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緻密な論理の積み重ねによって書かれた一冊。
前半は原子力発電や今般の事故に関する分析である。
この部分だけでも、さまざまな人によって書かれた諸々の原発関連書籍よりも読む価値があるだろう。
経済学者であるにもかかわらず、ここまで原子力について勉強されているということが驚きであった。
「関連事項について勉強するということは斯くの如し」と思った。
また後半部分は今後の原子力発電事業に対する経済学的な分析であったが、こちらも単純に推進だの反対だの言っているわけではない。
冷静に客観的に投資事業として、そのリスクとコストを考慮したうえで成立させるためにはいかにすべきかということが書かれており、これまで感情に訴えることが多かった他の書籍とはまったく違っていた。
また随所に人間を等身大に理解するというメッセージが込められている。
それは「我々は人なのだから、人を過大評価することもなく見捨てることもない」という人に対する深い愛情を持った眼差しによるものなのだろう。
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震災後、ツイッターやブログなどの発信を続けてきた斎藤先生の本。
一次情報を読み込みながら、原発事故や今後の廃炉について検討を加えます。イメージがつかみにくい議論ですが、大枠の相場観をつかむことができる良書。
事態が推移し、厳密な議論が難しい中で、思い切って論を進めています。
結論として原子力発電については、核燃サイクルからの撤退と、高レベル放射性廃棄物が管理可能な範囲の中での商業用軽水炉事業の継続。そこについては詳細な検討を持ち越しています。
重要なのはその結論よりも、原子力発電継続の明確な経済的な優位性(脱原発に伴い生じるであろうコスト)がおおよそつかめること。
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原発技術について全く知らない読者にとっては、その「手触り感」を得られる貴重な書。人間のコントロールが難しい高度な技術と向き合う際に、忘れてはならない社会科学的な視点が提供されている良書。
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原発というのは、おそらく何十年も先のエネルギー需要を見越して建設が計画されると思うのだけれど、結局それってどうだったの?というのが最近の疑問。黄昏時を迎えている日本経済が過去と同じようなエネルギー需要構造だとも思えないし、どうなんだろう?
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原発素人にも分かるように技術関係のトピックを整理した上で、社会として原発にどのように向き合うかを説いた良書。推進派反対派両方の考え方を例示しており、とても参考になる。核燃料サイクルがいかに欺瞞に満ちたものか経済的見地から整理しており、核燃料サイクルの有効性を説いている人たちがどのような反論を出来るのか、確認して見たいと思わせる。原発を語る上で読んでおくべき本の一つではないでしょうか
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原発事故の発生要因について多くのページが割かれています。また、タイトルに偽りあり本か、と思いましたが、その組み立ては意図的なもので、全9章中7章で「やっと、経済学のパートにたどり着いた!」という独白が。
何を残し、何を残さないのか、廃炉後更地にすること、しないことの経済性等の冷静な意見。過去と将来の断絶にこのような事態があることの記述、そして結びに引用された芥川龍之介の「冷淡なる自然の前に、アダム以来の人間を樹立せよ。否定的精神の奴隷となること勿れ」が、よいではないですか。
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社会科学者の視点からの考察。
福島第一原発の型。人間のすることの不完全さ。安全性が求められているのに古いものを使い続け、尚且つ、当初の使用期限を延長するような動き(40年→60年)。
三分の一しか読めていなが返却期限がきたので、また借りて読了したいと思う。
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マスコミに登場する”学者”らしき人たちのコメントの類には辟易としており、本書も最初は期待をしていなかったが、良い意味で裏切られた。意見の同異は別として、自分の考えを整理しなおすいい機会であった。
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3.11をうけて原発について社会学者の立場からわかりやすく解説されている。
原発は無いに越したことはないが、既に存在する現状からどのようにするのがより良いのかが論じられている。
単純に賛成・反対ではなく冷静に現状を分析し問題点を説明している。
科学の知識がなくとも理解しやすいのではないだろうか。
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経済学というタイトルがついていますが、著者が述べているように経済学を用いた考察が最後になり、それまでは延々と原子力発電の関連知識となります。(とはいえ、自分も含めて多くの人が知らないと思われる事柄なので、記述が必要なのですが)
痛快な切り口でカタルシスが得られるといったことはないですが、やはり現実に向き合って学問的な知見を積み重ねていくとそうなるのでしょう。そういった著者の真摯な態度には好感がもてました。
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★経済学というより良い意味での原発入門書★経済学的な観点からは「高レベル放射性廃棄物を永遠に貯蔵する一方で、その管理は途中で放棄する」という発想はどうしても受け入れられず、地層処分はありえないとした。再処理・高速増殖炉事業のコストの高さを考えると、撤退の道筋としては全量を地上保存すると訴える。
ただし経済学的なもの言いは驚くほど少ない。むしろ、原発を理解していなかった時代の知識人としての反省と、次世代への熱い思いがたぎる。
同時にBWRとPWRなども分かりやすく説明し、入門書としての役目も果たす。本書の矩を超えるかも知れないが、図解がもっとあれば分かりやすい。
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齊藤誠は、「競争の作法」(ちくま新書)以来、個人的に注目している経済学者。齊藤の関与したマクロ経済学の教科書も、手に入れたいと思っている。
福島原発の問題に関して、経済学者がなぜ?という感もあるが、防災経済学も守備範囲としているとのこと。といっても齊藤は「競争の作法」を読めばわかるように、現実の問題に対して強い取り組み意欲を持っているようだ。3.11の事象に対し専門家の見地から少しでも発信したいと思うのは自然だろう。
しかし全体の1/2以上を費やして説明される原子力発電技術および福島で起こった事態の分析は、驚くほど正確かつ詳細であり、それでいて原子核工学および周辺化学の特殊な専門家では描出できないような全体観を押さえて記述されており、とても解りやすい。
また経済学のフィールドでありながらも、どちらかといえば会計およびガバナンスの視点から、福島サイトをどう取り扱うかの方策を提言するものであり、電力会社の発送電分離等には踏み込んでいないのも、感覚で放言しているような他の論客とは一線を画している。
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原発の有益性、危険性を、冷静に分析。
そこから、原発推進、反原発の中間的な意見。
福島第一原発の古さ 寿命は40年程度か=技術者の寿命
東電経営者の判断を狂わせた 60年ルール。
1970年代原発はスクラップし、そこから、新しい原発で、どれだけリカバリーするか考えていくべき。
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原子力をめぐる議論においては、中途半端な一般論が多い中、社会科学者として、具体的に踏み込ん
だ議論を展開しており、非常に興味深かった。よく歴史にifはないというが、本書では、「東電経
営者は、炉心溶融を回避することができたか」ということについて具体的に踏み込んで検証しており
、下手な推理小説よりよっぽど緊張感があった。
著者の「競争の作法」を読んで、その有言実行振りに感心したが、以下の文にも同様の責任感なり使
命感が感じられ、共感した。
「さらにつらいことは、将来の日本人を生んでいく若い東電職員や自衛隊員を、放射能で汚染された
原発現場に張り付けたことであろう。何ということであろう。責任者たちは東京の大本営にぬくぬく
とし、若い人たちが危険な現場にあって、きっと若い人々をめぐる美談が作られているのであろう。
これでは、太平洋戦争末期と変わることがないではないか。」
責任感という意味では、原発が、国民全体で議論するべき問題であること、さらには、知らなかった
ではすまされない重要な問題であると教えられた。また、知識レベルとしても、それなりに知ってい
るつもりだった自分がいかに無知であるか、知っているべきポイントを何もおさえていないことに衝
撃を受けた。
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友人から貰ったので読んでみたけど非常に勉強になった。あれだけの大事故があったのにその詳細については全然知ろうとしなかった自分の無関心さを反省せずにはいられない。