紙の本
先に巻末の解説を
2020/09/22 20:17
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投稿者:S - この投稿者のレビュー一覧を見る
「メイドという仕事のつらさ」を主軸に語るかのような表題となっているが、それよりつらいものとして示されているのは、アメリカ社会における公的扶助受給者の困難。
著者は、メイドという仕事を確保することでそこから脱し、そこに戻ることを恐れて七転八倒する。
また、当地ではメイドと呼ばれているが、日本は「ハウスクリーニング」と呼ばれる職種。
ただし、当地では住居の掃除という行為そのものが屈辱になり得る。このことは日本人には前提しづらいので、先に解説を読んだほうがいいかもしれない。この仕事が彼の地でどういう位置づけにあるのか説明されている。
紙の本
トイレの神様はいない国
2020/11/25 10:59
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投稿者:にゃっつ - この投稿者のレビュー一覧を見る
毎朝、朝のおつとめが終わると、便器の前にうずくまって掃除をする。
家では、ゴロゴロしている粗大ゴミ同居人と家人には言われているが、トイレの掃除だけは自分で毎日毎朝、する。
日本人に取ってトイレは神様の宿る場所の一つと考えられており、私も激しくそう思う。
だから人のトイレ、公共のトイレはきれいに使うように心がけている。
おそらくは大多数の日本人がそう思い、そう心がけていると私は思う。
最初、この本を手に取ったとき、ほんとの「ハウスメイド」(お手伝いさんくらいの意味か)の物語で、雇い主のゴシップや嫌がらせ満載の内容だろうと思っていた。
しかし、読み進めると、「メイド」とは個人宅の個人的清掃人であることがわかってくる。
メイドとして、シングルマザーとして働く筆者の必死の日常が淡々と切々と描かれている。
1,000円に満たない時給で、ガソリン代自腹で広い範囲を走って掃除に悪戦苦闘する様子は、悲惨を通り越して、滑稽ですらある。
どうしてこんな困難な仕事を続けなければならないのか。スーパーやコンビニの店員にはなれないのか。会社組織の企業の清掃員にはなれないのか。
これは人種差別なのかな、と思い筆者のプロフィールを検索してみると、コロコロとした白人女性で、人種による差別ではなさそうだった。
この辺の出口の探し方が、SNSであるところが極めて現代的であるが、社会福祉が無造作に誰をも救うものではないことも思い知らされる。
その制度すら知らずに苦しんでいる人の方が多いようである。
と、色々考えさせられたが、一番驚いたのは、アメリカ人が自分のトイレ(浴室を含む場合が多いが)の掃除を自分でしないのだということである。
なんちゅう国や。
紙の本
知らない世界を感じた
2020/11/02 09:14
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投稿者:くみみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
国からの援助と清掃員としての給与で娘を育てるシングルマザーの回想録。複数の個人宅の清掃をハシゴし見てきたもの、世間のリアルな視線を生々しく綴っていて興味深かった。意外にも色んな種類の福祉制度がある事に驚くと同時に、それを利用するにも大概が穿った見方をしてくる事が酷く衝撃だった
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シングルマザーにより低賃金での仕事、自治体の援助や住居を探すのも一苦労。
国によっては清掃業とは背景も変わってくるのかな、この本ではメイドと言う言葉。
トイレ清掃の描写では、各家庭は汚れたまま掃除をさせる事が当たり前の様子。
シングルマザー、シングルファザー適度に頑張って下さい。
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貧しさの連鎖。そこから抜け出すには強い意志と前を向く力。守るべき大切なものの存在。辛い思いをしながらも自分の夢に向かう姿がまぶしい。バラク・オバマ絶賛の本。アメリカだけの話ではない。
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正直に言って、読んでいて重かった。
日本から見て社会の違いから想像が難しい部分もあったが、それでも否応にも流れる空気を感じざるを得ない、そんな描写の続く一冊だった。
格差があるとき、多分それは見えなくって、結果としてそれが人を追い詰めていたりするんだなと思った。
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"見ること、学ぶこと、疑問に思うことをやめた。二人で生きることで精一杯だった。いつも何かが期限切れだった。いつも車に乗っていた。いつも急いで食べて、急いで片付けていた。常に移動し、息を吸うために立ち止まることさえできなかった。"(p.50)
"私はミアのためにそこにいたけれど、私の手を握ってくれる誰かが必要だった。私のためにそこにいてくれる人が。お母さんにだって、お母さんが必要なんだ。"(p.211)
"誰かを雇って家の掃除をしてもらえる生活って、どんな感じだろう。その立場になったことは一度もないし、そうなれるとも思えなかった。もしその必要が出てきたら、彼らにはチップをたくさんあげて、食べ物を渡したり、いい香りのするキャンドルを残したりするだろうと思う。"(p.235)
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シビアな現実を知る良い機会ではあったが…
ところどころ、「自業自得なのでは…」と思う箇所が。
厳しすぎる意見かもしれないけど、貧しいシングルマザーになるような道を著者本人が自ら選んで進んだ感がある。
仕事にしても、これノンフィクションですよね?
それなのに、顧客の実情を面白おかしく書いている箇所が数ヵ所あり、全く同意できなかった。
お掃除のメイドさんとして、プロフェッショナルとは言い難い。
だから、「惨め」な書き方になるのでは…
この著者には「誇り」が感じられなかった。
世の中が絶賛するのが理解できない。
政治的思想に左右されるのかな?
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シングルマザーで人生絶望の主人公が日常のことや考えをブログに綴っていたものをまとめた本でした。
この著者の場合はシングルマザーになってしまって、人生どん底でも自分なりに自分の道を模索しながら少しずつでも切り開いていってる感じは少しですが感じ取れました。
もしかしたら同じような境遇(アメリカと日本ではまったく違うけれども)の方には勇気づけられたり、今がツライ時には私なんかよりはもっと大変な人がいると思わせてくれるかもしれません。
けど、読みながら同時にどうしてシングルマザーになってしまったのか?シングルマザーにならないようにどうするべきだったのか?というところも考えさせられたのはありました。
結局、自分たちが責任も持てないのに子供を作ってしまったことが、自分を貧困へと追いやった部分もあるでは?と冷徹ですがそう思ってしまいました。
仕方なく、シングルマザーになった方もいると思いますが、シングルで子供を育てながら生きていくというのは今の時代はやはり大変なんだなと、そして子供を産んで育てること自体が今の時代では贅沢なことなのかもと感じずにはいられない本でした。
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この本に出会えて良かった。
それは断言できる。
ハッピーエンドで良かったねと手放しで喜べるサクセスストーリーではない。
その過程で、ステファニーとミアがいつ終わるか分からない地獄を味わい続けたことは事実だから。
収入を中途半端に上げると支援が手薄になり、かえって生活が苦しくなるというのは、まるで蟻地獄のようだと思った。
明日は我が身。
消化にはまだまだ時間がかかりそう。
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村井理子さんのお名前を知っていたので手に取った。
表題どおりの本だけど、睡眠時間を削って読んだ。
シングルマザーではない私にもわかりみがすぎる一冊だった。
女性、育児、就労、貧困、差別、プライド、孤独、家族、、、いろんなことを考えた。
ステファニーの実家も家族不和で、それぞれ新しい家族がいて、祖父、父、母、みんな経済的に余裕がなく、ステファニーのことも、娘のミアのことも、ほとんど助けてはくれない。
助けて、と言える近親者の不在はステファニーを孤独にした。
お母さんにもお母さんが必要なんだ、という言葉で涙が出る。
あとがきにも号泣してしまった。
育児の中身は、人によってあまりに違う。
おとなしい子、親の言うことを聞ける子、と、そうでない子の子育てでは親の手間暇や心理ストレスは何倍も違うだろう。
しかも作者はたった一人で、お金を稼ぎ、子供を育てないといけないのだから、苦労は並大抵ではない。
育児は大変だけど、助けてくれる人が身内にいればかなり楽になる。
祖父母に預ければ済むところを高いお金を払ってイマイチな保育園にいれるのは辛かったはず。
特に保育園の別れの場面が辛さが胸に残った。
子供と一緒に幸せに生きるためにこの道を選んだのに、子供に苦しめられる場面も多かった事実が胸に痛い。
最後に、子供とのカビだらけのアパート時代を、幸せな思い出にできてよかった。
(実家から離れた土地での育児専業の私にも近い感覚があった。発達凹凸の多い長男の1歳、2歳時代は本当に苦しかった。経済的な心配がなかったことで自分を守れたのかもしれない。毎日狭い家で一緒に過ごし、外では孤独に苦しんだ。多動や他害の大きい長男とでは、友達親子を作る努力をしたが虚しい結果に終わった。夫は当時、仕事で多忙&精神的に擦り切れていて、長男の存在は休日の夫のストレスを限界まで高めていたと思う。幼稚園プレスクールが始まるまで、私も毎日死にたかった。その長男は私にとって、死ぬほど面倒くさいクライアントであり、私の生活を破壊したモンスターだったけど、苦しい時代を二人で過ごした戦友でもあった)
アメリカらしいと思えたのは、離婚(そもそも未婚か)した男性にも二週に一度は子供を預ける義務&権利があり、それを粛々と続けている点。
日本ではこれが難しいらしい。
父親に預ける時間に、子供と父親が心中した事件もあった。
この、子供を預けられる時間をステファニーは、子供ミアの心配をしながらも、勉強や読書にあてることができた。
日本のシングルマザーはそれすらないはず。まあどっちがいいかは状況次第だけど。
ステファニーがいろんな家を見ながら、その住人の生活や為人を想像するのが面白い。
私もタウン誌のポスティングをやった時期があり、それを思い出した。
玄関しか見えなくても住んでいる人の個性があり、気配が感じられた。
掃除はさらに内部で汚いものと対面する仕事だから、奥底にある人柄が見えたと思う。
ステファニー��最初に人間として扱ってくれた、ヘンリーがロブスターをくれる場面、おばあちゃんみたいな老女がお茶と食べ物とおしゃべりをくれた時間は、読んでいて嬉しかった。
シングル親子の幸せな生活を作るための社会制度はいろいろある。
でも完全なものではないし、自分が落ちぶれていると感じてしまうのは辛い。
子供を持つことで貧困になるか、dvに耐えるか、の選択肢を迫られる世界では、少子化の理由がはっきりわかる。
(女が、男と社会を信用しなくなったら少子化が生まれる、と聞いたことがある。うう)
筆者が、貧困の苦しさは、常に忙しかった、常に緊張と不安だった、孤独だった、選択肢がなかった、というあたりでよく分かる。
引っ越しの連続で、狭い家しか選べず、大事なものを所有できなくて処分する辛さ。
貧困は、シングルマザーに限らず、誰もが陥る可能性はある。
社会に余裕がないと弱者にしわ寄せがいく。教育はそこから抜け出る一つの方法なのは間違いないけど、個人の努力や運に左右される世界は苦しい。
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シングルマザーでメイド(住宅の清掃員)の体験記。
メイドは、最低賃金で(時給9ドルなので、1000円以下か)、汚くて身体的にもきつい仕事をさせられているにもかかわらず、対等な人とは扱われず、幽霊のように見えない存在とされている。
幽霊は、高等教育も受ける機会がなく、構造的に貯金ができない社会システムの中で擦り切れるほど働き、繰り返し侮蔑され、自尊心を傷つけられ、表現するだけの勇気をへし折られている。特にきついのは自分が人として扱われる価値があるのかについてすら自信がなくなってくることだ。そんな中、著者は異様なほどの強い意志(多くの衝突は著者のキャラクターに原因がある気がする)で書くことを続けたために、他では読めないような本書が生まれた。
ハッピーエンドだとはわかっていても、第1章はホームレスシェルターから始まって何の希望もなく、DV、虐待、両親との不和、不安定な雇用、きつい労働環境、劣悪な住環境による病気などが立て続けに描かれて読むのがただ辛い。そのあと、良くなってくかと思いきや、基本的にはずっと辛い。
そんな中で幽霊ではなくゲストとして扱ってくれる数少ないクライアントであるヘンリーがロブスターをプレゼントしてくれるシーンは、その不釣合いな感じも含めて感動的だ。
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清掃会社から派遣され、家庭の掃除をする。
ハウスメイドというそうだ。
本書はタイトルの通り通り、このハウスメイドとして働きながら、一人で娘を育てる女性の手記である。
日本でもお掃除サービスが家庭で利用されるようになってきた。
解説を読むと、アメリカではかなりの家庭が掃除をハウスメイドに任せているとのこと。
その仕事は肉体的にも精神的にも過酷だ。
もちろん、大変だろうと予想していたが、それ以上だった。
何より読んでいてつらいのは、お金がないということが、どれほど人の尊厳を傷つけるのかということだった。
たしかに、衣食住、医療に対する補助はある。
著者は懸命に各種の制度にアクセスして、何とか娘との生活を続けようとするのだが…。
例えば、フードスタンプを利用してスーパーで支払いをしようとする際、周囲の人から煩わしそうな顔をされたりする。
ステファニー自身も、かごの中の食品が補助以上の贅沢なものだと見られないか気にしている。
日本でも生活保護を受ける人へのバッシングがあったりすることを思うと、何と言っていいか分からない気持ちになる。
アメリカは自己責任の国だけど、失敗してもチャレンジができる、といわれる。
ステファニーは、苦労の末、奨学金で大学卒業を果たし、再チャレンジで成功した実例といえる。
けれど、貧困層から這い上がれる人は少数で、再チャレンジの実効性はどれくらいあるのだろう?
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「これはどう考えても無理ゲーじゃね!?」と読みながら何度も思った。
無理ゲー、つまり "難易度が高すぎてクリアするのが無理なゲーム" ってことですが、この本で描かれているシングルマザーの極貧生活は、私にはどう考えても、抜け出すことはおろか、続けることすら無理なものに見えた。
時給9ドル、交通費支給なし、福利厚生一切なし。そんな仕事しか見つからない状況で、家族の援助は一切ないまま未就学児を育てる。
受けられる仕事はめいっぱい受けても、やっとギリギリ生活費が賄えるかどうか、という状態。具合の悪くなった子供を病院に連れていくために仕事を休めば、その月の収支は途端に厳しいものになる。
やっとのことで借りることができた小さな部屋は結露と黒カビだらけで、子どもは呼吸器疾患に悩まされるが、引っ越す資金などまったくない。
・・・本当によく生き延びたな、と思う。
以前に読んだ「ヒルビリー・エレジー」と対になる本だと思った。
「ヒルビリー・エレジー」は、貧困状態で育てられた子供の立場で書かれている。自立できるはずなのに、意志が弱いために助成金に頼ってだらしなく生きる大人たちの姿が描かれ、著者は助成金の制度についてはかなり批判的な立場で書いている。
一方、この本の著者は、生きるために必死で働き、それだけでは日々の暮らしを賄うのは不可能で、フードスタンプや補助金、助成金が命綱だったことを伝えている。
やはり、こうした社会保障制度は誰がなんと言おうと重要で、絶対になくしちゃいけないものなんだなとつくづく思った。
利用する人を批判するなんてもってのほかだと思う。
著者の友達が「お礼はいいわよ」と言った、というエピソード(自分が払っている税金のおかげで暮らしていけてるのよね、という意味)は読んでいて本当に悲しくなった。
著者が未来のない満身創痍の自転車操業から抜け出せたきっかけは、意を決して学生ローンを組んだことのようだ。
そして働きづめのスケジュールを緩め、進学準備をし、奨学金の申請をし、それが認められ・・・と、そこから人生がうまく回っていくようになる。
でも、それって・・・やはり万人にできることではないと思う。無理ゲーをクリアしたに等しい特殊なケースだと私は思う。
彼女の事例は貧困と社会保障制度の関係について、つくづくと考えさせられる。
保障が手厚過ぎるから怠ける人が出てくる、と言う意見は多いが、ぎりぎりの暮らしでは、ずっと頼りつづけるか、ローンを組んで抜け出す道しかないように思う。でも、ローンを組むことで逆に救いようのない穴に落ちていく人もいるだろう。
貧困が生きる気力を奪うということは読む前からなんとなく分かっていたことだが、それ以外にもうひとつ、なるほど、と思ったのが、「低いクラスの人間だとみなされること」の辛さ。
顧客はメイドに名前があることすら認識していない、どんなに頑張っても同じ人間と見てもらえない、透明人間同様、という状況の辛さ、読んでいてとても理解できた。
ある種のサービス業についておられる方は多少なりとも感じておられる感覚かもしれない。
そうした中で、ヘンリーに代表される、何人かの顧客とのわずかだけれど暖かい交流には読んでいてとても救われた。雇い主の思いやりのある態度も素晴らしかった。
私も誰に対してもヘンリーみたいにふるまえる人間だといいな、と心から思う。
最後にどうでもいいことだけど、ミズーラって、あの「マクリーンの川」の舞台だったのですね!
この「メイドの手帖」では憧れの土地としてその名前が何度も口にされる。
ミズーラと言えば、最近読んだ集団レイプ事件を取材したノンフィクション「ミズーラ」をまず思い浮かべてしまったけれど・・・。
映画「リバー・ランズ・スルー・イット」は大好きな映画で、私は同じ映画を何度も見るタイプではないけれど、この映画は本当に好きで例外的に何度も見た。そして、ノーマン・マクリーンの本も3冊全部読んだのだった。(マクリーンの渓谷が一番好きだった)
本の方は一度しか読んでおらず、昔すぎてあんまり覚えていないけれど。
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とにかく重い。
心が追いつかず、読了までかなりの時間を要した。
これでもかという過酷な人生の中、よく生きていてくれたなと思う。それだけでも価値のあることだと思う。
時々、リボンをかけたキラキラしたプレゼントのような出来事が、自分がこうなたいという希望が、書くことによってより自覚的に受け止められ、生きる糧になったのかもしれない。
シングルマザーであろうと、無かろうと、悲しみや苦しみはある。それにどう向き合うか、乗り越える一つの術を見せてくれた。