紙の本
雛人形の老舗を舞台にした山本幸久さんの新作
2022/01/03 08:42
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:higassi - この投稿者のレビュー一覧を見る
雛人形の老舗を舞台にした山本幸久さんの新作。老舗の話に終始せず、地元である鐘撞(=岩槻がモデルでしょうか)の高校ボート部を絡めるあたり、ホントに設定が上手です。フィリピン出身女性のクリシアが助演女優賞とも言うべき活躍でしっかり脇を固めています。2021年の締めくくりに相応しい作品でした。
投稿元:
レビューを見る
老舗人形の8代目をしている恭平は、職人が高齢化し後継者が育たない現状に危機感を覚えていた。
高校時代ボート部のキャプテンをして最高のモテ期だったにも関わらず、未だ独身で周りはヤキモキしていた。そんな時、ベテラン職人がフィリピン人の女の子を酔っ払った勢いで弟子にしてやると言ったのを本気にし、店にやってきて…
とにかく恭平が人が良い。いきなりやってきたクリシアに対しても追い返さず、自分の店で雇ったり、無償で母校のボート部のコーチも引き受けたりなどお人好し意外何者でもない。
出戻りで地元へ帰ってきた寿々花との距離も中々じれったくてもどかしかったけど、上手くいきそうで良かったです。
酒癖悪い宮沢だったけど、孫の雛人形の頭だけ作れてホッとしました。恭平の優しい嘘で救われた気がしました。
投稿元:
レビューを見る
もうすぐお雛祭りだけに、雛人形への気持ちが高ぶりました!
こういった、昔からの伝統を、今の時代に合わせながら伝承していくことの大切さが伝わってきた、今を生きる私達にとても必要な、そして温かいお話でした。
私にはこどもがいませんので思いつきませんでしたが、この小説に出会い、姪が二人いるので、新しい雛人形を買って、姪の成長を願い自分の部屋に飾るのもいいなと思いました。できれば森岡人形の雛人形のように1つ1つ職人さんの手によって作られた雛人形がほしいです。
日本独特の文化を、やっぱり大切に受け継いでいきたいなっ、日本の文化って素敵だなって思う作品でした。
投稿元:
レビューを見る
雛人形を作る職人で社長の恭平。若くして社長になりなんとかやっているけれど職人の高齢化や後継者不足に悩む。そんなときにフィリピン人女性が弟子に。人形作りの過程を読むだけでも興味深くて楽しい。伝統として守っていくものと新しいものを取り入れるもの。職人のプライドや理想と現実。山本さんが描く色々な職業の作品は厳しさと温かさがある。これまで受け継がれてきたものをまた自分が教えて受け継いでもらっていく。その奇跡のような瞬間をたくさん感じることができた。
投稿元:
レビューを見る
老舗人形店の8代目社長・森岡恭平。職人としても働いているが、後継者問題や売上低迷、自身の婚活など頭を悩ませる日々だった。
そんな時、会社にフィリピンパブに勤める女性が訪ねてきた。「弟子にするよ」という酔った勢いで言ってしまった職人の言葉を本気で信じてしまったため、恭平は最初断ったが、女性の熱意や人形の豊富な知識に圧倒され、雇うことになった。世代で違う価値観、伝統を守っていくことへの葛藤などあらゆる問題を浮き彫りしながら、会社はどう生き残っていくのか?
作品での「人形」は雛人形を指していて、そこではあらゆる知らないことが溢れていました。
それぞれのパーツは分業制で、それぞれがプロフェッショナルに活躍されていて勉強になりました。
そういった状況の中で起きるフィリピン人女性の出現。
面白い状況でしたが、女性の熱意や異国から見た「日本」に対する印象が、日本人とは違った価値観があって、意表をつかれました。
「人形」だけでなく、恭平が経験した「ボート」(競技)についても描かれています。こちらも知らなかったことだらけでした。
ただ単に紹介しているのではなく、人に教えるような形で感情を乗っけて紹介している印象なので、奥深さと愛を感じました。
昔からある会社。長年いるからこそ、様々な考えがあります。生き残っていくには、柔軟に対応していかなくてはいけないと思います。昔、成功したからといって、同じ方法で成功するとは限りません。
〇〇だからこうという古くからの固定概念を崩し、時代時代に寄り添っていくことが、「受け継ぐ」ことなのかなと思いました。
時代が移るごとに人も入れ替わっていきます。その中で、どう受け継いでいくのか。
笑いを交えつつ、「受け継ぐ」ことの難しさが描かれていましたが、登場人物のそれぞれの葛藤に自分も頑張らなきゃと思いました。
主人公の若社長は、後継者だけでなく、恋愛や社長業と色々苦労されています。今後に幸あれとエールを送りたくなりました。
投稿元:
レビューを見る
手作り雛人形の老舗会社を描いたお仕事小説。
斜陽・職人の高齢化の典型の様な職場。5歳の8代目社長の主人公は自らも頭師(頭部を作る職人)でありながら、会社では一番の若手。そんな会社に職人希望のフィリピン人の女の子が現れて・・・・。
山本さんらしい安定のお仕事小説です。しかし、なんだか上手くなりましたね。元々軽い作風だと思うのですが、良い意味で風格のようなものが出て来た、そんな気がします。
投稿元:
レビューを見る
+++
後継者不足に悩む老舗人形店に、外国人の若い女性が弟子入り志願!?
お人好しな若社長は、仕事に恋に大奮闘!
亡き父のあとを受け、森岡恭平が社長を務める森岡人形は、低迷する売上、高齢化した職人の後継ぎ不在と、問題が山積。さらに恭平自身の婚活問題も難航しており……。
そんなある日、職人たちが足繁く通うパブで働くクリシアというフィリピン人女性が、社屋を訪ねてきた。職人の一人が、酔った勢いで「俺の弟子にしてやる」と、彼女に約束したと言うのだが……。
笑って、泣いて。読みどころ満載のハートフル・ストーリー。
+++
森岡人形店の八代目若社長・森岡恭平を取り巻く物語。伝統を受け継ぐ職人技の見事さと、後継者不足に悩みながらも、特段の手を打ってこなかった業界の問題。外国人の弟子入り志願者に対する職人の反応、そして職人の高齢化、と山積する問題を、周りの人たちや同業者を巻きこみながら、右往左往するうちに、ひとつひとつ解決されていく様子に、声援を送りたくなる。町ぐるみで明るい方向に進みそうな気配が色濃く漂うラストに、胸が熱くなる一冊である。
投稿元:
レビューを見る
人形作りの街で八代目を継いだ主人公。
日本の伝統工芸につきまとう高齢化、後継者不足、もろもろの問題をどう乗り越えるか。
フィリピン出身の女性が弟子になるという展開が面白かった。
伝統工芸は残したいものだが、難しいですねえ。
投稿元:
レビューを見る
伝統工芸もボートもいくつかの恋も
みんなも少し続きが読みたかった。
続編あったらいいな。
[図書館·初読·1月14日読了]
投稿元:
レビューを見る
軽妙洒脱な会話の中にも、人の情けがいっぱい詰まった人情噺。必ずホロリの場面も。山本ワールド健在。素直に楽しめた。味噌汁の具にレタスありなんだ〜?
投稿元:
レビューを見る
森岡人形店は、雛人形の頭を専門に作る老舗人形店。
37歳の恭平が社長を務める。
職人の高齢化、売り上げは低迷、と問題が山積み。
その上、後継者もいない。
多くのことが恭平の肩に掛かる。
恭平は高校のボート部コーチも受け持つ。
雛人形作りは静、ボート部の活動は動だと思っていたが、
どちらも、誰一人欠けても完成はしない。
P265〈個人でもあり同時にチームでもあることが大切〉。
伝統工芸を絶やすことなく受け継いでほしい。そんなことを思った。
投稿元:
レビューを見る
人形の町・鐘撞市で創業180年を誇る森岡人形の八代目を若くして継ぐことになった森岡恭平の奮闘記。恭平は雛人形の頭を創る頭師として、また母校の高校でボート部のコーチも務めていて多忙な日々を送っている。とにかく人が好くて周りに振り回されてばかりだが、面倒見もよく人望も厚い。
魅力的な主人公と周りを固める騒がしく憎めない面々の織り成す人情劇に、雛人形の製作過程やボート部の活動などが描かれ、とても楽しい作品だった。『血煙荒骨城』にまた会えるとは思わなかったが(笑)。
舞台となる鐘撞市は埼玉県岩槻市(現さいたま市岩槻区)と思われる。ぼくは隣町で育ち、自転車で遠征したことを思い出して懐かしかった。
投稿元:
レビューを見る
久しぶりに読む山本さんの作品。
毎回、よくこういう題材を見つけてくるなぁと感心する。
今回取り上げるのは、雛人形を製造・販売している創業百八十年の老舗。
だがその<森岡人形>の八代目社長・恭平は37歳の若手。それも十年前に七代目社長だった父の急逝により何の準備もなく社長として職人としてやっていかなければならなくなったのだ。
職人たちの平均年齢は七十三歳、いまだに先代や先々代を引き合いに出したり、酔っぱらっては喧嘩を始める彼らと上手くやっていくのは難しい。
ほかにも同業者の<櫻田人形>の社長や会長にあれこれ頼まれごとをされたり、人形共同組合の仕事を押し付けられたり。
さらには出身校の<鐘撞高校>ボート部のコーチをボランティアで引き受けたり。
もう大忙しだ。
だが一方で職人の技を継ぐ者がいないという継承問題もあるのだが、その光明となりそうなのがフィリピン人のクリシア。やる気も才能もある彼女が<森岡人形>に新たな風を吹き込むのか。
そして、離婚して出戻ってきた同級生と恭平を周囲がやたらとくっつけようとしていたり。
伝統工芸やその会社の継承問題、商売としての生き残り、高校ボート部の練習とその成果、職人たちそれぞれの生き方や家族関係、そして恭平の恋の行方(というほど大げさなものではないけれど)。
様々な要素をギュッと詰め込んで、一見忙しなく思えるのだがそこは山本さん、テンポよく楽しく読める。
クセの強い職人たちや、やたらと恭平に身内問題を頼み込む<櫻田人形>親子も憎めないし、<鐘撞高校>ボート部のライバル<大凡高校>ボート部コーチのキツネ男も分かりやすくて面白いし、クリシアの懸命さも良いし。
ちょっと掘り下げが足りないかなとは思うものの、ページ数やテンポの良さを考えれば、このくらいがちょうどいいのかも知れないとも思える。
だがこういう、技術の継承問題や老舗の継承者問題はどこにでもある。せっかく商売としてなりたっていても継承者がいないために店や会社を畳まざるを得ないという話も時折聞く。
<森岡人形>も最後にミラクルが起こるが、それで何もかも解決ではないし、今後も恭平たちは様々な困難にぶつかるだろう。職人たちに残された時間は少ないし、その間に新しい職人を育てなければ<森岡人形>は人形製作自体出来なくなる。
それでもとりあえずは一歩前進というところだろうか。
出来ればそのうちに他の作品でも良いので<森岡人形>のその後に触れてくれれば嬉しい。
山本さんはそういう遊び心を作品内で見せてくれたので、きっとあるとは思っているけれど。
投稿元:
レビューを見る
そろそろ雛祭りの時期である。
そして、最近テレビで、水墨画と雛人形について是非見たいと海外から女性が来日している番組を見たところだった。
雛人形は、頭師、着付師、髪付師、手足師、小道具師とそれぞれを分業で作っている。
ひとつひとつ、手作りで魂をこめて作っているのが、よくわかった。
そして、時代によって、代理雛の顔も変化しているのを知り、とても感慨深く伝統の凄さも感じた。
そのあとこの本を手にしたので、最初からすんなりと入り込めた。
この物語は、独身の恭平が、亡き父のあとを継ぎ人形職人をしながら社長として、高齢化した職人たちといっしょに奮闘していく話である。
伝統を継承しながらも今の時流に沿っていくこと、そして繋げていくことが、とても難しいのだと思った。
突然弟子入りした、前向きなフィリピン女性により、新たな風が入ってきたようで、いろいろな角度から物事が見えるようになったのでは…と思えた。
そして、修復した一つの仕事から世界へ向けての新たな仕事へと繋がる。
恭平のプライベートも独身は卒業か?と思わせる彼女の存在。
とても心温まる話だった。
投稿元:
レビューを見る
人形作りの職人の物語。山本さんのお仕事シリーズは面白いし、いつも伝わるものがある。みんなが自分の仕事に一生懸命になり誇りを持って仕事をする。日本人だろうが外国人だろうが関係ない。どれだけその職業を愛し尊ぶのかそんな思いが伝わってくる。どうかこの人形作りのように伝統的な職業の灯が消えないことを祈っています。