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電子書籍
戦争が巨木を伐った
著者 瀬田 勝哉 著
第二次世界大戦中、鉄船を失った日本は木船の増産を企図。個人の屋敷の巨木までを供出する「翼賛運動」が起こされる。木と木の船をも総動員する日本の戦争の知られざる実態!
戦争が巨木を伐った
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戦争が巨木を伐った 太平洋戦争と供木運動・木造船 (平凡社選書)
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紙の本
供木をメインにおいた類を見ない1冊
2021/08/25 19:07
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:能登 - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦時中の献納運動の中の供木運動、その中でも全国規模で行われた造船用材の運動をメインに取り上げた1冊
一般的に戦時下の献納運動と言えば家具什器や寺社の梵鐘の金属回収や兵器献納募金に目が行くが、木材も行われた事は意外と知られていない。
その中でも、国有林などの木材、商品として整備された山林の抱え込みではなく、各家庭や地域の寺社仏閣、観光地など通常では利用を考えられない樹木を献納しようとしたのか、その献納を求めた大口需要はどこであったのかという2つの視点から描かれている。
一方で、この供木運動は、金属回収運動で家庭の金属製品を回収しきった後の運動、掻き集めるべき資源が無くなった時期と、献納運動自体が活動先を探したが故の次のターゲットとなった木材、造船や建築資材としての木材が市場分では枯渇した中での帳簿外の市中木材の確保といった供木運動にのっかろうとした事情が抑えきれているかといった点はある。
特に運動と提供石高の県別のバラツキも各県ごとの産業があり、そもそもその地場産業にあわせた植林や供給ルートの有無による「あとは切って出すだけで良い」といった事情や、造船以外の代用品としての木製家具類の生産に係留している地区、航空産業への木製部品生産に青田刈りされた地区がアリ、その製品に向いた樹種があるが故の出荷数減といった事情を抑えられていない点は少々残念ではある。
とはいえ、ここまで手を広げると戦時生産全般、軍需生産構造全てを抑える必要があり、供木・献納といったテーマから逸脱してしまうだろう。
また、同時期の都市部ではガス電気の節制が強く叫ばれており、そのための薪炭需要が激増している。
このため庭木や街路樹の薪化、分配といった事も多く行われているが、そうした生活必需品や自分が使えるものとして取り込むものでなく、お国のために献納しようとした流れを踏まえた本書は戦時下の生活を調べようと思う者は通読して損は無いだろう。