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商品説明
弥生人は、中国を盟主とする漢字文化圏に、はじめて参入した国際人だった。彼らは列島内外と交流しながら、新たな知識を獲得し、生活や文化を一新した。その活力の源泉は何か。弥生人の衣食住など日常生活を通して描く。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
高倉 洋彰
- 略歴
- 〈高倉洋彰〉1943年福岡県生まれ。九州大学大学院文学研究科史学専攻課程(考古学)修了。西南学院大学教授。著書に「弥生時代社会の研究」「日本金属器出現期の研究」など。
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紙の本
早くから漢字を習得し、東アジア世界の国々と密接にかかわりあっていた弥生人の生活を浮き彫りにする
2001/10/10 18:15
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投稿者:岡谷公二 - この投稿者のレビュー一覧を見る
金印国家群の時代とは、奴(なの)国王が後漢の光武帝から、「漢倭奴国王(かんのわのなのこくおう)」と刻まれた金印を下賜された時代、つまり弥生時代のことである。この一事からも分る通り、弥生の人々は、中国や朝鮮半島と密接に交流しながら生きていた。本書は、このような交流を視野に収めつつ、彼らがどのような生活をしていたか、どのような家に住み、どのような仕事をし、どのような着物や装身具を身につけ、どのようなものを食べ、どのような祭を行っていたかを詳細に跡づけたものである。主たる手がかりは、最近続々と発掘されつつある当時の遺物だ。日本のものだけでなく、中国や朝鮮半島の発掘品にまで目配りが利いており、その上『魏志(ぎし)』「倭人伝(わじんでん)」をはじめとする乏しい文献も、各地に今も残る民俗事象も、十二分に活用されている。
以前『縄文時代の商人たち』という本が出て、ちょっと話題になったが、縄文人がすでに海をわたっての交易を行っていたことが最近明かになりつつある。弥生人は、縄文人が開拓したネットワークを受けつぎ、それをさらに拡大した。たとえば富山県の糸魚川に産するヒスイ製の玉類が日本全国、沖縄にまでゆきわたっており、一方日本では沖縄の海にしか生息しないゴウホラ、イモガイといった貝を素材とする腕輪が、北海道の弥生遺跡から発見される、といった具合だ。このようなネットワークがあればこそ、稲作とそれに伴う信仰や慣習が、あっという間に日本中にゆきわたったのである。
著者は「あとがき」の中で、「書き終えて弥生時代における日本列島の同時性と斉一性についていっそう感を深めている」と書いているが、弥生人は、私たちの想像以上に、あまり地域差のない、共通な暮しをしていたらしい。
弥生人の衣食住は、本書を見るかぎり、これまで考えられてきたより豊かだ。しかし彼らはただむつみ合って暮していただけでなく、時には激しく戦い合った。首を斬られたり、大腿骨を鉄刀でえぐられたり、頭に銅剣を突き立てられたりした、凄惨な戦いを思わせる遺体も見出されている。そしてこうした戦いも、東アジア全体とかかわりがあったのである。
ともかく、日本側に文献が全く残っていないにもかかわらず、弥生人の少くとも一部が早くから漢字を習得し、漢字世界の国々と交渉を持っていたことを、私たちは本書を通じて知ることができる。 (bk1ブックナビゲーター:岡谷公二/評論家 2001.10.11)