変化していく2人の関係性と、環の成長が素敵。
弱いまま強くなりたい。
いいなぁー、若さ!!
亨輔がすごくいい人。いやぁ~、素敵。
恋人よりも必要で、親よりも近くにいたい。
そんな2人の関係が長く良いモノでありますように。
好きです、砂村かいりさん。
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読み応えめちゃくちゃあり!!
あらすじ読んで気になり購入しました。
はじまりは、アイドルを昔応援していた女性が転職してまさかのアイドルと再会。同じ職場で働くことになります。
いろんな人との関わりの中で、今まで気づいていなかった自分の内面に気づきはじめます。その過程で登場人物が1歩、2歩、3歩と明るい方向へ歩み続けるところが、私自身励まされる部分やほんわかした暖かい気持ちになったりしました。
読んで損しないと思います。
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最初は主人公、環のウジウジしている感じが嫌で読みにくいなぁと思ったけれど、環の彼氏の言葉が環同様私の胸にもすとんと落ちてきた。
『わかり合うっていうのは、相手との距離をゼロにするためじゃなくて、適切な距離を探すために必要なんじゃないかな。』
そこから環がどんどん彼女らしくイキイキしてきて、とても面白くなった。
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繊細な心理描写がリアルで、「わかるわかる」と思いながら夢中になって読み進めた。
恋愛も絡むけど、ヒューマンドラマのような感じ。
伏線回収もすごくて、「え、これミステリー?」って思ってしまうくらい!!!
ただ、日本語が若いなあって感じてしまった。
慣用句を略したり、カタカナ語をやや多用してる感じが、今どきな印象。
カタカナ語は置いておいて、やっぱり本は、正しい日本語(人により定義は異なるだろうけど)で読みたいなあと思ったので、ちょっとだけ★厳しめに。
時代の流れなのかなぁ。
本来の日本語が失われていくのは寂しいなあと感じてしまう。
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女同士の友情っていいな。
まだ読み終わらないうちから、
仲の良い友達の顔がチラホラ浮かんできて
思わずランチの約束を取り付けてしまいました。
いつもべったりと一緒いることが友情だった学生時代にはわからなかった、相手との距離の大切さ。
どんなに仲が良くなっても
守らなくてはいけない個があること。
大人になってから、心から信頼できる人に出会えた主人公たちの未来が明るくて
とても健やかな気持ちになれました。
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すれ違い傷つけあう登場人物の中で環と亮輔のカップルがしあわせになれて良かった
後半、環の両親への失望はちょっといただけない。愛されて育ててくれたんだからそれで充分じゃない?感性が鈍いとかって厳しすぎ。