紙の本
エビデンスの重要性
2018/05/18 22:22
6人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:コンドル街道 - この投稿者のレビュー一覧を見る
思春期の少女達を襲った激しいけいれんをはじめとする様々な症状。親や弁護士、一部の医者はその原因をHPVワクチン、即ち子宮頸癌ワクチンの副作用であると主張し、マスコミも追随した。
著者は様々なエビデンスからそれらの主張は誤りであると立証したがその意見は黙殺され、様々な非難を浴び、さらには論文の捏造を暴いたことで論文の著者から訴訟を起こされた。
著者は様々な妨害に屈することなく活動を続け、遂にはマドックス賞を受賞する。
本書はそんな著者の活動の集大成である。
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色々と騒がれていた中、イギリスで賞をとったとのニュースを聞きました。
子宮頸癌ワクチンの問題は、医療の問題ではなく日本社会の縮図であるという著者の考えに賛同できます。
年ごろのお子さんをお持ちの方には、ぜひ読んでいただきたい一冊。そして、お子さんのためにご家族で考えて見る必要がある課題だと思いました。
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科学誌「ネイチャー」などが主催しているジョン・マドックス賞を日本人として初めて受賞した著者渾身の一冊です。タイトルの「10万個の子宮」には、日本だけで、毎年3000の命と1万の子宮が子宮頸がんにより失われており、ワクチン被害者の会による国家賠償請求訴訟が終わるまでに10年かかると言われていて、つまり、国賠が終わり子宮頸がんワクチンが最短で接種されるようになっても、それまでに10万個の子宮が失われるという意味でつけられたそうです。
テレビや新聞などでよく見られた車椅子の少女たちの症状が子宮頸がんワクチン接種による被害というニュースは、全く科学的な根拠のない事だということが、本書を読むことでわかります。
特に2章で読むことのできる信州大学の池田修一氏による子宮頸がんワクチンが脳に障害を与えているという捏造には、本当に呆れかえりました。終章の間違った治療法に翻弄された少女たちのインタビューでは、実態がよく分かり胸を突かれる思いがしました。
この本がきっかけになって、日本の女性たちに明るい未来がくることを願っています。
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ワクチンの副作用も一部にあるけど、全体では益がある、という話かと思ってたら、ワクチンなくても発生する症状がワクチンのせいにされている、というもっと深刻な話だった。著者はややエキセントリックな方なのかと遠巻きに見ていたが、これはやむを得ないと思った。官も学もメディアもなかなか強くポジションを取らない状況を声の大きい活動家が悪用する。どうすれば防げるのだろうか…
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子宮頚がんワクチンに薬害があるとする主張に対して、この本は色々な観点から科学的、医療的な観点から丁寧に反証していきつつ、薬害問題が起きる社会的な背景を鋭く指摘している。
世のニュースやらsnsやらで薬害を主張する人は須らく陰謀論的で大雑把であることと比べると、筆者はとても誠実で公正である。
自分は医療について専門知識を持っていないので、やはり誠実で公正な人の主張が正しいのだろうなと思ったりした。
あとがきで、子宮頚がんワクチンの問題は医療問題では無く社会問題であると書かれていた。政治家や政治的な活動をしている人のごく一部には、お金のため、もしくはやりがいとか趣味という意味のライフワークとして社会問題を生活の糧として必要としている人がいる。
思春期の女の子で色々な理由で体調を崩して苦しんでいる人が、そういう人たちの食い物にされているというのは義憤に堪えない状況で、そういう状況を良くするために、あらゆる障害に負けず、長年に渡って地道な取材を続けている筆者には尊敬の念以外は抱きようが無い。
とにかくとても良い本でした。子宮頚がんワクチンの問題のみならず、日本社会、もしくは人間社会全般を考えるヒントにもなった。
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反HPVワクチン運動の実情を描いた、医師によるノンフィクション。ミスリーディングな統計データの公開や、ワクチン接種後10年後に発症する心体的な症状すべてを副作用とする「HANS」症候群など、非科学的な議論が存在すること。ネットで同じ話題を検索すると、感情的な議論が散見される。皆、自分の子供の安全が一番であり、危険なものは限りなく取り除こうとするのが親心、それをエビデンスに基づき真実でないと一方的に批判するのは間違いである。医師として、患者の不安を取り除く対話を行うこと。正しく、理解される内容を手元に届けることの重要さを改めて自覚させられる
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日本人初の受賞も国内メディアはあまり取り上げず。深すぎる闇。もう国内の報道には触れんでもええんかもしらん。
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詐病ならいいけれど,患者さんが原因を偽ることで本当にすべき治療が遅れるのならそれはこわいことだと感じていました.でも事態はもっとひどいことだったのですね.朝日新聞を取るのをやめようかとも思いました.マスコミは本当に信用ならない.もっとこの本が読まれることを祈ってます.
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よく言ってくれた.普通の医者だったらけいれんの動画を見ただけで詐病ってわかると思うけどなあ.何でワクチンの副作用と主張する医者がいるんだろ?しかも偉いさんに.
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子宮頸がんワクチンは、原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を防ぎ、子宮頸がんの発症を予防するワクチンである。日本では2009年に承認、以後、2010年から中学1年生から高校3年生相当の女子を対象に、接種の助成も行われてきた。
ところが、2013年、歩行障害や著しい記憶障害といった重篤な副作用を訴える例が大きく取り上げられたため、積極的な接種の呼びかけが控えられることになった。
2016年には子宮頸がんワクチンによる被害を訴えた国家賠償請求訴訟が起こされている。
日本では、毎年、子宮頸がんによる死者は3000人、摘出される子宮は1万個という。
子宮頸がんワクチンが有効であるならば、この数は0とはいかなくともかなりの減少を見せるはずである。
一方で、日本では、国家賠償請求訴訟が終わるまでには10年を要すると言われる。おそらく、その間は、助成金を伴うワクチン接種が本格的に再開されることは困難だろう。
年間1万個x10年、つまり10万個の子宮が、このために失われてしまうだろうというのがタイトルの主旨である。
いささか扇情的な印象も受けるが、著者は「敢えて」そこを狙っているのかもしれない。
Aが起きてBが起きる。時系列的にはそうであっても、それが即、Aが原因となってBが起こるという因果関係であることにはならない。そこを科学的に解明する際には、「エビデンス(証拠)」が必要となってくる。
だが、子宮頸がんと重篤な副作用の間にはそのエビデンスが控えめに言っても十分ではないというのが著者の主張である。
不幸にして、重篤な症状を示す少女たちは実際に出た。が、その原因が本当に子宮頸がんワクチンなのか。
そうではないとするならば、この問題がこれほど大きくなった背景には何があるのか。
著者は、このワクチンと副作用との因果関係に関して慎重に検討し、メディアを通じて発表してきた。
2017年には、国際的なジョン・マドックス賞を受賞している。この賞は、長年、科学誌Natureの編集長を務めたジョン・マドックス(2009年物故)にちなんで2012年に創設されたもので、「公共の問題に関して、堅実な科学とエビデンスを広めた個人(an individual who has promoted sound science and evidence on a matter of public interest)」に与えられる。受賞者には代替医療や認知の歪みの問題と取り組んだジャーナリストや医師、研究者が並ぶ(2016年受賞者はエリザベス・ロフタス(『抑圧された記憶の神話』))。
だが、これに先んじて、2016年にワクチン薬害を主張した医師の1人から、名誉毀損で裁判を起こされている。
国家賠償訴訟の影響もあり、本書のもとになる記事の連載は打ち切られ、本書刊行までも多くの出版社が難色を示したという。
本書では、子宮頸がんワクチン問題を整理し、データを科学的に検証し、ワクチン問題の社会学的側面を検討する。実際にワクチンを受け、重篤な障害を発症した少女本人にも取材している。
少女たちが重篤な症状を起こしたのは痛ましいことだ。
だが、それがワクチンのせいであるとする医師たちが行っている治療が、本当に妥当なものであるのか、という問題もある。
反ワクチン運動はとかく激しくなりがちである。それが感情的なものを伴うのか、あるいは「科学」や「巨大製薬会社」というある種の「権威」に対する反発なのか、さまざま考えさせられる点は多い。
この件には、報じられている以上に、大きな根深い問題が隠れているようにも思える。
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坂村健 事態がわからない時に、非常ベルを鳴らすのはマスコミの立派な役割。しかし、状況が見えてきたら解除のアナウンスを同じボリュームで流すべきだ
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もともとメディアは真実より
わかりやすさや面白さをまず重視して
中身なんて実際大して大事ではない。
そしてSTAP問題でもそうだったけど
真実は信じたい側にある。
私自身、新聞やニュースの報道だけを見て
薄っぺらな常識に満足してしまいがちだし
一般の人には科学的エビデンスだって
一体なんぞやって感じだろう。
どんな問題でもいろんな視点から物事を見て
自分で判断する姿勢を忘れないようにしないと。
メディアが偏っている時は特に。
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ガンの一部はウイルスによることが今や周知の事実になっており、ワクチンによるガンの予防は現代公衆衛生による大きな勝利であろう。
残念ながら、子宮頸がんワクチンの普及は極めて困難な現状となっているが、かつては海外でもMMRワクチンが自閉症を増やしている、などのデマが世間を賑わせた(たしかLancetにも論文が出て、その後取り下げになった)。基本的な医学、統計リテラシーを欠く人達によるこうした批判というのはどの国も通る道なのかもしれない。幸いなのは、接種が禁止となったわけではなく、希望すれば受けられる道は残っているということだろう。親としては正しい選択をしてやりたいと思う。
しかし、このタイトルはどうにかならなかったのだろうか。なんだかすごく生々しい。
・HPVには100以上の型があるが、がん化しやすいものは決まっており、現在のワクチンはこのうち2つに対する予防効果がある。このワクチンで国内の全子宮頸がんの約65%をふせぐことが期待されている。さらに最近のワクチンである7つの型に予防効果のある「9値ワクチン(子宮頸がん以外の肛門がん、咽頭がんなど男性に多いがんの原因も含む)」を用いれば90%以上の予防効果が期待される。
・2013.4に定期接種化されたが直後からけいれん、歩けない、慢性疼痛、記憶力低下などを訴えるケースが相次ぎ、これらは政府の公式な見解としても心因性のものであるということになっているが、「積極的な摂取勧奨の一時差し控え」が続いている。定期接種化前も各自治体の補助などで無料接種が行われており7割の接種率であったが、2014以降は1%以下になっている。
・HANS(HPV Vaccine Associated Neuroimmunopathic Syndrome)
線維筋痛症学会などではHANSの治療薬としてメマリーやアリセプトを用いることになっているというが、ワクチンを危険だと主張しておきながら少女らに認知症の薬を投与することの矛盾。また、自己免疫のメカニズムが疑われているためステロイドパルス療法も標準的な治療だという。
・ワクチン接種後に起きた症状はすべてワクチンのせいだという論理に無理がある。また、接種後数年立って起きた症状もワクチンのせいだということになっているので「証拠」はいくらでも出てくる
・婚前性交渉への反対の立場からこのワクチン接種に反対する人も多い
・厚労省によると、2015までに338万人が摂取し、副反応の疑いがあったものが1739名。いまだに症状が残っているものは186名だという
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子宮頸がんワクチンについては、時系列を完全に追えず、断片的な知識しかないことが前から非常に気になっていた。ワクチンを専門とする医師の講演を聞いても、ただでさえワクチンについては世界に遅れをとっていた日本だが、子宮頸がんワクチン薬害騒動がワクチン普及をさらに何年も遅らせたと悔しげに話す。その経緯がきちんと理解できていないことはずっと気がかりだった。
医師の話で、もちろんいくつかのワクチン接種が普及しない理由は公費補助がなくて高額であることとか、接種するものがいろいろあって煩雑で接種を忘れること、混合接種が進んでいないことなどいろいろあるとは聞いていたが、そもそもワクチンに対する理由なき恐怖が根底にあることも否定できない。ステロイド剤はできるだけ使わない方がいいという迷信的なものと同じ。薬を飲んでいても、ちょっと良くなってきたので勝手に服薬をやめてしまうなんていうのも同じ流れかもしれない。抗生物質でそんなことをすると、運が悪いと耐性が生じるなどというしっぺ返しが待っていることもあるのだ。
全ての薬にはリスクがある。効果もあれば、副作用もある。メリットとデメリットのバランスで効能の本質は語られなければならないということなのだ。
この本では、子宮頸がんワクチン薬害騒動の流れが極めてジャーナリスティックに、そしてサイエンティフィックで偏見なくフラットに描かれている。
前に「子供ができて考えた、ワクチンと命のこと」という本を読んで感銘を受けたが、この作品はそれに匹敵する素晴らしい仕上がりの本となっている。
とかくいろいろな見方のされる本ではあろうが、個人的には非常に優れた一冊と感じた。
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子宮頸がんワクチンとその「副作用」に関する騒動はなんとなく知っていて、ワクチン接種と副作用とされる症状の間に因果関係を示す科学的な証拠が見つかっていないことも理解はしていた。
モヤモヤしていたのは、証拠がないのになんでワクチンが原因という話になっているのかよくわからない上に、ワクチンの定期接種が止まっていると聞いたからだ。
もちろん、因果関係を証明できない=因果関係がない、ではないから、ワクチン接種をためらう気持ちはわかる。であればなおさら、ワクチン有罪説の根拠が重要だし、根拠があるならその根拠が科学的に肯定/否定できない理由がわからない。
というわけで、この件で知りたかったことが2つ。
その1。そもそもいろいろな症状がワクチン接種の副作用だ、という話がいったいどこから出てきたのか。その根拠はなんなのか。
その2。なぜ統計解析を行わないのだろうか? ワクチン接種群と非接種群で「副作用」の発現頻度を確認したら、ワクチンのせいかどうかすぐわかるだろうに。
読んでびっくりしたのだが、「その2」についてはすでに名古屋市の調査結果が出ているという。結果はシロ。つまり「副作用」の発現頻度にワクチン接種との相関関係が認められない。
「その1」については残念ながら本書ではよくわからない。ワクチンは無関係という立場で書かれている本だから当然なのかもしれないが、そこを知りたかったのだけれどな。ちょっと検索してみたらワクチン有罪説の本が相当あるみたいなので、そっちを読んでみよう。
ちなみに、ワクチン有罪説を唱える池田教授の論文には問題があると著者が指摘したので、両者の間で訴訟に発展しているそうだ。当事者には面倒なことだと思うが、白黒つけるのは良いことだ。ただ、ちょっと気になる点がなくもない。法廷というのは論文の科学的な評価にまで踏み込むんだろうか? 論文は正しいか間違っているかちょっとわかんないけど、悪口言ったのは確かだからアウト、みたいなことにならないだろうか?
ワクチン有罪説の根拠がわからないので結論は保留するが、本書を読んだ限りではワクチン有罪説は分が悪そうだな。
というわけで、科学と理屈で決着がつけばすっきりするわけだが、そうはいかないのがこの件の気持ち悪いところだ。
名古屋市の統計調査の結果は一度公開されたあと、うやむやのうちに非表示になってしまったそうだし、本書の出版もかなりもめたらしい。理屈はともあれ、ワクチン怖いという人が多いなら定期接種の停止はやむを得ないとは思うが、客観的な調査結果や、科学的な裏付けのある主張を隠蔽する動きというのはアホかいとしか思えない。
なお子宮頸がんワクチンは当事者が望めば打てるらしい。ちょっとホッとした。